第13章「騎士と旅人」
X.「エンタープライズ」
main character:セシル=ハーヴィ
location:バロン城

 

 ウィル=ファレルの肩書きは、“城内調停役”。
 このバロンでは騎士の力が強く、貴族(大臣)と力が対等なので、両者の間で諍いが多い。
 それらのもめ事の間に入って、解決するのがウィルの役目である。

 ただしウィルには権力がなく、強制的に場を納めたり、片方を処罰したりすることは出来ない。

 争っているお互いの話を聞き、解決策を考えて、双方納得する形で和解させるのである。
 どうしても手に余るような場合は、王に話を持っていき、それこそ強引に和解させたり、王の判断で片方を処罰したりすることになる。

 ウィルは騎士よりの貴族なので、貴族の立場も理解し、だからといって騎士を差別したりもしない。
 加えて他人の表情を読む能力に長けているので、的確に状況を洞察し、間違いのない案を提示することが出来る。

 騎士や貴族達も、立場の進退に関わることならばともかく、例えば冷蔵庫のプリンを食べられた(あくまでもたとえ話)程度の話を、王に裁いてもらうのも馬鹿らしいというか、それこそ立場に関わるので、ウィルに出した和解案に従うことが多い。

 あっちで何か言い争いがあれば飛んでいき、こっちで取っ組み合いしていると聞けば飛んでくる。
 どんな騒ぎであっても、すぐさま参上する。本人の言うとおりに多忙な役職である。

 だが、小さな諍いであっても、それが発展すれば周囲を巻き込んだ、大きな争いとなる。
 ウィルが登用され、城内の小さな揉め事が減り、派閥レベルの争いも少なくなった。

 またバロンにおいて、人を裁く司法の権利を持つのは基本的に王のみである。
 先にも述べたが、ウィルの手に余り、どちらも自分の主張を譲らない場合には、王に判断を委ね、時には裁いてもらうことになる―――が、王が不在などの時にすぐさま解決が必要な場合は、無関係である騎士や貴族数名の立ち会いの元、暫定的にウィルが判決を下すこともできる。

 他にもたまに暇な時があれば、忙しい所の手伝いには入り雑務をこなしたりもする。
 なので、城内の誰もが “調停役” などとは呼ばずに、 “なんでも屋” と呼んでたりする。

 ちなみにセシルはウィルの世話になったことはほとんど無い。
 もともと問題が少なく。また、なにか揉め事があった場合でも自分で解決してしまう。
 唯一の例外が、ローザとの絡みであるが、それだとウィルは手を出さない。通りがかっても、微笑ましそうに見守るだけだった。

 そんなウィルがバロンを攻め落とされてから何をしていたかというと、主にファブール、ダムシアンとの交渉であった。

 上級騎士達の殆どは国を攻め落としたモンク僧や傭兵達に敵意をむき出しにし、貴族達は身の保身しか考えずどちらもお話にならない。
 そのために、権力があるものたちは部屋に閉じこめられていたが、特殊な役職ではあるが権力を持っていないウィルはそれを免れた。

 彼は一応、ファブール、ダムシアン混成軍の最高責任者であるヤンと交渉し、状況を把握した後、まずベイガンの釈放を求めた。
 ベイガンもまた幽閉されていたが、騎士や兵士達をとりまとめるために必要だとして、それを釈放。続いて、城の中を駆け回りバロンとダムシアン、ファブールの三者が揉めていればそれに仲裁に入ったり、今後のバロンについてヤンやベイガンと会議したり、あるいは街に戻り住人達の様子を伺ったりと、いつもよりも多忙だったという。
 セシルが目を覚ました時、意外と城内が静かだったのは、ウィルの尽力があったからこそだ。

 ちなみに、シドとロイドが牢破りをした時、ヤンたちと揉めていたが、その時にウィルは街に行っており不在だったという。

 城内を歩きながらウィルの話を聞いて、セシルは素直に感心した。

「大変だったようですね」
「君に比べれば大したことはないよ。いつもやっていることだしね」

 そう言って、彼は微笑む。
 実際、ウィルにしてみれば言葉通りいつもの事なのだろう。ただ相手が騎士と貴族ではなく、バロンとダムシアンとファブールに変わっただけで。

「ところで今後のバロンの事って、どんなことを話していたんですか?」

 それがセシルにとってとてつもなく気になる所だった。
 ヘタをすれば、セシルの今後にも関わる。

(・・・まさか、僕が王になるための根回しとかじゃないよな・・・?)

