何年も、何千年も昔の事・・・、

かつてこの地を支配していた人々は、「力」を操る事に何の違和感も感じなかった

何故なら、それが彼らの「普通」であったからだ



しかし、力が力である事に変わりなく、それは、その力は闘争という人間の永遠の呪縛から生み出されたものであるのだ

故に、頂点を極めようとするものが居る

至高、最強、究極を得る為に、或いは野を駆り剣を振るい、戦いに明け暮れ、

或いは悟りを開き書物を作り研究に没頭する・・・

そんな永きに渡る力の創造も、今はその面影をなくした

・・・が、たった一握り、その力の存在を知ることを運命付けられ、

力を得る事を義務づけられる者達が居る

太古の頃より名門の武人として名を馳せて来た血筋は、

それぞれが一族に代々伝わる「力」の在り方、使い方と、

そして「宿命」を背負わされる

その中で、最高と謳われた血筋の宿命は、

この国、この星、この世界、それらの次元を超えて、

全ての宇宙を守る事

自分達でさえ知りえぬ未知の意思体が選びし「調停者」になる事を

宿命とされてきた・・・

その名、その血筋、「静谷」と言う・・・



DARK SIDE
第5話
「待ち望むは宿敵なり」





「奴」と話をした後だった、俺の頭に、不意にあの時の事が思い出される

何万、何億という時間の流れを感じさせながら、止められた時での長き戦い、

俺が、俺として存在できる所以を



それは漆黒の闇だ、他に、何も無い・・・

視覚など効きはしない、目を瞑っても目を開けても、広がるのは黒一色の光景だけだ

が、不意に背後で蠢く何かが、俺目掛けて飛び掛ってくる

俺は、躊躇わずに刀を抜く

闇の中にあって光沢を放つその刀は、大昔、俺の先祖がかつて愛用したものだという

一閃、斬撃が一文字に輝く、

そして見えたのは、この世の者とも思えぬ怪物

俺は身じろぎも怯えもしない、こんな奴らを見るのは、さして珍しい事ではない

物使い、またはダークサイドとさえ呼ばれる、能力者たち

彼らが独自に用いる魔物生成の儀は、俺は五億回は、やらされた

はじめは、本当に小さな奴しか作れない、

魔獣とも、怪物とも呼べない、世にも恐ろしい姿をしている訳でもなく、伝説で出る格好良いモンスターでもない

見れば、愛らしい、小さな生き物だ

戦闘能力も皆無

しかし訓練を積めば、先に述べたような凄まじい怪物は作れるし、

イメージを変えれば人と何ら変わりない、しかし能力は遥かに高い擬似生命を精製する事も可能だ

最も、人に近い存在は本当に一部の者にしか扱えない、何故人型がダメなのか、

それは、恐らく想像するまでもないことだろう

命を弄ぶって事だ、詳しい事は、言うべきではない

確かに作られた存在は命令を忠実に実行するだけだ、しかしその中に確実に命はあると、

確かな意思をもって動くものには全て命があると、昔見た本に書いてあった

なるほど、魔獣の核は幾何学的な様々な文字を記した何かの物体、

それは、塩基配列上に並べられた人の遺伝子のプログラムと同じって事だ

・・・長い薀蓄終わり、

俺が斬撃を食らわせた怪物は、何をするでもなく消えていった

核をぶった切ったのだ、絶対に消滅する

「・・・フォッフォッフォ、やるようになってきたのう?」
