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1994年4月4日。いつもと何も変わらないはずのこの日が、私の運命を大きく変える1日になった。
お腹の子供が『双子』だった。
検診終了間際、エコー検査のモニター画面に何かが映った。慌ててもう一回検査をやり直した。
すると心臓と頭が2つずつあった。「双子だ」
あ然としてしまった。世界中の「ビックリ」を集めても足りない位、驚いた。ドキドキした。
そして会計を済ませると大急ぎで病院を後にした。
向かった先は市役所。
慌てていたので今日発見された子供の分の「妊娠届」を貰わないで窓口へ行ってしまった。
「すみません、今病院でお腹の子供が双子だって言われて、もう1冊母子手帳下さい」
ちゃっかり1冊貰って家に帰り、文さんに電話する。
「あのね、母子手帳が2冊になった」「何それ?!」話がかみ合わない。
何回も同じ事を言った、そしてようやく彼は気づいた。「ホントお?」
その言葉の向こう側に戸惑いが見えた。「詳しいことは後で・・・」慌てて電話を切り、今度は実家の母へ。
「エッ・・・」母はそういったきり言葉をなくした
。「あっでもね、大丈夫・・・だから・・・」
全部言い終わらないうちに涙声になってそのまま受話器を置いた。
ショックだった。
もっとみんなビックリして驚いてくれるものと信じていたから。
涙がどんどん出てきた。
「双子」と聞いた時正直素直に喜べなかった。
ちゃんと産めるのか、育てていけるのか、金銭的なことも体力的なこともすべてが不安だった。
だから、みんなに驚いてもらって、自分の不安を吹き飛ばしたかったのに。
なんだかとっても悪いことをしてしまった気分だった。取り返しのつかないことをしたような。
何処かへ行って消えてしまいたいような気分になって、ただただ泣いた。
脱水症状になるかもしれないと思うくらい、大泣き大会で絶対1等賞になれる位、泣いた。
泣いても泣いても、不安が消えない。そのことが切なくてまた泣いた。
そのうち夕方になったことがまた悲しくて、涙が止まらなくなった。