第16回:六角錐の伝承作品 

(2025年7月号:通巻765号)

 多面体構造の立体作品を3回続けましたが、いずれも現代創作作品でした。伝承あやとり作品にも素晴らしい立体的な作品があります。今回は六角錐、次回は四角錐の立体的な伝承あやとり作品をご紹介する回としました。いずれもとても好きな作品です。

 この回は「返し取り」を多用するため、その説明も行いました。


ナバホの鳥の巣

ナバホの鳥の巣

 下に凸の六角錐の形状の作品です。糸はゆるくたるませたかたちにするので、直線的ではなくおわんのようなかたちになります。

 立体的な作品は写真からだとかたちがわかりにくいことがあるので、今回はCGを用意したのです。

 でもスペースの都合で割愛しました。残念…


スーダンの鳥の巣

スーダンの鳥の巣

 手首を利用する取り方です。これも美しい六角錐ができます。「ナバホの鳥の巣」と比べると長いあやとり紐が必要です。でも「鳥の巣」の六角錐は小ぶりになります。


パタゴニアの「火山」

「火山」(パタゴニア)

 上2つは「鳥の巣」でおわん型(下に凸)の六角錐でしたが、これは「山」なので上に凸です。あやとり作品としては山の頂点をどうやって支えるかが問題になりますが、これは両手の中指(一番長い指)の先端で引き上げるデザインになっています。ただ引き上げるのではなく、それが火山の噴煙であると解釈することで無駄がなく全体が見事な造形になっています。素晴らしい作品だと思います。


ライアの花・ライアの実

 バヌアツの素晴らしい立体的な作品です。前後を逆に取ることで「ライアの花」「ライアの実」を取り分けることができます。

ライアの花 ライアの実

 江口雅彦先生が、別冊数理科学の「パズル I」(1976年11月:サイエンス社)という雑誌に「あやとりはSF」という記事を書かれているのですが、そこで最初に取り上げられているのがこの「ライアの花」で、このおわんのような形の中にグラスを入れ、そこにお酒を注いでもらってグラスには手を触れずにあやとり紐を左右に引いてグラスを支えてお酒を飲む、というパフォーマンスが書かれているのです。(ちなみにSFは String Figure の略ですが、Scientific Fun, String Fantagy といった解釈も語られています。)

 この記事を読んで以来、私は常々このパフォーマンスをどこかで披露してみたいと思っているのですが、学生時代にこの本を入手してからはや40年、還暦を過ぎた今でも機会に恵まれないでいます。今回、この話を書きたくて写真を撮ってみました。

「ライアの花」にグラスを載せる(採用画像)

「ライアの花」にグラスを載せる(没画像)

 家にあるいろいろな大きさ、かたちのグラス、コップ、ぐい飲み、茶碗などを試したのですが、上のものが一番しっくりきました。


2025.11.02


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2025.11.02 公開
2025.11.02 更新
長谷川 浩(あそびをせんとや)


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