外伝>
truth&sincerity <外伝> 第壱拾伍話『人食らいの果実』 「はぁ・・・ゼータ。どのくらい進んだ〜」 「えっと・・・大体半分位かな」 「これで半分!?もーいやぁ〜〜」 「あたい・・・もう歩けないぜ・・・」 森の中をさ迷い、俺達は疲れていた。 俺はゼータ。ゼータ=リトゥール。この大陸の西にある「バーリィ」と言う城下町から出てきた旅人・・・かな? 途中であった仲間・・・それがここにいる三人、シータとエータ。そしてイオタだ。 シータとエータはそっくりな双子の兄妹で俺の命の恩人。両親を捜すたびの途中で重傷の俺を助けてくれたんだ。 そしてイオタ。彼女は東の「アティック」と言う国の第二王女。・・・この子の場合はほとんど成り行きで付いてきた・・・まぁ別に嫌って訳じゃないけどさ・・・ さて、話は戻ってここはアティック城下町とマゼス城下町のちょうど中間地点。国境辺りだ。 俺達はアティックを出て北へ進み、マゼスと言う町を目指している。 アティックを出て今日で一週間目。途中村や小さな町で宿を取ったりしたが・・・なんだかんだいって歩き詰めだ。さすがに疲れる。 ちなみに最後にベッドで寝たのは2日前に居たアティック領土「リンスの村」が最後だ。 「この辺・・・町とかねぇのかよ?」 「ちょっと待ってくれ・・・」 俺は一番近くにあった木に手で触れた。 俺の特殊能力の一つで、木と話すことができるんだ。 「・・・ここは国境だから村とか、町とかはもう少し先にいかないとないんだってさ。」 「そりゃそうよね・・・国境のど真ん中に町とかあったら領土問題が起こるもの・・・」 「じゃぁ今日はこの辺りで休むか。」 「そうしようぜ〜〜あたいもうくたくた・・・」 イオタは地べたに座り込む。 子供のイオタにはろくに休息を取らない二日間の旅は辛かっただろう。 しかもイオタは王女。大切に育てられてきただけに体力はもともとあまり無い。 と言う事で俺達は野宿をする事になった。 「う〜ん・・・そろそろ食料調達しなきゃ駄目ね。」 「もう無いのか!?」 「無いわけじゃないんだけど・・・お腹いっぱいは食べられないわね。」 シータが困った顔をしながら話す。 「じゃぁこの辺でなにか取ってこようか。」 「そうだな。でもオレはシータと一緒にい・・・」 「あたいもいくぜ!な!エータの兄ちゃん!!」 「私はここで御飯の支度して待ってるね。 それぞれの役割が決まると、俺、エータ、イオタは食料調達に出かけた。 余談・・・一応魔法で迷っても連絡取れるようにしているのでその点は問題ない。 俺達は三手に別れ、食料を捜す事になった。 「樹達・・・なにか食べるものはないかな?」 “それなら向こうに大きな樹があります。あまい果実がなってるそうですよ” 「そうか、有り難う」 俺は樹に話し掛けると、教えてもらった方向に歩いた。 その先には、木の言った通り大きな樹がたくさんの実を付けていた。 「ほぉ・・・こんなに大きな樹があるとはね」 “・・・・・べ・・・・・” 「?」 “私を・・・・ていって・・・たべ・・・” 「樹の方から喋りかけてくるなんて・・・珍しいな。」 “私の実を食べて” 「・・・・・。」 俺はその時なにか違和感を感じた。 別にその樹の言う事は今に始まった事ではない。 果実を人間に食べてもらい、種をむき出しにしてもらった方が発芽する効率が良いからだ。 別に違和感を感じる事ではない。俺は自分にそう言い聞かせると果実を持てるだけ取った。そしてシータの居る方へ戻っていった。 “私を食べて・・・私の子供を・・・” 「わぁ!おいしそう!」 「俺が一番乗りか。」 「えぇ。イオタも兄さんもかえって来てないわ。ゼータって凄いね。こんな短時間で食べ物を探してくるなんて・・・」 「そりゃ・・・樹と話せるなんて反則的な能力もってるし」 「それも実力の一つよ。」 シータはそう俺を誉めてくれた。そして果実の一つに手を付ける。 「・・・・・・。先に食べたら怒られるかしら?」 彼女はクスリと笑う。 まるで無邪気な子供のように。 「良いんじゃないか、一個ぐらい・・・」 「そう?じゃぁお言葉に甘えて」 クスクスと笑いながら、彼女は果実に口をつけた。 ガリッ 「!?」 「どうした?シータ」 「なにこの果実・・・種が周りにあ・・・くぅ!?」 シータは表情を変え、果実の持っていない方の手を胸の少し上辺りに寄せる。 その表情は誰から見ても苦しそうだった。 「シータッ!?」 