 そうでないといいな、と想いながら、ありそうで怖いとも思う。
 そんなセシルの心境を知ってか知らずか、彼は変わらぬ微笑みのまま、

「それは秘密。まあ悪いようにはしないよ」
「秘密にされるのが、すでに悪いようにされてる気分なんですが」
「ああ、上手いことをいうね。これはおじさん、一本とられたなあ」

 間延びした口調でのらりくらりと受け流すウィルにセシルは嘆息。
 どうやらウィルに聞くのは無理そうだ。となれば―――と、ベイガンを探してみるが、見あたらない。

「ベイガンなら用事があるとかいって、どっかいっちゃったよ」
「・・・逃げられた」

  “正直” なベイガンなら、ウィルほどの洞察力がなくとも、その仕草と表情で考えてることが手に取るように解る。
 本人もそれを知っているからこそ、さっさと姿を眩ませたのだろう。

「じゃあ、私も色々とやることがあるから―――それじゃ」

 ウィルは手を挙げて別れの挨拶にすると、足早に立ち去ろうとして。

「あ、そうそう。僕もディアナさんと同じだよ」
「え?」
「ローザの事は君に任せる」
「ローザは、今・・・」
「聞いているよ。でも、あまり心配はしていない」

 そう言って、彼はセシルの表情を伺うように振り返った。

「―――心配した方がよいかな?」
「僕は、一度彼女を見捨てました」
「本気で見捨てたのなら、そうは言わないだろう?」
「・・・・・・僕は、彼女を不幸にしますよ。僕についてきたせいで、彼女は今囚われの身だ―――無事に助け出せたとしても、これからもまた同じようなことが起きるかもしれない」
「それもローザは幸せと言うだろうね。彼女はそういう人だ―――正直、父親としてはもうちょっと穏やかな幸せを求めて欲しいと思うけれど」

 ウィルは苦笑。
 それから、不意に表情から笑みを消す。

「もう娘は僕が背負ってあやしてあげるほど幼くない。茨の道であっても、彼女がそれを望むのなら、僕は見守ることしかできないよ」

 そう言ってから、また微笑を浮かべた。

「寂しいことだけど、ね」

 そう言い残して。
 彼は今度こそ歩き去っていく。
 口調とは裏腹にとても機敏な歩き方で、その姿はすぐに廊下の角を曲がって見えなくなる。
 ぽつん、と取り残されたセシルは短く吐息。

(余計なもの、背負わされたなあ・・・)

 ローザの事は、ローザの事だけ考えていればいいと思っていた。
 けれど、気づいてみれば当たり前のことだが、ローザには肉親が居る。もしもローザが失われたなら、ディアナもウィルも嘆き悲しむことだろう。
 自分に親が居ないことを言い訳にするつもりはないが、失念していたのは事実だ。