「爺さん、俺としては早く帰って冷治の相手でもしてやりたいんだが」

俺は、家で一人寂しくしている義理の弟である冷治の姿を思い浮かべる

あいつの生い立ちなど、本人が話そうとしないのだから興味無い、

ただとてつもなく凄惨な過去である事は、始めてあった、あの光景を見て分かる

あいつの目は死んでいた、服は着ていたが、殆ど、無いも同じだ

そして季節は冬、寒空の下で今にも死に絶えようとしているあいつを、俺は介抱した

したは良いが、ほっときっ放しの状態だ、

恐らく親父もお袋も今日も帰ってこねぇ、

大企業のトップににあわねぇ庶民的な家に、あいつ一人はさみしすぎる

せめて俺が、魔物生成の儀で、あいつの身の回りの世話をする存在を作れば良いが、

たとえ太古より、能力者たちの統括を行ってきた血筋の一つである「静谷」と言えど、

それはタブーだ、第一その先にある結末ってのが、哀しすぎる

誰かを失って自分も失うなら、最初から何も無い方がマシだ

・・・また、クソ長い薀蓄垂れちまった

俺の頭上に浮いているこの爺さん、名前、何ていったっけか、

忘れてしまったが、恐らく爺さん自体覚えてないだろ

とにかくこの爺さんは、俺の武術の指導を行う先生だ

師匠と呼んじゃいけない、そう呼ばれて良いのはだな、東ほ、ゲフンゲフン・・・

「・・・諦よ、弟の心配をするのはいいが、自分の心配もしたらどうじゃ?」

ああ俺が悪かった、俺は爺さんを睨む事でそう伝える

この爺さん、人の心を読む力があるらしい、思うだけで意思の疎通が出来るのは便利だが、

相手がしわのジジイだと気色悪い

「綺麗なお姉ちゃんが良かったかの?」
「義理の妹でも、可愛い幼馴染でも、離れ離れになった女友達でも良いぜ・・・、
先輩は許すが綺麗なお姉ちゃんは趣味じゃないがな」
「こだわっとるのう」

ああ悪かったな

マニアックに選別する俺も俺だが・・・

さて、俺の周囲にはこのジジイが作り出したバケモンが大勢いる、もっと短く言うと、取り囲んでる、・・・短くも無いか

ま、とにかく技が熟練の域に達すれば核もそこら辺の小物と自分の思念で十分だ

実はこの暗闇、何も内容で、視覚をかく乱させているだけだ、

俺には分かる、撹乱させた視覚以外の全ての感覚、無論第六感も第七感も使えば、

そこは森を模した擬似空間である事が判別できる

暗闇である必要は、目が使えない恐怖を断ち切り、他の感覚で戦えるようにする事

これ以上突き詰めるとまた長い薀蓄になるのでよしとくが

「さて、今回のはちと強めじゃが・・・」
「舐めんなよ、俺だって今まで、伊達にこの時間の止められた場所で戦ってきたわけじゃない」

ここに通い続けたのは、実際に流れた時間にして十五年は経つ、

だが俺が感じ取った時間は、一万年すら超えている気がする

先人達は、億や、兆の時間すら感じ、「調停者」足り得る存在となっていったのだという

「調停者」

一説に、宇宙が自分を維持する為に知的生命体から選出する戦闘員

宇宙を滅ぼし得る因子を除去、消滅させるのを生業とする

先人達が言うに、この存在に気付いた文明は全ての平行宇宙、パラレルワールドを含めても自分達だけという(最も、今ではその説があった事すら消滅しているが)、自慢に満ちた説を聞いたが、

