truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第参拾参話『死者の涙』
やめろ…
やめろ…
もう何もかも嫌だ…
やめてしまえ
結局自分で嘆いて…嘆くだけ嘆いて
そして終わる
何も出来ないまま
自惚れるためだけの力などいらない
父さん、アンタはオレに何を教えたかったんだ?
でももう駄目だ
疲れた
やめさせろ
…………?かあさん?
「何だとっ!?」
視界が現実に戻る。
蒼龍の、朱雀の、ファイの、そしてタウの驚いた顔。
そして…平然とするイオタの顔。
――――――え!?
「間に合ったっ!!」
「あなたね。さっきからあちらこちらに死者ばら撒いてた元凶は!!」
森のほうを向くと剣の先をこちら…正確にはタウのほうだが…に向けたゼータとシータの姿。
そしてその後ろには多数の……動物達。
「お待た〜!森の友達連れてきたでぇ!!」
現れたのはユレア。
周りにはユレアを囲むように湧き出た(?)動物達。
一体これだけの数の動物をどうやって連れてきたのだろうか?
「お、お前ら…どうしてここに!!?」
「アレだけ派手にやっていて。無私…もとい無視できるほうがおかしいでしょ〜!」
「俺がとっさにかけた幻術で偽のイオタを敵に斬らせておいたのさ」
そう言ってシータ達が近づいてくる。
ふとタウのほうに目を向けると…彼はかなり焦っているようだった。
いきなりの彼にとっての不利な出来事。当然だろう。
「兄さんッ!傷だらけじゃないっ!!生命を司る水・・・ニンフよ!今こそ真のち…」
「あ、待てっ!その魔法は蒼龍に…っ!?」
オレは蒼龍のほうを見て目を見開いた。
彼は思った以上に重傷だッ!!
あれからかなり経つからだろう…
「シータッ!!」
「ハイッ!!」
シータは走って蒼龍の手当てにあたった。
そしてオレは…再びタウに向き直った。
「さて…大人しく降参するか?」
「そやないとユレアの友達が痛い目ぇ見せるで!」
「……何を言う。降参だと?……笑わせるなッ!!」
ザザーッ!!
彼の声に反応してまたも死者たちは立ち上がったッ
そして一斉に死者たちは俺達や動物達に襲い掛かるッ
一体これだけの数…どこから…
「ここは愚者達が共に何十年と争った地ッ!貴様らの兵の数に衰える訳が無かろうっ!」
「何がお前をそこまで動かすんだ…?」
「人は果てしなく愚かだ…自分が生き残る為なら何でもする。でもそんな愚者達とていつかは死ななければいけない運命。
これが笑われずに居られるかっ!
だから俺が叶えてやっているのだ…死にながらにして生きるという永遠の暮らしを!!」
「愚か者はお前だッ!!」
声を張り上げたのはファイだった。
「お前…自分のやっている事が何かわかっているのか?
お前にはわからないのか?
お前の操っている死者たちが苦しんでいるのが…ッ!」
「お前に何がわかるッ!俺は…苦しみを良く知っている!だから…」
「だから何よ!あんたは何も知らないッ!!死んだ人間には死んだ人間なりの理由があるっ!それが寿命か、事故か、戦死か…それは人それぞれっ!!
でも…それはその人で納得がついていくもの!!それを貴方はねじ伏せたのよ!!」
「理由なんてあるものかッ!俺は納得いってない…ッ!!」
「あんたの都合でこき使われたら迷惑なのよッ!!」
「だまれっ!!」
切羽詰ったタウが二体の死者をファイに仕向けたッ!
ファイはそれに動じず、ふと上体をを下げると死者の脚を剣で斬った
「目を覚ましてッ!!」
そして片方の剣を口にくわえると胸元から一本のナイフを取り出すと同時にそれをタウに向けて投げたッ
……いや、違う…タウを狙ったのではない
手にもった髑髏だ!!
カシャーンッ!!
