パニック!
シード編・第四章
「イーグ=ファルコム」
M【最後の願い】
彼女と精霊は最初から一緒だった。
彼女が物心ついたときに精霊は生まれた。だから、彼女にとっては最初からずっと一緒だった。
彼女と精霊には出会いがなかった。
最初から一緒だったから出会いはなかった。
風の吹く草原。
星が煌めく夜空。
闇と風。それから草の臭いと星の瞬きがある場所と時間。
彼女は精霊と出会った。
彼女と精霊はすでに一緒に居たのだけど、彼女と精霊はまだ出会っていなかったから。
出会いに必要なのは名前。それから握手。
精霊には名前がなかった。
だから彼女が名前を作った。
精霊には握手できる手がなかった。
だけど母が我が子を抱く腕のように。
風が彼女を優しく、優しく抱いた。
そうして、彼女と精霊は出会った。
「なんだ、ここ?」
「ここ・・・は―――私・・・見覚えが、ある・・・・・?」
俺のナイフがシルファの身体を貫いた一瞬後。
俺たちは、夜の草原にいた。俺の傍らには、フロアが佇んでいる。
その瞳は周囲をぼんやりと移ろい見つめ、俺のコトなど目に写って居ないようだった。
「シルファ」
―――!
不意に幼い子供の声。俺は反射的に振りかえった。一拍遅れ、フロアも同じ方向を向くのが気配で解かる。
俺の目の前には、一人の少女。それと・・・・
「シルファ・・・?」
少女の前でぼんやりと浮かんでいるのは紛れもなくシルファだった。
「・・・って、さっき俺が虚空殺で滅ぼしたはずなのに―――?」
「違うわよ」
声に振り返る、と、フロアが可笑しそうに―――どこか寂しそうに俺を見ていた。
「ここはね、シルファの記憶―――その一番最初の記憶」
「最初の記憶?」
「私が、シルファと “出会った” 時の記憶」
そう言って、フロアは少女の方へと目を向けた。
俺も再び少女とシルファの方を見る。
「初めましてシルファ。私はフロア」
少女はシルファを見上げてそう言った。
・・・・フロア、だって? あの女の子が?
―――いや、そうか。これはシルファの記憶だって言ったか。
シルファとフロアが出会った時の―――だから、フロアがあんなに幼い・・・のか・・・
「しる・・・ふぁ・・・? ふ・・・ろあ・・・・?」
拙い響き。
シルファは薄く微笑を浮かべ、不思議そうな口調で二つの名前を繰り返す。少女―――フロアは嬉しそうに頷いて、
「そう。シルファは貴方の名前。フロアは私の名前・・・わかる?」
「しるふぁ・・・わたしのなまえ・・・」
「そう」
一人と精霊は頷きあう。
そして、少女フロアはシルファに向かって手を伸ばす。
「それじゃ、あくしゅ」
フロアの手がシルファの手に伸びて―――空を掴む。
くすり、と俺の隣でフロアが笑った。
「風には実体がない・・・まして、まだ生まれたばかりで “概念” として定着していない精霊だもの。精霊使いだからって触れられるはずがないのにね」
フロアの言葉を聞きながら、俺は少女が何度もシルファの手に飛びついて―――掴めないことを繰り返すのを見守っていた。
やがて。
ふっ・・・! と、シルファの身体が掻き消えたと思うと。
「わあ・・・!」
少女フロアが歓声をあげた。
一瞬、なにがどうしたのか良く解らなかったが、すぐにわかった。
「・・・浮いた?」
少女フロアの身体が宙に浮いている。
「風・・・なのかな」
「―――ああ」
俺の隣でフロアが声を上げる。
なにか、思い出したように。それから、
「イーグには見せたことがなかったかしら? シルファの力で私が飛ぶところを」
「見たことなかったな」
「じゃあ、一緒に飛んだことも無いか―――それは残念だね」
残念なのか?
と、そんな俺の思考を読んだかのように、フロアは続ける。
「空を飛ぶってこと。気持ちいいんだからね。シードなんて、すごい歓声を上げてはしゃいでたし」
それは悲鳴じゃないのか?
思ったが、口には出さない。
俺は、風のゆりかごに抱かれるようにして宙を浮かぶ少女を見守った。ふと、呟く。
「フロア」
「なに?」
「なんか、さっきと随分様子が違うな?」
「そうね」
「なんでだ?」
「なんでかしらね」
俺はフロアを振りかえった。
手の中のナイフを、フロアに突き付けて。
だけど、フロアは怯えもせず、ただ俺の顔を見つめている。哀しそうに。
「お前を殺す」
「ごめんね」
「・・・今更、謝っても・・・ッ」
「ごめんね、シルファ・・・」
へ?
思わず俺はきょとんとする。
と、フロアの両目から涙が流れた。
それを拭いもせず、フロアは微動だにしない。
「ごめんね。やっと気付いた。やっと思い出せた。―――今までずっと、ずっと忘れててごめんなさい。ごめん―――」
気付いた。
フロアは俺を見ているんじゃない。俺の後ろの―――少女のフロアと戯れる、シルファを見ていた。
「アインダーよりも、シードよりも―――なによりも! あなたは私のそばに居てくれていたのに。私は一人じゃなかったのに・・・! 私は、それが当たり前だと―――だからわかんなくて・・・ッ!」
「フロア・・・お前」
「ねえ、イーグ。私は・・・どうしてまだ在るのかな?」
フロアの視線が、シルファから俺に移る。
・・・って、聞かれてもなぁ・・・?
