さみしいよ・・・

―――どうして?

誰も助けてくれないんだよ・・・

―――何故、助けてくれないの?

僕が要らない人間だから・・・

―――それは違うよ・・・
私が必要としてあげる、私があなたの味方でいてあげる・・・

本当?

―――ええ・・・









DARK SIDE
第2話
まり





「く・・・」

激しい頭痛と共に、冷治はベッドから起き上がる

こんなに頭が痛いのは初めてだ、恐らく、昨日の出来事が原因なのだろう

「・・・・・・・」

だるい、全身を疲労が襲う

同時に彼の脳裏には幼い頃の凄惨な記憶が鮮烈に蘇りそうになる

・・・が、頭を振ってその記憶を飛ばそうとする、

彼にとっては絶対に思い出したくない出来事だ

「おおぉうい、マイ弟よ」

だるけさでもう一度寝入りそうな冷治を、さらに布団へ誘う存在

諦がいつの間にか、彼の部屋に入っていた

「お前・・・、どこから・・・」

冷治は怒りを混じらせた声でそう言うと、諦は一度、鼻で笑い、

「100tハンマーはもっこりに使うものだ」
「要するに扉ぶち壊したんだな・・・」

言って冷治は部屋の扉を見やると、それは丁寧に止め具が破壊され、

しかも扉そのものも慎重に音を立てないように倒してある

「・・・直せよ、今日中に、というか午前中に」

冷治は当然の事を言う

「部屋に鍵をかけたお前が悪い、
ついでに午前中は無理だ、今から学校があるからな」
「今日は休みだろ・・・?」

冷治は言って、カレンダーを立てた親指で指す、

今日は祝日、普通に休みだ

「宗吾の馬鹿がどうやら部活をしているらしい」
「あいつは確かに馬鹿だが、お前に馬鹿と言われるほど馬鹿でもないだろ?」

ナイスツッコミ、と諦は親指立てて言う

「まぁそいつはどうでもいいとして、
本当にあいつ部活で、俺様は部長として奴を監視せねばならん」

諦はなぜか誇らしげに言う

宗吾は諦がなぜか部長をやってる部活動(名称は不明、MF研究会が一般的な線)の、

それなりに下っ端部員(諦曰く)、

そいでもって落ちこぼれで留年しそう(諦曰く)、

しかも後輩にすらパシリにされる可愛そうな二年(諦曰く)

・・・だ

冷治とも一応、友人関係を結んでいるが、はっきり言って冷治は完全に無視している

「・・・俺はついて行かん、
扉は最低限俺が寝るまでに直しておけ」
「・・・フ、月ちゃんと日ちゃんも来る、両手に花だな」
「興味ない」
「お前は逃げられないのだよ・・・」
「正体不明の部活に関与する気は毛頭無い」
「何を、正体不明ではない、設計だ、MF設計だ、SとSを合わせて何ができるとか・・・」
「・・・・・・」
「失言、輝き(シャイニング)と鏡(シュピーゲル)だったな」
「勝手にやれ!」
「ではお前一人で人が殺せるか?」

冷治が怒号を上げたところで、諦は急に真面目になる

「・・・どういう意味だ?」

諦の言葉の意味は、かなり気になるものだ

「昨日の奴等はお前を狙ってる可能性が高いんだろ?、
だったらお前一人が一番好都合じゃん」
「貴様一人で正体不明の連中を、いや、あの連中を倒せるのか?」

組織名を言わない辺り、冷治の拒絶感が窺える、

彼の過去は、絶対に触れてはならない領域だ

「・・・俺なら倒せるぜ?、俺はその気になれば人だって殺せる、
だがお前はどうだ!、人一人殺す事に躊躇する奴なんざ、最高の的だ」

諦が、今日は珍しく、まじめな事を言う

しかも、なぜか説得力がある

だからだろうか、冷治は黙り込んでしまう

「・・・・・・それで殺されるんなら、本望だ!」

が、彼が次に出した台詞は、とんでもないものだった

だが諦は驚かない、恐らく、こう言う回答が来る事を予測したのだろう

「死にたきゃ死ね、死んで悲しまない奴がいないのならな・・・」
「仮に俺の死を悲しむ者がいたとして、そんな事は関係ない」

諦が言い出そうとした台詞を遮り、冷治は冷たい言葉を並べる

「・・・本当にお前の抹殺だと思うか?」
「どういう意味だ」
「まぁいい、抵抗する気があるんだったらこれを使って倒せ、
ああいう連中は暗いじめじめした人気の無い場所で襲って来るもんだ」

