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いまこむと いひしばかりに 長月の ありあけの月を 待ちいでつるかな
いまこんと いいしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな   3字決まり
作者は素性法師。またまたこの方も三十六歌仙のお一人です。
≪「いますぐ来るよ(行くよ)」とあなたが言われたので、この長い長い秋の夜長を今か今かと待っておりましたら、迎えたのはあなたではなくて、それを待っていたわけではないのにこうして有明の月(明け方の月)を迎える事になってしまいましたわ≫
というような意味の歌です。
この【長月】というのは陰暦の9月のことなんですが、この歌の現代語訳として、あなたを待つうちにいつのまにか長月になってしまった・・・という説もあります。
月を見ていてぼやいている歌・・・いずれでますが、59番の歌が同じような内容の歌です。
ところで素性法師さんのお父さんは12番「あまつかぜ〜」の僧正遍昭さん。法師の子は法師に・・・といって、無理やり?息子を僧にしたんだとか。でもどちらもいい歌ですよね!
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吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
ふくからに あきのくさきの しおるれば むべやまかぜを あらしというらん   1字決まり
作者は文屋康秀。六歌仙のお一人です。余りこの方の詳細は知られていません。
≪山の風がとても荒々しく吹き付けるので、秋の草木は萎れてしまう。だから山の風のことを嵐というのか。なるほどなるほど≫
こういうのって漢字を覚える時によく使いませんか?昔の人もこうやって漢字で遊んだんですね〜
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月みれば ちぢに物こそ かなしけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど   2字決まり
作者は大江千里。歌手の大江千里(おおえせんり)さんではなくて、おおえのちさとさんと読みます。
≪秋の月を見ていますと心が様々に乱れ、何を見てもどんなものでも物悲しく切なく感じます。私一人のための秋ではなく、私のためにだけ秋が来たわけでもないのに・・・≫
21番では同じ月を題材にして、なかなかやってこない殿方への恨み言を表現し、こちらではそんな事も含めさらに22番のように春夏と咲き誇っていた草花も枯れ始め、やがて厳しい冬がくる事への寂しさというものを表現しています。
確かに秋の月は物悲しいものかも・・・
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