「まあ組むのは別に良いが何か理由でもあるのか?」

女のいきなりな言葉に俺はたじろく。

「おもしろそうじゃない。最近世の中がつまらないなあなんて思ってたんだ。たまには金にとらわれないでトレジャーハンティングしてみるのもいいかなあなんて思って」

「まあ一理あるな」

と頷く。
だが俺は心底驚いている。まさか俺以外にもこんな金にもならないようなことに興味を持つ者がいるとは夢にも思わなかった。
この世の中金と名誉、そして権力が最も崇められている。そしてそれに恐ろしいまで執着するものも数多くいる。まああの商人も珍しいと言っていたようにそれ以外のことに労力を費やすなど常識からすればかなり外れた行為と言えよう。
俺が考え込んでいたためしばらく二人の間に沈黙が流れていたが俺がふと口を開く。

「ところで何か情報でもあるのか?」

「ええ、一応はね」

その言葉を聞いて俺は目を輝かせる。
気がついたらその女に抱きついていた。いきなりの行為に彼女の方は硬直してしばらくの間口をあんぐりと開けたままだった。しばらくして俺は自分のした行為の愚かさに気がつきすぐさま離れた。彼女の方は呆れ返っている様子だ。

それに周りから見たら不気味に見えたかもしれない。

一人の女にすがりつく男ということで・・・・・・。

「なら決定だな。分け前はないがいいか?」

「もちろん。お互い興味本位でやってることだしね」

「おし、交渉成立。でどうすればいいんだ?」

「そうね。例の滅亡した王国っていうのに封印された教会ってのがあったでしょ?そのどこかにそれに関する資料があるって話」

俺もそれについては聞いたことがある。というか遠くから見たこともある。

何せ建国以来まったく使われていない教会なんだそうだ。今では教会と言うよりはお化け屋敷と言う方が正しいのかもしれない。
俺も幼い頃何度か親に連れて行って貰ったことはあったが何故か不気味な感じがしてその教会に近づくことが出来なかった。それはどうやら俺の両親も同じようであった。何かが俺を近づけさせなかったのだろう。

まあでも今回は一刻を争う。それに賭けてみるしかないだろう。

「なるほど。早速出発だ。マスター、ありがとう」

金を置いて席を立ち、歩きだそうとしたが酔いが回っていたのだろうか、目元がくらくらする。
酔いが回ったのだろうか?

「くっ・・・・・」

俺は床に倒れ込んでそのまま眠り込んでしまったようだ・・・・・・。
















ANGEL SEARCHER

第二回 男らしくないと言われても・・・

















結局出発は俺が酔いのために寝込んだ為数日後の朝となった。

「まったくウイスキーの飲み過ぎで二日酔い?バッカじゃない」

早速言いたいように言われている。

彼女の名前、ライン・ケートナーと言う。各地で俺と同じようにトレジャーハンティングをして金を稼いでいるそうだ。

まあトレジャーハンターという職業はこの世界ではあまりいい職業とはされていない。
何故なら各地の遺跡を発掘するのはいいがその中の物を持ち出し売りさばいて金にしていることに一部の学者などが猛反発しているからである。
それに賛同する連中が多くあり、店によってはそういうものを買うことをボイコットしていることもある。ひどい所だと殺しに来ることさえある。何せ命がけな職業なのである。

まあそんなことは言っても貴族など金のある奴はそういう物には目がなく、結構高額な値段で売りさばくことがしばしばである。
それがトレジャーハンターを今まで数多く生んできた理由でもあろう。だが最近ではそれだけの余裕もなくなってきたようだ。親友の同業者達も苦しんでいる。

中には転職した者も数多くいる。

「さっ、出かけるわよ」

ラインはそう言うととっとと歩き出す。

「ちょっと待ってくれ。速すぎる・・・・」

数日経ったのだがまだ二日酔いである。まあ数日前は動くことさえ出来なかったからそれに比べればまだましであろう。
だが二日酔いの残る体では歩くこともままならないようで、足下がおぼつかない。
さらに辺りは炎天下の中である。直射日光ががんがんと容赦なく俺に照りつけてくる。そんなんだから意識も朦朧としてきてたまったものではない。

