truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ

 

第弐拾六話『目覚めの鳴き声』

 


 

 

 

クー…クォォォ………

 

「う〜ん…」

 

鳥の鳴き声…

やけに耳にとおるその声を聞いたオレは目を覚ました。

いつもと違って…何故か、目覚めが良かった。

そんな事いったら…シータに失礼かもしれないがな

 

「懐かしいな…この鳴き声…」

 

そう。オレはこの鳥の鳴き声を知っている…

ここの国の者だったら誰だって知っている。

そうだ。オレはここの者だったのだから…

 

「ソーディスの四神朱雀…。そうか…やっとソーディスに着いたんだな。」

 

オレはいまだ寝ているゼータを起こさないようにそっとテントから出ると、日の出を眺めた。

 

ここソーディスには朱雀という鳥がいる。

旧ソーディス城の塔の最上階に巣を作っているといわれている。

その朱雀は毎朝日の出と共に鳴き声を上げる習慣があるらしく、オレらソーディスの民はその鳴き声で一日を始めるのだ。

…懐かしい…

 

と、そのとき目の前が急に暗くなった。

貧血か?いや、オレは貧血なんて持病に持ってないぞ??

だんだん視界がはっきりしてきた。

まだ回復しきれずに霞む目を使って前を見た。

しかしそこは先ほど見た日の出ではなく、夕日。

そして森ではなく海が見える緑多い茂る崖であった。

二人の少年少女が話をしている場所だった。

 

…???なんだこのガキ…でも、どこか懐かしい…

 

頭では始めてみる光景だが、心ではどこか懐かしい感覚にとらわれる。

そんな二人の姿を見ていると、少女の方が口を開いた。

 

『もう帰るの?』

『あぁ、父さんが「母さんやシータが心配だから」って…』

 

シータ??シータって…あのシータだよな??

 

彼らの会話に知っている単語を拾いながらオレは話を聞き入る。

 

『また会える?』

『会えるさ!いやっ!会いに来る!』

『ホント!?』

『あぁ。オレが…約束破った事あるか?』

『約束した事無いから解らないわ…』

『あははっ!そうだよなぁ〜』

 

あのガキ…バカか? でも…なんか突っかかるんだよな…

 

少年の言葉に胸を痛めながら…オレは更に話を聞き入る。

だが、その意識とは反対に、目の霞みがひどくなってきた。

 

『ねぇ。今度会ったら言いたい事があるの。』

『?言いたい事があるなら今言えよ。』

『今は駄目。言ったって意味がわからないよ?』

『お前にわかってオレにわからないのか?』

『ううん。私もわからないの。夢で見たことだし、お母さんが言った事だもの』

『???なんだか解らんけど…解ったよ。忘れるなよ!』

『うん!エーティアル君もね!!』

 

エーティアル…!?ということは…あれはオ…

 

と、肝心なところで意識は現実に戻された。

目の前にあるのは少女や少年の姿ではなく、日の出…いや、朝日だった。

オレは寝ていたのだろうか??

不安になってあたりを見回す。外で寝ている姿なんてあの三人には到底見せられる姿じゃない。

 

とりあえずまだ三人は起きていないようなのでホッとする…

 

「それにしても…あの夢は一体………………ありゃ?」

 

オレははっとした。

良く考えてみると…さっきの事何も覚えていない。

一生懸命思い出そうとしても思い出せない…夢にはよくあることだ。

 

確か…とても大事なことだったような……まぁ忘れたなら仕方ないか…

 

オレはそう割り切って、シータとイオタ、ゼータを起こしにいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エータ達ってソーディスに住んでたの?」

「あぁ。もっとも、首都ソーディスじゃなくってもっとちっちゃいあるかないかの村だけどな。」

「兄さんそれ言いすぎよ〜」

 

兄さんに起こされた私達は、早速支度をし、首都ソーディスを目指して歩いていた

相変わらず景色は木ばかり。もう飽きたとも感じなくなっていた。

まぁ生まれたときからこの景色を見てるわけだから…普通としか言い様が無いけど…

 

