truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第参拾話『心境』
始めは盗み聞きなんて悪いとおもった
だけど…エータの兄ちゃんがファイお姉ちゃんのことで話をするのが…
なんかムカついた
「もぉ〜!!一体何なのよっ!!」
なんだか混乱する事ばかり
ファイは兄さんを連れて急いで出て行くし…
イオタは蒼龍召喚してまで二人を追いかける
残された私たちの立場ってモノを考えて欲しかったわ!
私は今ゼータと共に二人の跡を追っている
あの事件以来ゼータは木とは話さなくなり…
場所も聞いた話だけで行き着かなければならない
イオタは空から見てるし…早いからすぐ追いつくと思うけど
私たちってビンボークジ引いてない?
「まったくっ!でて行くのなら居場所ぐらい言ってからにしてよねーっっ!!」
「シータッ…恥ずかしいから叫ばないでくれ…」
一体いつまで走るんだ?
オレは繰り返される背景を見ながら思った。
相変わらずファイに手を引かれたまま…されるがままに走らされている
体力的にはまだ大丈夫なのだが…見当がつかないと精神的にヤバイ
「お、おい。いつまで走……」
その質問は意味をなさなくなった
何故なら彼女が走るのをやめたから
「……ここは?」
みたところ戦場跡のようだ
人骨や武器などが無造作に転がっている
オレが戦場跡を見るのはは初めてではない
「食炎直後の戦場跡って所かしら…あまり長居はしたくないわね…」
普段こういう場所から隔離されている彼女はやはりというか…
オレより弱いらしく苦しそうな顔をする
痛々しい…
「朱雀は何処だ?」
「あ、あっちのほう…」
と、ファイは指を指した。
その方向には小さな建物があった。石垣作りで…昔の小規模な軍基地だろうか?
今度は俺が彼女の手を引きそこに誘導する
建物の前にきたとき…かすかに人の気配がした
―――殺気!?
ガキィィンッ!!!
とっさに抜いた剣に何処からか沸いた剣が重なっている
前を見ると庶民的な服装の男が数名見えた
オレはとりあえず相手の剣をはじき返すと体制を整えた
……奇襲してきたのは一人らしく、ファイは無傷だ
「お前達は何者だ!」
「ただのここの番人だよ。お前達こそ何者だッ!人のアジトに勝手に入りやがって!」
「なるほど…ここは森族のアジトか…」
オレが思う前にファイが先に声に出した
それなら奇襲の理由もつく
第一…森族関係のことで攻撃を受けないほうが怪しい
「そこに入る前に先に俺たちを倒すんだな!」
「言われなくともそうするさ!」
言い終わるが早いか、オレはすぐに攻撃を仕掛けた
剣を鞘に入れたまま。
まずは一人目の男の後ろに立ち、手刀で首を打つ
二人目はすぐ後ろに居たが素早くしゃがんで足払いをかけてやった
三人目は剣を振り下ろしてきたがそれも軽く自分の剣ではじいてやると以外に簡単に吹っ飛んだ
その隙にオレは相手に懐に入り拳を腹に入れて気絶させた
ここ最近、普通ではない相手と剣を交えたせいか森族が弱く感じた
相手の動きは遅く、力も弱い
まもなく森族を片付けるとファイに向き直った
「さすがはタグフォード。お見事でしたっ!」
「その言い方親の七光りみたいで嫌だな…」
「あら?それでも貴方自身の力も凄いわよ」
オレはその会話を早く切り上げようとドアに手をかけた…が、後ろに気配っ!
チッ…まだ残っていたかっ!!
慌てて後ろを振り返るが相手はすでに地に伏しており、隣りには二刀の剣を持ったファイの姿があった。
「ファイ…あんた戦えるのか?」
「何言ってるのよ。ソーディスは武術の国よ?このぐらい当たり前」
彼女はそれぞれの剣を腰にさすと「さ、はやく行きましょ」といいオレをせかした
オレもこれ以上のことは言わず……まぁ武術の国であることには間違いないが…とにかくドアを開けるようにした。
――ハガラズゾイラ…魂無き器、我、時戻して命与えん
「蒼龍まだなのか!?」
上空。龍の上にまたがる彼女、イオタはその龍、蒼龍に問う。
『うるさいっ!!人が昼寝してるときにいきなり起こされてしかも運べだぁ?いいかげんにしやがれってんだ!!』
「昼寝してる暇があったら守り神としての役目はたせよ!!」
『フンッしるか。』
「開き直りやがったな…まぁこの話はいいとして…まだなのか?」
『いや、もうすぐだ…だが』
「だが?」
『嫌な気配がする……』
「嫌な気配って?」
『…なにか無機質で…狂ってしまいそうなくらい強い負の力…』
「アティックであったようなドラゴンでも出るってのか?」
『いや…こっちのほうが厄介だ。気をつけろよ…イオタ』
――我に魂をゆだねよ、さすれば汝に永遠なる力、与えん
「ここは…?」
まだ森の深い中
私はほんの少しだけ空けた場所に出た
そこは骸骨とか武器とか…そんなのが散らばってる場所だった
「何これ…なんか嫌…」
「食炎直後に起こった戦場跡だな…ソーディスではそう言う戦争が多発したらしいから」
「詳しいわね」
「あぁ、うちにある歴史書で見たんだ。それにしても…」
ゼータは口元に手を当ててなにやら考え込みだした
ブツブツと何かを呟いている…
「どうしたの?」
「あ、あぁ…なんていうかなぁここって何百年も前にあった紛争の割には新しい感じがするんだ。少なくとも数十年前にはあったかのような…」
「それって…」
――ソウェイルズルウ…目覚めよ、魂無き器!!
