雨池は惜桜小屋のすぐ脇にあって、デッキから3メートルほどの、ほぼ真下に見下ろせる。
 池といっても、小屋づくりに使った、コンクリをこねるポリ製の舟を埋め込み、まわりをコケのついた石で囲っただけのミニサイズ。
  屋根から落ちる雨だれを受けて、いつもほぼいっぱい水がはられている。雨水を貯めた池だから雨池―と、素直に名づけた。

  森の生き物たちの水場になっていて、凍結する冬場を除いて水浴びや、水を飲みにたくさんの森の隣人たちがやってくる。
  おもな常連客はカラ類のシジュウカラ、コガラ、ヒガラ、ヤマガラのほかヒヨドリ、ハト、メジロ、オオルリ、リス等々-。
 カラ類のようにグループ連れ立って来る時もあるが、ひとりで、または夫婦ふたりというのが多い。先客がいるのを、近くの木の枝でおとなしく順番待ちする光景なんかも、時折見られる。
  水浴びをするバシャバシャ水を飛ばす音で「アッお客さん」とわかるけれど、来るときも帰るときも密(ひそ)やかに音をたてず―がどうやら野生のマナー、いや習性のようだ。

 水浴びのスタイルは似たり寄ったりだが、個性的なのはヒヨドリで、これは"カラスの行水"。岸から水面に飛び込み、バシャバシャと二回羽ばたくだけで、一瞬のうちに岸に戻る。
 それを何度か繰り返しておしまい。
 夏の間は二時間置きくらいに夫婦でやってきて、水浴のあとはいつも目と鼻の先のウワミズザクラの枝で、ていねいに羽づくろいをしてから仲良く飛び去ってゆく。
   警戒心が強く、少しでも物音をたてたり写真を撮ろうとデッキから身を乗り出したりすると、あのキーエという怪音を残して飛び去ってしまう。
あまりの敏感さに腹の立つときもあるほどである。

  逆にあまり警戒心のないのが、数時間おきに連れ立ってやってくるカラ類だ。派手に身動きをしない限り人の姿にあまり関心を示さず、へたをすると、デッキの手すりに置いた人の手に、触れんばかりの近くに止まることもある。
  写真[左]もデッキからカメラを構え、見下ろして写したけれど、シジュウカラ夫妻は頓着せず、ふたりだけの世界を楽しんでいた。
 カラ類はみな陽気でおしゃべり、そして親しげなところがいい。
  
 

―日記からこぼれた里山暮らし余話―
里山らいふ

右はメジロの水浴