truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第参拾弐話『血』

 


 

 

 

 

 

ファイの声でオレは我にかえった。

腹部から血を流しつづけているにもかかわらず蒼龍は平然とした表情を保ったまま相手から距離を置く。

そこで始めて解った。

タウの手には一本の小刀が握られていた事を……

…タウは隠し持っていた小刀を、蒼龍に突き刺していたのだ。

 

その小刀は紅く染まっていた。

それをもつ彼の顔。狂っている……………

 

 

 

「蒼龍ッ!!」とイオタが心配そうに駆け寄った。

彼は平然を保っているが……微かに頬には汗が滲んでいる。

 

「……これを…ファイに渡せ…」

 

鳥かごをイオタに渡すと、蒼龍は倒れこんだ。

服の色の加減のせいでよくは見えないが…おそらく真っ赤に染まっているだろう腹部に手を当てて…

イオタはすぐにファイの元へ駆け寄ると、その鳥がごを渡す。

 

 

ファイは朱雀の名を呼び、鳥かごを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

「…?起きたのか?」

 

ゼータに抱かれていた眠っていた私は目を覚ました

周りは雨の音だけが支配する静寂

その時、目の前が急に明るくなったっ!

 

「なっ!何!?」

「解らない…だが凄い力だ…」

 

光の方向を見…という表現はおかしいですね

太陽のような強い光に目を瞑りながらそちらのほうを見た私とゼータ

この光は何だというのでしょう?

 

「……兄さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎のように燃え盛るその羽根。

温風で踊る羽根と同じ長い髪。

長くとがった耳より上に見えるは対になった羽根。

そして見るもの全てを魅了するその姿……

 

ーーーヒト
この女性が………朱雀?

 

 

 

『ヒドイ目に会ったわっ!そこの陰気野郎ッ!!この樹の大陸一の美女、朱雀様が煉獄の炎で焼き尽くしてやるわッ!!』

 

……ありゃ?

 

『まったく…よりにもよって鳥かごなんかに入れるなんて…せめて普通の部屋に監禁ぐらいにしてほしかったわ…』

「あの〜…」

 

四神朱雀。

初めこそはオレもその姿に魅了された人間だったが…どうも勘違いだったらしい……

蒼龍や玄武と違い、やけに人間くさい。

さっきまでの緊迫感は何処に行ったのやら…?

 

『何よッ!ってかアンタ誰?』

「朱雀ッ!」

 

オレが答えるより早くファイが朱雀に飛びつく。

 

『な、何するのよ!いきなり飛びつかないでッ!ユレアじゃないんだから!!』

「馬鹿者!私がどれだけ心配したかわからないのッ!!」

『……わ、悪かったわよ。』

 

ここでようやく朱雀が大人しくなった。

さすがに「召喚師」であるファイには弱いのだろう。

 

「蒼龍ッ!!大丈夫か!!」

 

……忘れてた

そう言えば蒼龍は傷を負ったままだった。

イオタが蒼龍を支えている…が、あまり意味がないようだ。

 

『……蒼龍?何でアンタがここに……』

 

朱雀が蒼龍にか気ついた。

 

『…バカさは昔から変わっていないようだな朱雀』

『なっ!?バカとは何よーッ!!』

 

蒼龍の悪口に朱雀が食って掛かる。

どうやら蒼龍と朱雀はこう言う嫌味口を言う仲なのだろう。

 

『そもそもアンタが早くバーリィに行かないから……』

 

 

 

そこまで朱雀が言ったところでイオタの支えもむなしく蒼龍は倒れこんだ。

よほど無茶をしていたのだろう……一気に地面が血に染まる。

 

 

『その傷はっ!?』

『ハァ…ハァ……クソッ!こんなバカなハト女を助けなけりゃこんな事にならなかったのにな…』

『無駄口叩いてる場合じゃないわよッ!!アンタらしくもない!!』

 

さすがの朱雀も蒼龍のこの様子に心配をしているようだ。

 

『グッ…ゴホッ!ゴホッ!!』

「蒼龍…喋っちゃ駄目だッ!!」

 

イオタが蒼龍の背中をさする。

イオタは…いつもと違いとても真剣だ。こんな姿見たこと無い。

 

 

 

 

そう言えば…何かが静かだ。

何かが違う……そうだ。オレは今更ながら思い出した!

 

……殺気ッ!

 

ドカァァァッ!!

 

とっさにジャンプをして避けたオレ。

さっき居たところが死者たちで埋もれる。

そうだ。オレ達はまだ戦いの最中だ!!

