直径 (π) 高さ (H) 重さ (W) 容量 (CC)
 碗 77π 73mm 264g 180cc
 皿 148π/162π 20mm 330g ---


露人 浜田純理 黄瀬戸山柿 
美濃焼 

魯山人の器も良いですが露人の器も良いですね。
「桃山の心を底流に現代の美意識を本流に土の持つ暖かさと炎の神秘さを醸し出すことが出来るならと作陶しております」とは、陶号露人、浜田純理の我是であります。

黄瀬戸とは美濃焼の作風の中で、木灰と鉄分を含む陶土で酸化焼成で黄色く焼き上げた作風です。
〔あぶらあげ手〕(あやめ手)艶が無い、変化、織部好み
〔ぐい呑み手〕艶があり、端麗、利休好み
に大まかに区別できます。

刻紋様やワンポイントに胆礬(たんばん、硫酸銅)が入ります。この硫酸銅鉱石はとても綺麗なブルーですが焼成すると緑になります。又、恐ろしい鉱物でもあります。池に入れると藻を根絶やしにでき、人の肌に触れると被れて炎症を起こします。土は美濃のもぐさ土、釉薬は椿灰、姥目樫(うばめがし)の灰、焼成温度は1240°が良い黄色が出るといわれております。


露人の黄瀬戸は水に濡れた部分だけが黄金色に変化します。壺屋や備前が光によって全く違う色合いになる不思議のように、露人の水変化の妙も溜息が出てきます。この「水」にも実は黄瀬戸の作陶の極意が込められています。

美濃の湿気の多い山中にあった、大窯で焼かれた桃山時代の黄瀬戸はまさしく茶人好み。現代の作陶家にも水分を含んだ陶土を一緒に窯に入れて、火元近くの高温で焼成し焦げ目をつける作風があります。いにしえの黄瀬戸に近づく作家のチャレンジは今も続いているのです。

黄瀬戸の風合いはまるで山奥の柿の木の朽葉のようです。
柿の葉が菌に侵されると、絵もいわれぬ美しい紋様が現れます。比較的管理の行き届いた農地や人家の柿木にはあまり見られない紋様です。消毒の為、柿農家は落葉病や炭素菌に侵されぬように柿木樹皮を高圧水流で剥がし、落葉は土埋め、焼却の作業をしています。

器を真後ろから見てみましょう。
正面の躍動的な男性的フォルムから、静的な落ち着いた優しい後ろ側は女性的でもあります。

男性でもあり女性でもある。静止しているのに動いているようだ。肌は綺麗でもあり焦がれています。形容はどっしりしていても不揃いの中に収まりがあります。手ひねりの陶土が炎に焼かれて生み出された芸術品です。

加藤孝造の黄瀬戸に出会ってからずっとコーヒーカップを探しておりました。やっと巡り会ったこの器は黄瀬戸の源流の伝統も、現代の息吹も練りこまれていて、すっかり露人の黄瀬戸に魅了されてしまいました。

〔あぶらあげ手〕であるのに半艶もある妙は、さしずめ「山柿手」と呼びましょうか。丸い皿ではない形状は当コレクションに初登場ですが、二重皿構造は高橋春斎氏以来でした。黄瀬戸は色発色が出ずらく、難易度の高い陶器です、コーヒーカップはなかなか探してもお目にかかれません。