「心の拠り所だったアインダーが死んで、一番大切だった友達も消えた―――・・・それなのに、どうして、私は」
「・・・死にたい、か?」
俺の問いにフロアは一瞬だけびくっ、と震え。そして。
「・・・・・・・」
こくん、と無言で1度だけ頷く。
俺は、ナイフを握りなおす。
フロアは静かに瞳を閉じて・・・口を開く。
「汝は風の精霊―――世界に在らず人々の幻想の中にさまよう者
地上で最も弱き意思にして人の意思なくして存在することのできない亡霊よ・・・幻よ・・・
フロア=ラインフィーの名を持つヒトによって見出された喜びよ」
どこかで聞いたことの在る様な気がする歌。確か。
「汝を知る代わりに我は力を求めるだろう
汝は意思を得る代わりに我が自由を縛るだろう
汝は自由を失う代わりに我と共に在り続けるだろう」「その歌・・・」
確か、ミストが歌った・・・
「これはね、私がシルファと “出会う” 前に歌った歌。私がシルファを見つけた時の歌―――精霊使いだった私の母さんが、初めて精霊と出会った時に歌った歌をアレンジしたものなの」
「・・・・・」
「これはね。私たちは、ずっと一緒だよって約束だった。私とシルファは離れないって契約だった。絶対に忘れないって盟約だった―――なのに、私がやぶってしまった」
「・・・懺悔のつもりならやめてくれ。俺は神父じゃない」
これ以上、フロアの言葉を聞いてると殺せなくなりそうだった。
俺の知っていた―――俺の大好きだったフロアの声を聞いていると。
「苦しませずに殺してやる」
「お願い・・・」
俺はナイフをフロアの急所に向けて―――
風が、吹いた。
「我は汝。
汝は我。
精霊よ。風の紡ぎ手よ。世界で最も希薄で脆弱な意思よ」
―――何処かで聞いたことの在る様な歌が響く。
それは、俺の後ろから。
「これは契約
我と汝が共に在り続けるためのもの」
後ろには、少女が一人、歌いながらこちらに歩いて来る。
背後に風の精霊を従えて。
「これは盟約
我の喜びを汝の楽しみとし、汝の心を我の笑いとするためのもの」
その時、やっと俺は気づいた。これは。
「これは約束
我と汝が出会えた始まりの証。他愛ない童子の指切り遊び―――――――」
これは。この歌は・・・
「この歌・・・たしかミストが―――」
そう。
ミストが歌った歌。
フロアがさっき口ずさんだ歌の続き。少女は、ゆっくりと俺の横を通りすぎると、フロアの前にたった。
「思い出してくれた? それなら、まだ大丈夫だよ・・・」
「あなた・・・は?」
フロアの問いに、少女は笑って、自分とフロアを指差した。
「私はあなた。あなたが忘れてしまった私」
「わたし・・・?」
「そう。フロア、あなたが忘れてしまったのはシルファとの約束だけじゃない。 “私” も―――あなた自身も忘れてしまってた」
「わたし・・・は」
「でも、思い出せたのなら大丈夫。まだ、間に合うから」
そう言って、少女は後ろに付き従っている精霊に「ね?」と呼びかける。
精霊は、コクン、と頷くと、少女の前に出てフロアを見上げた。
と、ハッとしたようにフロアの目が開かれる。
「シルファ―――もしかして、あなたは」
「めいやく、なのです。やくそくとけいやくなのです。それがあるなら―――わたしは―――」
「シルファ!」
精霊の言葉が終わらない内に、フロアはシルファの身体を泣きながら抱きしめる。しっかりと。
先ほど触れられなかった少女の様にではなく、しっかりと二人は抱きしめあっていた。
その傍らで、少女が俺を振り返る。
「驚いているでしょ? どうして “虚空殺” で滅ぼしたはずの精霊が生きているのか」
「―――概念、か」
驚いたのは少女だった。
「良くわかったね! ―――そうだよ。精霊は精霊使いが生み出した “在る” という “概念” に過ぎない。だから」
「精霊使いを滅ぼさない限り精霊は滅ばない―――いや、滅んだとしても精霊使いがその概念を思い出せば―――」
「何度だって復活する。逆を言えば、精霊使いが滅べば精霊も滅んでしまう。―――よくわかってるじゃない、シード君」
そう言って少女は俺に向かってウィンクする。
俺は苦笑して、
「お前もいい加減、しつこいな―――ミスト」
少女―――ミストは俺に向かって笑い返した。
『なにが起きた・・・?』
気がつくと―――
そこは、元の洞窟の中だった。
シード=アルロードが戸惑ったように俺を見る―――見られても、俺は全部理解してるワケじゃないんだが・・・けれど。
俺はフロアを見た。
釣られたようにシードもフロアを見る。
フロアはミストの傍らでぼう・・・っと呆けたように立っていたが、やがてその焦点定まらぬ瞳に光が宿った。
「あ・・・・・!」
『フロア・・・?』
フロアの声。
その響きになにかを感じ取ったのか、シード=アルロードがフロアに向かって呼びかける。その声にぴくっと震え、フロアはシード=アルロードの姿を見た。
「シード・・・なの?」
『フロア・・・なのか?』
互いに互いの顔を見合い、それから。
シードは俺を振り返る。
『イーグ・・・お前が・・・?』
「違うさ」
俺は横目でミストを見る。
それに気付いたミストはきょとんとしただけだった。―――俺はフロアを殺そうとしただけだ。
フロアを助けたのは “アイツ” と、シルファ。それから―――
「シード、お前だ」
『皮肉だとしたら、殴るぞ』
「本気さ。お前がいなけりゃフロアを助けることはできなかった」
事実、だった。
シルファとシードの二人が本気で―――真剣にフロアのことを想っていたからこそ、フロアはそれに気付くことができた。
そして、それに気付かせたのは俺じゃない。
「シード・・・ごめんね―――謝って許してもらえることじゃないけど―――でも、ごめん」
『いいんだ、フロア。お前が気にするコトじゃない―――俺が勝手にお前に付きまとっただけだ』
・・・
シード、お前がそうやってフロアのことを甘やかすから、いけないんじゃないか?
