小屋の森の雪原に、くねくねつづく足あとを、十数メートルたどった先で目にしたものは、腹を出してひっくり返ったまま往生をとげた、アズマモグラの哀れな姿だった。
 地中で主食のミミズを追うだけだったら、凍える雪原に飛び出すなどという、無謀なマネはしないだろうに、どうしたということか。
 何かに驚いたか、それとも状況判断を誤ってしまったか。ともかく、何かの理由で雪原に飛び出してしまった、問題はそのあとだ。
 スコップのような、強靭な前足をもってしても、地面を覆う雪に邪魔され、凍った土にはじき返され、再び地中に帰ることかなわず、寒さに凍え命尽きたものらしい。
 断末魔の叫びが聞こえそうな場面だけれど、万歳をした姿がなぜかユーモラスなのが、切ない。
 

―日記からこぼれた里山暮らし余話―
里山らいふ