「ふたつのチェスト!」

 

「チェスト!」といえば、島津家・薩摩藩。一種のかけ声なのであるが、

薩摩武士が気勢を上げるときは、必ずこのかけ声を雄たけびとする。

いかにも豪胆かつ勇猛果敢な響きの「チェスト!」に旅先で2度出会っている。

 

まずは本家本元の鹿児島市。あれは、西郷隆盛はじめ薩摩軍の墓地を訪れた時のことだった。高台からのんびりと景色を眺めていたところに、あのかけ声が。

聞いた!

その時私は?

「チェスト!」

???

「チェスト!」

どこだ?

「チェスト!」

あ、あそこに?

「チェスト!」

うーん、なかなか!

薩摩には示現流という武芸作法があるそうで、このデモンストレーションを年配の方がやっていたのだ。最も、「チェスト!」って言うのは私の脚色であり、実際は「てぇーい」ってな感じだったが・・・それにしてもすごい迫力と気迫であった。あまりの気迫についついシャッターを押すのを忘れたくらいだ。


もうひとつは、鹿児島から遠く離れた関が原。戦国の武勇伝として語り継がれてきた島津義弘の「敵陣突破」による退却の舞台。四方を敵に囲まれ、退却路を絶たれたがための苦肉の策とはいえ、家康の本陣向かって突入していくとは、なんともすごい豪勇ぶりである。島津義弘の陣跡を訪れたときの感想である。

見た!

その時私は?

「島津義弘陣所跡」の碑

「ここが名高い・・・」

周囲を見渡して

「案外、見通しがきくなあ」

小さな碑を発見

「なんだ、これ?」

「チェスト行ケ」の文字

「・・・さすが!」

いつ立てられた碑かは分からないが、明らかに薩摩の人が立てたものだろう。島津義弘の武勇は薩摩の誇りなんだなあ、というのが、この「チェスト」の文字からうかがえるような気がした 。

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