実際信じてしまうほど、「調停者」への道は長く険しい

最も、だからと言って何も無ければ平穏が待つ、なら俺は、自分の戦いを展開する気でいた

実際、何するか決めてないが

俺はぐっと刀を握り、周囲を取巻く化け物どもを睨む

四角が撹乱された中で、風景以外の、詰まる所動く物体、敵と味方と第三者とかは視覚に捉えることが出来る

最も、さらに高度な鍛錬ではそれすら見えない、気だけですべてを感じ取れというものさえあるが

「神の影、全ての時から外れし究極の剣舞・・・」

俺は静かに、言葉を紡ぐ

神影流、ダークサイドの能力と共に、静谷のものに代々伝授される剣術の流派だ

「神影流奥義!、冥牙闇空剣!!!」

俺の刀は闇に包まれる、ありとあらゆる気の流れを制し、剣を振るう、神影流の奥義だ

俺が放つのは、冥牙闇空剣、究極の邪矛、負の結晶と化した自分の獲物で、黒の暴風雨を巻き起こす技だ

俺のはなった剣戟は、元は銀色に輝く光の剣なれど、負の瘴気を纏い、

邪悪なる暴風雨を巻き起こす、闇の必殺剣と化す

この技は、むしろ取り囲まれる事に意味がある、取り囲んだ者全てを切り払う闇の刃から、逃れることは、不可能

闇の剣が、一見そう言うものに耐性でも持っていそうな化け物連中を刹那の間に消滅させた

触れただけで、その存在は瓦解したのだ

「ようやったのう、神影流奥義だけでなく、究極剣舞を得るのも、そう遠くはあるまい・・・」
「ここの時間にして、一億か?」

俺がそう言うと、爺さんは軽い軽い、と笑って返した

「・・・つ!」

と同時に、俺の体に苦痛が走る

「おやおや、空間の瓦解が始まっておる、
いつまでも時を止めて、など、無理な話じゃからの」

この爺さんはこの空間の守護者みたいなもんで、爺さんの意思体、つまり魂さえあればいつでもこの空間は精製できるが、

しかしそれでも、一日に何時間、こっちが感じる時間としては十年前後、

そんなに経てば多くのものを忘れてるんじゃないかって?

時間が止まってるんだ、つまり、脳細胞の減衰が行われてないって事

尤も「時を止める」、正確には「究極的に遅くする事」だが、その事による鍛錬、と言うか不都合は全て解消するご都合主義な空間だ

弱点や欠点の一つ二つ、無ければ面白くない

「では、また明日な、ニィハオォォォォ」

・・・古代人の残留思念というのは大抵こんなもんだ、

態度がふざけていると思うが、それは相手を油断させる為の偽りの姿、

よって俺も常にふざけているのである、いつもな















・・・あの空間に最後に入ったのは、半年前、

鍛錬として感じる時間のあまりの長さに嫌気は無かったが、しかし束縛から解放されると気楽になれるもんだ

僅か数秒が数十年に感じてしまう、そんな空間で、永遠とも呼べる長い鍛錬を積まねばならない

俺はそんな宿命を背負って生きている

そして「奴」も、俺のように実年齢と実際感じた時間があまりにも、笑える程開きすぎてるなら、

「奴」は、外見年齢と実年齢が一致しなさ過ぎた、笑えるほど

尤も本人曰くかなり若いそうだが、奴はもう、奴の人生の中で若さにこだわる必要性が無いだろう

一見すれば美少年な外見を保ち続けているのは、ビジュアルの問題だし

俺は今日、趣味で買い漁った大量のあいてむを抱えながら帰路に付いた

何のアイテムかって?、安心しろ、本が百冊程度とプラモデル十体だ

決してあんなものやこんなものという訳じゃない、硬派な漢が趣味に走りまくったものばっかだ

・・・にやり



















俺が帰ると、やはりいつものように静まり返っていた

俺も、なるべく冷治とは、せめて学校では多分に接触をとろうとしているのだが、

あいつには相当嫌われているらしい、モテない体質、とは戯れて言っているだけで、社交性の欠落した自分が、今は虚しい

男にモテたらもっと虚しいがな・・・

俺は玄関のドアをあける、そこに人気など皆無だ、どうやら親父もお袋も今日も帰らないらしい

クソ忙しいくせに、持ってる家は庶民的だ、何故だかな、しかし俺はそんな家が嫌いじゃない

むしろ豪邸で美女に囲まれるのは羨ましく思うが、やりたいとは思わない

憧れって言うのは、大抵、そんなもんだ

上手い言葉があるだろ?、隣の花は赤い、ってさ

だから、普通から見れば普通じゃない力を持った奴は羨ましく思うんだろうが、

なってみると苦悩の連続、いかん、また薀蓄を垂れ流しそうだ

さて、玄関から正当に家に入った俺だが、足元に、違和感がある

同じ高校の指定靴が、二足

冷治は今まで生きてきて、靴を汚すのは体育の授業以外ありえなかった

第一に引きこもりだから使わないそれは、僅かな土さえ払えば新品とも思えるほどに光沢を放っている、

・・・実はこれ、一ヶ月前にサイズが合わなくなったので買い直したもんなんだけどな

しかしその隣にあったのは、冷治と同じくらい綺麗にしてある靴だ、

サイズは違う、という事は、冷治が誰かを家に連れ込んでるって事だ

・・・まず、宗吾じゃない、奴は俺みたいな青春(?)熱血野郎だ、

全ての靴は各所に激しい損傷が見られる

続いて、それなりにアウトドア派の翔飛でも、日香でもない

となれば、月江しかいない

ああ、あいつら、遂にそこまで、しかしさすが俺、さすが俺はお兄さん!(*∀のお兄さん!)

