第17回:四角錐の伝承作品 

(2025年4月号:通巻766号)

 前号の六角錐の伝承作品に続いて、四角錐の伝承作品です。四角錐と言えば「チャマの家」(四角錐1つ)と「ブロスバードの家」(四角錐2つ)がすぐに頭に浮かびました。その2つを中心にご紹介することにしました。


チャマの家

チャマの家

 左右の人差し指の先端で四角錐の頂点を引き上げる、シンプルで美しいかたちの伝承作品です。四角錐の伝承作品というと最初に思い浮かびます。


サガリバナ

サガリバナ(ソロモン諸島)

 「チャマの家」と中央部分が似ている「サガリバナ」という立体的な作品があるので合わせてご紹介しました。ただしこれは「四角錐」のカテゴリで紹介するのは本来はやや不適切です。このかたちは左右の手を結ぶ水平な方向の軸回りに3回回転対称形をしている美しいかたちです。2カ月前の「あやとりの楽しみ」第15回でシシドユキオさんの「八面体の結晶」という作品をご紹介しましたが、それにならうとこの「サガリバナ」は「2つの六面体の結晶」なのです。


ブロスバードの家

ブロスバードの家(カロリン諸島ほか)

ブロスバードの家(カロリン諸島ほか)

 2つの四角錐が並んだかたちをした作品です。類似の作品が様々な名称で広く知られているようです。2つの四角錐が離れていたり(上の図)、絡んでいたり(下の図)する完成写真や図があって、どちらが正しいのかよくわかりません。これも好きな作品です。


孤児の少年、

孤児の少年(イヌイット)

 下に凸の四角錐の作品が何かなかったかなと思って思いついたのがイヌイットの伝承作品の「孤児の少年」でした。このかたちがなぜ「孤児の少年」と呼ばれるかというと、孤児の少年がよく座っていたドアが開いている状態を表しているのだそうです。

閉じたドア(イヌイット)

 その、「開いたドア」に対応するのがこの「閉じたドア」なのだそうです。

下に凸の四面体(「孤児の少年」のアレンジ)

 「孤児の少年」は四角錐というには量が1本足りないので、それを補う手順を考えてみました。四角錐の部分の紐を二重にしただけです。「チャマの家」も「ブロスバードの家」も底面の四角形の稜が足りないのですが、それらはまだうまく工夫ができていません。(下手に工夫して糸を増やすより、シンプルなオリジナルのままのほうが美しいかもしれません。)


2025.11.02


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2025.11.02 公開
2025.11.02 更新
長谷川 浩(あそびをせんとや)


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