たわわに実った山ブドウ。
 小梨やミズナラの幹や枝にからめた太いツルを、上へ、横へと伸ばして棚を作り、宝石のようにつややかな実をぎっしりつけた房がいくつも重たげに垂れ下がっている。
 そんな山ブドウのツルが、視界に収まるだけで十数本はある。
 だれが見ても心躍る光景だ。
 この山ブドウ畑は、三年前に偶然見つけている。直後に前山が入山禁止になったため、翌年から同じコースを歩けなくなった。
 昨年も一昨年も、反対側からのコースを、幾度となく挑んだものの、複雑な山容に阻まれて、たどりつけず、気持ちの中では、まぼろしの存在となりつつあった。
 朝のうち雲海が諏訪盆地をすっぽり覆った2004年晩秋の某日。友人夫妻と三人で、最後の挑戦を行った。弁当をリュックにつめ「今日こそは」の意気込みだった。
 まだ試みていなかったコースをじっくりたどった末に、やっと再会がかなった時には、まさにしてやったりの気分。思わず童心に返ってハイタッチ。そして「ちょっとはしゃぎすぎたかな」といった顔を見合わせ、テレ笑いしたものである。
 
 

―日記からこぼれた里山暮らし余話―
里山らいふ