・・・さっきの言葉は完全にデリートしてくれ、調子に乗りたかっただけだから

俺が荒々しく靴を脱ぎ捨てて家に上がると、そこには、月ちゃんの姿があった

「・・・よう」

俺はなんとなく声がかけづらいが、向こうは顔すら合わせてくれない

ああ、状況とか言うものを理解してるのね、

でも来たのが月ちゃんってことは・・・

ああ、そう言えば「奴」が眠らせたらしかったっけ、おのれ、いい所で

「あの、冷君、寝てるから・・・!」

月ちゃん、相当居心地悪そうに、家から出て行こうとする

「待ちたまえ」
「・・・う」

俺はいつもの調子で彼女を制止する

なんか、呻き声みたいなのを聞いたのは気にしない

「どんな事情かは知らないが、男二人で明かす夜は限りなく寒いんだ」

正確には一人、だって別個の部屋で完全に分断状態なんだもん

「と言うか、今日限り、冷治と一緒のベッドで眠る権限を与えよう、という訳であいつのベッドで寝たまえ」
「冷君、もう寝てる・・・」
「一緒のベッドが恥ずかしいなら、あいつを床に叩き落せばいい、
古来より、男は床で、女は布団で寝るものだ」

どこの世界の古来よりなのかは聞くな

「た、叩き落せないよ・・・」
「言いか、男が床で毛布一枚被って寝るのは摂理だ、摂理、遠慮するな」
「諦さんはどうするの?」

月ちゃん、かなり強引に話をそらす

フ、それで退く俺じゃないのさ

「俺は自分の部屋で寝る、そして親の部屋は使えない、鍵をかけられている」

言い放つと、俺はニヤリと微笑する、月ちゃんは、まるで図星を突かれたような顔をして一歩下がる
「・・・分かったわ、冷君のベッドで寝るから!」

負けを認めた顔で、彼女は階段を駆け上がっていった

因みに中を覗く気は無い

んな事すれば、それこそ冷治に惨殺される

おそろしや

・・・ところで、冷治、

月ちゃんがな、愛称で呼んでるの、実はお前だけなんだぞ、

分かってやれ、そして、受け入れてやれ、

それはお前の問題だ、彼女とやっていけそうに無いのなら断ればいいけどな、

つまんねぇ見栄と意地だけで、彼女を突き放すなよ・・・

俺は、心の中で冷治にそう言った、絶対に、聞こえてはいない

そんな事、分かっている、心の中の言葉を読める人間などそうそういるもんじゃないし、

あいつにそんな力は無い

直接言えば殴られるだろう、怒るだろう、けどな、

俺はお前にそう言いたいんだよ・・・

俺は一度、はぁ、と溜息をつくと、階段をゆっくりと昇っていった





















いつものような朝だった・・・

いつものような一日の始まりだった・・・

冷治は、いつものように目を覚ます

空虚な気分がやがて覚醒していき、ぼやけた視界はくっきりと輪郭を見せる

いつもの朝だ、だが、彼の隣には確実な違和感があった

小さな吐息、本来一人しか眠れない小さなベッドの上に、彼女は強引に眠っていた

尤も、彼女は今にも落ちそうだった

そんな彼女に、冷治は表情を変えず、ゆっくりと肩を抱く

落ちないようにする為に、それだけだ

「・・・・・・」

彼は何も言わない、真っ白い天井を眺めながら、何も考えない

ふと、2度寝してしまいそうになる

「・・・起きろ」

その発送に辿り着いてようやく、起こすと言う行動に出る

彼女の口から小さな呻き声が二度、三度聞こえると、ゆっくりと目を開く

「・・あれ?、おはよう・・・」
「おはようじゃないだろ・・・」

冷治は半ば呆れ気味に言うと、起き上がる

「・・・支度するぞ」
