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いい旅をするための6つのStep道楽者コラム目次



 

道楽者コラム 第12話


旅の天気は運不運

  日本の陸地で見られるのは四十六年ぶりという皆既日食が平成二十一年七月二十二日にあったが、最も日食の時間が長いとして注目を集めていたトカラ列島の悪石島はあいにくの雨に見舞われ、日食を観測することができなかったという。一生に一、二度経験できるかどうか、という観測のタイミングでの悪天候というのは、なんともやるせない思いだっただろう。

 私は常々「旅先の天気は運不運」という言葉を肝に銘じている。もし降られたとしても、雨もまた旅路の一演出だと割り切った心づもりでいる。ただ、旅先のここぞという観光地で雨に見舞われでもしたら、せっかくの旅気分もすっかりめいってしまう。とくに、日の出や夕日の名所といった晴れていなければどうにもならない場面のところは、日食を観測できなかった人たちほどではないにしろ、やるせない気分になるだろう。

風雨が強かった輪島朝市 計画段階では、雨降りを考えずに旅程を組むことが多い。ただ、絶対に雨が降らないとは言い切れない。天気予報とにらめっこをしながら、雨降りが避けられない可能性が高まれば、雨を考慮した旅程のバージョンを作っておくなどの対策を立てることになる。仮に雨が降らなければ当初の計画どおりに旅を進めればよいだけの話なのである。

 天候のリスクをできる限り避けるためには、各地方の気象の特徴を知っておく必要がある。例えば、六月から七月の梅雨時は必ず雨が降ると考え、風景を楽しむような旅は計画しない(雨の情景を見たい場合は別)。また、八月から九月の台風シーズンに西日本、とくに九州沖縄を旅行する場合は、台風の影響を視野に入れる必要がある。台風が直撃しそうな予想が出ているときは、登山の悪天候時と同様、旅行を取りやめるという勇気のいる決断をしなければならない。

 北海道は夏が旅行シーズンであるが、七月から八月にかけては予想以上に雨や曇り空の日が多い。過去何度かこの時期に旅行をしているが、旅行中一度も太陽が出なかったという旅もあった。逆に本州が梅雨に入っている六月の北海道は、好天に恵まれる可能性がかなり高く、私の北海道旅行もこの時期に集中している。冬の厳寒の北海道もまた格別と言われているが、当然のことながら悪天候や大雪による交通機関への影響は必ずあるものと考えておかなければならない。

 冬は暖かい土地がいいからと、沖縄への旅行を計画するケースもあるが、実は真冬時期の沖縄や八重山地方は北西からの季節風の影響を受け、現地の交通の便であるフェリーが運休することも多いという。私も昨年暮れに西表島を訪れたとき、二つあるフェリー航路の一つが欠航し、もう一つの航路も影響を受けて運行時間に遅れが生じた上、とんでもない揺れでさんざんな目に遭った。

 天候に最も左右される交通機関は航空機であろう。少しでも気象条件が悪ければ遅延したり、行き先変更したり、運が悪ければ出発地に戻るとか欠航するとかというアクシデントに見舞われる。例えば、春から夏にかけての北海道の空港では、天気予報は晴れであっても濃霧の発生により、こうしたアクシデントに遭遇するケースがある。とくに行き先変更は搭乗中にアナウンスされる場合もあり、その時は「あってもしょうがない」と割り切らなければならない。

 鉄道の場合、不通という事態にこそめったに起きないが、天候によるダイヤの乱れはどの季節でも散見する。その一例として、冬に東海道新幹線を使って東京・名古屋方面と大阪以西を行き来する場合には、高い確率で関ヶ原付近での徐行運転に遭遇し、ダイヤに遅れが生じるということだ。とくに冬型が強まって寒気が南下しているという予報のときはほぼ例外なく関ヶ原付近は雪に見舞われる。したがって最寄り駅から在来線への乗り換えを考えている場合、少なくとも三十分の余裕を持っている方が安心である。