第15回:多面体構造(その3) シシドの正四面体・立方体、ほか

(2025年6月号:通巻764号)

 前号に続いてシシドユキオさんの多面体作品のご紹介です。黎明期のあやとり協会の手書きの会報に掲載された作品です。

 2024年度の平面上の対称性が高いあやとり作品は、パターンが複雑になるにつれて長いあやとり紐を使う必要がありましたが、2025年度の3回の多面体構造の作品はいずれもそれほど長い紐は必要としません。長いとパターンが左右に間延びしてしまって対称性が下がってしまうのです。自分の手の大きさに合わせて適切な長さの紐を試してみてください。


立方体

シシドの立方体

 シシドさんはまずこのような立方体の手順を紹介しています。4月号(2カ月前)でご紹介した立方体と違って、左右の手を横切る4本の水平な糸に正方形の輪が2つ、立方体の側面として掛かっているかたちをしています。両手の間に目的のかたちが作られているのが「あやとりっぽい」です。かたちを整えるのは正直かなり大変ですが、これをデザインされたのはすばらしいと思います。


正四面体

シシドの正四面体

 シシドさんは立方体に続いて正四面体を記載しています。正四面体の手順は立方体の手順に準ずるものになっていて、差異だけが記述されています。こちらのほうがかたちが定まりやすく美しいと思います。好きなあやとり作品です。立方体は側面の2つの正方形を作りましたが、正四面体は2つの三角形を作って、その1辺が同じになるように絡ませます。

 では、立方体の手順を参考にして2つの三角形を絡ませないようにするとどうなるでしょうか。これは雑誌本文にはスペースの都合上載せられなかったのですが、下図のように三角柱を作ることができます。

三角柱

 指の本数が足りないですが、五角柱も作れそうです。「犬小屋」とか名付けたくなりそうです。


八面体の結晶

八面体の結晶

 シシドさんはこんなかたちを作って、それを2つ、3つ…と増やす手順も発表されています。


八面体のアレンジ

 「八面体の結晶」は美しいのですが、正八面体として足りない稜を足したくなります。工夫してこんなあやとりを考案してみました(手順は本誌を参照してください)。

正八面体

 考え方は、「あらかじめ片手の手首に輪を用意しておいて、最後にその輪を中央に移す」という方針で作りました。任意のあやとり作品に適用できるというわけではありません。


参考文献

  1. 幾何学模様のあやとり 宍戸行夫 日本あやとり協会会報(SFAJ)No.5, p.12(1980.6)
  2. あやとりマンダラ(4) 宍戸行夫 SFAJ No.10, p.15 (1983.11)

2025.11.02


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2025.11.02 公開
2025.11.02 更新
長谷川 浩(あそびをせんとや)


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