truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第参拾壱話『弱さ』

 


 

 

ゼータは木にその身を預けている。

荒い息を必死で整えようと苦しそうな顔をしてた

私のほうも魔力を使い果たし、ゼータの横で倒れこんでいた

雨で土がどろどろ…もともと湿地だったけど、服が汚れるのも無私もとい…疲れた

 

「もう駄目……」

 

私は泣きそうな顔をしてゼータに言う

が、ゼータも先ほど行ったような状態。答えれるはずも無い…

 

数分前。

私たちは死者と相手をしていた……

 

 

 

 

「クッ…っそ…きりが無いっ!!」

 

ゼータは流れるような剣さばきで死者たちを斬っていく

 

はじめて見たときからゼータの剣の腕は目を見張るものがあったけど

最近、更にその腕が上がっているように思えた

 

素人の私が言うのなんだけど…隙が無いというか…

 

「シータっ!後ろ!!」

「へ?」

 

振り返るとそこには腕。どろどろと溶けていて異臭を放っている

が、今の私にそれを判別できる時間はなく……

 

やられる!

 

そう思うと私は無意識に両手を前に出していた

 

 

 

パァンッ!!

 

「……へ?」

 

目を開けると土に還った腕

一瞬の出来事に私…ふと見上げるとゼータも…唖然とした

大きな光が私の手から放出されたのだった

そう、私は魔法を放っていた

 

「うそ…こんな事、出来なかったのに…」

 

私がそんなことを言っている間も、ゼータは必死に死者と相手をしている

我に返った私は……そうだ!ゼータの手伝いをしなきゃっ!!

 

 私は呪文を唱える為に両足を軽く開いて右手を前に突き出した

 

 

 

「オシインラグス……風の理、水の清…汝らのものある姿、帰なる地………」

 

 

右手をゆっくりと動かす

それは二つの記号を描く…風の紋章と水の紋章

その紋章より放たれる光は詠唱と共に増してくる

 

そんなとき、一人の死者が私のほうを襲う

私は気付かない

気付けないッ!

避けようの無いその一撃は無常にも振り下ろされた!!

 

 

「お前の相手は…俺だ!!」

 

間一髪のところでゼータが死者を斬った

その時、私の詠唱も終わる!!

 

 

 

― セイントレインッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 数分後

 

「上級魔法…やっぱり私には無理なようね……ハァ…ハァ…」

 

今回使った魔法は水と風の混合魔法

しかも上級と言う事で魔力の消費が桁外れに違った

でも…こうでもしなければあの死者たちは何度でも立ち上がり

…そして、私もあの中の一人となっていたでしょう

 

「すごいよシータは…シータがいなけりゃ、俺もあの中の一人になってただろうな」

 

ゼータがフッと笑う

彼の方はもう大分息が整ってきたのでしょう、その表情には余裕がみられた

そのほうが私も落ち着く

 

「有り難うな、シータ。」

 

私の上体を起こさせて一緒に木に持たれかけさせた

ゼータがそっと私の髪をなでて…

それがあまりにも心地よかったものだから…私はそのまま眠りについた

 

肩にぬくもりを感じながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は…何の目的でこんな事をっ!!」

 

オレの声は怒りか…それとも恐怖でか?

震えていた

目の前の「タウ」と名乗る男を見ながら

 

ふともう一度男のほうを見ると…意外に若く見える。

年はファイやデルタとさほど変わらないだろう

そんな彼は…どうしてこんな風になったのか?

 

「何故だと?愚問だな……俺は『生命』というものが嫌いだ。だからその神を滅ぼす。
当たり前の事だろう?」

「……お前、森族じゃないのか?」

「あぁ……どちらともいえんな。俺はその気が無いんだが…勝手に付いてくる馬鹿な森族がいたっけ……朱雀を倒すを「羽根を獲る」と勘違いしていた奴らだが…まぁ利用させていただいたまでだ。もっとも、利用価値など無かったがな」

 

そこまで言って彼はファイのほうへ足を進めた

奴の手がファイの顎に触れる。

そして…どこか羨ましげに頬をなでていた

 

「…い、いや…血生臭い手ッ!!」

 

ファイは首を振ってその手を振り払った

 

「朱雀同様。気の強い人だ。
だが……今すぐその活気も消してやる…」

 

奴がファイの頬に爪を立てた。

 

 

 

「っ!ファイに手を出すな!!」

「威勢だけはいいようだな…が、その姿じゃ何も出来まいッ!!」

 

奴の言葉にオレは口を閉じた。

 

確かに彼の言う通り。オレは何も出来ない…

 

ふとマゼスの事を思い出す。

あの時もオレはゼータやミューに任せっきりで何も出来なかった

 

……悔しいッ!

