第16章「一ヶ月」
B.「戦いの報酬」
main character:セシル=ハーヴィ
location:バロン城・謁見の間
「皆の者、大儀であった」
「ぶわはははははははははっ!」―――城内で主立った者を集めた即位式を終え、新しい王の顔見せのために、豪奢なチョコボ車に乗って城下の街をパレードしたり宴会やったり。
まるで夢かなにかの冗談かと思うくらいに、滞りなくすんなりと新バロン王 “セシル=ハーヴィ” は誕生した。水面下では色々と反発もあったに違いない。
だが、それらはセシル達がトロイアヘ言っている間に、ベイガンやウィルが抑えてくれたのだろうということは、想像に難くない。
それはそれで大変だったのだろうとは思うが、ありがた迷惑だとセシルは感じずには居られなかった。と、まあそんなセシルの愚痴は置いておいて。
事がようやく一段落ついた後、城の謁見の間に今までの戦いで縁の在った者たちを集め、王座に腰掛け労いの言葉を発した途端、いきなりバッツが爆笑した。「すっげえ似合わねー!」
ベイガンが険悪に睨付けるのもなんのその。
わざわざセシルの方を指さして、ひたすら爆笑。セシルもセシルで「まあ、自分でも似合わない台詞だとは思うけどね」と、苦笑い。ゴホン、とわざとらしくベイガンが咳払いをして、ファリスがバッツの頭にゲンコツを落したところで、ようやく笑い声が止まった。
「あー、ええとわざわざ集まって貰ったのは他でもなくて」
「セシル様。 “あー、ええと” は要りません。もう少し威厳というものを考えて言葉をお使い下さい」
「う」ベイガンの指導が入り、セシルは頭の中で王様っぽい言葉遣いを考えて。
「みな、こたびのたたかいでは、このバロンのためによくやってくれた。れいをいう」
超棒読み。
ファリスに殴られた頭を抑えたバッツが溜まらずに噴き出す。
他の面々も、笑いを堪えるのに必死な様子だった。
ただ一人、ベイガンだけが「セシル王!」と鋭く叱責する。「なんですかその覇気のない物言いは! もう少し王たる立場を―――」
「ごめんムリ」
「なッ―――」あっさりと言われてベイガンが絶句。
そんな近衛兵長に、セシルは苦笑して見せて。「元々、僕は王様ってわけでもないし、いきなりらしくしろと言われてもムリに決まってる」
「しかし貴方様は今や王と成られたのですよ」
「うん、だけど、 “王になる” のと “王を演じる” のとは違うものだろう。それともベイガン、君は僕に王となって欲しいのではなくて、王という役を演じさせるために舞台の上に押し上げたのかい?」
「そ、それは・・・」ベイガンは反論できずに口ごもる。
セシルはバッツの方を見やり、「バッツの言うとおり、今みたいな尊大な言い方は僕の言葉じゃない。自分じゃない言葉で何かを伝えられるとも思わない」
「む・・・・・・」
「こうなった以上、僕は王の役目を果たすつもりで居る。けれど、僕は僕以外の何かにはなれないし、そうである以上、僕は僕のやり方でしかできない」そして、とセシルは言葉を繋げる。
「そんな僕だから、皆期待して、僕を祭り上げてくれたのだと思うしね」
「それが間違いだとしても、ですか?」そう、尋ねたのはベイガンではない。ロイドだった。
その言葉を聞いて、セシルはまた苦笑する。「僕は自分が正しいと思ったことは一度もないよ。だけど、僕にとって正しいと思えることをしてきた。だから今ここにいるんだと思う」
「貴方にとっての正しさが、間違いではないと言えますか?」
「言えない」
「では我々は “間違っているかもしれない” 人間についていかなければならないと? 人を束ねる者として無責任では?」他の面々が唖然としている中で、ロイドは辛らつとも言える言葉をセシルへとぶつける。
