十日町

「十日町」その１　木箱に入ったそば

　秋は新そばのシーズンで、一年中でそばがもっとも美味しい時期である。一概にそばと言っても、その土地その土地でさまざまなものがあり、そばだけでその郷土文化を語れるというところも少なくない。ちなみに私がイメージするそばは、いわゆるそば１００％の信州そばで、手打ちのぶつぶつと切れる歯ごたえがたまらない。

　そんななか、新潟県十日町市には「へぎそば」という独特のそば文化がある。このそばは、つなぎに海藻を使っており、やや黄色身がかかったそばである。のどごしは、つるりんと入ってしまうほどで、感覚的には「パスタ」というイメージである。その代わり、信州そばと違い、かなり腰が強い。

　「へぎそば」は通常、数人前一緒に木箱に入って出される。そうめんのように、一口サイズにまとめてあるため、食べやすい。店によっても違うが、薬味に和からしが出てきたのには驚いた。これがまた、このそばには合うから面白い。私には「異色のそば」というふうに写ったのであるが、「へぎそば」を食べなれている新潟の人には、信州そばの方が「異色」なのかもしれない。

（この項おわり）

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