truth&sincerity
トゥルース&スィンセラティ
第壱拾六話 『それは悲劇の始まり』
「…わぁ!この辺りは珍しい薬草がたくさんあるのね!」
一人の女性が木々の間を歩いていた。
声はやたらと小さい。
「どの薬草が良いかしら?魔法ばっかりお勉強して薬草学に手を付けていなかったから・・・やっぱりミュー君連れてきた方が良かったのかしら・・・?」
その女性はその瞳と同じ色、淡い碧色のロングヘヤーをしていて、その髪は巫女さんの付けるような白い布で縛られていた。
髪の間から見える右耳にはピアス。
金色の小さな長い鎖の先に小さなダイヤモンド―――彼女の誕生石だ。
そのダイヤモンドに、金色のカメがへばり付いたようなデザインのピアスを付けていた。。
肌は怖いほど白く(化粧などではない)、顔は・・・美人だ。
服装は一般・・・いや、平民が着るにしては少し豪華な白い服を着ていた。
「あら、あれも薬草なのかしら?」
そう言って女性は歩み寄り、しゃがみ込み、その薬草に手を伸ばす。
と、その時だった・・・
「おやぁ?こんな所で奇遇ですねぇ?」
一人の男が薬草の後ろから現れた。
大柄で、目付きが悪く・・・善人にはとてもじゃないが見えん。
「私・・・あなたとお会いした事は一度も無いはずですが・・・?」
「そのはずですよ」
その男は口元を笑いの形にした。
「ねぇ?オヒメサマ?」
「ゼータ〜まだなの〜?」
「その台詞・・・いい加減止めてくれないか・・・?」
「このままのたれ死になんていやだぞ。オレは!」
「あともう少しだから我慢しろよっ!」
「そーだそーだ!兄ちゃん達が体力なさすぎんだよ!」
「イオタは俺の背中に乗っかってるから体力消耗しないんだろっ!!下りろ!」
「や。」
そんな漫才を続けながら・・・森を歩くのも今日で二週間目か・・・
森賊に会ったり、川で溺れそうになったり、シータが毒ったりして大変だった二週間・・・
ゼータ曰く、もうすぐ付くそうだが・・・なんか最近ゼータのあの能力はあてにできん様になってきた・・・やはりあの事件の一件か。
まぁそんなことはどうでもいいな。
「あら?あそこに女の人が居るわよ?・・・男の人も居る・・・」
「あぁ?こんな森の奥でなにやってんだ?まさかいちゃついてるなんて事ねぇよな?」
オレは機嫌悪そうに言った。
悪そう・・・と言うか悪いのだから・・・
「!?そんなんじゃないわ!!襲われてる!!」
「なに!?」
オレが後ろを振り返り、武器を持って走っていた時には・・・男は既に大剣を振りかざしていた。
「あなたっ!もしかして殺し屋!?」
「クックック・・・俺はお前に怨みはないが金を貰ってるんでな・・・では永遠のおやすみだ。
マリード姫!!」
「っ!?」
「やめろぉぉぉ!!」
カッ!!
オレが二人から見える位置に出た時、急に凄まじい光がした。
その光はすぐに消え、目の前が元の通りに戻る・・・いや戻っていない。
血溜りが見える。
「・・・・男が倒れている・・・?」
男が何か鋭い物で首を飛ばされ、その首からどくどくと鮮血が流れ続けている。
その首はというと、近くの木の枝に引っ掛かり、そこからも血が流れていた。
「??何が起こったんですか??きゃぁ!!!」
女性は死を覚悟して瞑っていた目をゆっくり開いて聞いてきた。
目を開けたかと思うと、再び目の前の光景に瞳を閉じた。
そりゃまぁ・・・たしかにエグイわな・・・
「それより・・・大丈夫ですか?」
「は、はい・・・あなたが助けてくださったのですか??」
「・・・・あ・・・ああ」
実際はオレじゃない。光の消えた時には既に死んでいたのだから・・・
だが、そんな事を言ったら彼女を混乱させるだけ・・・嘘でもオレが倒した事にしたのだ。
「ありがとうございます。私、この森に薬草を採りに来た所をあの殺し屋に襲われていたのです・・・」
「へぇ、そうだったんだ。だがな、こんな物騒な所に一人で来るのは危険だ。今度来る時は頼れる男を一人連れてくるんだな。」
「あ、はい。ごめんなさい・・・」
女性は本当にもう仕分けなさそうに頭を下げた。
と、次の瞬間・・・
ドサッ
「!?おい!大丈夫か!!」
「・・・・・。」
「しっかりしろ!!」
女性は倒れ、動かなくなった。
「エータっ!どうしたんだ!!」
「にいちゃんおせーよ!」
「文句言うなら下りろ!!」
「や。」
「兄さん!?」
後ろから声が聞こえた。
ゼータ、イオタ、シータだ。
「あ、この人さっきの・・・」
「あぁ。なんか急に倒れて・・・気絶してるみたいなんだ」
オレは女性を見た。今はオレがその体を手で支えている。
まるで雪で出来ているような白い肌・・・服は・・・これ、シルクだろう。
何よりも印象的なのは淡い碧色の髪だ。
「とにかく、人が居るって事はこの辺に町があるってことだよな!」
「あぁ。その人を助ける為にも先を急ごう!!」
オレは彼女を背中に乗せ、歩き出した。
その体は・・・軽く、冷たかった。
第壱拾六話 END
作者の後書き
短っ!!・・・でももともとT&Sって一話一話短く書くつもりだったのに・・・
いつのまにかめちゃくちゃ長くなってる。
さて、玄武の章に入りました!またまた新キャラですねぃ。
でもまだ自分から名乗ってないし・・・詳しく説明するのは止めておきましょう・・・
学校に居る時に玄武の章の構図を書いてみたんですが・・・なんかゼータ達の出番が少なくなりそうな予感。
思いっきり番外っぽい話だからなぁ。まぁ今から変えても遅くないよね?
では、今後の話をお楽しみに★
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
おいっす、ついに第三章!
―――いつのまにかめちゃくちゃ長くなってる。
分かりますよ、その気持ち。オイラもよく調子に乗って書いていると、ついついいつのまにか・・・
うーむ、やっぱり下書きは大切なんかなー。でもめんどいしなー。
それはさて置き。
あい、新キャラ〜お姫様ですねー
前章でお姫様らしいお姫様がでなかったから(鍋姉? いや、えーとぉ・・・)その逆襲なのか!?
うに、なんか本気でゼとイとシの出番がなさそーな(苦笑)。
なんとなぁく、エータさんとマリード姫メインの話になりそな予感。
・・・でも、今回の見所って言えば、イオタさんの「や。」かなとか。「や。」
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STORY
第壱拾七話 『序幕』