狩人キツネの足跡は、たまに林内にそれながら、また林道に引き返し、真っ直ぐに、時にはジグザグに、しかし淡々と続く。
 ふた筋ある足跡は、一方は上へ、一方は下っている。雪をかむった状態から、今朝方上り、小屋の森林を見回ってそのまま下ったらしい。
 麓の丘陵地帯に住みついている、いつもの狩人だろう。
 時折、樹上の雪がふぶきとなって襲ってくる。見上げれば、木の間越しの空は青く澄んで明るい。
 積雪は数センチ、スノーシューをはくまでもない。長靴で障りはない。
 リスの足跡が数ヶ所で横切っている。この森林には、リスが多い。
 ところどころに生えるクリは、格好の食料となっている。隠した保存食を探したのか、地面を掘り返した跡も見える。
 キシキシキシと、びっくりするくらい大きな羽音をたてて飛び出したヤマドリが、カラマツの林に消えた。
 カラ類の数羽の群れが、せわしなげに目の前のジシャの枝を伝い、風のようにわたっていった。