―――そうは思ったが、言わないでおいてやる。
「さて」
俺はナイフを逆手に持ち、シードの方を向く。
「感動の再会も果たしたことだし―――殺しあおうか!」
「え?」とミストの疑問の声が耳に届いた。
けど無視。シードも俺の方を見て嬉しそうに―――どこか、申し訳無さそうに―――俺を睨みつける。
『ああ・・・』
「ちょっと!」
ミストが悲鳴のような声をあげた。
無視―――しようとした瞬間、ナイフが俺の頭をかすめて飛ぶ。
「なにしやがる! あぶねーだろ!」
「あんたたちが意味もなく危ないコトしようとするからでしょうが!」
「意味はある!」
「殺し合いに意味なんてない! たとえ、あったとしても・・・そんなの私は認めない!」
・・・ミストのヤツかなり怒ってるな・・・
俺が投げたナイフが一本だったから良かったものの、もう一本あったら今度は投げずに斬りかかってきそうな勢いだ。
「どうして!? フロアさんも戻ってきたじゃない! これ以上、憎みあって・・・殺し合う理由なんてないのに・・・!」
「黙れよミスト。これは・・・お前には関係な―――」
『悪いな嬢ちゃん。これは、約束なんだ』
俺の言葉を遮って、シードが言う。
それは、さっきまでの荒荒しい口調ではなく、柔らかい・・・俺が知ってる―――いつもの、シードの声。
『約束なんだ。―――安心しな、もう憎みあって殺し合うわけじゃない』
「・・・ふざけないで。憎みあってるんじゃなければ、それこそ殺し合う必要なんて―――」
ミストの声が途切れる。
ふと見れば、ミストは必死でなにか叫んでいるようだった―――が、なにも聞こえない。
「声ってね、空気を震わせて響くのよ。だから風に命じて空気を響かせないようにしてあげれば・・・・・」
フロアがミストを一瞥し、それから俺たちに笑いかける。―――哀しそうに。
ありがとな、フロア。
心の中で礼を言う。と、そんな俺の雰囲気に気付いたのか、フロアは俺を見つめて、
「イーグが私の記憶を覗いた時に、私もイーグの記憶を見てしまったのよ。―――あの赤い約束を・・・」
そうか・・・
確かに俺は、フロアの記憶の中で、忘れていた俺自身の記憶―――あの、夕焼けの赤い光の中での約束を見ていた。
だからこそ、俺はシードを・・・
「シード・・・お前を、殺す」
『あの時の台詞・・・そっくりそのまま返してやろうか?』
シードがにやり、と笑った。
―――シードなんかに殺されるわけないだろ?