だが、その表情に険しいものはなく、むしろ笑みさえ浮かんでいる。
対するセシルも苦笑したまま、「そうだね。だからまずは覚悟を決めて貰おうか」
「覚悟?」
「僕と共に間違う覚悟を―――そして、間違っていたとしてもなお “正しさ” を貫く覚悟を」セシルがそう言って、ふと場が静まる。
ロイドの反応は、とベイガン達が目を向ければ、彼は肩を振るわせて笑っていた。「は―――あはははっ。変わってない―――いや、変わらない、か」
「なんだ? 何馬鹿みたいに笑ってんだよ」ロックが気味悪そうに悪友を見る。
ロイドは涙目になるほど笑いながら、「いや、つい懐かしかったからさ」
「全く、妙なことに付き合わせないでくれよ」セシルが言うと、ロイドはにやりと笑って。
「勝手に付き合ったのはそちらでしょうに」
「おいおい、なんの話だよ?」
「いや、 “赤い翼” が設立された時の話さ。初代部隊長となったセシル隊長―――いや、セシル王が俺たちの前で今と同じ事をいったのさ」
「あの時のロイドはもっと険呑だったけどね」セシルが言うと、ロイドは誤魔化すように頭を掻いて。
「そりゃ、あの時はまだ隊長の事を信用してなかったですし」
「でもすぐに “覚悟” を決めたのも君だったよね」
「共に間違ってみて、けれど隊長―――ああ、いや王か。セシル王の正しさが俺にとって間違いだとしたら、すぐに見限ろうと思っていたんですよ、俺は」
「ああ、それは気づかなかった」そう言って二人は笑い会う。
そんな二人を見て、カインは「ふむ・・・」と唸った。気づいたセリスが首を傾げ、「どうした?」
「・・・いや。ここにローザが居たら、不機嫌そうな顔で “ずーるーいー” とか喚いて駄々をこねるだろうな、と思ってな」
「ほう、流石は幼馴染。口まねにも年期が入っている」セリスは皮肉というか、からかうつもりで言ったのだが、カインはむしろ誇らしげに笑って、
「当然。これで何度、セシルをからかってきたと思っている」
「・・・お前、実はイジメっこだろう」セリスが言うと、カインが聞こえないふりをしてそっぽをむいた。
それ以上話かけるつもりもなく、セリスは嘆息すると何気なく周囲を振り返る。この場にローザの姿は居なかった。
セシルが意識を失っている三日間も、セシルの傍に近寄ることすらなかった。
聞けば、自宅に引きこもっている。(全く、何を考えているのかしらね。あのお姫様は・・・)
どうせロクでもないことだろうけど、と判断して、セリスはローザの事を考えるのを止めた。
******
「で、結局、何の用で俺たちは呼ばれたんだ?」
セシルとロイドの想い出話が一区切りしたところでクラウドが尋ねる。
やや不機嫌そうにも見えるが、実はそうではなく、ただ単に万年無愛想なだけだ。「あ、ごめん」
簡単に頭を下げる、王らしからぬ態度に、ベイガンが口を開きかけたが、結局は何も言わなかった。
そんな様子を横目で見ながら、セシルは王座の上から集まった面々を見やって頷く。「クリスタルは全て奪われてしまったけれど、こちらもバロンを取り戻して、ゾットの塔とやらも落とした。情報によれば、あれから三日経ってゴルベーザ達が動きを見せた様子はない。―――まあ、戦いも一段落ついたと言って良いと思う」
「まだ、全てが終わったわけではないがな」テラが重々しく言う。
セシルも頷いて、「もちろん、ゴルベーザ達がクリスタルを奪って何をするかもまだはっきりと解っていない―――カインは何か聞いているかい?」
セシルに話を振られて、カインは首を横に振る。
「・・・いや、残念ながら。ただ、四つのクリスタルだけではまだ足りないらしい」
「足りない・・・?」
「ああ。ゴルベーザ達が動きを見せないのも、そこら辺に理由があるのかもな」
