明日香

「明日香」　牛乳ベースの白い鍋

　奈良県は、私が住む信州と同じで海なし県である。流通が進歩した現代なら海辺と同じように魚介類は簡単に手に入るようになったが、その昔は海の幸を口にすることもなかなか難しかったであろう。それはさておき、海なし県を訪れる際に海の幸がないのは仕方がないわけで、それ以外のもので美味しいものや郷土料理を探すことになる。

　古代の文化が花開いた奈良県南部の飛鳥地方には、この時代に作られていたといわれる乳製品を再現し、お土産として売っている。古代のチーズといったところでなかなかの珍味だそうだ。そんな古代の乳製品にちなんでか、当地方独特の鍋料理「飛鳥鍋」がある。牛乳をベースにしたという珍しい鍋だが、鶏肉と野菜がたっぷりと入ったヘルシーな鍋である。

　私が明日香村の民宿でいただいた飛鳥鍋は、牛乳の乳臭さが白味噌やショウガで隠され、まるでシチューのような感覚でいただけた。牛乳なので牛肉がいいのではとも思いたいが、やはり鶏肉と相性がいいのであろう。地元でとれた野菜もふんだんに入った鍋料理はまさにスローフードにふさわしく、最後のしめにいただいた雑炊はなかなかの絶品であった。

（この項おわり）

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