あの時、俺はそう言った・・・ことを思い出した。
「いいや」
俺は首を横に振る。
「今の俺はシード=ラインフィーじゃない―――イーグ=ファルコムだ!」
互角。
俺とシードは互角の戦いを繰り広げていた。
いや、正確には互いに決定打に欠けているに過ぎない。
シードの攻撃を、俺は天空八命星で完璧に回避し、逆に俺の必殺の虚空殺は当たっても通用しない。
『ちっ―――捉えられねェか!?』
「万能の瞬殺とやらはどうしたよ、シード!」
『ンなことまで知ってるのか!? けどな!』
シードの空気を砕くような蹴りを、ナイフで受け、それと同時に後ろに飛んで衝撃力を逃がす。
着地した瞬間に突進してきたシードの攻撃を、天空八命星で回避して、俺とシードは距離を置いて睨み合った。
『・・・この身体、魔族の血肉とやらに侵されていてな―――もう殆ど人間じゃないんだ』
「みりゃわかるさ」
『自分で上手く身体をコントロールできなくなってきてる―――もう、力任せに腕や脚をブン回すことしかできねえんだよ! それに』
不意に、シードの瞳が真っ赤―――今でも真っ赤だったが、それよりなお深く濃く緋色に染まる。
『ぐ・・・ガアアアアアアアッ!』
「シード!?」
『黙れ・・・よ・・・この・・・野郎ッ!』
シードはなにかを必死で抑えつけているように、押し殺した声で怒鳴りつける。
『が・・・ふ・・・見ての・・・通りだ―――その魔族の意識が、俺の心まで侵しはじめてる・・・』
「・・・・・・」
『俺が・・・俺でいられるのも後わずかだ・・・だから!』
「解かってる」
俺は一言呟いて、ナイフを水平に自分の目線の高さに持ち上げた。
その俺の姿を見て、シードは笑った。
『悪いな』
「約束だからな」
赤い夕日の約束。
―――安心しろ。お前が―――お前じゃなくなった時、俺が殺してやる。
今まで、忘れていた約束。
それを忘れていたのは、大丈夫だと思ったから。
シードがいる限り、俺は、ずっと俺のままで居られると、あの時、直感したから。
天空八命星の殺意に飲み込まれることなく、イーグ=ファルコムとして居られると。だから。
フロアが、フロアでなくなるのなら。
シードが、シードでなくなるのなら。
俺の大事な・・・大好きな人達が、自分を無くしてしまうのなら。俺は―――
「いくぞ・・・シード」
『ああ。来い!』
天空八命星。
それは技ではなく、ましてや暗殺術などではない。
それは終焉。あらゆるもの全てにやがて訪れる終焉。
それは殺意。全てを終わらせてしまう殺意。
―――駆ける。
シードに向かって。
手にしたナイフに、俺の全てを集中し、ただ疾走。
それは、かつてあった能力者たちの総称。
終焉を現在に具現させる能力者たちの総称にして、その能力の名。
シードの腕が俺に向かって振るわれる。
無視。
合い撃ちだろうと構わない。俺は、ナイフを、俺の全てをシードに叩き込む―――ただそれだけのために走る。
今を終わりにする力。
終わりを具現させる力。
それは、つまり。
シードの腕が俺に当たる寸前に、止まる。
にやり、とシードが笑うのがみえた。
腕の振りだけで巻き起こった風が、俺を殴るが吹き飛ばされず、身体を前に倒して―――
終わりという “概念” を生み出す力!
「うおおおおおおおおっ!」
『ぐ・・・』
ぎゃりっ。
ナイフがシードの剛毛を凪いで、俺はそのままシードの横を駆けぬけた!
瞬間、足と足がもつれて、盛大にすっ転ぶ!
「・・・ってー・・・」
痛みに耐えながら立ちあがる。と。
『どうしたイーグ?』
見れば、シードは無傷で俺の方を見ている。
・・・ように見えた。
『お前の力は俺に通用しない・・・そうだろ?』
「・・・概念、だよ」
『は?』
「シード、お前には精霊使いの素質があるかもしれない―――少なくとも、フロアはそう感じた」
フロアの記憶で、シルファが生み出した風の “揺らぎ” を見切ってた。
それに、フロア=シルファがシードに怯えていたのは、シードが精霊使いとして、精霊への影響力をもっていたからじゃないだろうか。
だから。
「・・・これは俺の仮説だけどな、天空八命星・虚空殺っていうのは終わりって “概念” を生み出す力なんだと思う―――正確には、やがて来る ”終わり” を現在に持ってくる・・・そんな所か?」
『・・・それが?』
「魔族ってのは人間よりも強いんだよな? 強いってことは生命力が高いってことだ―――死ににくいってこと。だから、終わりという概念も薄い」
結論、魔族には虚空殺が効きにくい。
以前、アバリチアでカオスとかいう魔族に天空八命星が通用しなかったのも、そういう理由だ。
かといって、その下っ端の―――ラセツ、とかいったか? にはちゃんと効いたから、全く無効ってわけでもないと思うけど。
「シード、お前には精霊使いの素養がある。・・・潜在的に、 “概念” に対する免疫がある―――そして、その魔族の身体・・・・・だから、お前に虚空殺は効きにくい」
『つまり、通用しないってことだな』
「・・・効きにくい、って言っただけだ。だから―――」
『・・・う!?』
がく、とシードの膝が折れる―――いいや。
シードの腹部から右足にかけてが、塵と消えていた。
「だから、お前の概念を上回る概念をぶつけてやれば―――ご覧の通り」
『ちっ・・・やるじゃねぇか・・・』
に、とシードは笑った。
・・・失敗した。
本当は、この一撃で終わらせるはずだった。でも。シードが、俺への一撃を止めた瞬間―――見てしまったから。
その表情を。笑みを。
だから、俺の必殺の一撃が・・・にぶってしまった。
「次で、終わりだ」
シードはもう動けない。
それに、さっきの一撃で、シードの身体はボロボロのはずだ。
あと一撃、虚空殺を使えば、今度こそ完全に―――
「シード君、駄目ぇっ!」
何故か、声を封じられているはずのミストの声が聞こえた。
俺は、それを振りきって走る!天空八命星―――
無を、終わりを、具現させる最強の概念。
自分の意識を無にし、存在という概念を一時的に消失させ、周囲の概念を察知する。
―――!