「足りない・・・か」カインの言葉を、セシルは少し考えていたが。
「まあ、あとで考えるとしよう。それで、今まで戦ってくれた礼というか、報酬を払おうと思う」
おおっ、と歓声が上がる。
しかし、中には。「俺はいらねえ」
そう言ったのはバッツだった。
「別に報酬がほしくて、手を貸したわけじゃねえしな」
「うわ、もったいねえ! じゃあ代わりに俺が!」
「きたねえっ! 俺だって欲しいぜ!」と、ロックが勢いよく挙手する。
それを見て、ギルガメッシュも同じく手を挙げた。
そんな風に浅ましい二人を見て、セシルはギルガメッシュに声を掛けた。「じゃあ、ギルガメッシュ」
「おっしゃああっ!」
「なっ―――ちょっと待て、こういう時はせめてジャンケンで・・・」
「はっはっは! 吠えるな負け犬がッ! セシル大王様直々の指名じゃ! 控えやがれ無礼者!」
「ぐっ・・・なんかすっげえ悔しい・・・」悔しそうに唇を噛むロックを尻目に、ギルガメッシュは前に出る。
セシルも王座を立ち、「じゃあ、ギルガメッシュ、ちょっとその腰のエクスカリバーを」
「おう!」言われて、素直に聖剣を鞘ごと差し出す。
セシルはそれを受け取ると、バッツに向かって放り投げた。「は?」
きょとん、としてバッツはそれを受け取る。
「え・・・これって」
「それが君への報酬だ。それは聖剣エクスカリバーと言って、選ばれた人間にしか扱えない剣だ」
「俺なら使えるって?」
「いや、ムリだろうね」セシルにあっさりと否定されて、バッツは肩をコケさせる。
「なんだよそれ。じゃあ、意味無いじゃんか」
「選ばれない人間が振るえばただのナマクラだ。紙一枚斬れやしない―――人を斬れない君にはピッタリの剣だろう?」
「・・・あ」言われて、バッツはエクスカリバーを見つめる。
斬ることのない剣。確かに、バッツにとってはこれ以上ない剣ではある。「ちょっと待てええええええッ!」
いきなりギルガメッシュが喚き散らす。
「なんで報酬貰えるどころか、逆に剣を取り上げられなきゃいけないんだよ!」
「あー、大丈夫、代わりの剣を用意するから」
「あの剣の代わりがあるかぁぁぁっ!」
「だけど君だってエクスカリバーは使えないだろ?」
「そりゃ使えねえけど、だけど・・・」
「そのせいで、守るべきギルバートが負傷したことを・・・まさか忘れてないよね」
「うっ」魔物に襲われた時、エクスカリバーで迎撃したギルガメッシュは、魔物を倒しきれずに、それが原因でギルバートが足の骨を折ってしまったことがある。
「だ、だけどよおおっ!」
「ついでに君の給料も上げるし、ボーナスまで付けよう」
「そ、そりゃ嬉しいけどな・・・」
「これ以上駄々こねるなら、護衛対象を負傷させた罰で牢屋に入れて上げるけど?」
「うぐう・・・」そう言われてしまっては、これ以上言っても墓穴を掘るだけだ。
ギルガメッシュは素直に引き下がる。「さて、次は―――」
「ああ、言うまでも無いことだが、俺もいらん」そう言ったのはカインだった。
「一度裏切った俺を赦してくれただけで十分だ」
「それを言うなら我らもか」カインの言葉を受けて、レオが言う。
「私もセリス将軍も、セシル王の敵として戦っただけだ。この場に呼ばれることからして場違いだ」
「同感だな」レオにセリスも同意する。
そんな三人に、セシルは困ったように、「まあカインはともかくとして・・・・・・確かにガストラのお二人には、王としては何も述べる言葉はない。けど、僕個人としては礼を言わせてもらいたい」
「「?」」レオとセリスは顔を見合わせる。
そんな二人に、セシルは膝をついて頭を下げた。「王ッ!」
流石にそれは見かねたのか、ベイガンが叫ぶ。
