鍋
ここ何日か訳あって一人暮らしをしている私は、先日の新聞で見た「一人暮らしの炊事には中華なべを」 というような記事が気になっています。皆様、もしも何らかの理由で鍋を1つしか所有してはいけない ということになったら、何を選びますか? 中華なべ? フライパン? 雪平? 寸胴鍋? 圧力鍋?
食べるという行為は、いまさら申すまでもなく人間が生活してゆく上でとても重要で基本的なものです。 世の中には食べることに関して、本当に様々な価値観が存在していると思います。例えば家族と一緒に 暮らしている場合ならば、誰か一人の価値観だけがストレートに現れるということはまずありえないことで、 家族を構成するそれぞれの嗜好やら事情やら考え方によって、どのような食事をするかが決まると思います。
ところが一人暮らしということになりますと、自分が何を食べるか、もしくは食べないかを決めるのは 自分だけです。食べることに関する価値観がそのまま食事に反映されます。私の価値観は大変明快でして、
という順番になります。ここでいう「手間」とは、準備の手間であり、後片付けの手間でもあります。 じゃあ準備や後片付けの手間のない食事は、というと、外食に行くとか、お弁当などを買ってくるとか、 宅配の食事、とかいうことになるんですが、出かけるのは着替えたりなんだりで面倒だし、なにより コストの問題があります。毎食外食をするくらいなら、そのお金は別のものに使いたい。(パズルとか。)
- 手間(時間)をかけないこと
- コスト(お金)をかけないこと
- 味がおいしいこと
じゃあ安くて手間のかからないものなら何でもいいかというと、さすがに「何でも」というのは 抵抗があります。例えば学生のころ、同じ寮に住んでいた友人で、1週間を30円のパンの耳とジャム 1ビンと水だけで過ごした、とか、米と味噌だけで過ごした、とかいう話がありましたが、さすがに それはちょっと・・・。 注:私ではありません。本当です。
というわけで最初の話題に戻るのですが、手間がかからない、コストもかからない、それでいて 「炭水化物+α」だけではない食事、というわけで今回大活躍してくれているのが「土鍋」です。
土鍋ってすばらしいです。普通、煮物や炒め物をしたとき、いくら一人暮らしと言っても その鍋やフライパンから直接食べたりすると、わびしい感じがするし、口当たりが悪いし (実は経験者なんですが)、結局盛り付ける器なり取り皿なりを使いますよね? ところが 土鍋ならば、それをそのまま食卓に出しても何ら違和感がありません。
さらに、土鍋ならば食べ残しがあってもそのまま置いておいて、あとでご飯を加えて雑炊っぽくしたり、 材料を足して変化をつけたりできます。つまり複数回の食事の間、洗わなくていい(ことがある) ということなんです。
メニューも様々なバリエーションが考えられます。材料も、おいしいものが食べたければいくらでも コストをかければいいし、逆に経済的にしたいと思えば、例えば冷蔵庫の残り物だって工夫すればそれなりに 使えます。調理の手間もかかりません。たとえばこのところの土鍋メニューとして、次のようなものを 作っています。
大根とこんにゃくのモツ煮風 冷蔵庫で半分忘れられていた大根3分の1と、品質保持期限の近いこんにゃくを唐辛子味噌味で煮込んだもの。 コマ肉が少しあったのでそれも入れます。準備の手間は大根とこんにゃくを切るだけなので5分もかからない。 あとは煮えるのを待つだけ。なべと包丁・まな板以外の洗い物は出ない。
(本当は豆腐も入れるつもりだったのだが、鍋が小さくてこんにゃくをいれた段階であふれてしまったんです。)キムチ鍋 白菜や大根を適当に、豚コマ適当、キムチ適当。これは本当に鍋に入れて火を通すだけ。 煮カツ鍋風 玉ねぎをざっと煮て和風のだしで味付けし、カツ(メンチカツが安かったので買いました)を加え、卵でとじただけ。 卵は小さなボールで溶いたのですが、卵を鍋に加えてひと煮立ちする時間が、ちょうどそのボールを洗うのに よい時間です。 卵丼風 煮カツ鍋がちょっとしつこかったので、玉ねぎを増やして卵でとじただけ、というのも作ってみました。 まとめ買いしてある玉ねぎ1個をざっと切ってざっと煮て、和風の味付けをして卵でとじるだけです。お湯が わくまでの時間で玉ねぎを切り、玉ねぎに火が通るまでの時間でまな板と包丁を洗って卵を溶いて もう1品の用意をし、卵が煮立つ間にボールを洗うと、できたときには鍋以外の洗い物は終わっています。 さて私は別に貧乏自慢をしたいわけではなくて、料理の手順というのは「動的計画法」、 早い話がパズルだなーと思うわけです。日々料理をされている熟練した方ならば 自然と最適な手順で作業をされるのでしょうが、私のような素人ですと、あらかじめこういう手順で 作業しよう、と考えておかないと短時間でできません。今日も帰りに車を運転しながら、 頭の中で手順をシミュレートして予習しました。
というわけで帰宅15分後にはおいしくビールを飲んでいました。洗い物も鍋と箸だけです。 材料費も玉ねぎ1個と卵2個だけです。これって、難しい条件のパズルが解けたときのような 達成感があります。
- まず鍋に水を張って火にかける(帰宅後1分後)
- 着替えて、ついでにPCの電源も入れて、貯蔵棚から玉ねぎを1個取り出す(2分後)
- 玉ねぎを切る(3分後)
- そろそろお湯が沸くので玉ねぎを入れる(5分後)
- もう一品を電子レンジで温める用意(6分後)
- もう使わないので包丁とまな板を洗い、出し汁としょうゆでざっと味付け(7分後)
- ボールを出して卵を溶く(8分後)
- PCが起動しているのを確認してメールのチェック(10分後)
- 玉ねぎにざっと火が通ったのを確認して、卵を流す(11分後)
- ボールを洗ってしまう。電子レンジswitch on。(12分後)
- 鍋を火から下ろして食卓へ。(14分後)
- 電子レンジからお皿を出す。
- 最後にビールを冷蔵庫から出す。
で、この達成感を支えてくれているのが土鍋だ、と思うわけであります。これがフライパンで 炒め物をしていたら(中華なべでもいいです)、油ものの洗い物がいくつもあるわけで、 気持ちよくお酒に酔った後で洗うのは抵抗があります。やっぱり、「ひとつしか持てないならそれは土鍋」 というのが私の結論です。皆様はいかがお考えでしょうか。