目の前を、シードを庇うようにしてミストが立ちはだかった。
が、無視。
ミストには俺の姿を捉えてはいないはずだ。
俺は、ミストの脇を貫く様に、虚空殺をシードに向けて――――
その瞬間。
ミストが半歩、横に動いた。
気付いた時には止まらない―――止めようとしても、それは止まるよりも早く、ミストの身体を貫いて居た。
仮消失していた俺の概念が元に戻る。
その瞬間、周囲が、五感として知覚された。
目の前に、俺のナイフで貫かれたミストの姿。
「え―――?」
なにが、なんだか、わからない。
シードを狙ったはずの一撃は、何故かミストを貫いていて・・・・・!
「ミス・・・ト・・・?」
俺の呼び声に、ミストはにっ、と笑って。
口を開きかけて。
それから、何かを言おうとして。
塵になって、消えた―――
「そんな・・・・・・? なん・・・・・・でだ?」
『ぐ・・・』
俺は、ただ呆然としていた。
呆然と、なにも見えていなかった。
「なんで・・・?」
『畜生!』
がつん、と石床をシードが叩いた。
『いつもこうだ! どうしてこうなる!? ・・・どうしてなんだよ!』
「シード・・・」
「ごめん・・・イーグ」
振り返ると、フロアがうなだれて立っていた。
「止められなかった・・・あの子・・・止められなかった」
「フロア・・・」
『殺せ・・・』
シードが押し殺した声で唸る。
『俺を殺してくれ・・・イーグ・・・俺は・・・』
「悪い」
もう、駄目だった。
俺には、もう・・・
「俺は、もう・・・殺せない・・・絶対に、誰も・・・!」
何故なら、俺はもうシード=ラインフィーだから・・・・・
『ちくしょおおおおおおおおおおおっ!』
シードのやり場のない怒りの雄叫びがあたりの空気を震わす―――
「だああああっ!?」
ん?
唐突に、悲鳴が―――上の方から聞こえて、俺は天井を振り仰いだ。
・・・瞬間、見覚えのある顔がドアップで迫り、次の瞬間には―――
がつん!
落ちてきた人影が、シード=アルロードに直撃する。
「ぐあ・・・・!?」
落ちて来た奴と一緒になってシード=アルロードはその場に倒れて―――
そのまま起きあがって来ない、気絶してしまったのかもしれない。
「く・・・あの女・・・滅茶苦茶しやがって・・・・・・!」
聞き覚えのある声。
見れば、シード=アルロードの横で痛そうに頭を抱えているセイの姿が・・・って、セイ!?
「お前、なんで今頃・・・!」
「あぁ・・? シード!? なにやってんだこんな所で!?」
「そりゃこっちの台詞だ! お前いままでなにやってたんだ!?」
「もの凄くバケモノみたいな女と死闘を繰り広げてた」
死闘?
そーいや、セイの身体、あちこちに傷を負っているようだが・・・?
「バケモノみたいな女・・・っていうのは褒め言葉と受けとっていいのかしら?」
「げ」
不意に聞こえてきた女性の声に、セイがうめく。
俺は嘆息すると、その声の主を振り仰いだ。
そこにはいつの間に現れたのか、俺と同じ漆黒の髪を持つ女性が一人。
見た感じ、年の頃は俺やミストと同じ位だろうか。と、同時にどこか落ちつきのある・・・酸いも甘いも噛み分けたような、熟された雰囲気を持っている。―――本当は20を過ぎたあたりのはずだけど。
「久し振りだな・・・姉さん」
「・・・あら? あんまり驚いてないみたいね」
俺のただ一人の姉―――リウラ=ファルコム。
旅装束に身を纏った、大陸最強の殺人者は微笑を浮かべてたたずんでいた。
「・・・最初、この場所に来た時に、この場所に敷き詰められている石の記憶を読んだ。この場所は、あんたが魔法で仕立てた場所だ」
「そんな芸当もできるようになったの?」
姉さんは大きく手を広げて、わざとらしく息を吐いた。
「ああ・・・私の可愛い弟が、知らないところで成長していく・・・・・」
「全部、あんたが仕組んだことなんだな・・・?」
「仕組んだ、なんて人聞きの悪い。不肖の弟子の最後の望みを叶えようとしてあげただけじゃない」
と、姉さんはシード=アルロードを見やる。
「最後の望み・・・?」
「復讐―――ねえ、イーグ。どうしてシードはこんな姿になってしまったと思う?」
「それは・・・えーと、確か魔族の血肉を・・・」
「では問題。その魔族の血肉とやらはどこからでてきたのかしらね。暗黒時代が過ぎ去って、地上から魔族が消え去ったこの世界の何処から?」
「・・・・・・・」
「数十年前までの暗黒時代―――まだ魔族が地上を蹂躙していた頃。・・・ある国が一人の魔族を捕獲したの―――秘密裏に」
俺の無言を答えられないと判断したのか、姉さんは話を進めていく―――実際、わからなかったんだが。
「組織―――いえ、アインダーがそれを受けとって、ある実験をした―――それが・・・」
「人間に魔族の細胞を移植する・・・ってことか?」
姉さんの言葉を継いで、吐き捨てるようにセイが言う。
その表情は、とても苦々しいものだった。
「しかも、自分の息子にね―――まだ、わからない?」
「わからない・・・って、だからその魔族の細胞とやらを移植されたのがシードってことだろ?」
「・・・・・わかってないわね」
姉さんはやれやれと肩を竦める。
「魔族を捕獲した国。それがエルラルド王国」
「・・・は?」
なんか、いきなりすごくヤバい話に突入したような気が・・・・・
