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惜桜小屋日記

2008年1月1 日(火)


 雪景色を赤く染めて、思いがけない初日の出である。
 7時10分、八ヶ岳南端編笠の肩に顔をのぞかせた太陽は、みるみる上昇し輝きを増していく。
 一旦は沈むが再び甦る太陽は、再生のシンボルとして昔から崇められてきた。そんなフレーズが心に染みる初日である。
 近くの知人が大晦日を前に亡くなった。新しい地域の職務に情熱を注ごうと構えた直後、還暦を過ぎたばかりの急逝だった。
 吉田兼好はいう。
 「死は前よりしもきたらず。かねてうしろより迫れり」
 背後からポンと肩をたたかれ愕然とするのが人間。死は前から少しずつ近づいてくるものではないというのである。
 寿命にも天命があると想うほかない。
 ベランダに立って寒気の中しばらくは光の群れに身をさらす。
 風に舞う雪片がキラキラ輝いて消えた。      合 掌

              ◇

 昼近くカメラを肩にぶらり家を出た。
 今日も惜桜小屋に続く新雪の林道には、あの狩人キツネの通う足跡が点々と続いている。【つづきを読む】