第16章「一ヶ月」
A.「この章の説明」
main character:ろう・ふぁみりあ
location:いんたーみっしょん

 

 

「う、うう・・・死んでしまいたい・・・・・・」

 世界中の誰よりも不幸そうな泣き顔で、セシルはぽつりと呟いた。
 その身は威厳ある “王の鎧” に包まれているが、今のセシルの表情と合わさると、何とも情けなく見える。
 ちなみにそんなセシルの背後では、年齢不詳のメイド長・レイアナーゼが何かをやり遂げたとてもイイ笑顔で額の汗などを拭っている。

「ふう・・・堪能しました」
「・・・・・・」

 もはやツッコミを入れる気力もなく、セシルは無言。
 と、そんなセシルの事などお構いなしに、ベイガンがパンパンと急き立てるように手を叩く。

「さあ、準備が整ったのなら参りましょう!」
「参るって・・・何処に?」
「謁見の間です、皆、待っていますぞ!」
「はい?」

 セシルは困惑する。
 目覚めた途端にいきなり王の鎧を着せられたりと、事態が飲み込めない。
 そんなセシルに、ベイガンはとんでもなく嬉しそうに微笑んで。

「何を呆けているのです。これからセシル王の即位式が始まるのですぞ!」
「はああああっ!?」

 ベイガンの言葉に、寝起きに色々あって鬱々だった気分が一気に吹っ飛ぶ。

「ちょっと待てぇぇっ! なんでいきなりそんなッ!」
「いきなりではありません! ローザ様を救ったら王となると約束したではありませんか!」
「いや、そりゃあしたけど・・・でも―――」
「こっちは三日も待ったのです! さあ、行きますぞ!」
「くっ!」

 セシルは身を翻して逃げようとするが、その手をベイガンが掴む。
 振り払おうとするが―――

「ぬんッ!」
「のわああっ!?」

 ベイガンの腕が巨大な蛇となり、セシルの腕にからみついて離さない!

「まだ魔物の力を使えるのかッ!?」
「まあ、混ざってしまったものはそう簡単に分けられるものでもないでしょうし。それに割り切ってみると便利ですし」

 そう言ってハッハッハ、と笑うベイガン。割と大物なのかもしれない、とセシルは思った。

「ていうか、人前でそんなホイホイ魔物化するなあああああっ!」
「もちろん、事情の知らない人前ではやりませんとも」
「そりゃカイン達は事情を知ってるだろうけど・・・メイド達はッ!?」

 と、レイアナーゼを始めとする近衛メイド部隊を見回すが、誰一人取り乱した様子はない。
 何故!? と疑問を感じていると、レイアナーゼが一歩前に出て優雅にお辞儀。

「メイドたる者、この程度で驚いていては務まりません」
「どんなメイドだそれぇっ!?」
「諦めろ、セシル」

 がしっと、ベイガンが掴んだのとは反対の手をカインが掴む。
 そのまま、ベイガンとカインが二人してセシルの身体を引っ張っていく。

「待ってくれカイン! まだ心の準備が―――」
「聞こえんな」
「親友だろ!」
「うむ親友だ」
「なら手を離してくれよ」
「それとこれとは話が別だ」
「裏切り者ー!」
「ははは、ようやく認める気になったか」

 愉快そうに笑いながらカインはセシルを引っ張っていく。

「くっ・・・他に、他に味方は―――バッツ!」

 視線を巡らせてみれば、連行されるセシルをにやにやと見送る旅人が一人。

(駄目だー! こいつも敵だああああッ!)

 味方はなく、敵に完全に捕われてしまっている。
 こうなってはどうすることもできないと、セシルはがっくりと肩を落して諦めた―――

 

 

******

 

 

 ―――と、まあそんなこんなで、セシルさんは無事に王様になったりしました。

 あ、どもども。ろう・ふぁみりあです。

「・・・どこら辺が無事?」

 ああ、ティナさんお久しぶりです。

「本当に久しぶりよッ! 前回の後書きじゃ、出番無かったしッ!
 ・・・それはともかく、セシルが王様に成りましたー・・・って、随分素っ気ないわね。即位式とやらは書かないの?」

 書きません、面倒だし。

「・・・おい」

 というのは建前で、即位式ってどう書けばいいのかわかんなかったり。
 ネタもないですし。

「建前にしろ本音にしろ、どっちにしろ情けないわね・・・
 ところで、即位式をすっとばして、アンタここで何やってるの?」

 この章の解説とか。

「・・・それ、普通は後書きでやらない?」

 ちょいと今までの章と若干違うので。

「なにが?」

 ええと。
 まず、この章は「一ヶ月」というタイトルがついているとおり、地上での戦いが一段落ついた後の一ヶ月間の話です。
 この一ヶ月間、地上にゴルベーザさん達が現れることはなく、平穏な時間が流れます。

 平穏、とは言っても戦いがないだけで、一番被害が多かったダムシアンなどは復興のために忙しいでしょうし、セシルさんも王様に成ったばかりで色々と気苦労が多かったりします。
 さらには、地上から消えたゴルベーザさんたちの探索もしなければなりません。

 つまり、戦ったり戦ったり企んだり戦ったり悩んだり戦ったりしていた前章までとは違って、かなりまったりとした話になります。
 具体的に言うと、シリアスではなくコメディ。

「・・・今までのがコメディでなかったとでも?」

 ・・・それはともかく。

「あ、誤魔化した」

 それはともかく!
 だから、今までは連続した話が続いていましたが、今章は一話完結の読み切り方式でやりたいなあと。
 つか、やりたいネタが幾つかあるので、ストーリーに縛られずにそういうのをやりたいです。

「ネタ?」

 野球ネタとか。

「何故!?」

 カインさんのハイジャンプ魔球とか、消える魔球(バニシュ)・分身魔球(ブリンク)をつかうセリスさんとか。

「ネタバレしてるネタバレしてる」

 他にもローザ・ファンクラブの話とか、ファスさんとローザさんの話とか、前回の後書きにローザさんが出てこなかった理由とか。

「ちょっと! ローザネタばっかりじゃないの!」

 ・・・・・・あれ、言われてみれば。

「私は!? 私の話はないの!?」

 ありません。

「しくしくしくしく・・・」

 (う、流石に気の毒かも)だ、大丈夫ですよ、ティナさんはやれば出来る子ですから!

「やる機会すら与えられない私にどーしろと!?」

 ええと・・・
 え、FF5IFでは大活躍ですよ! 多分!

「作者のアンタが “多分” とか言うなあああッ! 喰らえ怒りのッ―――」

 

ライオットソード

 

 んぎゃああああああああああっ!
 ばたんきゅぅぅぅぅぅっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・はあ・・・少し気が晴れた」

 う、うう・・・・・・そ、それは・・・なによりです・・・・・・がくっ。

「ていうか、ひとつ聞いていい?」

 はい?

「こんなこと、わざわざここで言わなくても良かったんじゃないの?」

 ふっ・・・だからこそ―――敢えてやる!

「何処のアメフトマンガよそれは」

 


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