「なんの?」
「学校に行く準備」

冷治はそう言うと、ベッドから降りて、着替え始める

カーテンの生地越しに日光がてっているがそれは弱い

冬が、更に厳しさを増していた・・・





















何も無い、日常と言っていい

全てが平穏に流れていた、全ての始まりの前に送っていた平穏な生活がそこにあった

決して居心地は良くない、どちらかと言えば悪いほうの

しかし二人は運命の中にいた、

激しく渦巻く運命の

・・・だが、その運命に飲まれているのは決して彼ら二人だけではない事を、知ることになる













昼休み、やはり冷治は何も考えず木の側にいた

冬だから風は冷たい、しかし空には青い空が広がっていて、

そこから射す日光が少なくとも体感温度を上げている

彼がいつものように送ってきた日常だが、しかし違和感はあった

月江も、また同じ所に居たのだ

何故付いて来る、と彼は聞いたが、しかし彼女は何も答えなかった

一体彼女に何があったのか、彼は知ろうとしない

きっと辛い事だから

辛い事を暴かれるのは苦痛だと、彼は知っているから、何も聞かなかった

―――雲が流れていた

季節によって空の様子は多種多様に変わるが、しかし青空と言うのはどの季節にも変化は無い

青い空に、幾つもの雲が流れている

その光景に、変化は無いのだ

ふと、冷治は別の違和感を感じる

それが、殺気を含んだものだと言うことに気付いたのは、直後

彼は素早く起き上がり、周囲の光景に目を凝らす

殺気を放つものは、意外と早く見つかった

緑の芝生の上で、堂々と突っ立っている

まるで不良ですと言わんばかりのホウキ頭と、黒い鉢巻を巻いた、

それでいて不釣合いな学校の制服

彼らと、同じ学校の人物だった

名前など知らない、険しさしかないその顔は印象的だが、

他人との関わりあいなど殆どしない冷治が知る顔ではない

月江も、怪訝そうにその男を見つめていた

「・・・何のようだ?」

冷治は一応、男に話をする

このテのは絶対に無意味だと分かっているが、まぁ、一応と言うことだ

「・・・分かってんじゃねぇのか?、それとも、高校生なら大丈夫だとでも楽観してんのかよ?」

すると、その男は予想とは全く違った台詞を放った

しかし、その意味するところを、冷治は瞬時に理解する

「・・・俺の名前は黒井純、お前と同じような人種だよ」

そう言いながら、その男、純は腕をぽきぽきと鳴らしながら、近づいてくる

その様子は脅し以外の何者でもない

月江は恐怖を漢字、冷治の服の袖をぎゅっと握ったまま動じない

「・・・殺すなら俺だけにしろ」

冷治が警戒した顔でそう言うと、純はハッと笑う

「殺せ?、俺はお前を捕まえろって言われてるんだ、
尤も、俺の本当の目的は俺じゃない」
「どういう事だ?」

冷治は純の口から出た意外な言葉に、一瞬迷いを感じる

「勘違いするな、俺の組織はお前を必要としているが、俺はお前なんかいらねぇ・・・、そう言う事だよ、
さぁ、答えろ、諦は、静谷諦はどこだぁ!?」

全てが予想から外れていた

だがだからと言って混乱する様子も無く、冷治は冷静に口を開く

「俺はあいつが今どこにいるなんて知らない」

冷治は真実を言う、しかしやはりこのテのは、その事実を否定し、

何とか自分の思い通りに事を運ばせようとするのが相場だ

言い換えれば、子供じみた駄々

「知らないねぇ、じゃあお前には人質にでもなってもらおうか」

