日本を代表する古都である奈良は、市内のあちこちに名刹・古刹があり、多くの観光客だけではなく、信仰心の厚い人たちが訪れている。近代的な街並みに突然現れる古の建物というのが、この奈良では実にマッチしており、市民のなかにも「古都に住む」という意識がしっかりと根付いていることをうかがわせる。
そんな奈良の伝統食に「茶粥」というのがある。文字通り、お茶で炊いたお粥のことであるが、シンプルな味わいが心地よく、底冷えする古都の冬の味覚にぴったりといえる。奈良市内には茶粥を食べさせてくれる店がいくつかあり、茶粥のみならず、茶粥定食とか茶粥弁当という名称で、懐石風にしたり、もうひとつの名物・柿の葉ずしと一緒に食べられるといった工夫がされている。
私も2軒の店で茶粥を食べたが、1軒はほうじ茶を使っており、もう1軒は抹茶を使っていた。もちろん、お茶の種類が違えば味わいも違うが、さっぱりとしたいかにも「胃腸にやさしい」食べ物であることは実感した。個人的な趣味を言わせてもらうなら、時間が経過すると苦味が出てくるほうじ茶より、抹茶の方が食べやすかった。ただ、これは好みの問題もあるので、どちらがどうというものではないことを付け加えておく。
(この項おわり)
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