星を組む
名刺のような丈夫な硬いカードに図1のような鉤型のスリットを入れたものを3枚用意して、それを上手に組むと図2のようなきれいな形になる、というパズルがあります。 パズルがお好きな方なら、どこかでご覧になったことがあるのではないかと思います。
×3枚 ⇒ 図 1 図 2 先日、正三角形に同じように適当なスリットを入れたものを組むことを考えてみました。正三角形の場合、図3のようなスリットをいれてやれば4枚を組むことができそうだと気が付いて、図4のような形を組んでみました。これは、とても面白いパズルでした。
×4枚 ⇒ 図 3 図 4 図4のような形を組もうとしたとき、最も対称性が高いパーツを考えると、理想的には図5のようなものが4枚でできるはずです。ただしこの場合、パーツはドーナツのようにリング状の構造になりますから、組み立てるときにはどこかを切断しないとパーツ同士をかみ合わせることができません。(4次元空間を通せれば組めるはずですが、もちろんそんなことはできません。)
図 5 図5は、三角形の中心から3つの頂点に向かってスリットが入っています。パーツは4枚ありますから、それぞれのスリットが、他の3つのパーツのそれぞれと噛み合います。その結果図4のようなきれいな構造になります。この図5の3つのスリットのうち、1本を中心から反対側に持っていったのが図3のパーツです。こうすることによってパーツが「輪っか」ではなくなりますから、この3次元空間内で組むことができるようになります。
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図3が組めたので、次は正五角形6枚が同じように組めるのではないかと考えて、図6のようなパーツを設計してみました。
図 6 先ほどと同じように、5つのスリットがそれぞれ他のパーツと噛み合うはずです。先ほどの図4は、正三角形4つの合計12個の頂点が立方八面体の頂点になりましたが、この例だと正五角形6つの合計30個の頂点が二十面十二面体の頂点になるはずです。
ところが、この正五角形6枚を組むのがものすごく難しいのです。正三角形4枚のときには、最後の1枚を組むときには、すでに組みあがっている3枚を片手で保持すればいいのですが、図6のパーツを6枚組もうとすると、どうしても途中で崩壊してしまいました。原理的にはかならず組めるはずだとわかっているのに手先の器用さが足りなくて組めない、とても残念な思いをしていました。
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そこで、パーツを保持しやすいように、安定性を増すように、そして組み上がりが美しいようにということで、パーツを以下のように星型に改良してみました。
図 7 : これを6枚用意する この変更によってパーツは丈夫になりますし、パーツの「向き」がわかりやすくなります。また、パーツを支えやすくなります。ただし欠点もあって、星型の頂点が他のパーツのスリットを通しにくい(通せない)という問題が出てきます。5本のスリットのうち、唯一外周に繋がっている図7の下向きのスリット、これがどのような位置関係になるかをよく考えながら組まないと途中で行き詰まります。
⇒ ⇒ 図 8 : 1枚 図 9 : 2枚 図 10 : 3枚 図8から図10は、パーツの1枚目から3枚目までを組んでいる途中図です。こうやって1枚ずつ組んでいきます。 パーツは6枚必要なのですが、今回は3セット分、つまり18枚用意しておいて、途中まで組んだものを保存しながらテストしました。(途中経過を save しておいて、はまったら save point に戻る、という感覚です。)このような模型を組んでいると、例えば3枚組めたところに4枚目を入れると、全体が崩壊してしまって3枚組んだところに戻せなくて最初からやり直し、ということがよく生じます。そのとき、お手本なしで「さっきと同じ状態」にするのがそう簡単ではなかったので、セーブポイントを残しつつ、全く同じものを2組並行して作るようにしたのでした。
こうして苦労して完成させたのが下の写真です。組むのにはとても苦労しましたが、完成できたときの達成感は格別でした。
図 11 : 完成!! 苦労が報われたと思える、美しい模型ができました。
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日詰明男さんの星籠:Star Cage #5と呼ばれるものがあります。今回作ったのもは、この日詰さんのスターケージと同じ形のものです。スターケージの方は星型がフレームモデルですが、私の方は星型は面モデル、という違いがあります。