だが、セシルは構わずに続けた。「あなた達のお陰で、僕の大事な人が救われた。有り難う」
言われてレオはいかつい顔の眉をひそめ、セリスは苦笑を浮かべる。
大事な人、というのは言うまでもなくローザの事だ。
レオはカイポの村で、砂漠に倒れていたローザを救った。セリスもゾットの塔でローザの拘束を解いていた。「やめて頂きたいセシル王。別に我々は王自ら頭を下げられるようなことをしたつもりはない」
レオの言葉を受けてから、一拍おいてセシルは頭を上げる。
異国の将軍達に微笑みながら、「だから言ったでしょう。これは僕個人としての礼だと」
そんなセシルの隣で、ベイガンがぶつぶつと「王たる者が、あんな大仰に頭を下げるなど・・・」とか言っているが、当然無視した。
「他の皆にも、相応の報酬を支払いたいと思う。ギル以外にも望みのものがあるなら、可能な限り対応しよう」
セシルが言うと、真っ先に声を上げたのはフライヤだった。
「ならば一つ知りたいことがある」
「竜騎士フラットレイだね」
「うむ」頷くフライヤに、セシルはクラウドの方に目を向け、
「クラウド、君も捜している人が居るだろう?」
「解っているなら言うまでもないだろう」無愛想なクラウドの物言いに、セシルは苦笑。
セシルの雰囲気のせいか、王となったのに誰もバッツやクラウドを始めとして、殆ど誰も態度が変わらない。
それがベイガンにとっては苛立たしいのか、顔を真っ赤にして怒りを堪えている。「解った。フラットレイとセフィロス。この二人がフォールスに居るかどうか、情報を集めよう」
少なくともセフィロスがこの地方に来たことはセシルも知っている。
なんの目的があるかは解らないが、少なくとも試練の山で遭遇した時は、まだ目的を果たせたという様子はなかった。「他に―――」
「私はバロンにある魔道書の閲覧許可を頂きたい」そう言ったのはテラだ。
「クリスタルについて調べたい。ゴルベーザの目的を探る助けになるかもしれん」
「それはこちらとしても願ってもないことだけど・・・」
「何を不思議そうな顔をしておる?」
「いや、てっきり僕は、またゴルベーザを倒すために、さっさと出て行くものだと思っていたんだけど・・・」もちろんその時は、どうにかして引き留めるつもりではあったが。
テラはフン、と不機嫌そうに、「老いぼれはさっさと出て行けとでも?」
「そういうつもりはないけど」
「セシル、それは酷くないか?」珍しく怒った様子でギルバートが言う。
「だから、別にテラをないがしろにしたつもりはなくて・・・」
「ぬう、貴様が口出すことではなかろう!」
「え。いや、僕はお義父さんを・・・」
「誰がお義父さんだ! なれなれしく呼ぶんじゃない、虫酸が走る!」
「す、すいません!」
「大体貴様は、最初に会った時から―――」弁解するセシルを放っておいて、言い合いを始めるテラとギルバート。言い合い、というか一方的にテラがなじっているだけだが。
メテオが発動した後、和解したように見えたのは錯覚だったらしい。「他には―――」
「そうだな、通行権とかくれるなら欲しいかな」そう言ったのはファリスだった。
通行権というのは、もちろん海の通行権だ。リヴァイアサンの脅威が無くなった今、バロンも海路を利用できるようになる。虎の子の飛空艇はあるが、海より空の方が速いとはいえ、物資を運ぶ量は海のほうが断然多い。普通の船がバロンの領海を通る分にはなんの問題もない。
しかし、海賊船となれば話は別だ。セシルは少し悩んでから。
「海賊の旗を降ろして、海賊行為を働かないって言うのなら」
「そんなんだったらわざわざ王様に許可取る必要もないじゃんかよ。なに、別にバロンの船には手を出さねえよ。それ以外なら―――」