言って、諦は一本の刀を冷治に手渡す

「・・・呪法刀、呪いの鎖を断ち切る呪われた剣だ」
「矛盾だな」
「相手は最低最悪の矛盾だろ?」
「毒を以て毒を制せと?、これは五十歩百歩だ」

冷治の口答えに、諦ははぁ、と一度溜息をつく

「とにかく、どの道俺はそいつをお前に手渡すつもりだったんだ」

言って、諦はくるりと振り返り

「じゃ、俺は本当に宗吾の馬鹿をしごいて来るので」

言って、片手を振りながら部屋から出て行った

一人だけの空間で、先ほど手渡された刀、呪法刀を見ながら、冷治は複雑な気分でいた

「人を殺せるか・・・、か、あいつらだったら殺してやるさ」

そう言うと、蘇りそうな過去の記憶を精一杯に抑え、振り切りながら、彼も部屋から出て行った


















漆黒の闇が支配している空間

そこに一人の男が立っている

肩をヒクヒクと震わせ、無気味に笑っている

「ククク・・・、さぁ来い、我が弟よ、
お前は我らの悲願成就の為の・・・、贄だ」

意味深い言葉を並べつつも、その男は不気味な笑みを笑いを止めなかった






















そこは一般的な部室だ、

文化部系の使うものよりも少しスペースが狭いが、

そこはしっかりと部室の機能を果たしている

その部屋に、青年が一人、少女が二人、なにやら論議している

とそこに、諦が入ってきた

「あ!、諦さん、良くぞご無事で・・・」
「うむ、苦しゅうない、東方は真っ赤に燃えておる」

まず先に、青年、宗吾のほうが諦に挨拶(らしい)をする

ぼさぼさとした茶髪に、快活そうな顔、どう見ても普通の青年である

「て言う訳で二人とも、やはり仲間は見捨てられぬか・・・」

諦は腕組しながら、うんうんと頷く、

その様を、二人の少女は困惑そうに眺めている

二人の少女のうち片方は月江、もう片方は、双子の妹の日香だが、

二卵性双生児のこの二人は、双子ではあるがあまり似ない、

青い髪のショートをしている月江に対して、日香は黒髪のロングヘアだ

曰く、月江のほうは母親似で、日香のほうは父親似らしいが、

二人の両親は既に他界している

「私としては剣道部の応援に行きたかったんだけど、
練習中は立ち入り禁止、あーあ、あそこ堅いわよね・・・」

日香は不服そうに言いながらイスに腰掛ける

「飛べる君はやはり忙しいのか?」
「ええ、大会が間近に迫ってるからね・・・、
所で、いい加減飛べるは止めてくれない?、翔飛にそんな汚名をつけるのは・・・」
「じゃ、翔ける君」
「・・・百歩譲って許すわ」

言って、日香は哀愁漂う目で武闘伝会議場会館(諦命名、要するに武道場)のある方向を眺める

翔飛は彼女の幼馴染であり、ちょっと気になる存在だったりして

「・・・諦さん、流石に地の文を真似るのは・・・」
「俺に不可能は無い、つまり、もうできてたり」
「・・・スタンガン見っけ」

静かに怒りを放つ日香は、この前諦が趣味で作った100万ボルトスタンガン、

通称「一撃必殺ライジングスタンガン」を手にとる

取って、最大稼動で諦の後頭部に接触させる

「「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

バチバチなんて景気のいい音ではなく、もはや稲妻が炸裂し、

諦・・・と宗吾が巻き添えを食らった

「くぅ、自分の作品でやられるとは、不覚!」
「なんで俺まで・・・?」

諦は悔しそうに、宗吾は涙を流しながらゆっくりとよろめき、倒れる

「・・・はぁ」

その光景を、月江は付け入る隙も無くただ眺めながら、思わず溜息をついてしまう

この面々は、いつもこんなノリだ

「諦さん、冷君は・・・?」

苦しそうに起き上がる諦に、月江は問う

それに対しての、諦の返答は

「冷治か?、奴は人気の無いところに居るんだろ?」
「ああ、そういえば名ストッパーが居ないわね」

日香はここに来てようやく冷治の不在を気にする、因みに宗吾はぐったりとしたままだ、

暫くは起き上がらない

「私、探してくる」

言うが早いが、月江は部屋から出て行った

「・・・・・・月ちゃん、素直じゃないなぁ」
「・・・え?、それって・・・」

諦の一言に、日香は驚いたような顔を見せる

「・・・冷治は只の友達、としか言ってないんだが・・・」

ここで宗吾が話しに突っ込んでくる

「私もそうとしか聞いてない」

日香も同じ意見を飛ばす

月江が冷治に想いを寄せている事は分かるが、しかしそれは、友達ラインに全て収まってしまうものだ、

間違ってたら失礼だし、本当だとも思える、彼女の本音を推する事は、できない

因みに冷治は前に見せたよう、頑なに心を鎖している

「・・・さて、例のものは入手したかね?、ワトソン君」
「は、無論です」

宗吾は一例をして、謎の紙面を取り出す

「・・・何よそれ」

日香は聞きたくはないが、ついつい聞いてしまう

「フッフッフ・・・、法案は完全廃案、やはり小○の狸を失脚させたかいがあったなぁ・・・」
「おぬしも悪よのう・・・」
「ククク、因みにこれ、現実社会が元になってしまった」
「何が・・・?」

