truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第参拾六話『SILENT TOWN』

 


 

 

「おかしいな…」

 

ここに来てのゼータの第一声はそれだった。

 

バーリィ城下町。

もともとバーリィと言う国は各国の中でも一番土地の広い国だ。

首都にもそれなりの人で賑わっていてもいいはず。

が、オレ達の見た光景は全く逆だった。

 

街はしんと静まり返っており、人の気配が全く無い。

朱雀の背中から…上空では気付かなかったが街の中に入ってみると一目瞭然だった。

朱雀が言っていた良く無い事というのはこの事だったのだろうか?

 

「一体…何があったというんだ?」

 

 

 

 

それは少し震えた声だった

ゼータは歩くスピードを速める

何処に行くんだろう?

 

実はここまでゼータが先頭をきって歩いていた

ここは…いわばゼータの故郷です

都会だから…すぐに建物が変わるだろうけど

それでも、全く知らない未知の地より詳しいはず

だからゼータを先頭にした

まぁ、こんなことは誰だって思いつきますけど;

 

何処に行くんだろう?

更に歩むスピードを速める

 

「ちょっとゼータっ!歩くの速いわよ…」

「え?…あ、ごめん…ちょっと動揺してて…」

「わからんでもないが…あんまり早いとイオタがついてこれねぇぜ?」

「ムカッ!あたいはちゃんと歩けるぞ!」

 

ゼータがきょとんとして二人の喧嘩を見つめる

 

「ちょっ!街中で喧嘩しないでよッ!」

「ハハハ…」

 

私が二人を注意し、反省する二人の姿を見てゼータが苦笑した

フゥ…と一溜息をつくともう一度「ごめん」と言っていつものスピードで歩き始めた

 

故郷がこんな状態だから…動揺するのも無理ないわね

でも…それだけじゃないような気がする

何か…別の理由があってこんなに動揺している

私にはそう思えた

 

 

 

 

 その時だった

 

 

 

 

 

 

「だぁっ!?」

「ぜ、ゼータッ!?」

 

突然

後ろの民家のドアから手が伸び

ゼータを捕らえて家の中へ戻っていった

 

「ぜ、ゼータの奴ッ!火事場泥棒でもする気か!?」

「シャレになってねぇぞ〜兄ちゃん。」

 

「バカな二人は無私もとい無視ぃーッ!!ぜぇたぁーーーッ!?」

 

普段街中でこう言う事を言ったら近状迷惑間違いナシだったでしょう

 

ドアを開けようとノブを回すがビクともしない…

鍵がかけられていた

が、ゼータが中にいるのは解っている

少々手荒いけど…仕方ないわね

 

「死界を司る火・・・ファイドよ!今こそ真の力を見せ!その力、我放ちたり!!」

「ま、まってぇ!!」

 

 

…ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい。私はてっきりゼーちゃんが連行されてるとばっかり…」

「女子供のメンバーでどうそう勘違いするんだよ…」

 

兄さんが溜息をつく

さて、ここは家の中

え?誰の家かって?

 

「驚かせてすまなかった。改めて紹介するよ…俺の育ての親『プシー=リトゥール』さん」

「初めまして♪旅先でゼーちゃんがお世話になったわね。感謝してるわ」

 

プシーさんはぺこりとお辞儀をした

私たちもそれにつられるように頭を下げた

 

プシー=リトゥール

淡い水色の長い髪、吸い込まれそうな青い瞳、美人さんだぁ…

年は…20代後半と言ったところでしょうか?

ゼータがこんな綺麗な人と暮らしていたかと思うと…

自分、ちょっと自信ないなぁ

 

とか、勝手に思ってみたり

とにかく。ゼータにとっては「お母さん」というより「お姉さん」

姉弟のような関係なのだろう

「ゼーちゃん」という愛称から解る

 

私がぼぅっとプシーさんを見ながら考え事をしていると

 

オレがプシーさんに問い掛けた

 

「街の様子がおかしいようですが…何かあったんですか?」

 

プシーさんは笑顔だった表情を苦笑にすると

 

「そうね…もう4・5ヶ月ぐらいになるかしら?こうなってから…」

「どう言う事なんです?」

 

「う…ん。まぁ私にも理由はわからないわ。

でも…突然国王が徴兵令を出したのよ
男達は皆兵士にされてるわ。だから街にいるのは女だけ」

「え?でも…女の人だったら別に家の中に隠れなくても安全なんじゃないですか?」

「それもそうなんだけどね…

男達が皆かり出された今…ほらっ敵は国家だけじゃないわ。森族だっているし
それに…いつ女も狩り出されるかわかったもんじゃないわ。

それで皆このありさま
街中に出る人なんていまやいないわ」

 

プシーさんはソファの背もたれにもたれる。

フゥっと溜息をつくと再び身体を乗り出してこういった。

 

「ゼータ…と、エータ君だったかね?

あんた達二人は絶対に外に出ちゃ駄目。
解ったかしら?」

「は、はい。」

「わかったよ」

 

二人の返事を聞いたプシーさんは安心したようににっこりと笑った

 

「んじゃ早速部屋割りでもしましょうかっ♪当分ここに居るんでしょ?」

「まぁ…そうですね」

「決まりね!家結構広いから好きな部屋選んでねv」

 

こうして…オレ達のバーリィでの生活は始まった。

 

 

 

 

 

「おい。まだ見つからないのか?」

「あたいも暇だぞ〜」

「もう少しだよ…ちょっとぐらい待ってくれよっ。もうすぐ調べ終わる(と思う)からさぁ!」

 

あれから一週間はたっただろうか?そんなにたっていないのだろうか?