純は、これまでとは全く違う、桁外れの殺気を放つ

その殺気は全身の感覚に、焼きつくような、戦慄を覚えさせる

「待てよ」

そして純が、今まさに冷治に飛びかかろうとした時だった

二人の間に割って入り、静谷諦が、その姿を見せた
















かぁ、面倒くさぁ

俺は話がとことんまでややこしくなってるのに嘆かずにはいられなかった

だが顔は真顔だ、いつになくな

「よう、純、久しぶりだな」

俺は陽気にそいつに、純に返事をする

だが真顔は崩さない、あいつは殺気を放ってるからな

「ハ、そっちからお出迎えか、ならてめえらに用はねぇ、さっさと失せろ!」
「・・・俺を捕まえるんじゃなかったのか?」

冷治が言う、ああそうなの、

まぁ、いいけどさ

ただ、二人が席を外すに越した事は、無いな

「二人とも、非難してくれないか?、
こいつの力は衝撃波を自在に操る事、戦いとなったら周りは荒れに荒れちまう」

という訳で俺もご退場願う

「・・・・・・」

冷治は黙って、その場から退こうとする

「諦さん、その・・・」
「安心しろ、俺はまず、死なない」

月ちゃんが不安そうにしてるので俺はにっと笑い、親指を突き出す

まぁそれでも、彼女の行動は変わらないな

冷治の後にくっついて逃げていった

・・・これでいい

「さてと、純君?、君はどういう了見で俺様を狙ってるのかな?」
「相変わらずだな、その滅茶苦茶な言葉遣い」
「敬語を知らない馬鹿に言われたくねぇな」

俺は鼻で笑う

その様が、いや、俺が余裕を見せる所全てがあいつにとっては気に食わない

昔からそう言う奴だ

「・・・ここが学校だからって俺は手加減はしない、力の存在が明るみに出たとして、
だからってデメリットは欠片も無い」
「てめぇ、俺達一族がこの時代に成ってから必死になって隠してきた事を・・・!」

俺達、それは俺の親を含んでいるわけではない

黒井、それもまた、太古より能力者として最高峰の位置に立ち続けた者の一人だった

だが、長い歴史の流れでその存在意義は崩れ、無様な生き様を見せている一族で、

そしてかつて、俺の先祖にとって無二の盟友であった一族でもある

「・・・貴様、なんだってこんな事を、小学校の時の給食事件がそんなに気に食わないのか?」

給食事件、とは、俺が純の取る筈だったお替りを根こそぎかっぱらっていった事件だ

当然あいつは絡んできた、しかし素手でぶっ飛ばしてやった

思えば俺はその時から、強かったんだなぁ・・・

「・・・俺はそんな下らない事で貴様を殺そうとはしない」

どうだか、貴様ならやりそうだよ

「じゃ、一度として体育の記録を抜かせなかったこと」
「違う」
「一度として五教科とも俺のテストの点を抜かせなかったこと」
「違う・・・」
「俺の仕掛けた悪戯にはハマりまくってたくせに俺は一度もお前の悪戯にはハマらなかったこと」
「違う!」
「じゃぁ・・・」
「いい加減にしろ!」

純はいい加減マジでキレていた

という訳で俺も、真面目に問答することとする

「・・・自分の家の宿命を全うできない事で、俺に劣等感を抱いている」
「・・・くっ!」
「だから俺を超えて、俺は一族の役目を果たせると示したい」
「そうだ、そうだよ!」
「ハッ、残念だがな、純」
「ああ?」
「下らん私欲のために私闘を繰り広げる奴は、必ず負ける」
「・・・フン、どういう境界線から下らん私欲というものが出るのか謎だがな」
「おお、これは失言、しかし俺は、死闘を冒涜する者を決して許しはしないぞ、戦士としてな」

