三日見ぬ間の桜かなという言葉があるが、まさに三日見ぬ間の小屋の森。この時期の野山の変化は超特急並みである。
村の産土神の作業を奉仕したきのうは来られず、二日ぶり訪れた小屋の森は、春から初夏へと一気に季節が駆け抜けていた。
森のキャンバスは、すっかり若葉色に染まっている。
栗の根元にシュンランが蝋細工のような花をつけた。群れ咲くタチツボスミレが明るく笑っている。ヒトリシズカはツンツンと日差しに向かって背伸びしているよう。
森に光があふれている。
歌い手も錚々たるメンバーがそろった。
黄色と黒の華やかな衣装をまとったキビタキが、チンチロリーと美しいのどを鳴らせば、オオルリも日本三名鳥の意地にかけて透き通った歌声を聞かせる。このオオルリは今日、山みちで二度もハラリ、スイーと、目の前を横切った。瑠璃色の宝石を思わせる舞い姿は、ハッとするほど気品がある。
クロツグミもひと際高らかに歌い上げている。
そして托卵鳥の先陣を切ってツツドリが、ポンポンポンと森に初夏を告げたのである。例年より十日ほど早い飛来である。
帰りの山みちに冬越しから醒めたばかり?のアナグマが、好物の昆虫やミミズをあさる姿があり、数メートルの距離を置いてしばらく観察することができた(里山らいふ参照)。
惜桜小屋日記
2005年4月30日(土)
【写真上】この輝くような若葉の向こうでクロツグミが高らかに鳴いている
【写真右上から】連日の初夏の陽気に誘われて花を開いたシュンラン、タチツボスミレ、ヒトリシズカ。小屋の前のカラマツに上った子リスはしばらくのあいだ枝先でひとり戯れていたが器用な身のこなしで枝から枝を伝って森に消えた、巣作りをはじめたコガラが巣材にするため軍手をつついて毛羽立った繊維を一生懸命に集めている。鼻先で草むらをかきわけエサとなる昆虫やミミズをあさるアナグマ