ガン、ガン

−−−ちょっと、大丈夫?
−−−うっせぇ、背中からお前が離れれば全部うまくいくんだよ。
−−−ゴメンねぇ。
−−−こっ・・・このっ
「・・・?」

ガードマン他が集まってくる。
エレベータ内部からの奇妙な会話。それははっきりと、この最上階ホールに響いていた。

−−−・・・そろそろだな。
−−−かもね。
「おい。開いたら突入だぞ」
「わかってる」

二人のガードマンはドアの前へと忍び足で迫った。
右手に警棒を、左手に妻子をのモットーで。

−−−せーのっ

ガヅンッ!!

そんな、形容しにくい音がホールに響き。
鋼鉄製のドアが二人へと『飛んできた』。

「はっ!?」

ゴスゥ









MISSION FOR IRREGULARS

5「聞け。お前にも重要なことだ」







どうでもいいことだが。
例えばこれを読んでいる物ならば、いったいどんな反応をするであろう。
さらに例えば、これがもしも恋愛物だったとしたら。
恐らく合う単語は『デート』であり、反応は『ありがちなパターンにも関わらず、この類の物ではさけて通れない物に心のどこかで喜ぶ』といったところか。
待て、この物語を考えている人物の性格を考えてみよう。
答えは一つ。

『デートなどあり得ない』特に、この小説では。





「・・・仕事ったってねぇ」
「不満か?」

そんなはず無いじゃない、と心で言いながら首を振る。
友紀は幼い頃から亨に、まぁそーゆー感情を抱いていたからである。
ただ、これは今書いていてもしょうがないので別の機会にしておこう。
さて。
先ほどのファミレスから場所を移し、二人は深夜でも営業している喫茶店へとやってきた。
友紀個人の率直な希望というか、感想を述べて貰えば「もちろんデート以外に考えられない。というか考えたくない」とのことだが、そんな事が魂入霊歌もしくは闇葛に属している限り考えられないことだとはわかっていた。
「・・・で? 何なの?」
「なにが?」

すっとぼける、まぁ平均はクリアかもしれないその顔を友紀は殴った。
いい感触だ。おそらくはクリーンヒット。

「って・・・」
「まじめに答えなさい」

はい、と急に亨は素直になる。それというのも、友紀がテーブルの下で足をグリグリと踏みつけていたからだが。

「とゆーかまぁ、すぐわかる」
「なんで?」

それに答えようとして・・・亨は外の通りを指さした。

「あいつを待ってた」





すでに一時間が経過していた。周りでは相変わらず、普段では決して耳にしない金額が飛び交っている。
翡翠と裕二はその中を、なにをするでもなくイスに腰掛けていた。

「・・・まだ、ですね・・・」
「そうだな」

いい加減座りっぱなしは疲れた。これが映画ならまだ助かるのに。
黒い服の男達(まぁ、黒くない服を着ていない者の方が少ないが)が、特に準備を進めていそうな男達はせわしなく動いているのに、いっこうに始まる気配がない。

(・・・まさか、いきなり全員殺されたりはしないわよね)

ないとは思うが。
と、急に静かになった。こういうときは何故か時間を気にしてしまう。
・・・午前霊時。

「・・・長らく、お待たせいたしました」

どこからか・・・本当にわからなかった・・・でてきたのか、小柄な初老の男が(やはり黒服である)ステージの上に立っていた。

「始まりですか?」
「みたいだな」
「ただいまより、オークションを開催したいと思います」

拍手と共に、男の説明が始まった。





日が変わった。
9月 12日

「・・・どこに導くんです?」

真は訊いた。謎だらけだが、一番気になった箇所を。

「わからないわ。ただ−−−」
「ただ?」
「時期が来れば、向こうからコンタクトが来るの」
「コンタクト・・? 誰から?」
「今は言えない・・・記憶を持たれて、組織に探られたらやっかいだから」