言い放ち、俺は純の背後を取り、そのまま右ストレート

痛烈な一撃の筈だ、俺の腕は細腕ではない、鍛えた事が一目で分かるような筋肉の盛り上がった腕だ、だが、

それは決して強そうには見えない、むしろ純の剥き出しの筋肉の方が強そうで、

見るだけならば明らかに、純の方が強そうだ

が、俺の一撃は筋肉の鎧を纏い、体術にも一応秀ている純を一撃で吹き飛ばす、

その飛距離、1メートル2メートルという次元ではない、

飛ばされた純の体躯からは突風が生まれ、軽く10メートルは飛ばされる

そして地面の激突と同時に激しい土埃が舞う

「・・・これでも手加減したんだけどなぁ」
「き、貴様ぁ!」

手加減、の一言で、ただでさえ平衡を失いかけていた純の精神が発狂する

彼は即座に立ち上がると、俺めがけて拳を放つ

だが妙だ、二人の距離およそ9メートル、

ここからパンチを放ったって俺にかすりはしない

「死ねぇ!!!」

純は叫ぶ、そしてあいつは拳を前に突き出す、と同時に、白い閃光が光る

それは真っ直ぐに俺に突進してきた、俺は咄嗟に身構える

こいつは衝撃波だ、純お得意の必殺技である

衝撃、と言うのは厄介なもんで、一点集中の一撃必殺から、

広範囲を攻撃できるものまで、様々な姿形に変え、そして何より発動が用意と言うのが厄介だ

その文、連発してるとすぐ疲れるんだが・・・

とにかく気の波動が織り成す衝撃波は強力で、もろに受けた俺は三センチメートルほど後ろに飛ばされる

姿勢は固定したままだ

三センチメートル、これが純の本気ならいい、だがあいつもやはり素質という面では俺と同等、

鍛え方次第では俺すら凌ぐ湖とも可能なのだ、油断ならない、

こいつの本気はまだまだこれからだ、しかしここで一つの問題が発生する

あまり騒ぎを大きくしてはならない

この太平の世にダークサイドが消えたのは、科学という名の力が浸透しすぎた事に原因がある

ここら辺やっぱり薀蓄が長そうだから省略すると、要するに力の存在がばれるとまずいので、

さっさと切り上げなければならないということだ

最も、最大の要因は授業に遅れてしまうということだが

「・・・諸般の事情で、さっさと勝負をつけるぞ、衝撃のアルベル・・・」

お約束のボケにツッコミは必要不可欠だ、あいつも容赦なく白い波動を俺に叩きつけてきやがった

だがそれで動じる俺ではない

俺は密かに制服の裏に隠し持つただの鈍ら刀を構え、精神を集中する

「そんなしょぼい刀で、俺が倒せるのか・・・!?」
「使い方次第では、錆びた刀でも木を斬れる・・・」

純の挑発めいた台詞を、俺はそう返してやる

そして、一気に踏み込む

「所で神影流って紅虎だったんだな、俺は分身殺法のつもりだったが!」
「んなボケはどうでもいい!」
「秘技・・・、縛炎輪!」

俺の刀が地面を走る、刀に込められた気が地面を伝い純の足元めがけて飛び掛る

そしてそれは、赤い炎の輪となり、純を縛り付ける

「ぐあぁ・・・」

この一撃に、流石のあいつも身悶える

通常の打撃なら、かなりキツめにしても泣き言一つ言いそうに無いが、こう言う炎とか氷とか、

とにかく精神が関わる攻撃にはてんで弱い

「・・・斬」

俺がそう、一言呟くと、炎の輪は赤く燃え盛り、灼熱の炎を発し爆発し、そして消えた

残ったのは、黒々とした煙と、焼き後をくっきりと残された純の姿だった

「・・・純」

俺は純に歩み寄ると、すぐにでも飛び掛りそうな純の鳩尾に、打撃を入れる

気絶するが、絶命するほどではない

俺の手加減は奇動戦士ハロの演算機能より正確で精密だ

ただ、奴が目を閉じる、意識を失うその寸前に、こう言った

「俺が求めるのは宿敵だ、強くなって見せろ」

はっきりと分かった、純が悔しさのあまり、手から血が滲むほどに土を、地面を握り締めた事を

だが俺は何の感慨も示さず、その場を立ち去った

ああ、あいつら、多分俺をほっといて先に帰ってるだろうな

人気者は辛いよ、全く





・・・続く










次回予告

誰も巻き込んではならなかった

それは確かな優しさ

だからかもしれない、

彼が、自分の所為で連れ去られたものを助けようとするのは