旅になれたオレ達は室内にこもるという事が暇で暇で仕方なくなっていた。

そんな日。ゼータがリトゥール宅の地下書庫に行こうと誘ったのだった。

リトゥール家は結構な豪邸なようで、部屋は広いは、部屋数は多いは、おまけに地下書庫まであるときた。

今までわたってきた城やファイのような国家規模の豪邸ではないものの、負けず劣らずの大きさだった。

 

話を戻して地下書庫だが…

ゼータの子供の頃の情報源はここにあったという。

そう言えば「家にあった本」とか言うフレーズを何回も聞いたような気もした。

そして今。ゼータはもう一度ここにきて何かエターナのこと、ガンマ=タグフォードの事についてないかと調べている途中だった。

ゼータの調べものがあまりにもなががったのでオレとイオタも痺れを切らしてきたというわけだ。

 

「ないなぁ…ここにはないのかな?」

「あのなぁ…今まで国にもなかったような本が一般市民の書庫にあるわけねぇだろ」

「そりゃそうだけどさ、リトゥール家の人ってどうも古本を集めるのが趣味だったみたいなんだよ。だからそん所そこらの図書館よりは品揃えが良いよ?」

「でもなぁ。オレはもう部屋に戻るぞ!」

「薄情な奴だな」

「お前の調べもんは長すぎるんじゃぁ!」

「ハァ…元気だな兄ちゃんたち…」

 

「何騒いでるの?」

「「し、シータ!」」 

 

がたっ

突然の来訪者の名前を呼ぶとともにそんな音が聞こえたような気がした。

と、思った瞬間!

 

ずがたーんっ!

 

「何してるのよ…」

 

ゼータが梯子から足を滑らせて転落

丁度その下にいた兄さんに激突

そのおかげでゼータはたいしたダメージを受けなかったみたいだけど…

 

「ゼータッ!お前何処見てんだよ!!しっかりつかまっとけぇぇ!!」

「わわわっ!すまないエータッ!」

「あははははははははっ!!」

 

イオタがこれでもかというほど笑う。

笑う笑う笑う…………あとで殴ってやる

 

「なぁに騒いでんのよ」

 

オレ達の騒ぎを聞きつけてか…というかアレだけ騒いでたら誰だって気付くわな

プシーさんがシータの横から姿を現した。

 

「ハァ…この二人を留守番にしてても大丈夫かしら?」

「…留守番?」

 

聞きなれない言葉を聞いて首をかしげる。

 

「今から私とシータちゃんで買い物に行ってくるのよ。そろそろ買いだめしておいた食材もきれる頃だしね」

「それで俺達留守番を頼むんですね」

「そーいうことっ」

「いくらオレ達でも留守番ぐらいはできるぞ?」

「はたしてそうかしらねぇ?に・い・さ・ん」

 

私は見下したように兄さんを見た

ふふん…とも笑って見せた

すると兄さんはあらかさま怒った顔で

 

「ガキじゃねぇんだっ!買い物行くならとっとと言って来い!泥棒がこようが軍隊が攻めてこようが留守を守って見せようじゃねぇか!!」

「頼もしい限りだわ〜んじゃ兄さんv留守番よろしくねぇ〜vv」

 

私はさっきののりのままセリフを言うと、そそくさとプシーさんと一緒に部屋を出た

プシーさんは突然手を引っ張られて戸惑っているようだけど…

ま、無私もとい無視?どうせ後で説明するしね

 

「エータの兄ちゃんってのせられ易いなぁ…」

「全くだね」

「……何がだよ」

 

 

 

 

 

第参拾六話 END


作者の後書き

 

う〜ん…結局書き直しました(笑)朱雀の章を書いていたときとだいぶ話が変わってます;

しかしとうとうここまできたんだなぁt&sも…

今回は終章の二個手前と言う事でかなり話がとんとん進む事になると思います。

このとおり、一話目から不安満点です(笑)

自分の目標はこの章で後残りのギリシャ文字の人たちを出す事です;

無理っぽいなぁ…ヤバイなぁ;;;

そんなにぽんぽん登場人物って出すもんじゃないですけど…一応連載当時からの目標でしたので…達成させていただきますっ!!

では第五章をお楽しみくださいませぇ〜vv


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


どんどんぱふぱふ〜♪
つーいーに、ゼーちゃんの仮故郷。パーリィ!
ゼーちゃん推進委員会会長(なにを推進!?)としては、いろいろな意味でワクワクですっ!

そして「エターナ」。
これまでは、あまし深くはストーリーに入りこんでこなかった、食炎伝説。
ゼーちゃんの持つ剣―――魔刀 “最後の闇” の謎とかなんとか出てきそうな予感〜!

“エターナとは我々にとって便利すぎる道具なのだよ”(第伍話参照)
とかなんとかのたまった、謎っぽい魔導研究家は登場するのか!?
ふっふっふっふ・・・ばっち、楽しみでせう!


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