そして梓は、新しく一本目の指を立てた。

「イレギュラーは私たちだけじゃないわ。イレギュラーはお互いにひかれあう性質を持っている。だから、イレギュラー達は何人かでグループを作っている可能性が高いわ。とくに、この太田町とその近辺は人数が多いの。組織の言うところでは『この地で無のイレギュラーが発生するから』だそうよ」
「それって・・・つまり?」
「組織は、イレギュラー達が集結する、まさにその瞬間に私たちを一網打尽にする。そう考えているの」

時計を見る。零時三分。

「・・ねぇ」
「はい?」
「木賊が出たのって・・・いつだっけ?」





ピッ。

いつの間にだろう。

パン。

木賊の手に紅い拳銃が現れ、そして目の前の女を撃った。
その弾もやはり紅かったが、そしてその弾は女の腕を貫通したが、なにより女は『銃が現れたことに』驚いていた。

(・・・こっ、この私が・・・!)





樋口 芹菜が魂入霊歌に入団したのは、実は三ヶ月前だった。
能力者としてスカウトされた彼女であるが、優れた能力をもっているにも関わらず、中での存在は薄い。というか、位置が低い。
虐げられ、蔑まれ。
そんな中での仕事だった。
一応はパートナーもいるが・・・はて? どこに行ったのだろう。逃げた?




(死んでたまるかっ!)

能力発動
液体属性硬化系能力 タイプ「ポセイドン」

そこにあったジュースのペットボトルをひったくり、キャップをはずす。
とたん、その中身が・・・炭酸系だが、どうでもいい・・・剣のように固まる。
薄く、鋭利に固めた。故に、斬れる。

「はっ!」

所詮、血が媒体だ。硬化しているのではなく形作っているだけの銃など、簡単に斬れる。

「!!」

木賊はひるんだ。普通なら・・・そう。普通なら、銃を突きつけられて動けるものか。ましてや、撃たれた後に、こんなにも迅速に。

「やっ!」

バックステップ。木賊はカウンターの奥。弁当などが並ぶところまで跳んだ。

「・・・・」

無言でこちらをにらみつけてくる。

(勝てる!)
「あほ」

−−−え?

手が、ぐいと引かれた。後ろに。
目の前を、何か赤い物が通り過ぎる。
向こうで、木賊が舌打ちをした。

「や、闇腐!」

どこにいってたのか?
自分より明らかに年下の少年は、しかし平然と芹菜を抱き留める。

「なに? どうなったの!?」
「説明が面倒くさい」
「なんですって!?」

いつ、絵を描いた? 動作も見えなかった。

「お前、相手のこともっと勉強してから来い」
「なっ!」
「油断は禁物だってんだアホが!」

とたん、芹菜の体がバンと跳ぶ。
木賊から、真紅の槍が投射された。

「や、闇腐!」
「お前とは違うんだっ!」

叫び、懐から何かを取り出す。
ノート? いや、ハードカバーの分厚い本だ。ただなにもかかれていない。
いや、そこには少年の筆跡で、確かに文字が書かれていた。

『俺への攻撃は全て消える』

バリッ、と。そのページを破る。
とたん、その紙は虚空に消えた。極小の粒となり。
そして。

バンっ!

そんな音がした。
気がつけば・・・というか、その一瞬に瞬きしたのだが・・・少年をねらっていた槍は、消えていた。

「え?」

木賊が、驚きの声を上げる。反対に、少年はニヤニヤと笑みを浮かべていた。

「一度きり、これ、俺の能力の難点ね」
「ば、バカっ」

自ら秘密をしゃべるパートナーを咎めようとする芹菜。しかし少年は。
「だけど、一度で十分」
「え」

木賊が何か言おうとした、そのとき。
少年はステップした。前へ、木賊の横まで。
そして、彼女が手に持っていたスケッチブックをスル、と取り上げると、そのまま木賊の首へとたたき落とした。
う、とうめいて崩れ落ちる木賊を、少年は抱き留めて。