音を立てて髑髏は粉々になった。
同時に、死者たちが糸を切られた操り人形のようにバタバタと倒れだした。
そして…タウも。
「……痛い…」
タウが血の流れつづける右目を押さえて蹲る。
突然、彼が先ほどの彼とは別人のような感覚が生まれた。
「痛い……」
ファイがそっとタウに近づいた。
オレは止めさせようかと思ったが…いつの間にか隣りにきたゼータに止められた。
「痛い…誰か助けてくれ…」
「怖くないわよ…痛くも無いはずだよ。」
まるで子供をなだめるかのように、ファイはタウの顔をそっと撫でた。
「ずっと一人で寂しかったんでしょう?大丈夫よ。」
顔を撫でていた手は目を押さえている手を退けて目を撫でた
すると何故か目から流れていた血は止まり、ファイが手をどけるとそこには薄い傷跡しか残っていなかった。
「もう大丈夫よ…」
「……痛くない…」
その不思議な力に…誰もが驚いた……
朱雀以外は。
「……これは一体…俺は何をしていたんだ?何が…」
タウはグルグルとあたりを見回す。
周りには彼が操っていた死者たちの山。
そして傷だらけの人や動物。
「何も考えなくてもいい…ここであった事は貴方には関係ないわ」
そう言って彼女は彼を宥めた。
彼も彼女の言う事を素直に信じる。
「貴方の覚えている範囲の事…教えてくれる?」
彼女の言葉に、彼は静かに頷くと…口を開き始めた。
「あの日は今日のような嵐の日だった…」
「俺はこの付近の村で農家を営んでいた。
俺と両親と弟の四人家族。
裕福ではなかったけれど、それでも俺は弟や両親と暮らしていて幸せだった。
しかし、事件とは突然やってくるものだな…
気が付けば炎の中で俺は佇んでいた。
足元には両親や……おとう…と……グッ!!」
突然タウが自分で自分を抱きしめるようにして蹲った。
微かに身体が震えている……
「無理しなくて良いわよ…」
「だ、大丈夫だ……
そう、村の人達があらぬ姿となって俺の前に転がっていたんだ…
俺は何も考えれなくなって走った。
森の中を無心に走って走って……そして…ある男に出会ったんだ。」
「……男?」
ファイが首をかしげて問いただした。
するとタウはその頃を思い出すように両目を閉じて…続きを語りだした。
「その男は言ったんだ…
『お前は永遠の命がほしくないか?』
『また皆と昔の日々がおくれるぞ?』
……と
今思えばそんな美味しい話があるわけ無いな…
あの時の俺は馬鹿だったよ…そう、貴様がさっき言った通りな」
タウは目を開けてファイを見た。
そのしぐさに、ファイは黙って苦笑した。
「そして俺はそいつから何らかの儀式をされて…
そこからの記憶が無い。
多分…たくさんの酷い事をしてしまったのだな…
結局俺は…自分が一番嫌いに思っていることをしてしまったんだ」
タウは苦笑し、再び目を閉じた。
自分にうんざりしているのだろう。
「その男……名前を……『パイ=ラ=エデン』と、言ったか…
おそらく全て奴のせいだろう……」
「……解ったわ…。私たちが、貴方の仇を取ってあげる」
タウはファイの言葉に目を見開き…そして静かに目を閉じた
「やっぱり…俺はあの時死んでいたのか」
「有り難う……」
タウは光と共にその姿を消し、その光は天高く空へと上っていった。
第参拾参話 END
作者の後書き
………意外な展開過ぎた?
自分でも思った設定にならなくてビックリ(苦笑)
そういえばエータ、結局皆に助けられてばっかりで終わったしまった…どーしよ(汗)
ま、次章か最終章にまわすか…ってもう後二章分の話しかないのか!?(□|||)
長かった…だってもう色んな人の種明かしが始まってるし…
今回の名前登場者はパイさんですね。
「π(円周率)」ですな、はっはっはー(滅殺)
タウさんが無事天に上がった事で黙祷しながら…続き頑張ります…
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
「やっぱり…俺はあの時死んでいたのか」
・・・良い台詞だなぁ、これ。なんか、心に響く言葉ですね〜・・・
さてっ。
なんか、黒幕チックな名前が出てきましたがっ、果たして円周率さん(おひ)の目的はなんなんでしょーかっ。
・・・実は聖獣だった、とかしたらどうしよう(玄武のときはヤラレタって感じでしたしねー)。
それと、双子の両親の謎はどうなっているのかも気になるところです。
一番気になるのはゼーちゃんの正体とか記憶とか意味っ。彼の位置って物語的にどーなってるんだろう。とか、ゼーちゃん進行委員会長(謎)としては知りたい事実ですがっ。
・・・うぃ、ちっと調子に乗りすぎたかも(汗)。
つーわけで、次回ッ。