 

今更自分の無力さを憎む。

昔からそうだ。

村が襲われた時も何も出来ずにただ呆然と立って

旅に出てからもシータの魔法に頼ってた

ゼータと会ってからは尚更だった。

 

自分ひとりでは何も出来ないのか?

また…何かを失うのか?

……もう嫌だ。

それだけは嫌だ!!

 

 

「ファイから手を離せッ!!」

 

ガシャァァァン!!

 

ガラスが割れたような音がしたと持ったら、目の前には青いうろこのようなものが見えた。

 

「エータの兄ちゃんッ!!」

「イオタッ!!」
「イオタちゃん!?」

 

イオタが蒼龍に乗ってこの小屋にやって来た。

小屋を潰してまで……

 

 

 

 

 

 

ゆらりと奴が起き上がる。

先ほどの奇襲のせいか、死者の操る能力が一時的に緩まった為ファイも自由を取り戻していた。

 

「…とんだ邪魔が入ったか…」

 

彼の顔には先ほどの攻撃の形跡も無く、ただただ笑みを浮かべているだけだった。

こいつこそ本当の死者ではないか…?

そう思うくらいだった。

いつの間にか左手に鳥かごを持っている。……朱雀だ。

 

ふと、奴が右手を上げる。

 

「……ソウェイルズルウ…」

「痛っ!!」

 

彼の発した言葉より、ファイが耳を押さえてうずくまった。

 

「ど、如何したんだ??」

「……酷い耳鳴りがする…」

「ほほぅ…生命の力あるものは負の言霊に反応するのか…面白い事だ」

 

 

そんなことをほざきながら彼は右手を振り下ろした!

それと同時に彼の後ろから物凄い数の骸骨がいっせいに立ち上がった

 

オレは急いでファイの手を引いて小屋を出た!

 

「蒼龍!いつまでそんなカッコで居るんだよ!動きづれぇだろ!」

『……貴様…』

 

 

 

 

 

 

 

 

土砂降りの中。

オレたちはまもなく水浸しになってしまった。

しかしそんなことを気にしている余裕なんて無い。

目の前には…下手をすれば百を超えそうな人数の死者らが居るのだから…

 

『奴は何者だ…?』

 

先ほどの龍の姿と違って人の姿になっている蒼龍は問いただした。

 

「死霊使い…奴は全ての死を望んでいる…だから朱雀もッ!!」

『……朱雀だと!?』

 

ファイの言葉に蒼龍が驚く。…どうやらイオタに何も聞かされていなかったらしいな…

ファイは台詞を言い終わると腰にさしてあった二刀の剣を構える。

 

「予定は狂ったが…どうも楽しい展開になりそうだな」

 

今だ余裕を持って話し掛けてくるタウ。

どうやら舐めきっているようだ。

こちらには四神蒼龍が居るというのに……

 

『おい』

「な、なんだ?」

 

急に呼びかけられて一瞬ビビる。

 

『俺は一足先に朱雀を取り戻させてもらうぞ。』

 

蒼龍はその台詞が言い終わると同時に相手に向かって突進した。

物凄いスピードだッ!

彼は死者の間をすり抜けて一気に奴の前まで出る!

そして…

 

ズッ………

 

 

 

目の前が赤に染まる……

 

一瞬の出来事でよくわからなかったが

 

少なくともこれだけは解った

 

「蒼龍」の血だと言う事が

 

が、彼は笑っていた

 

その手には………鳥かご

 

 

『……予想外の出来事はあったが…
ハト女は返してもらったからな』

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあああぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 第参拾壱話 END


作者の後書き

 

あぁぁあぁあぁ……なんだかずばーっと書いちゃいましたよぉぉ

うぅ…私の苦手な戦闘シーンっ!!

えげつないのが嫌いなだけに美化されてかかれております…こんなのって本当は駄目何だよねぇ…はぁ

実はこの話から4章最終話まで一気に書き上げちゃったりなんかしています。

本当の本当にあとがきだなこりゃ;;

事態はここから急展開!

どうなるやら作者はもうわかってます(爆)


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


うっひゃあ。なんだか、前半部はシータさんゼータさんが、らぶらぶですねぃ。
しかもゼータさんカッコいいしっ。
うんうん、ゼーちゃん出番大入り推進委員会会長としては喜ばしい限りでせう(また妙なコトを・・・)。


んー、戦闘シーン。そんなに悪くないと思いますよ。
アクション的な描写は少ないですけど、要点抑えてありますから、けっこ楽しめますです。


さーって、ラストの悲鳴は誰なのか。
多分、彼女かなーと思い気になりつつ、次回が楽しみですっ!


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