「・・・まことー?」
少女が河の岸を歩いていた。十代。髪を後ろで束ねている。
「まことー」
「あの・・・」
その岸に座り込んでいた少年は、その言葉に苦笑いを浮かべながら上半身を起こす。
少女はそれに気づいたように、問いかけるような顔を向けた。
「・・・まこと?」
「しん・・・です」
MISSION FOR IRREGULARS
3「言葉遊びは嫌いだ」
「暇ー」
翡翠はテーブルに顎をついて愚痴た。
前では亨たち三人がカードをしている。
「・・・翡翠もやれば良いじゃない」
「それよくわからないからイヤです」
もともとカードとかそういう類の物に興味はない。
パソコンとかはプログラム等を始め年齢不相応ともいえる知識を持っているのだが、興味のないことはてんでだめなのだ。
故に汗くさく体を動かす運動はあまり興味なく、どちらかと言うと見ていて『かっこいい』体術にあこがれていたりする。
亨の得意な喧嘩混じりのマーシャルアーツなどではなく、あの最近の映画みたいなカンフーとかだ。
そういうことはまぁどこかに放り捨てておくとして・・・
暇だった。
死ぬほど暇。魂入霊歌の説明を受けたが、てっきり『ミッション・イン@ッシブル』みたいなスリル満点のアクションたっぷりな依頼が来ると思っていたのに。
亨たちといえばさっきからずっとこのファミレスでトランプをしている。
かれこれ二時間になろうか。どうして飽きないのか? 翡翠の頭の中は一つの疑問で埋め尽くされていた。
「あー。オーバー」
「十九」
「ぴったりだ。ここの勘定友紀な」
「うえー」
友紀の泣き声が聞こえる。
(なんて気楽・・・え?)
今、勘定といったか?
「どうした? こないのか?」
顎をあげると、三人は席を立っている。
「仕事だ」
「で・・・ここまで来たと」
梓は一組のカップルを見た。
性格にはカップルなどではなく、ほんの少し前に会った『仕事仲間』なのだが、梓は二人を皮肉ってそう呼ぶことにした。
「わざわざこんな散らかってる部屋に案内しなくても、ね」
確か、どこかのデパートで落ち合う約束はしていたはずだが。
どこか・・・あれ?
「ですから、梓がデパートの名前を聞いていたか不安でしたから真をここまで案内したのですが?」
(あらら)
梓は心の中で苦笑した。自分は、いつも木賊にかなわない。
「それより、早く服を着てくださいな」
木賊の横で、真が顔を赤くしてそっぽを向いていた。
「あら、かわいいじゃない?」
『イクリプス』と呼ばれる男も、年上には弱いと言うことか?
「調子がすぎますわよ」
「ごめんなさい、ね。ちょっとまってて」
パタン、と、梓がマンションのドアを閉めた。
「すみませんわね。礼儀知らずで」
「いえ・・・」
そう行って微笑する真はどう見ても自分より年上だが・・・
「なんで敬語ですの?」
「まあ、人間いろいろですから」
ヒュ
風を切って飛んでくる泰志の拳を、楸は体を反らして交わした。
そのままバク転に移り、反動で顎に向けてケリを放つ。
ヒット。泰志の体が後ろによろけ、忌々しげに唾を吐いた。
楸はそのまま拳銃を取り出すと、引き金を引く。
(ここは・・・七階)
全部で八階建てだから、次が最上階、ということになる。
「ちぃっ!」
泰志は肩に弾を受け、それでも無駄の無い動きで距離を近づけてくる。
(勝てないとわかってて?)
理解しがたかった。このまま戦えば、死ぬとわかってて。
力の差は、傍目に見ても大きいと言うことがわかるというのに。
と、突如泰志が動きを止めた。
ニィ、と口をつり上げる。
「遅いぞ」
「すまん」
背後から声が聞こえ。
そして、楸の後頭部が殴り飛ばされた。
(っ!?)