「なるほどな。キンクフォートを襲ったのはそういう理由か?」
「そういうこと―――ちなみに、その事実を教えてあげたのは私だけどね」
くすり、と姉さんは笑う。
俺はそんな姉さんを睨みつけると、疑問を―――ずっと感じていた放つ。
「・・・どうして、だ?」
「なにが?」
「どうしてアンタは組織を逃げ出した!? 俺を置いて・・・どうして!? アンタが逃げたりしなければ、きっと―――」
きっと、こんな悲劇は起こらなかった。
姉さんなら、あのアインダーを止められたハズだから。
少なくとも、シードを救うことが出来たはずなのに!俺の疑問に、姉さんは気まずいように視線を反らす。
「―――殺したくなかったからよ」
「え・・・?」
「イーグ・・・あなたを殺したくなかったから―――私があなたに教えたのは天空八命星の “制御法” ・・・天空八命星を支配できるように・・・その力に呑み込まれないように―――でも」
姉さんは哀しそうに頭を横に振る。
「でも、あなたはハーン=ケルヴィンとの戦いで、 “呑まれてしまった“ ―――テリュートは行ったのよね? 少なくともあなたはあのクソ親父と出会ったのだろうし」
「・・・あの時・・・シルヴァと戦っていたのは姉さん・・・やっぱりあんただったんだな」
姉さんはコクリと頷く。それから、自嘲的な笑みを浮かべて。
「なら聞いたでしょ? 天空八命星と真流の確執を。真流は天空八命星を滅ぼすために生まれ、そして天空八命星は真流に滅ぼされた・・・あのクソ親父は生まれたばかりのあなたの中に天空八命星の意思が潜んでると気づいた瞬間、あなたを殺そうとした。だから私はあなたを連れて逃げ出した・・・―――だけど、結局は私もアイツと同じだったわ。・・・イーグがハーンをどうやって殺したか・・・それを聞いた瞬間、私が感じたのは恐怖と殺意だった・・・」
「だから逃げたのか!? 俺が怖くて!」
「・・・自惚れないで。私が恐れたのは、私があなたを殺さなければならなくなること・・・・・笑っても良いわよ? 私はね、自分の手を弟の血で汚すのが嫌だったの」
そう言いながら、大陸最強の殺人者は自分でクスクスと笑う。
「・・・俺を殺すか?」
俺の問いに、姉さんは意外そうな顔をして首を傾げる。
「私が? イーグを殺す? どうして?」
「俺を殺したくないから逃げたんだろう? その俺が目の前に居る・・・・・どうして殺さない?」
「あなたの中の天空八命星―――いいえ、その “意思” と言うべきかしら? それはもう死んでいる・・・誰が “殺した” のか・・・それとも、自然に消え去ったのかは知らないけれど」
・・・誰が “殺した” かなんて考える必要もない。
天空八命星―――その天敵は真流じゃなかったってことだ。
真の天敵は、ちょっと推理オタクでわがままで、だけど他人のことばかり必死になる一人の少女だってことを俺は知っている。
「私があなたを殺す必要はもうないのよ・・・仮にあなたの中に天空八命星が生き残って―――あなたが完全に呑まれてしまったとしても、もう私があなたを殺す必要はないわ・・・・・私の他に、あなたを殺せる人間が居るから」
「俺を・・・殺せる人間?」
「今はここに居ないけどね。・・・詳しく知りたいのなら、そこのセイ君に聞けばいいわ」
・・・なんでここでセイの名前がでてくるんだ?
怪訝に思いながらも振り向くと、セイはそっぽを向いてかすれた口笛をひゅーひゅー吹いていた。・・・なんか、誤魔化しかたがわざとらしい。
そんな俺の視線に耐えきれなくなったのか、セイは俺の方を向くと慌ててまくしたてる。
「まあ彼女のことはどーだっていいじゃんかよ! ・・・ああ、そだそだ。ミストのヤツはどうした? まだ捕まってるのか? 早く助けてやらねーと退屈で死んじゃうかもしれんぞアイツ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうか、セイのヤツ・・・ミストがどうなったか知らないのか・・・・・・
「ミストは・・・死んだ」
「退屈でか?」
セイが茶々を入れる―――が、その瞳はにわかに険しくなっていた。
「俺が、ここで殺したんだ」
「ウソこけ!? 死体がどこにあるんだよ!? ねえじゃんか!」
焦燥と、無理にでも冗談だと思いたいのか、ぎこちない笑みの混じった表情。
でも、ウソでも冗談じゃない。
「虚空殺―――ね」
俺が答えるよりも早く、姉さんが呟く。
「虚空殺なら塵も残らない・・・」
「ふざけんなッ!」
がっ。
セイの手が俺のシャツの襟首を掴む。
俺より背が低いので、付き上げるような形で俺の首を締めつけながら。
「お前が居て・・・どうしてミストが死んだッ! 答えろシードッ! シード=ラインフィー!」
「やめて!」
びゅうっ、と風が俺とセイを引き離す。
見るとフロアが顔を両手で覆っていた。
「イーグは悪くないのよ・・・私が、あの子を止められれば・・・・・!」
「フロア! そういう言い方は止めろ! ・・・ミストは自分で死ににきた。そして俺が殺した―――それだけだ」
そう。
ミストは、自分で飛び込んだんだ。
自分一人が犠牲になれば、みんなが幸せになると “推理” して。―――悪いけど、バッドエンドは趣味じゃないのよねッ!