「おおーうい! セシルーっ!」

 ほんの少し気落ちしていたセシルの耳に、聞き慣れた野太い声が耳に届いた。
 振り返ってみると、ヒゲもじゃで赤ら顔の飛空挺技師が駆け寄ってくるところだった。

「シド」
「探したゾイ! 早く来んか!」
「え、来るってどこに―――って、うわあっ!?」

 強引にシドに腕を捕まれて、そのまま引っ張られる。
 筋肉が隆々と盛り上がったシドの腕は伊達ではなく、抵抗しようとも無意味だった。

「引っ張らないでくれよ! 自分で歩ける!」
「お? おお、スマンスマン」

 がははは、と豪快に笑ってシドは手を放す。
 じんじんと痛む腕を見れば、ものの見事にシドの手形がついていた。

「ったく・・・で、来いってどこに? ―――そう言えば飛空挺の整備をするって昨日は言ってたけど・・・」

 だが、シドの向かった方向とは、飛空挺のドッグとは正反対の方向だった。

「ドッグはあっちだろ? それとも僕がいない間に移転したとか?」
「いんや。ドッグに飛空挺はない。ゴルベーザがみんな持ってっちまった―――ただ一つ除いてな」

 にたり、と笑ってシドは再び歩き出す。
 困惑しながらも、セシルはそれを追い掛けていった―――

 

 

******

 

 

 謁見の間に続く渡り廊下。
 その前にある広間―――つい先日、バッツがレオ=クリストフと剣を交えた場所だ。
 ちなみに、やはりドッグとはまるっきり正反対の場所だった。

 セシルは渡り廊下に続く扉を見る。
 その扉の向こうでは、セシル達を助けるために、自ら石化してしてしまった双子が、未だに壁を抑え続けている。

 セシルは扉から目を離し、シドへと尋ねた。

「どこに飛空挺があるんだよ?」

 セシルの問いに、シドは広間の隅の壁に寄っかかると、もったいぶるように、

「まあまあ。それよりもセシル、もうちっとこっちに来い」
「なんで?」
「いいからいいから―――あっと、ストップ。左に一歩ほどズレてくれ」
「一体、なにがしたいんだ?」

 首を傾げながらも、セシルはシドの言うことに従って動く。と―――

 かちり。

「・・・ん?」

 何か足下で、妙な音がしたと思った次の瞬間。
 セシルの立っていた床が消え去る。

「・・・へ?」

 一瞬の落下感。
 だがすぐに、何かに尻餅をつく。

「うわ――――――――――――っ!?」

 尻餅をついた場所は、かなりの急坂になっていて、しかもつるつるとよく滑る。
 セシルは為す術もなく、下へと滑り落ちていった―――

 

 

******

 

 

 ―――どれくらい滑っただろうか。

 かなり下まで滑り落ちた、ということしか解らない。
 永遠に続くかと思われた滑り台が、急に終わった―――と思った次の瞬間には、柔らかい巨大なクッションに受け止められていた。

「・・・う、うう・・・なんなんだ一体―――」
「うっほほーい♪」

 呆然としていると、頭の上からシドの楽しげな声が近づいてくる。
 その声の意味に気づいて反応するよりも早く、セシルの背中にシドが激突していた。

「ぐは!」
「ぬお! セシル、降りたのならさっさとどかんか! 危ないじゃろ」
「い、いきなり落とし穴に落としたヤツが言う台詞かあああああああああっ!」

 かあ、かあ、かあ・・・・・・
 セシルの怒鳴り声が遠くでこだまする。
 辺りが、実はもの凄い広い空間だと気がついて、セシルは狼狽する。

「なんだここ!?」

 クッションから立ち上がって、セシルは周囲を見回した。
 すぐ目に付いたのは巨大な滑り台だ。今し方、セシルとシドが滑ってきたもので、辺りが薄暗いことも手伝ってか上の方は闇に隠れて見えない。
 闇に隠れて、といえば天井もそうだった。声の反響からして、建物の中―――というか地下室なのだろうと思うが、どれだけ高いのか天井が見えない。少なくとも、セシルが精一杯跳び上がっても手が届かないくらい高いと感じる。カインでもまずムリじゃないかと思った。

 薄暗い。
 地下なのだから当たり前だとは思うが、太陽の光も差し込んでなければ、炎などの光源も見あたらない。
 もしかしたら、試練の山などにあった特殊な空間なのかと思ったが、よくよく見るとあちこちにぼんやりと発光しているなにかがあった。