「駄目だよ。なんであれ、君らが海で暴れ回れば海の治安が乱れる。海路が回復したばかりなんだ。しばらくは、余計な厄介ごとは避けたい」セシルが言うと、ファリスもしぶしぶ引き下がる。
「ちぇー。せっかく良い稼ぎ場所ができたと思ったのによ」
「稼ぎ場所って・・・君達の本拠地はタイクーンだろ? 遠いんじゃないか?」
「馬鹿だなあ、遠いのが良いんじゃないか。一方で暴れたら、ほとぼりが冷めるまでもう一方で稼ぐ。で、しばらく立ったらまた戻って―――の繰り返し」そう言って、ファリスはニヒヒヒっと笑う。
セシルは呆れたように嘆息して、「・・・まあ、海路が安定して、海賊やら密漁とか密貿易とか、そんなものが出回り始めたらこちらから依頼することもあるかもしれないし」
「まあ、いいか。一国の王と繋ぎ取れたと思えばな」と、ファリスが言っていると。
「―――タイクーンと言ったな」
不意にカインが呟いて、ファリスの方を振り返る。
カインに見られて、ファリスはぎくりと表情を引きつらせたが、そんなことお構いなくカインは凝視する。「さっきから気になっていたんだが、お前―――」
「おや、カイン。ファリスと知り合いだったのか?」カインの言葉を遮るようにセシルが尋ねる。
唐突に話を振られ、カインは反射的に頷きかけて―――首を横に振る。「いや・・・良く似た知人を知っていただけだ」
カインがセシルにそう言ったのを聞いて、ファリスはほっと安堵の息をつく。
だが、カインはすぐにファリスを振り返ると。「ところでファリスとやら。俺もタイクーンには縁がある人間でな? できれば後で話をしたいと思っているのだが」
そんなことを言われて、再び引きつるファリス。
「え? いや? 俺なんかと話してもつまんないデスヨ?」
「まあ、そう言うな。色々と聞きたいこともある。―――例えば、タイクーンの第一皇女は見つかったのか、とかな」
「・・・・・・ぁぅ」呻き声を漏らしたファリスの表情は冷や汗ダラダラ。
そんなファリスを哀れに思いながら、セシルは「さて」と声を掛けた。「じゃあ、正式な報酬はまた後日渡すことにするよ。そういうわけで、これで解散だけど―――最後にもう一言言わせてくれ」
セシルは共に戦ってきた仲間達を見回して、
「みんな・・・今まで本当に有り難う。王としてではなく、君達の仲間として礼を言う」
セシルが頭を下げると、バッツが脳天気な声を上げる。
「俺たちの仲間として―――ってんなら、礼なんかいらねえだろ?」
「ふっ・・・そうだね」指摘されて、だからセシルは言い直す。
「最初にも言ったけど、まだ戦いは終わったわけじゃない。だから皆―――これからも力を貸して欲しい」
「・・・俺はバロンのために戦う気はねえよ」そう言ったのはロックだった。
彼は、ぽりぽりと頭を掻きながら。「けれど、俺は俺なりにこの戦いに付き合ってやっても良いかと思ってる―――いや、きっとこの場に居る殆どの人間が、バロンのために戦おうだなんて考えちゃいないと思うぜ。それでもいいのか?」
試すようにロックが言う。
しかしセシルは迷うことなく頷いた。「理由はどうであれ、力を貸してくれるというのなら、こんなに心強いことはない」
「へっ―――なら話は簡単だ。・・・そうだな、アンタ流に言うのなら」
「セシルと共に間違う覚悟は出来ている―――そう言うことだ」ロックの後を引き継いでヤンが言う。と、ロックは口を尖らせて、
「おいおい! そりゃ俺の台詞―――つか、さっきまで黙ってたくせに、最後の最後で」
「ふん、私としてはなにも口を出すことはなかったからな。最後くらいは決めさせて貰わねば」
「どういう理屈だーーーー!」暴れるロックを、マッシュとリックモッドが押さえつける。
そんな騒がしい雰囲気のまま、その場は解散となった―――