東京

「東京」　食へのこだわりの原点はこれ

　東京の味覚っていろいろある。日本全国の文化が集結しているだけでなく、今や国際都市として、多国籍料理もさまざまある。それらのすべてが東京の味といっても過言ではない。そして、東京本来の味である江戸前の魚あるいは佃煮など下町の味覚も東京の味である。

　さて、そんななかで私がこれぞ東京の味と決めつけているものを紹介する。意外に思われるかもしれないが、私の東京の味は「牛丼」である。あの「早い、安い、美味い」の三拍子でおなじみのチェーン店の牛丼こそ、東京の味なのである。長野県にいる私にとって、東京は旅の中継地になるが、東京都内で食事をしようと考えたとき、真っ先に頭に浮かび、いつも入るのが牛丼の店なのだ。

　初めて東京で牛丼を食べたのは、もう２０年前になる。大学受験で上京したとき、いとこに連れられて来たのがこのチェーン店だった。びっくりしたのは、注文してわずか一分半で目の前に牛丼がきたことであった。これはまさにカルチャーショックだった。それ以来、私のなかに「東京では牛丼」の図式ができあがってしまった。もちろん、味だってまんざらではないことを付け加えておこう。

（この項おわり）

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