まったく何で二日酔いになるのか、酒に弱い体質を恨みたくなる。

「まったく情けないねえ。それでも男なの?」

「男だよ。一応」

「まったく・・・・」

彼女は呆れ返った様子だ。俺の荷物をいくつかぶんどるとまた歩き始める。

「これで少しは楽でしょ?まったくこんなんでよくトレジャーハンターやってこれたね?」

「運が良かったと思っておいてくれ・・・」

喋ることもままならないな・・・・。ただ苦い表情を表に浮かべるだけである。

「それにしても何でトレジャーハンターなんてなろうと思ったの?」

「簡単さ。ただ遺跡をあさるのが好きなだけ」

「ふーん。珍しいわね。男なんてみんな傭兵になるもんだと思っていたけど」

彼女は俺の答えが意外だったのだろうか、不思議そうな顔をする。
まあそれが普通であろう。俺のような奴は異端者かそれとも世の中のはみ出し者なのだからな。

しばらく何を言い返そうかと考えていたがふと頭の中でいい言葉が思いつき口にする。

「何も人はみんな同じ道を歩む訳じゃないさ。それぞれ自分の好きな道を選択することができる。そうじゃないのか?」

「まあそうだけどね」

彼女は意外なことを聞かされたような顔をしている。まあ言った本人もよくこんなことが言えたものだな一人関心しているところだが。

「私は・・・・」

彼女がそう言いかけた時、ふと辺りに只ならぬ殺気を感じた。

「何か来るな・・・・」

携帯していたタガーを取り出す。タガーとはいってもただのタガーではない。猛毒を塗り込んだやつである。
元々武術のたしなみのない俺にとっては出来ることなら逃げたい。

だが気配から察するに相手は十人近く、それも丁寧にも俺達二人を囲むように待ち伏せている。

「どうするの?」

ラインが俺の方を振り向く。

「これを使うさ」

そう言って腰のバックからおもむろに二種類の玉らしきものを取り出した。それを見たラインは不適な笑顔を浮かべる。それに対して不適な笑顔を返す。どうやら考えていることは伝わったようだ。

そうこうしているうちに相手が姿を現してきた。

「よう二人さん。こういうときにどうするかぐらいわかるよな?」

見るからに巨人という感じの男が声をかけてくる。話し方は友好的だがその影で意味することはそれとはまったく逆のものである。目つきからも彼の激しい気性を察することが出来る。

「さて。選択肢は全部で三つだ。その一、荷物を全部ここに置いていく。その二、姉ちゃんだけここに置いていく。その三、俺達の奴隷になるか殺される。さあどれを選ぶ?まあ全部俺達としては選んで欲しいんだがな」

本当に言い方自体が優しいのだが男から発せられるものは只ならぬものである。普通の者なら必ずその雰囲気に飲み込まれていくことだろう。俺は震える体を押さえながら前に歩み出る。はっきり言って立っているのがやっとというところだ。

「第四の選択肢だ」

弱々しい声でそう言うと咄嗟に頭にしていたゴーグルをかけ、取り出して置いた二種類の玉を地面に投げつけた。

その瞬間辺りを閃光が覆い尽くし第二波として煙が辺りを覆っていく。

「ちなみにこの煙、吸い続けると体に毒だから」

俺はそう言い捨てると男達の間から抜け出しそのまま走り去っていった。









「まったく本当に男なの?」

後を追ってきたラインは相当呆れている様子だ。まあそれも仕方がないが・・・・・。

「男ってのは普通逃げないで真っ向から叩き伏せるもんじゃないの?それを何もせずにのこのこと逃げ出すなんて・・・・・」

ラインはため息までつく。何故そこまで言われなくてはならないんだと心の奥底では腹を立てていたがここで感情を表に出しても何の得もない。

「俺はそんな強い人間じゃあない。何も俺は虚構を張ろうなどとは思っていない。自分の実力を的確に判断するのも実力のうちだ。今の行動が無難だと思うがな・・・」

「まあそう言うとそれまでだね」

ラインはヤレヤレと顔を横に振る。彼女の中での俺のイメージというものは相当に悪くなっているはずだ。

「それでどうするの?まだまだ先よ?」

「でも急がないといけないからな。その教会とやらに急いで行こう」

「まあそんなところだね」

彼女はそう言うとまた歩き出す。俺も歩きだそうとしたがふと足下がふらつく。

「ちょっと待ってくれ・・・・」

俺はふとラインのことを引き留める。

「どうしたの?」

ラインが不思議そうな視線を俺に送る。

「二日酔いが・・・・」

彼女はそれを聞いて思いっきり脱力していた。

「本当に頼りない男だねえ・・・」






あとがき

やっぱりあとがきを書くことにしました。何となく・・・・・。

この物語は時間進行的にはシュンさんの作品と同じです。シュンさんの物語の一場面が違う形で出てくるということも・・・・・。(それはただ作者が手抜きしたいだけという思惑があるのかもしれないが詳しいことは定かではない・・・・・)

それと物語は基本的に主人公が見た主観的な光景が中心となっていきます。そういうことで基本的に本人の思ったことや感じたことが多く入ってくると思います。そこのところをはご了承を・・・・・。

実はまだどういう風に話を持っていこうかということは決めてません。でも大まかなことは決まってるんでそれに沿って書いていきます。まああまり期待しないで下さい。まだまだ未熟なんで・・・・・・。それと誤字脱字がものすごく多いと思います。そこはご了承を・・・・。(おいおい)




解説

 <ジャルの武器・技術>

 基本的にはタガーが彼の主な武器である。刃には猛毒を塗ってあり、人間の呼吸系の機能を停止させ窒息死させるというものである。これは本人にとっても危険なことであり、彼は基本的に厚手の皮手袋常時装着している。
 またトレジャーハンターという職業柄様々な小道具を携帯している。基本的な鍵開け用の針金から煙玉、閃光弾などありとあらゆるものを携帯している。いつもはそれを全部腰のバックの中に入れている。

それと同時に彼は調合の技術も身につけている。薬を作ることもあるが、基本的には解毒剤や人を殺すための猛毒が彼の得意分野である。


INDEX

→NEXT STORY
第三回・過去を暴くとは事実を知ること