「里帰りはしないのか?」

「えっ…」

 

ゼータのその一言に、シータは言葉を詰まらせた。

理由は簡単。

 

「出来ないんだよ…オレ達の村は、野党に襲われて焼け野原になっちまった…ま、それで旅に出ることになったんだがな…」

「っ!!ごめん!!」

 

ゼータはすぐに頭を下げた。

別にオレはゼータが悪い事をしたわけでも言ったとも思ってない。

はっきり言ってオレとしてはゼータに謝られる理由は無い。

 

「いいって。どうせ村人全員無事だったし…そりゃ家はなくなったけど…命まで亡くなってる訳じゃねぇから…」

「そうよゼータ。気にしないで。」

「だけど…俺…」

「そういう言葉は無私っもとい無視!! それより早く行きましょうっ!今回は一筋縄じゃここの王族にあえないんですから!!」

「えっ?」

 

ゼータは顔を上げて私を見た。

不思議そうな顔をしている…どうしてそんな顔をしているかぐらいわかるわ。

私が意味深な言葉を言ったから…

 

「一筋縄じゃ行かないって…どういうこと?」

「あら、知らない?ソーディスは民主主義の国。王様が国を統一してる訳じゃないの。国の治安を保っているのはあくまで民が選挙をして決めた代表者よ。
王族は名前でしかないの。だから今どこに住んでるかもわからないのよ…」

「そ、そうだったんだ…俺の家、古い本しかなかったから…」

「そう言うことだ。つまんねーことで立ち話してる暇があったらオオサマの家を探しにいかねーとな。」

 

兄さんがそういって先頭をきると、私たちは再び笑って歩き出した。

なんとか暗い話を明るく出来てよかったわ。

 

 

 

 

「なんか忘れられてるってかーんじー。」

 

後ろの方でイオタがんなことを言ったような気がした。

 

 

 

 

 

 

「イオタ。お前はソーディス着たことねぇのか?」

「ん?来た事あるぞ。あの時は鍋姉ときたっけ?
あたいがいつも通りかくれんぼしてたら…」

「ちょっとまて、違う国まで来てかくれんぼするのかお前は!!!」

 

尽かさず兄さんのツッコミが飛ぶ。ま、いまさら言う事でもないわね。

するとイオタはムッとした顔で…

 

「あたいはやりたいことをやりたいときにするほうだ!時と場所なんてかんけーねーっ!!」

「お前という奴は…」

「まぁまぁ、エータ落ち着けよ。子供相手に…」

「うぅ…」

 

兄さんはしぶしぶ言い下がると、イオタが勝ち誇った顔で兄さんを見上げた。

本当は見下げたかったんだろうな…というのが足に現れている。

爪先立ち…

 

「んで、かくれんぼしてたらなっ!一人のお方に見つかっちまったんだよっ!」

「一人の…「お方」??」

「そっ!そのお方は今となってはあたいの師匠!赤毛のユレア様だったんだ!!」

「ユレア様!?ユレア様って……王族ファイ=フィア=ソーディス様の義妹君っっ!!」

 

俺はつい大きな声を上げてしまった。

…このイオタの上に立つ者がいたなんて…………ってちがーう!!

政権は握っていなくとも…やはり王族は王族。

一般人は会えるはずの無い人…

そりゃ…確かにイオタも王族だけど……かくれんぼしてるぐらいだからオレ達があった時のような平民スタイル(失言)のはずだ。

だから会える訳無いんだ!!しかもかくれんぼで!!

………ってまたはなしがずれたっ!!

 

「イオタ!!ユレア様はどこで見たんだ!?」

「えっ!?ここの森だけど…」

「んなわけねーだろ!!」

 

王族がアブねー森なんかにいるわけねーだろ!!