 

「アハハハハッ!!闘いの最中に敵を無視するとはいい度胸だな。
良いのか?戦力の減った貴様らなんぞ相手にならんというのに…」

「こ、こいつ…ッ!!」

 

チャキッ

オレは剣を構え、死者の海を一気に突き抜ける!!

しかし上手くいかず、すぐに死者に道をふさがれた。

 

「くっそッ!!」

 

死者に直接攻撃は通用しない。

だから邪魔になる奴だけを斬って時間稼ぎをしながら進まないと埒があかない。

それは蒼龍が先ほど助言したのと同じ事。

オレはとりあえず死者たちの脚を斬っていった。

死人から血が出るわけも無く、ただ崩れ落ちるだけ。

そんな死者たちを、元が人間だと思うとこうやって斬り捨てていくのもやや躊躇うが…そんなことを言っている場合じゃない。

 

 

「クックックッ…なかなかやるな。しかしそろそろ体力の限界ではないのか?」

 

余裕たっぷりで奴は言う。

が、否定は出来ない……死者と違いオレには体力の限界がある。

早く元を断たなければこっちがやられてしまう!

 

「参戦するわっ!」

 

ふわりと軽い足取りで横にファイが現れた。

手には二刀の剣。持ち前の素早さで次々と死者を倒していく。

 

「すまねぇ」

「お互い様よ」

 

オレとファイは一度立ち止まり、息を整えると…もう一度一気に突き抜けた。

 

 

 

 

 

 

『ハァ…ハァ…』

『せ、蒼龍…玄武は!あんたが居るなら玄武も…ッ!』

『……俺はイオタについてきただけだ…ここにはデルタは居ない…』

『そんなぁ…それじゃあアンタは如何するのよ!このままじゃ四神のアンタでもヤバイわよ!』

 

蒼龍の手を朱雀が握る。

「回復」という手段をもっていない彼女はどうすることも出来ない自分を呪っているだろう。

……オレのように…

 

 

「お前が蒼龍を…ッッ!!」

 

イオタがバッと立ち上がり、タウへと向き直る。

その表情は怒りに満ちている。

 

「だったら如何するというのだ?」

「……ブッ倒すっ!!」

「イオタッ!お前じゃ無理だ!!」

 

慌ててオレはイオタの前にかばうように出る。

 

「邪魔するな!コレはあたいと蒼龍の問題だっ!!」

「だからといって子供のお前を戦わせるわけには行かないッ!!」

「子供子供って…五月蝿いんだよ!!あたいはもう…大人なんだっ!!」

 

 

 

 

 

 

そうだ…あたいが子供だから相手にされないんだ

子供じゃなければッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろっ!!」

 

 

イオタは物凄い力でオレを押しのけ、タウのほうへと走るッ

そう、それは先ほどの蒼龍のような状態。

いや、それよりも悪条件だッ。

タウは不気味なまでの笑みを浮かべてイオタを待つッ

 

こいつ……イオタを蒼龍と同じ目にあわすつもりだ!!

 

「……やめろ―――ッ!!」

 

 

 

目の前が真っ白になる感覚がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 第参拾弐話 END


作者の後書き

 

朱雀さんとーじょーですっ!!

しかし…いくらなんでも蒼龍を瀕死にさせたのは駄目だったかな…;;;

そして戦線離脱の為シータとゼータの出番が極端にすーくーなーいー(更に滝汗)

そんでもって最近名言(?)である「無私…もとい無視」が少なくなってしまった!

まぁこんな時に使えるような台詞じゃないんで勘弁してください(ぺこり)

さぁてイーちゃんに危機が迫る!どうなる!!

って前回と同じような終わり方かもしれませんね…反省。


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


前回と同じような終わり方ですねー・・・ああっ、すみませんすみませんっ!
でもっ、前回同様気になりすぎる終わり方ですっ。はうはう、イオタさんどーなるんでしょーかっ!? てゆか、イーちゃんファイトッ。できればゼーちゃんもふぁいとっ(笑)。

しっかし朱雀さんの本性にはやられましたねー。
実はもう少し、おしとやかな人を連想してたんですけど。

蒼龍さん瀕死状態〜
いやぁ、バリバリオッケーっすよ。てゆか、イオタさんや朱雀様との絡みが美しい・・・(ちょいと陶酔)
うう、こゆシナリオ組んでみたいなーと自分でも思ったり。

っはぁ・・・次回がマジで気になりますっっっっ!



・・・ところで、「ハト女」ってフレーズが個人的にはお気に入りな今日この頃。


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