「しゅうりょう」

不敵に、そういった。





「ここは俺達が占拠した。すなわち乗っ取ったので、自分は一般市民と言い張れる者は床に伏せろ」
「なにそれ」

瞬と奇伊奈。その前には無数の人間。
七階大ホール。とりあえず騒ぎを起こしてみた。
ただし、事情が飲み込めていないのか、

「なんだお前ら!」
「警察を呼べっ!」

等という声が、お偉方(なのだろう、一般的には)のジジイ共の口から放たれる。
奇伊奈は無造作に、手に持ったマシンガンの引き金を引いた。

パパパパパパパ

銃口が火を噴き、そして数十発の弾丸が天井を貫いた。そのウチの何発かは豪勢なシャンデリアに命中し、そして一発が、天井とシャンデリアをつなぐコードを打ち抜いた。
うわあああぁぁぁっ!

悲鳴が、ほとんど全員から出る。ただしシャンデリアは、誰もいない隅に落ちたが。

「静まれ〜っ」

瞬がいった。その手にも、軽機関銃を構えている。
とりあえずは、任務遂行中といったところか。
その二人の首筋に、拳銃が当てられるまでは。

「はい、ゲームオーバー」

ロングヘアーの、高校生ぐらいの少女。いや、それにしては大人びている。
今まで非常階段で震えていた紅である。

「嗚呼、まずまずの出来だったんだけどなぁ・・・」
「なにがよ」

機関銃をおろす二人。
「いい子ね。そのままさがりなさい」

素直に従う二人。何故かというと従わないと殺されるから。
ジジイ共の安堵のため息と、そして自分たちに浴びせる罵声が、悔しいながらも耳に入ってきた。





「まず最初は価値抜群の、卑弥呼の墓から出たといわれる黒壺です」
「あ、裕二さん。あれですよ、あれ」
「あぁ、そうみたいだな」

あまり感情は感じられない。
不思議な感じだったが、なれているのか?

「まずは・・・70000000000から!」
「・・・え?」

なんといった70000000000? ななひゃくおく?

「え、あの裕二さん!」
「なんだ?」
「なんで落ち着いてるんですか! 三つどころか、これも落とせないかもしれないんですよ!?」
「あぁ、そーゆーことか」

むかつくぐらいに裕二は平然としている。

(どーなってるの! なんでこーなるのよ!!)

そんな翡翠の思いは完璧に無視されて。
競売はスタートした。




あとがきて名を残す(謎)

入試終わり〜。今は人事を尽くして天啓(天命にあらず)を待つ状態の第五話〜。
そろそろ謎な題名に気がつく人とかいるかもしれませんけど秘密です。
そして−−−まだ五時間ぐらいしか経ってない自分に乾杯(謎)。
人が多いので、これからどんどん容量が増えていく予定です。
えと、んと。それでは〜(死)。


ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜


人が多くなっていく―――ふ、ふふ・・・そうやってずべてけさんも地獄を見るんですよ(経験者は語る)。
うー、十人以上登場人物がいると、頭が壊れていく自分。上手くかけないよー。

さて、そんなことはさておき。

いえぃっす、お久しぶりの未レギュラー! というかずべてけさん入試お疲れ様でしたー。
合格することをお祈りしてます〜。

さて、今回印象に残ったのは闇腐さん。
うあ、ムッチャかっこいーじゃないですかー。能力も何気にオイラ好み♪
他にもガードマンさんの信条「右手に警棒を、左手に妻子」ってのは愉しげでした。

んと、次回は競売が中心になるんですかね?
続々とキャラクターも、その本質、姿をあらわし始めていいよ面白くなりそーです!

・・・ところで、謎なタイトルの意味というのがわからない自分。
ごめんなさい、オイラはバカでせう。


INDEX

→NEXTSTORY
6.「重要? なんで」