根雪が積もれば小屋に近ずくのはむずかしくなる。
それでもごくたまに、雪害などないか様子を見に訪れる。
ストーブに火を入れ、室温がおおむね十度くらいに上がった時分、小さな羽虫がぶんぶん羽音をたてはじめる。
体長一センチほどで羽根にまだら模様のついたハエの親戚みたいなのと、三ミリほどの小型の蚊と、ハエの子分みたいなの、それに二センチ近いハムシの親戚みたいな、四種類。合わせて数十匹はいる。
風でも吹き荒れようものなら、凍てつく冬の森は、小鳥さえ沈黙するほど寒さがこたえる。室内とはいえ、断熱材さえ使ってない素人の手作り小屋など、すきま風が忍び込んで外気とさほどかわらない。
寒さに耐える秘密は!?、エネルギーの補給は!?、それにもましてなんのために生まれてきたのか!?-など考えるのは、人間の傲慢さだろうか。
夏の間も、二ミリにも満たない小さな虫が飛んでくる。
音はすれども姿は見えず、止まったときはじめて黒い点ほどに見えるといったものもいる。
いくら小さくとも羽根を振るわせるにはそれなりの筋肉の動きと、エネルギーが必要なんだろうと素人なりに考えるが、針の先ほどのからだのどこにそんなしくみが隠されているというのか。
名もない小さな虫たちに命を吹き込んだ造詣主の差配は、人間の浅知恵の及ばないところにあるようだ。