truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第弐拾四話 『第七幕:過去と消滅の時と・・・』
それは遠い過去の話でした
「玄武様。覚えていらっしゃいますか?私と玄武様が初めて会った時・・・」
『・・・・食炎後二代目の王の執事か?』
「いいえ。もっと前です・・・そう食炎の前・・・」
セッドは床に落ちたままだった鎌を拾い上げる。
そのまま杖のように持ち、顔を俯かせ目を閉じる・・・
「そう・・・私はごく普通の・・・家はあまり裕福ではない村娘の人格に潜んでいました。
ある日川に水を汲みにいったその子は途中で野党に襲われかけました
その時、私が出て野党を追い払いました。
その頃は戦争なんかなかった時代で・・・
私も体を鍛える事などなかったので今のように強くありませんでした。
怪我を負った私は自由に歩く事も出来ず・・・ただ助けと死を待つだけでした・・・
そんな時、一匹の白ヘビが私に薬草を届けてくれました。」
『・・・ジャ・・・ですね。』
セッドと玄武の顔つきがおだかやかなものに変わった気がしました。
「私はその薬草で・・・それはかなり強力な薬草だったみたいでして・・・
傷をある程度回復した私は・・・家路を帰ろうとしました・・・
その時にあなたに会ったのです・・・玄武様」
ちらりとセッドは玄武の方を向く。
すると玄武は何かを思い出したように・・・
『川で水を汲んでいた女性・・・あなただったのですか?』
「覚えていて下さったのですね!」
セッドは本当に嬉しそうに目を輝かせた。
その顔はまるで・・・あのミューに誉められた時のマリードのようだった。
その姿に『暗殺者セッド』の面影はなかった。
ただ・・・一人の女性が昔話をしている・・・そう見えました。
「良くある展開ですよね」
『たしか僕はあの時・・・』
―道は解かりますか?
―お前は誰だ!?
―そう驚かないで下さいよ。私はただの精霊術師です。
―・・・。普通の人には見えないが・・・?
―あははは。まぁ獣人族の一種だと思って下さい。
「そう・・・あなたは優しく微笑んで私を家へ連れて帰ってくれました・・・」
セッドは照れくさそうに笑っていました・・・
本当にマリードみたい。
『そんな前から・・・』
「えぇ・・・この時私はおもいました・・・あなたが・・・」
フワリ・・・
「!?」
セッドの碧色の髪を・・・白の布が包む。
『すみません・・・あなたの気持ちも知らないで無責任な事ばかりいって・・・』
「・・・いいえ、私がやりすぎてしまったのです・・・」
「うぅ・・・」
赤面的な二人の行動を見ていたオレ達に、うめき声が聞こえてきた。
それはミューの方向から聞こえて・・・ってぇ!?
「デルタ王!?」
バッ!!
次の瞬間、玄武とセッドがはなれた。
そしてセッドも玄武も王へ近づく。
「デルタっ!!」
「う・・・?玄武・・・?」
「目が覚めたのっ!?」
「・・・・私はずっと寝ていたのか?」
デルタ王は何が起こったのかもわからず、ただ辺りを見回すだけだった。
そのデルタを見て、セッドが近づく・・・
「あなたは二年間ここで眠っていたのです・・・」
「お前は・・・」
「私はあなたの妹です。でも違います・・・」
「私は暗殺者です。」
「あなたの妹では在りません・・・」
「ごめんなさい・・・あなたの妹の身体を使っていました・・・」
「・・・私は・・・」
「やっと出て来てくれましたか・・・」
「えっ?」
セッドが声をあげる。
その声をあげさせた張本人は彼女の正面で微笑みを浮かべていた。
「私を・・・知っていたのか?」
「知らないはずありませんよ。先代もそのずっと前の王達もあなたの事を知っていました・・・」
デルタ王はその微笑みのままセッドの手を取る。
「デルタ王・・・どういう事ですか!?」
「・・・玄武術。皆さんはどういうものか知ってますか?」
デルタ王と玄武以外の皆・・・勿論オレも含めて首を横に振る。
するとデルタ王はすこし苦笑いをするとまたさっきの微笑みに戻り、目を閉じる。
「玄武術・・・それは癒しの光術。そして玄武召喚者は夢の番人でもあります・・・」
「「「「夢っ!?」」」」
「私は怪我の為に眠っていたのでは在りません・・・マリードの中に眠る一人の人格をこちらの世界に呼びたかったのです・・・すみません・・・皆さんに嘘を付きました・・・」
「・・・・。」
セッドは黙り込む。
「私が眠れば・・・あなたが苛立ちを感じ、出て来てくれると思ったからです。」
「それでは・・・デルタ王はあなたの妹様・・・マリードの中の人格の為に今まで国をほって眠っていたと言うのですか!?マリードを使って暗殺を繰り返すあんな悪党セッドの為に!!」
「ミューっ!!」
ミューの叫びにセッドは絶句した。
そのセッドの様子を見てすかさずシータが叫ぶ。
「・・・えぇ。そうですよ。・・・しかしミュー。あなたは間違った事を覚えてしまっていますね。」
「何が間違いだと言うんですか!!」
「彼女の名前・・・」
「?」
ミューだけではない。デルタ王の台詞に皆が首をかしげた。
あまりにも拍子抜けした事だったからだ。
「彼女の名前は・・・「暗殺者セッド」ではない・・・
「掃除屋セアディアルド」・・・
マゼスの英雄です。」
「「なんだって!?」」