ずざああぁぁぁぁっ!!
その瞬間。私たちの目の前にあった骸骨たちが立ち上がりだした!
私は思わずゼータに飛びついて骸骨から目をそらした
死者がよみがえる??そんな魔法聞いたこと無いっ!!
「アンデット!?そんな…おとぎ話だけの存在じゃなかったのか!!」
さすがのゼータも驚きの顔をしている
骸骨たちはゆらりと足元に落ちている武器を拾うとこちらに向かって構えた
……戦う気なの!?
「ゼータっ!如何するの!?」
「仕方ない…戦うしかないだろう!」
ゼータは私を自分から離すと左手に抜き身の刀を構えた
「死者相手に何処まで通用するか解らないけど……」
そう言ってゼータは死者へと立ち向かった
その男は目の前にいた。
紫色のやや長めの髪の毛に真っ赤な瞳。真っ黒なローブ。腕にびっしりと刻まれた文様。
そして手に持つは………髑髏。
「まさかこんなに早くかぎつけるとは思わなかったな…いい主人を持ったな朱雀。」
男は髑髏を持たない手で横にある小さな鳥かごをなでる。
鳥かごは薄い朱色の光に包まれておりの下には魔法陣が刻んである。
「朱雀ーーッ!!」
隣りにいるファイは叫ぶ。が、その鳥かごから返事は無い。
「五月蝿かったからちょっと黙っててもらったんだ…大丈夫命に別状は無い
もっとも、『生命』を司る神が死ぬワケ無いだろうがな…フハハハハッ!」
男の声には何も感情がこもってないように…いや、唯一『皮肉』のみが入っていたかもしれない。そんな声だった。
オレは…ファイもだが背後からやってきた死者にとらわれ、身動きが出来ない。
死者たちの身体は冷たく、しかし恐ろしいほど力強くオレの身体を掴んでいた。
ピチャッ……ピチャ…
何処からか水音が聞こえた…男が黙ってからは静寂がこの場を支配している。
ふとオレは顔を上げてみた。
……水音の正体がわかった。
「この目のことか?………忌々しい。ヤツが術かけの失敗さえしなければこんな呪いを受けずにすんだのだが…」
目。
そう、男の右目は深い傷を負っていた。
鮮血が地を紅く染める……そう、先ほどの水音は男の血が落ちる音だった。
「この傷は一生癒えない……血も止まらない。」
ザーッッ
外から雨音が聞こえてきた。雨が降ってきたのか…?
すっかり暗くなった室内。無機質な感じが気に触る。
「さて、そろそろ話も終わりだ。生命の種族ソズディナ、そして朱雀…
貴様らはこの俺、タウが地獄へと送ってやる」
死霊使いの彼の名はそういった。
第参拾話 END
作者の後書き
ついに行きました30話ー!!
これで四章もt&s全体としても半分終わりました!
一年で30話…ペース遅いですよねぇ;がんばりますっ!
今回のお話はいつもより話が詰まってるかな?ってなわけで四章の敵さんのお出ましです。
彼には結構設定ありまして…いや、それほどのものじゃないですけど;;(多分セッドさんのほうがキャラ濃いし(爆))
あ゛今考えたら前回「死神」で被ってる?(汗)
まぁいいか……
さて、後半もサクサク行きますぞ〜!!…ってかこの時点で36話がかけてるってどう言う事でしょ?(笑)
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
はい、このごろ無理矢理に文章書いてる使い魔でせう。
どっかで書いてた連載小説がボツになった反動かもしれないとか一人で爆笑。あーっはっは(自棄糞)。
・・・失礼。まあ、それはともかくとして。
>一年で30話…ペース遅いですよねぇ;がんばりますっ!
いや、じゅーぶん早いんじゃないかと。単純計算で十二日に一本書いてるペースだし。
あ、だからと言ってペース落とさないでくださいねー。もー、心労ギリギリまで頑張って頂きたく(鬼)。
・・・このごろ、容赦ないなぁ自分。もそっと抑えんと(反省)。
さてさてさてっ、今回の話っ!
なんとゆーか、初めて悪人らしい悪人が出てきたようなッ!
一章では森族(そーいやあの人たち、もうでないんだろーか)、二章ではドラゴン、三章では暗殺者と、来てこの四章でついに出たか悪の代名詞コト死霊術師ッ!
生命たる朱雀と死界を視るネクロマンサー!
相反する二つの“意味”はどんな物語を魅せてくれるのかっ!? いやもー、激烈楽しみですよぅっ♪