諦は言う、備えあれば憂いなし、しかしその時間はない、と

冷治は向かう、黒幕のいる所へ

その胸にある、黒光りする漆黒の闇を恐れながらも

第六話

「堕ちたる者・前編」










今週の元ネタ辞典



冥牙闇空剣

本当は、闇空冥牙剣で、闇を断、冥を光に変えると断空光牙剣になる

語呂の関係から変更された


∀のお兄さん

実はゼクスってドモンよりも年下(19)だったんだなぁ、納得いかねぇよ

とにかく、ターンXの人が言う台詞


古来より、男は床で、女は布団で寝るものだ

テイルズ・オブ・ファンタジアがその有名な例だが

(過去世界へ言った最初のイベントでとまる時、一つしかないベットにミントが寝て、

クレスは床に寝た、因みにミントは毛布をかけてくれた)

他にも様々な例があげられるだろう、優しい男(少年でも可能)のする事である


衝撃のアルベル

けっしてSO3の刀の達人の意ではない

我らが流派東方不敗が開祖、東方不敗マスターアジアと同じ声の、

BF団十傑集の一人の意である


錆びた刀でも木を斬れる

明鏡止水の心により、錆びた刀でも木が斬れる、

これが天叢雲剣とか備前長船とか言う名刀のレベルだとガンダニュウム合金すら断てそうで怖い


神影流って紅虎

八寸の事、どうでもいいがこちらは「かみかげ」と読む

大して諦のほうは「しんえい」と読む

一応差別化は計っているが、実は事後に確認したこと

実はリメイク前にスパロボ関連のネタでそういうのが多発した(ライグとか)


分身殺法

間違いなく、ゴッドシャドーの意


奇動戦士ハロ

奇妙に動く戦士、その名もハロ、無論元ネタは最近ピンク色が人気を集めているガンダム世界のマスコットキャラクター、ハロである

しかしその実体は究極の破壊兵器という、様々な意味で脅威を見せてくれる

例えば、スーパーボロット大戦とか面白そうだ

(出典作品・ボスボロット、シャア専用ボスボロット、ボロットカイザー等)




F「ああもう、俺、止まらねぇ」
諦「GガンのG(重力)に魂を引かれたからな」
F「もう最近はテンション上がりっぱなしよ?」
諦「それは良き事として、この話でどんどん世界観分からんなってるぞ」
F「う・・・」
冷「そうだな、前だって収拾つかないからリメイクしたんじゃなかったのか?」
F「いやぁ、まぁ・・・、まぁ・・・」
諦「てか、古代人ってなんやねん」
F「うーん、ゲスト以上の科学力と魔法帝国(注)以上の魔法(?)技術を保有する一大文明の方々」
諦「プロトカルチャーか!?、てかそれは末恐ろしい」
F「加えて平均的に準ガンダムファイタークラスの戦闘能力を持つ」
諦「それは超絶的だな・・・」
F「まぁ、いずれらぶこめの方針で」
諦「アラド編で、期待してたのによ・・・」
F「全く、残念だ、ゼンガー編でもイルイの陰が薄くて薄くて」
諦「で、俺はその末裔と」
F「ああ、だからアホみたいに強い、多分ラスボスより強いぞ、どうなるかは分からないが」
諦「最初からラスボスより強い奴がいるっつぅのは、それは一番面白くない事だろ?」
F「全くだ」
冷「そう言うんだったら改善しろ」
F「うぅ・・・」
諦「とりあえず、お約束だな」
F「何が?」
諦「冥界の果てへ、ふっとべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
F「これ、お約束なのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」



注:魔法帝国オーラリア(名称は多分こう)
遥か太古に存在した一大国家で、死すら乗り越えたが故に繁栄の極みを得た
・・・が、色々騒動が起きて結局崩壊してしまう
この国が滅んだ後、世界は暗黒時代という全ての記録が消された時代に突入する

・・・詳細を知りたい方は、富士見書房著作の小説「魔法帝国の興亡」を参照のこと
・・・えーと、三回ほど泣けますよ、マジで
そして萌え萌えですよ、マジで



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