さっき・・・行きていた時のあいつの台詞。
くそったれが・・・これがハッピーエンドなワケあるかよ!?
「シード」
呼ばれて振り返る。
と、セイが真剣な表情で俺を見つめていた。
なにかを決断しようとして・・・決めあぐねているような・・・そんな表情。
「ミストを・・・生き返らせたいか?」
「・・・は?」
「ミストを取り戻したいかって聞いてるんだよ」
「そんなの」
当たり前じゃないか。
―――ということばは口に出来なかった。
そんなこと、口にするのも馬鹿らしい。・・・神をその身に降ろすことのできるクラスの僧侶なら、1度死んだ人間の魂を呼び戻して蘇らせることができると聞いた覚えがある。
だけど、それも死体が残っていた場合だ。
幾ら魂を呼び戻しても、魂が戻るべき肉体が消滅していれば・・・蘇ることなんて出来ない・・・!
「答えろシード=ラインフィー! ミストはお前が殺した! 自分が殺した人間を、お前は生きかえらせたいと思うか?」
「当たり前だろうがッ!」
セイがなにを必死になっているのか解からずに、俺はついつい答えてしまう。
「お前が殺したんだぞ・・・? 今、例えミストを蘇らせたとして・・・お前は、自分が殺した人間と生きていく・・・そんなことに耐えられるのか!?」
「知るかそんなこと!」
なにが言いたいんだ、こいつは!?
「でも・・・ミストが生きかえるのなら・・・俺は―――二度とあいつを殺さない・・・殺させない!」
「その言葉・・・信じるからな」
そう言って、セイは俺に背中を向けた。
・・・顔が見えなくなる瞬間、ちょっとだけ見えたセイの表情。
それは、なにか、悔しそうで・・・嬉しそうで・・・少しだけ残念そうだった。
「・・・メグド」
ぽつり、と呟いたセイの言葉に応えて、炎の鳥が何処からともなく現れて、セイの肩に止まる。
セイはその炎の鳥の頭を、優しく撫でながら。
「メグド、今までありがとな。・・・本当は、お前の力ならシオンを助けられるはずだった・・・でも、それは俺もシオンも望まなかった・・・!」
なにか、懺悔でもするようなセイの語り。
そうか・・・シオン、という名前を俺に聞き覚えがあった。
セイに―――セイが殺してしまった弟の名前・・・!
「その時の償いってわけじゃねえけど・・・俺の最後の頼みだ――――――解かるな?」
セイの言葉に、炎の鳥はきゅぃぃぃぃっ! と甲高い鳴き声をあげた。
それからセイの肩を蹴って飛び経つと、天井に向かって上昇する。―――ぶつかる!?
と俺が思った瞬間、物の見事に火の鳥は天井に激突して―――しかし激突音は無く―――火の粉となって飛び散った。火の粉が俺達に降りかかる。
・・・が、熱くない。
「フェニックス・・・の伝説」
ぽつり、呟いたのは姉さんだった。
「生命の化身であるフェニックスは塵となっても蘇ると言う・・・もしかして」
俺は姉さんの言葉を耳にしながらセイを見た。
セイは手で両目を覆い、口元を皮肉げな笑みの形に歪める。
「・・・メグドの力を使えばシオンを助けることが出来たかもしれなかった。でも、俺は怖かったんだ。俺が殺してしまった弟と生きていくことに。・・・・・俺が殺したんだ。もう二度と、今までのようには笑い合うことが出来ない―――それが、怖かった」
「セイ・・・」
「シード。俺はお前が羨ましい・・・」
それっきり、セイはなにも言わなかった。
「見て!」
フロアの声。
フロアの指し示す方向を見れば、そこにはメグドの火の粉が集まっていた。
それも、人の形に―――まるで、人の形に炎が燃え上がって居るようにも見える。
人の炎はだんだんに赤く、赤く―――次第に白く光輝いていき―――閃光、と呼べるほどまでに輝いた一瞬後には―――
「・・・シード君・・・」
声が聞こえた。・・・俺を呼ぶ、声だ.