 

…兄さんすでにイオタは王族扱いじゃないのね…

そんないつも通りの雰囲気な会話(?)を聞きつつ、私はゼータに目を向けた。

…?様子がおかしい…

きょろきょろとあたりを見回している。何かを探すように…

 

「ゼータ?どうし………」

「シッ!!……声が聞こえる」

「「「え?」」」

 

オレはイオタとの会話を一時休戦(!?)してゼータの方に身体を向けた。

イオタも同じだ。

オレ達は一言も喋らず、ゼータの返事を待った。

 

「っ!?」

「どうしたの!?」

「来るッ!!」

 

一言そう言うとゼータは剣に手をかけた。

「何がっ!?」そう叫ぶ暇もなく。オレは倒れこんだ。

”何”かにぶつかって…いや、“ぶつけられて”…

 

「でぇっ!?」

「兄さん!?!?」

 

黒い物体がすごい勢いで兄さんにぶつかっていった。

兄さんはそれを抱え込んだ状態で木に激突している…痛そう…

でも私はその兄さんより、黒い物体の方が気になった。いや、だって兄さんいつも見てるし

 

「あたいのことバカにするから天罰下ったんだよ。バーカッ!」

「なにおぅ!?」

「喧嘩できる元気があるなら大丈夫ね。」

「嗚呼!そんなあっさりとっ!?兄さん悲しいぞ!?」

「無私…もとい無私ッ!!!」

 

オレは徹底的に無視されてしまった…ちょっとショックだ、いやかなりショックだ。

木にもたれかかったままそんな風に落ち込んでいると…

 

「ったく、それよりぶつかったそれはなんなんだ?」

 

イオタがオレの腹元を指差して言った。

そうだ、シータのことですっかり忘れていたがオレにぶつかったこれはなんだろうか?

土煙のためにまだ見えない…が、

 

「うにゃぁ??聞いたことある声…イオタぁ〜?」

 

どこからか子供の高い声が聞こえてきたかと思うと、腹の上の物体がうぞうぞ動いて顔を出した。文字通り“顔”を。

真っ赤なボサボサの髪の毛に大きな…そう、大きな“とがった”耳。赤い鋭い目。鋭い牙。

身体は人なのについている“パーツ”は全く人のものではなかった。

 

「う〜ん…ここどこやっけ??」

「お・・・お前は??」

「ああーーーーーーー!!!」

 

オレがその“人”に声をかけていると、横からイオタが大声を上げた。

はっきり言って…いやはっきりしなくともでかすぎる。

 

 

「にゃ?…イオタやん。元気ぃ〜」

「しっ…師匠ー!?」

「はっ?…師匠ってことは…」

 

オレが唖然としているとその“人”はひょいと立ち上がって満天の笑みを浮かべると、

人差し指をびしーっと上にあげ、声を張り上げた。

 

「そっ!ユレアちゃんはここを縄張りとしているイオタの師匠♪
ユレア=ミディ=ソーディスちゃんなのにゃ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 第弐拾六話 END


作者の後書き

 

久々に書きました。温めまくった話でス(笑)

3章でちょっと暗すぎたんでこんどは少し明るめの話を題材にしようかと思います。

あのイオタの「師匠」ユレア、彼女は何を知っているのでしょう?

この出会いで明らかになる真実とは?

そしてエータの見たあの映像。アレは何を意味するのか?

いつはなしが急展開を迎えるかは作者も不明v

そんなこんなで始まった第4章!こう御期待を!!

 

こ〜んな後書きは無私、もとい無視★

(木賊のテンションいつもと違います(爆))


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜

しぃしょおおおおおおおおっ!

いや、「師匠」とか聞くとつい。(なにが「つい」だ)

 

んでもって新章突入! 待ちわびましたぜねーさんっ!
うう、双子の故郷ですかっ。しかも、師匠付っ(おぃ)。

うーんむ、しかもエータさんったら気になる夢なんか見ちゃって。
あらら、こいつぁもしかして“らぶ”の予感ですか?
つか、前章でも「おおおっ!? こりゃもしかしてエータさんったらっ!」とかきゃーきゃ言ってた自分(恥ずかしい実話)。

さてさて。師匠。
とりもなおさずに師匠。くうううっ・・・これからが楽しみやぁ♪


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