―日記からこぼれた里山暮らし余話―
里山らいふ

 春の日差しが明るく暖かい。
 ケンケーン。
 縄張り宣言なのか、それともメスを呼んでいるのか。ひと際高い土手の上で、甲高く鳴きながらドッドッドッと大きく羽をふるわせたあと、キッと前方を見つめる雄キジ。
 大きく真っ赤な鶏冠(とさか)や、垂れ下がったような腰の羽から老鳥と見られるが、このつややかでカラフルな羽はどうだろう。
 自信に満ちた貫禄のポーズは心憎いばかり。はばたき(写真上/クリックで拡大)だって、あくまで優雅に、そして力づよい。
 ここ諏訪湖西山の森のふもとは山畑が広がる丘陵地帯。ところどころ原野や小ヤブがまじり小川も流れる。エサを探し、身を隠し、子育てをするには最適な環境にある。一帯は数羽がテリトリー(縄張り)を張って、老若男女が力のバランスをとりつつ平和に暮らしている。
 繁殖期は一夫多妻。一度に十二、三個の卵を産む多産系。野火に身は焼かれても卵やヒナ鳥に覆いかぶさって死守するほど母性愛が強いといわれ「焼け野の雉子(きぎす)夜の鶴」のことわざがある。
 からだを張って子を守るのは、この着飾った男伊達でなく雌キジということか。初夏のころ、この辺りでよく家族ずれを見るけれど、必死になって世話をやいているのは雌キジの姿である。

(2005年4月7日UP)