咄嗟に受け身を取り、二人から離れる。
二人居た。さっきまで戦っていた男と、そしてもう一人。
髪にウェーブをかけた泰志とは対照的に、短い髪を逆立てた、色黒の男。つまりゼルとか考えてくださいねぃ
「・・・・・」
翡翠は黙って、自分よりやや背の高い裕二を見上げた。
「・・・・・」
当然といえば当然らしいのだが、返事はない。
二人はエレベーターの中にいた。亨と友紀は、いない。
「・・・・」
翡翠は黙って、自分よりやや背の高い裕二を見上げた。今度は確たる『殺意』がこめられている。
「・・・・・?」
さすがに気づいたらしく、しかし声は出さずに視線で疑問を返してくる。
いわく「何のようだ?」
翡翠は黙って、裕二を殴り飛ばそうとした。しかし、ひょいとかわされる。
「・・・・」
翡翠は黙って、自分よりやや背の高い裕二を見上げた。もう殺意というか、そんなレベルでは押さえられないような目になっている。
「・・・わかったよ」
裕二はあきらめるように、ため息をついた。
「説明してくれるんでしょーね?」
「仕事だ」
「何のですか?」
「行けばわかる」
「どこに?」
「行けばがっ!」
不意をついて放った翡翠のケリは、見事に裕二の腹に命中した。
「・・・」
無言で床に伏し、悶絶する裕二。クリティカルのようだ。
「・・・・」
わからないであろう読者の為に説明しよう。とゆーか服の描写を見て欲しい。
翡翠は何故か純白のドレスを着ていた。ご丁寧に冠、そしてハイヒールまで履いている。
大して裕二は、似合ってるのか似合ってないのかわからないが、とにかくもタキシードを着ていた。
ドレスとタキシード。
それから思いつくシチュエーションは結構限られてくる。
「ちゃんとしてください!」
「わ・・・わかったから、な?」
ピクピクと痙攣しながら裕二は立ち上がった。
「・・・競売だよ」
「競売?」
「そう。裏のな。このカードにざっと一千億はいってるから「いっせんおく!!?」・・・」
裕二はむしろ、翡翠の大声に驚いたようだ。目を一瞬丸くして、そしてため息をついた。
「そうだ。そりゃ一般人には途方もつかないよーな金額だが・・・」
「だ、だって・・・いっせん・・・『おく』ですよ?」
「それでも足りるかわかんないんだよ。今日落とす奴は」
「・・・って。そんなのがなんで私たちのグループに?」
「・・・わかってないようだが、俺たちってのは結構高い位置にいるんだ。『MURDER』ってのはな。秀吾が居たときはもっと高かったんだぜ?」
肩をすくめて、裕二。翡翠は口をあんぐりと開けたまま。
ドアが開くまで、閉じることはなかった。
「ところで・・・何で僕があそこにいるってわかったんです?」
真はもっともな疑問を口にした。自分の居場所は知らせてないし、『闇葛』からの指令を受け取ったのも木賊たち−−−木賊−−−が来る一瞬ほど前だった。
「そりゃ、私たちも組織の人間だから、ね。居場所ぐらい教えてくれるわよ」
「あれ? でも『あなた達は』−−−」
真が言うか言わずか。そんな事はどうでも良いとして、とにかく真が言い終わる前に、部屋の明かりがふっ・・・と消えた。
「!?」
思わず−−−反射的といっておく−−−真は腰のナイフに手をかける。左右一本ずつ。
「真君! 後ろ!」
梓の声に反応して、真は左手を振った。
そして気づく。後ろ−−−?
一瞬の思考の後、体を硬直させた。
瞬間、部屋の明かりがつく。全てが映し出され、そして疑問は増えた。
「木賊・・・さん?」
自分の首筋に木賊の絵筆の柄尻が。そして自分のナイフ『ルナイクリプス』が木賊の心臓の上に。
それぞれ重なっていた。
「ごうかく♪」
「は?」
「組織に疑問を感じていた真君。あなたは今より『イレギュラー』よ」
「・・・は?」
「なんでも仕事をこなしてきた、だけど疑問を拭いきれなかった、その疑問は『イレギュラー』になることで解消されるわ」
「・・・・・・は?」
「『魂入霊歌』。『闇葛』。この二つの組織がやってきた今までの活動は、ただひとつの目的にたどり着くの」
「・・・・」
「それは−−−」
「・・・知る者が現れたか」
「章裕・・・? まさか梓を『イレギュラー』には」
「イレギュラーは『イレギュラー』だ。本来ならば巻き込まれなかったはずの真は『イレギュラー』だよ」
「ならば・・・翡翠。そしてあの三人。更に・・・」
「木賊。本当なら今頃は、絵で賞の一つでも取ってただろうに」
「家を捨てて来た。何故だ?」
「彼女の『イレギュラー』たる理由だよ。『イレギュラー』はなにかしら捨てている。一見全てを持っていそうな・・・翡翠も例外ではない」
「イレギュラー・・・この世界に存在するはずのない・・・『歪み』とともに生じ・・・そして『歪み』とともに消える者たち」
「イレギュラー・・・この世界の記憶を持ち・・・しかしこの世界の住人ではない・・・だがこの世界を『救う』者たち・・・イレギュラー」
「イレギュラー・・・こり世界に歴史を残すはずの・・・しかし残せない・・・だが確かに『存在』した者たち・・・」
「「「その者たちの想いが如何なる物だとしても!」」」
あとがき
はい三つ目。会長(誤字)だなぁ。あ、マッハ(爆)。
・・・あれ? ストーリー全部できたはずなのに、なんで競売とかゆー身に覚えのない物が?
・・・無駄な仕事だったか(爆)。
キーボードの調子がおかしい・・・。のでここらへんで。
・・・これあとがきとはいわんな(死)。
ろう・ふぁみりあの勝手な戯言〜
・・・にやりんぐ。
いいや、なんか知ってる御方の名前が出てると、ちょっとにやらいず(日本語へんです)
しかしここらへんで、色々名前が出てきましたね〜
そして、このタイトルにもある「イレギュラー」!
さてさて、これからどのような展開を魅せてくれるのか、楽しみです〜
・・・ところで、参加者ってまだ募集中なんですか?
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STORY
4「俺が知りたいのは−−−」