「ゼーの兄ちゃん!?どうしたんだ!!」 「シータ!?」 その時丁度イオタとエータが帰ってきた。 二人ともビックリして・・・手に持った荷物を放り出し、こっちに駆け寄ってきた。 「・・・にぃ・・・さん?・・・イオ・・・くっ!?」 シータは何時の間にか果実を放し、両手を胸元に置く。 その手には力が込められ、苦しさに耐えるようだった。 ツリーマンイーター 「そう・・・これは木の実の中の種を人体に植えつけ、血と肉で成長する奴なんだ!はやく種を倒す薬草を見つけて食べさせないとシータの姉ちゃんが死んじまうぞ!?」 「「なんだって!?」」 この樹の話していた時に感じた違和感はこれだったのか!? くそ!!・・・・・俺のせいだ・・・・ 「すまない・・・エータ俺のせいだ・・・」 「・・・っ!!」 ふとエータの手を見ると堅く拳が握られている。 その手が俺の方に素早く伸びてきた。 ・・・・俺はそれを素直に受け入れる事にした。・・・・・・が がしっ! その手は俺の腕を強く掴んでいた。 「そんな事はどうでもいい!今は薬草を捜す事が優先だ!!」 「エータ・・・」 「お前を殴った所で何にもならない・・・それにお前のせいじゃない・・・」 「・・・・・・・。俺、あっちの方向捜す!」 「じゃぁオレはこっちだ!!」 「薬草は『シリャクドク』と言って、この辺りでは珍しい紫色の花を咲かせたツルの草だ!葉っぱを飲ませればいい!あたいの魔法で時間をながくしてやるが・・・それでも一時間位で姉ちゃんは・・・」 「「わかった!!」」 俺達は二手に分かれ、『紫の花の草』を捜す事になった。 辺りは既に紅に染まり、日が沈みかけていた。 「俺のせいだ・・・俺のせいでシータは・・・」 そんな独り言を呟きながら俺は走った。 目は常に当たりを見回して・・・・ 「樹よ!教えてくれ!!紫の花はどこだ!?」 走りながら俺は樹達に話し掛けた。 だが樹からは人を馬鹿にしたような笑い声しか聞こえない。 どうやらこの辺りの樹は邪気に心を奪われているらしい・・・くそっ!! 俺は走って走って走り続けた。 シータを助ける唯一の・・・紫の花 ガクッ!! 不意に視界が下がる。地べたに座り込んだのだ。 疲れているにもかかわらず走ったせいで体が上手くついていかない・・・。 「くそっ・・・くそっ・・・くそぉ!!」 立ち上がろうとしても足が上がらない。 俺は両手を地に付け、顔を伏せた。 すると地面に一粒の水滴が落ちる。・・・・涙だ。 「俺のせいでシータが・・・!!」 俺は自分が泣いている事に気が付かない。 気が動転して・・・ほとんど理性を無くしていた。 「捜さないと・・・薬草・・・」 『無理して体を動かさない方が良いですよ。』 俺が立ち上がろうとした時。背後から声が聞こえた。 声の感じからして多分男だろう。 慌てて後ろを向くとまたバランスを崩し、無様に倒れる。 起き上がる気力があっても体を動かす体力が無かった。 「うぅ・・・」 『こんなにボロボロになって・・・どうしたのですか?』 俺はその声に応えなかった。いや、答えられなかった。 薬草の事以外、何も考えられなかったのだ。 『・・・そうですか。あなたの大事な人がそんな目に・・・』 声は俺の心を読んだかのように言う。 しかし今の俺にはその声は届いていなかった。 『ジャ・・・おいで。』 そんな声が聞こえたかと思うと、さわさわと何かが近づいてきた。 その何かは俺の足に触れたかと思うと、俺の足に激痛が走った。 「!?」 『気が付きましたか?』 俺は・・・まだ重い体を持ち上げる。 意識が回復した。心を少し落ち着かせたのだ。 「誰だ?」 俺は目の前に居る男。・・・見様によっては女にも見えるがそいつに声をかけた。 目が涙でいっぱいなので良く見えないが、真っ白のショートカットの髪・その髪の毛の先の方から青緑から白のグラデーションがかかっていた。 『僕は通りすがりの精霊術師ですよ。あなたは大切な人を助けたいのですか?』 「・・・俺は・・・シータを救いたい・・・」 俺の本音。 男はその言葉を聞くと優しい顔でにっこりと笑った。 『スイ・・・おいで。』 男がそう言うと、一匹の白いヘビが何かをくわえてやってきた。 ヘビは男の差し出した手に巻きつき、口にくわえてあったものを男に渡す。 『これはシリャクドクの草です。早く行って飲ませてあげてください。』 「紫色の・・・花・・・!!」 俺は即座その草を取り、立ち上がった。 何故かもうあの体の重みは感じない。 