ゼータとミューが同時に大声を上げた。
「おいゼータ。セアディアルドって・・・」
「セアド・・・セアディアルドは300年前のマゼス内乱で両者ともに血を流させないで終らせた英雄だ・・・マゼスの戦記に載ってある有名な掃除屋さ。」
「まさか・・・」
ミューは言葉通りの顔をしてセッドを見た。
セッド・・・いやセアドなのか?・・・はミューの視線に気付くとフッと笑って、
「そうだな・・・その名前・・・私が始めて“暗殺者”として動いた時一度だけ名乗ってみたんだ。そしたらみんなして名前を間違えてくれてな。それ以来私の名前は“セッド”だった・・・」
「何故訂正しなかったんだ・・・?」
「ん?たしかお前は『エータ』と言ったな・・・」
セッドはオレの方を向いて、
寂しき心を持つもの 死を親愛とし、言葉する者
「今の私には“セアディアルド”より“セッド=ディア=ダイング”のほうがあっているからだよ」
「・・・でもあなたは”セアド”です・・・あなたが私を殺そうとしても・・・きっと殺せなかったでしょう・・・」
「自信満々だな、デルタ。私はいまだってお前を殺せるのだぞ」
「・・・あなたにはいま、私を殺す理由などないでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・セッドでいい・・・」
そう・・・“セッド”がデルタを殺そうとしていた理由は・・・
玄武と一緒になる為。
玄武も心を開いた今、彼女に殺す理由などなかった
「私は・・・ただ見守るだけのあなたではなくて、積極的になったあなたを見てみたかったんです。夢ではなく・・・現実で。それがたとえあの英雄のあなたじゃなくなっていても」
「暗殺者としての私?」
「いえ・・・本当の姿ですよ。英雄の姿だけがあなたとは限りませんからね」
「フンッ・・・あんたも物好きだね・・・」
キラッ
セッドは胸元からネックレスを取り出した。
ネックレスと言っても鎖にリングが付いていると言うものだった
そう・・・そのリングはマリードと買い物に出かけた時に見たあのシルバーリングだった。
「私はこのまま生きる気などさらさらない・・・玄武様に気持ちを伝えられた・・・それで十分」
「ちょっと!どういう事よ!?」
「シータといったな・・・ありがとう・・・」
セッドは美しい笑みを浮かべた。
しかしその時の私にはただの憎しみこもったいやな笑みにしか見えなかった。
だから無私・・・もとい無視したふりをしたの。
「・・・」
「これ以上誰にも迷惑をかけたくない・・・私は生き過ぎたの・・・」
ポゥっとセッドのもっていうシルバーリングが光る。
「この指輪はね・・・私と言う精神を制御する物なの・・・これを使えば私はこの指輪の中で永遠を暮らす事になる・・・」
「それってさっき言ってた・・・」
「そう。消滅するのと一緒の事」
「何であなたが消えなきゃならないのよ!!」
「私がいれば・・・マリードの体に負担がかかる。それは昔からわかっている事だった
けど実行できなかっただけ・・・いつかはしようと思っていた事が今日になっただけ・・・
そもそも私の役目は世界を成り立たせる為に見守り続ける事だった・・・
しかし玄武様を愛してしまってから上手く能力が使えなくなり、その後『食炎』を起こしてしまった・・・
私は用なしなのだよ・・・」
「そんなの、納得いかないわ!!」
「精神体だけの私がいる事事態が・・・そもそも間違いなのよ」
『セッドッ!!』
「玄武様・・・有り難う。私嬉しかったです」
シルバーリングの輝きがいっそう明るくなる。
「さよなら・・・」
「待って!!」
カッ!!
カランッ・・・ドサッ・・・
光は消え、そこに在ったのは輝きを亡くした石の入った指輪と
倒れた碧髪の女性・・・“マリード”だった。
「セアドーーーっ!!!」
第弐拾四話 END
作者の後書き
書いた本人でさえ何が起こってるのかわからない弐拾四話でした。
何度か書き直してみましたが・・・あんまり変わらない(TT)
セッド・・・セアドか?変わり過ぎ・・・。
うぉう・・・いくらこの章のテーマが「愛」だからって・・・やり過ぎたかな・・・
あとは・・・デルタ殿が復活っ!意味深な事をたくさん喋っては混乱させてくれます。
っていうか難点発見。
次回で何とかします・・・多分・・・
ろう・ふぁみりあの勝手な沈黙〜(・・・)
・・・・・・・
いやなんつーか。言うことないような、今回。
てか、セッドさんの物語が最高すぎる・・・ッ。
他に、もうなにも言うことないですよぅ。はぁ・・・(感嘆の息)。
「愛」・・・愛っすか。
でも、セッドさん(セアド、よりもこっちのほうが呼びやすい使い魔)変りすぎだと思いますけど、良いと思います〜
あまり気にならないし―――とゆーか、そのギャップでさらに人物像が深くなってるとかなんとか(個人的意見)。
しかし、この第三章って、先の第一章、第二章とは全く毛色が異なりますね。
先の話が、ドタバタしていたのに対して、第三章はなにか演劇っぽいよーな。
ストーリィも深く、さらには意外な展開・事実に何度も驚かされましたし・・・って、こういうことは章の終わりにいうべきですよね(苦笑)。
でも、ホントすごいですっ。くぅぅぅ、感動しっぱなし。
うう、次回・・・次回どうなるんだろおおっ!?