「ヒカリゴケ・・・?」
「うむ。この地下室にはヒカリゴケを自生させておってな。―――まあ、そうでなければ着の身着のまま逃げ出した時に、困っただろうが」
「逃げ出すって―――じゃあ、もしかしてここは?」

 シドはうむ、と頷くと。

「ここはバロンの歴史の中で生まれて、王族専用の秘密の抜け道を改造したものじゃ。ワシが寄りかかっていた壁があったじゃろ? あそこにスイッチがあってのう。押してから10秒居ないに落とし穴の上に乗ると、床が抜けるという仕組みになっておるんじゃ―――本来なら、一度使ってしまえば二度と作動しないのだが、そこは少しいじくってな?」
「改造って・・・そんな、勝手に!」
「勝手じゃないわい。オーディン王には了解とった―――王専用の秘密基地を作ることを条件にな」
「秘密基地って・・・」

 セシルの中で思い描いていたオーディンのイメージが崩れる。
 秘密基地を手に入れて喜ぶ子供のような王の姿が脳裏に浮かんで、セシルは首を振って打ち消す。

「え、ええと。それで、ここに飛空挺が?」
「うむ。ついてこい」

 シドにが広い地下室の中を歩き出す。
 セシルはそれに、素直について行った。

 

 

******

 

 

 それほど歩かずに、すぐに明かりが見えた。
 ヒカリゴケよりも赤く明るい、炎の光だ。
 幾つかの篝火が燃え上がり、巨大なシルエットを薄暗い中に浮かび上がらせていた。

 その姿を認めてしまえば、遠くからでもはっきりと解る。
 飛空挺だ。
 ただし、セシルの知っている “赤い翼” の飛空挺とは形が違うように見える。

「新型高速飛空挺―――その名も “エンタープライズ” じゃ」

 歩きながらシドが息子を自慢するように胸を張って言う。

「赤い翼では動力部にしか使われていない、貴重な “浮遊石” を機体の各所に埋め込み、浮力が格段に上昇。そのために動力の殆どを推進力へと回すことができるため加速力は言わずもがな! なおかつ機体の形を細くすることによって、空気抵抗も云々―――」

 などと、シドのまさに滑らかに滑るような滑舌による説明を聞きながら、セシルは近づいて行くにはっきりとしてくる、飛空挺のシルエットを見あげる。
 成程、確かにシドの言うとおり、飛空挺の形は赤い翼よりもシャープだった。大きさも一回り小さいような気がする。

「どうじゃ、大したモンじゃろう?」
「うん、驚いた―――でもなんで、こんな所に?」

 シドが新型の飛空挺を隠匿しているという噂は、セシルも聞いたことがあった。
 だが、それは根も葉もない噂だとばかり思っていた。シドという男は、お調子者ではあるが、けれど仲間を裏切ったりするような男ではないと、セシルは知っていたからだ。
 だから、セシルは飛空挺がここにあることよりも、シドが隠していたことに驚いた。

「これはワシの夢じゃからのう」
「夢?」
「知っとるじゃろう、ワシの夢。自分の作った飛空挺を、世界と世界を結ぶ架け橋にしたいという夢じゃ」

 それはセシルも何度も聞かされた覚えがある。
 シドが酒を飲むたびに、口癖のように語る夢だ。

「けれど、現実に飛空挺は、兵器として運用されておる―――もっともそれは、戦争を終わらせるためのオーディン王のたっての願いじゃった。だから仕方ないとワシも思っている」
「シド・・・」

 セシルはなんと声を掛けて良いか解らなかった。
 シドが飛空挺を戦いに使うことを好ましく思っていないことは知っていた。
 だが、それを知っていてなお、戦争が終わった後も、バロンの力の象徴として “赤い翼” が存在し、その長を務めていたのがセシルだった。しかも、その飛空挺でミシディアの国を焼き払いもした。

