高知その３

「高知」その３　カツオを塩たたきで食す

　高知には何度か足を踏み入れているが、残念ながら名物「カツオのたたき」の本当の旬の時期というのは逃していた。とくに、腹痛・下痢のアクシデントに襲われた３月下旬の旅行は、ちょうど初ガツオの時期でもあり、余計無念でならなかったのである。旬から外れたカツオのたたきもなかなかうまかったが、地元の人から「こんなもんじゃない」と言われたこともある。

　ようやく念願だった旬のカツオ、それも脂が乗った戻りガツオをいただく機会に恵まれた。私が訪れた店は、たれを付け、さらしたまねぎとにんにくを添えて食べる定番スタイルのたたきではなく、「塩たたき」と呼ばれるシンプルな食べ方でいただくことができた。あぶったカツオに塩を振っただけ。氷で締めることはせず、生暖かいままお好みでにんにくスライスやわさびを乗せてそのまま食べるのである。

　料理法はさておき、カツオの味はさすがに絶品であった。それほど美味い魚と思っていなかったが、口のなかでとろける身といい、脂の乗り方といい、「これが本物なのか」と絶句したほどだった。店主に話を聞くと、カツオは一匹ずつ違いがあるそうで、この日はちょうど上物が手に入ったとのこと。カツオ本来の味が一段とはっきりする「塩たたき」はお奨めの逸品だ。

（この項おわり）

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