ふと気がついてみれば、杉の木の多いこと多いこと。そして今、花が真っ盛り。木全体が赤く見えるほど、ぎっしりついている。
ちょっと強い風が吹くと、ポワ〜ンと弾けるように、花粉が舞い上がり、サーと空中に拡散してゆく。半端の量ではない。
そのまま風にに乗って、ときには数百キロの彼方まで飛んでゆくというから驚く。これでは街中で杉の木の陰すら見えないといっても、なんの慰めにもならない。
たいがいの場所は杉花粉に汚染されているといっていい。
ウグイスの初音を尋ねて繰り出した森のふもとで、友人とふたり枯れ草に腰を下ろし、熱いインスタントコーヒーをすすりながら杉花粉の飛ぶ様子を見ていた。幸いふたりとも、スギ花粉には免疫があるようで、それほど苦にならない。
花粉の飛び散るさまが、風の強さや方向によっていろいろ変化し、見ていてあきない。
「こどもの頃、杉でっぽうを作って杉の花を玉にこめて遊んだ覚えがあるが、そのころは花粉症などというものはなかったのに」と、郷愁を語る余裕もある。
しかし、花粉症のひとには、そんな愚にもつかない郷愁にひたっている余裕など、とてもないらしい。先日のテレビでは「本土を脱出、家族で杉のない沖縄へ」といった話題を伝えていた。
林野庁が花粉の飛び散らない杉の栽培に成功したと発表したが、その杉の成長までに2、30年かかるという気の長い話だ。
ライブドアとフジテレビではなし、お互い歩み寄ってどこかで折り合いをつけて、といったしろものでもない。もののけ姫の宮崎駿ワールドなら、杉の木の精霊にでも頼む手もあるが?。
(2005年4月6日up)。