「だが、オーディン王はワシの夢を叶える手伝いを惜しむことはなかった。城の地下に広がる、この秘密のシェルターを自由に使うことを許可し、こっそりと様々な援助をしてくださった。お陰で、この飛空挺がここまで完成した!」
「そうか・・・王が援助を―――って、ちょっと待て」

 あることに気がついて、セシルは声を上げた。

「もしかしてシド、君は王がニセモノだって事に気がついていたのか!?」
「勿論じゃ。ベイガンが新型飛空挺を渡せ! とか怒鳴り込んできた時に気づいたわい。王ならば、この場所を知っているはずじゃからのう」
「じゃあ、どうしてそれを言わなかったんだ? そうすれば―――」

 と、そこでセシルの言葉が止まる。

「・・・どうにもならなかったか」

 考えてみれば、セシルだって確証はなかったものの、王をニセモノだと疑って―――そのまま出奔したのだ。
 城に戻っても、逆に反逆者として捕まるだけだと思ったからだが、実際その通りにシドは牢屋にブチ込まれた。

「まあ。結局はお前さんにニセ王は倒されたんじゃ。結果オーライ」

 そう言って、シドはカッカッカと笑う。

「・・・ま、ともあれ王のお陰で、この飛空挺を使うことが出来る。これも亡き王の加護かもしれんのう」
「だけどシド、いいのか? これを今使うと言うことは、戦いに―――」
「気にすることないですよ」

 セシルの言葉に対する答えは、シドではなかった。
 声のした方を振り返れば、見慣れた青年が飛空挺の影から出てくるところだった。

「ロイド? どうしてここに・・・?」
「シドの親方に飛空挺の整備を手伝わされてたんですよ。牢屋から出てずーっとね」
「なんじゃロイド。寝ておったんじゃないのか?」

 シドが尋ねると、ロイドは「いやあ」と頭を掻きながら幸せそうに笑う。

「ついさっき、リサが朝食を持ってきてくれたんですよ。それで目が覚めて―――ちなみにロックはまだ寝てますよ」

 そう言えば、ロックも昨日、シドに捕まっていたなあ、とセシルは思い出す。

「リサって・・・彼女はどうやって?」
「あ、隊長は城の方から来たんですね。実はここ、ポレンティーナ家の暖炉と繋がってるんですよ」
「ははあ。道理で城からは一方通行だったはずだよ。どうやって外に出るんだろうと思ってた―――なんとなく、地下水脈にでも繋がってるのかと思ってたけど」
「そっちには繋がっておらん―――昔は通じていたが、ワシが埋めた。・・・地下水脈は、わりとポピュラーじゃからの。バロンに古くから住んでる者なら、城の井戸と繋がって居ることを知っておるし」

 シドが言うと、セシルとロイドは顔を見合わせる。

「そうだったんですか?」
「いや、僕も知らなかった」
「まあ、知っていても居なくても、地下水脈は地図でもなければ絶対に迷う上に、妙な魔物まで棲みついておる。それに入り口は中からしっかりと鍵が掛けられているからのう」

 その地下水脈を、つい先日に二人の忍者が命からがら突破したことを、シドはもちろん知らなかった。

「それよりもセシル。ロイドの言う通りじゃぞ。こいつが戦いに使うことを気に病む必要はない。赤い翼が作られた時もそうだったが、それは仕方のないことじゃからな。国を平和にすることと、ワシの夢、天秤に掛けるまでもないということじゃよ」
「しかし・・・!」
「そうですよ。親方が夢を優先させたなら、隊長をここへ連れてこなかっただろうし、俺とロックに飛空挺の整備を手伝わせたりはしなかったでしょう」
「ゴルベーザを倒すには、コイツの力が必要じゃろう。だから遠慮無く使ってくれい! セシル!」
「・・・・・・」

 二人に言われ、セシルは押し黙る。
 だが、やがて、顔を上げて微笑した。

「うん・・・ありがとう、シド。ありがたく使わせてもらう―――」

 

 


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