俺は男に御礼も言わないで元来た道を戻り始めた。 『あの方にそっくりだと思いませんか?スイ。』 「キュルルル・・・」 『やっぱりスイには解かりませんか・・・さて、スイ。ジャ。戻りましょうか・・・』 「クルルルル・・・」 いつのまにか居たもう一匹にヘビに向かって男は呟き、消えた。 「ゼータっ!?見つかったのか!?」 走っている途中でエータの姿が見えた。 だが俺は止まらなかった。いや、止まれなかったのかもしれない。 俺は・・・・ 「ゼーのにいちゃんっ!」 「イオタッ!!」 目の前には倒れているシータと、両手をシータに向けながらこちらを見ているイオタが居た。 イオタの体は少し淡い藍色の光に包まれていた。 「薬草!」 「よしっ!それをすり潰して飲ませるんだ!!」 よし!!・・・すり潰して? 俺はだんだん冷静さを取り戻してきた。 えっと・・・手にはシリャクドクの草花があって・・・それをすり潰して飲ませると。 ・・・・で、 「どうやって・・・?」 「あ。」 イオタも考えていなかったんだろう。 無責任 「うぅぅ・・・くっ!!」 「ねえちゃん!」「シータっ!!」 くそっ!時間が無い!! ガッ!ムシャムシャ・・・・ 俺はシリャクドクを一気に口の中に入れた。 そして・・・ 「ゼーの兄ちゃん何して・・・・ッ!?」 「んっ!?」 シータの唇に俺の唇を重ねた。 口の中にある薬草をシータに口移ししたのだ。 ゴクンッ 「・・・・ふぅ・・・・」 シータが薬草を飲んだのを確認すると、俺は唇をはなした。 シータの顔が安らいでいくのがわかる。 「ゼーの兄ちゃんって・・・以外に大胆だったんだな。」 「っ!!しかたないだろう!!」 「とかいいながら!顔赤いぜ!!」 「うっうるさい!!」 「ゼータッ!!シータは大丈夫なのか!!」 そこに現れたエーティアル氏。 タイミング悪っ! 「エータの兄ちゃん!!ゼーの兄ちゃんがシー・・・・むぐぅぅ!!」 「??なにしてるんだ?イオタ。ゼータ。」 俺はとっさに手でイオタの口を塞いだ。 「いっ・・・イオタがシータ寝てるのに騒ごうとしてたから・・・」 「ふむ・・・ってシータは無事なのか!?」 「ああ。」 その台詞が言い終わるか終らないか・・・エータはシータに駆け寄った。 シータは相変わらず安らかな表情で眠っている。 「・・・・よかった・・・・」 「エータ。すまなかったな・・・」 「いいんだぜ。助けてくれたのはお前なんだろう?」 「だけど・・・」 「んなことよりっシータをテントに連れて行かないとな!」 そう言ってエータはシータを抱き上げた。 「ありがとう。エータ。」 「さぁ!お前らも早く寝ろよ!」 「はーい!」 「あ、待て!イオタ」 ん?と言った感じでイオタがこちらを向く。 そのイオタに向かって俺は思いっきり恐ろしさを出して・・・ 「あの事言ったら・・・殺るぞ。」 「・・・・は・・・はい・・・」 『彼が彼女を思う心は兄妹の絆より強・・・か。・・・僕はどうなのかな?』 第壱拾伍話 END 章と章の間の話。外伝・・・ もう何も言わないで下さい・・・ ただなんとなく書いてみたかったんですぅ〜 やっぱりゼータとシータをもう少し近づけても良いかなと・・・ 許してくださいー!! えっと。一区切りです。第三章は・・・書けるかな?(また言ってるよ…) それでは皆さん。また会う日まで!(これも) 水浅葱 木賊 いやもぉ、ゼータ君ってば大胆〜(赤面) しかし今回の話、ゼータ君の能力が上手く使われてていいっすね〜 さて、謎の新キャラも出てきたことだし、第三章も頑張るよ―に(おひ)。 ↑INDEX
トゥルース&スィンセラティ
シンクロ
精神を集中させ、木と同調する。
兄さんが何か言いかけていたみたいだけど無私・・・もとい無視ね★」
「この実は・・・人食らい樹の実じゃねぇか!?」
ツリーマンイーター
「人食らいの樹!?」
作者の後書き
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言ッ!
ゼータ君の「どうやって・・・?」のセリフで「ま、まさか・・・」と思いましたが。うきゃあ(赤面)
木と話す反則的(?)な能力で、果実を素早く見つけて〜ってトコ。今回はそれが悲劇を生んだんですが。
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STORY
第三章 「玄武の章」 第壱拾六話『それは悲劇の始まり』