眩んだ目を必死で凝らし、俺はその声の主を見ようとする―――が、見ることが出来ない。
だんだんと目が落ちついてきた・・・のに、視界がぼやけている。
どうしてだろう? 混乱した頭で悩んでいると、不意にぼやけた視界の中、目の前に人影が現れた。
「あ・・・」
人影が俺の顔を拭う―――そこで初めて自分が涙を流していたことに気付く。
はっきりした視界の中、見えた顔は・・・・・・ミストだった。
「ミス・・・ト・・・?」
もう、見るコトができないと思っていたミストの表情。
それを見た瞬間、また俺の視界がぼやける。
「・・・もう、シード君って意外と泣き虫だよね」
そう言って、笑う声が耳に届いた。
だけど俺は止めど無く溢れて来る涙を拭うのが精一杯で。
なにも応えることが出来なくて。
嬉しくて。
ただ、泣き続けていた。そんな俺を抱きしめて、ミストは囁いた。
「ただいまっ、シード君」
第四章 了
登場人物達の自爆な座談会ッ!
ろう:・・・あー、やっと終わりましたねぇ・・・ども、作者です。
ミスト:・・・あー、ホンット長かったわねー・・・ども、ヒロインです。
ろう:あー、もうMだし。アルファベット全制覇してしまうところでした(自爆)。
シード:・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ろう:おやどうしたんですかシードさん。目が真っ赤ですが。
シード:う、五月蝿い!
ミスト:えへへー。私が生きかえって嬉しいんだよねー。嬉し涙だよねーそれって。
シード:五月蝿いって言ってるだろ。
ミスト:あはは。真っ赤な目で怒鳴っても迫力無いよ、シード君。
ろう:・・・十分、迫力あると思うんですが・・・
ろう:さて、この章でシードさんの暗殺者時代の話にケリがつけたと思いますが・・・
ミスト:でもシード君って酷いよね。かつての仲間を殺そうとするなんて。
フロア:・・・私、本気で殺される寸前だったような気が・・・
シード:だ、だってなあ! あの時はそれが一番ベストだと思ったんだよ!
ミスト:いやあ・・・どっちかっていうとシード君、憎しみだけでフロアさん殺そうとしてなかった?
フロア:ああ・・・私ってばこんなにもイーグに憎まれていたのね。およよよ・・・
シード:ざーとらしい鳴き真似を・・・。だいたいお前がシードとくっついてれば問題なかったんだよ!
フロア:だってアインダーの方が渋めでカッコ良かったんだもん。私、悪くないもん。
シード:・・・やっぱ、こいつ殺しとくか・・・(かなりマジ)
アルロード:そーいや俺って結局どうなったんだ? 気絶しただけで死んでないし。
ろう:さあ・・・?
アルロード:さあじゃねえ! 首しめるぞコラ!
ろう:ぐえぅつぐえぐえぐえぐえーっ!
アインダー:・・・ふん、なにを馬鹿なことをしている。
アルロード:あ、死んだ人。
アインダー:・・・その言い方は止めてもらおうか。
アルロード:じゃあ結局フられた人。
アインダー:ぐはぁっ!?(吐血)
ろう:んー。構想段階では、もうちょっとこの人良い人間だったんですけどねー。
リウラ:結局はヤな親父よね。・・・どうしてこの話っていけ好かない親父が多いのかしら。
スモレアー:・・・ゴホン。
ミスト:えっと、自分は違うと主張してるけど。ウチのお父さん。
リウラ:・・・あんただって自分の妻を死なせたじゃない。
スモレアー:ぐほあっ!?(吐血)
セイコ:あ、セイだ〜♪
セイ:げ!? セイコさん!?
セイコ:久し振りだね〜。じゃあ、殺し合おっか?
セイ:嫌だあああああッ!
どたばたどたばた。
シード:・・・な、なんだいきなり?
ろう:K【一年前の記憶 3】で出てきたセイコ=リウラ嬢ですよ。
シード:セイのヤツ、知り合いなのか?
リウラ:というか許婚。
シード:・・・いいなずけぇ?
リウラ:そ。しかもセイコの方がセイに対してラブラブぞっこん。
シード:ふうん・・・って、それでなんで「殺し合おう」になるんだよ?
セイコ:それはセイのこと好きだから。誰にも渡したくないから。私だけの物にしたいから。
シード:うわっ、吃驚した。
セイコ:だから殺すの。だって、 “殺す” って最大の支配じゃない?
シード:・・・なんか、セイのヤツがすっげぇ憐れに思えてきた(遠い目)。
リウラ:ちなみに「私の他に、あなたを殺せる人間」っていうのが、このセイコだから。
シード:・・・俺って不幸かも。
ろう:さて。やったら長い期間続けてきました「パニック!」ももうすぐクライマックス!
シード:本当に長かったよな。これ終わったらどうするんだ?
ろう:さあどうかなー。一区切りって所でHP閉鎖しようかなとかも思ってますが。
シード:おい!
ろう:ま、まあ後のこと考えるのは終わってからにして! できれば長野の雪が解ける頃には終わらせたいパニック!
ミスト:ふっ・・・推理するわ。それは無理ね!
ろう:・・・まあ、なんとか頑張りますんで、あともうちょっとお付き合いいただきたく・・・
(03/02/16)