相変わらず、諦の言う事は意味不明だった

「さて、BGMは・・・」
「我が心明鏡止水、されどこの掌は烈火の如く、レディー・ゴー!、最強のキング・オブ・ハート、
燃え上がれ闘志、忌まわしき宿命を超えて、FLYING IN THE SKY、
揃っております・・・」
「おおし、全てだぁ!!!、ガンダムファイトォ、レディィィィィィィ、ゴォォォォォォォォォ!!!
「たぁぁぁりゃぁぁぁぁぁ!!!」
「はぁもう、ダメ元で剣道部いこ・・・」

伏字無しで暴走しまくる二人を尻目に、

日香はいつものように呆れながら部室から出て行った




















冷治は一人、町を歩いていた

ただ歩くだけなら問題は無いのだが、

そこは建築途中のビルと古い建造物の狭間にある、打ち捨てられたよな場所だ、まさしく抜け道であるが、危険な香りが漂っている

諦は忠告のつもりか、進言のつもりかはわからないが、ここは狙われ易い場所だと言った

そうでなくとも、こんな所には危険人物の一人や二人がほっつき歩いてもおかしくない、

事件とは何の関係も無い通り魔に襲われる可能性だって、無くはないのだ

・・・が、彼にはそんな事は関係ないらしく、ただ一人、黙々と歩いている

彼の心の中は複雑ではなく、何も無く、何も考えていない状態だ

目的と呼べるものすら、無いかもしれない

冷治は黙々と歩いて、ぴたりと、ある一点で足を止める

周囲には何も無い、廃ビルと建築途中の建物を覆う囲い、整備など殆どなされていない不衛生な道以外、何も無い

・・・上を除けば、であるが

「く!」

冷治は上空から来る気配をいち早く察し、咄嗟にかわす

それは最初、土埃を巻き上げた為その全容が窺い知れなかったが、

土埃が晴れていくにつれ、その異形の姿がはっきりと認識できるようになる

哺乳類か、魚介類か、はてまた脊椎動物なのか、無脊椎動物なのか、

様々な動物が交じり合ったともいえるその怪物は意外にも小さく、冷治の身長の半分以下の大きさしかない

数は三匹、間違いなく、「力」によって生まれし異形の者だ

冷治は朝渡された刀、呪法刀を握り締め、駆ける

日頃から鍛錬してるだけあり、その動きは常人の何倍も、早い

しかし、怪物も負けているわけではない、足に当たるのだろう、金色の三対の爪と、全身をばねのように用いて飛躍する

が、飛躍した直後に一体は冷治に斬られる、怪物の核を、しっかりと分断されて

「く・・・!」

冷治は焦る、―――先ほどの動きを見切るので限界だ―――、

あとどれ位の数が投入されるかも分からない、

アサシンなどが来るかもしれない

冷治の焦りを、残り二匹の怪物は逃さず、後頭部めがけて直進する

「だぁ!」

迫り来る気配を寸で察し、冷治は背後に大きく刀を振る

ビンゴ、異形の化け物は一振りで二匹同時に切断される

運良く核も分断できた、化け物たちは煙を立てて消滅する

「・・・後ろか!?」

化け物の残骸である煙が消えた頃、冷治は、その時背後にまで迫り来る気配に気付く、

続いて走る、白い斬撃、が、それは急ににぶい茶色になり、

それは冷治の右肩に打撃を与えてバラバラに分解される

「・・・!」

その様を見た、斬撃を放った黒装束の男、典型的なアサシンは目を見開き、驚いた様を見せる

超高速酸化、空気中に漂う酸素を集め、様々な金属を酸化させて使い物にさせなくする技だ

「く・・・!」

冷治は、一度後ろに退くが、しかし拳で構える男を見やり、一度躊躇う

(人殺しになるのか・・・!)

躊躇する理由は、それだった

以前も不可抗力で敵を殺してしまった、あの時はもしかしたら自分自身が暴走していたのかもしれないが

その迷いを、戦闘のプロである、アサシンが逃す筈もない、

綺麗に鳩尾を狙ったストレートな打撃が迫り来る

・・・刹那

冷治の視界は急に真っ赤に染まり、

手には濡れた感覚があった

そして、刀を握ったままだった

あまりにも一瞬で、冷治には把握できなかったが、しかし眼前にある赤く血に塗れたアサシンの遺骸を見て、

冷治は落胆する

「俺は・・・、人を・・・?」
(躊躇うな)

震える手を見つめながら、呟いた独り言に、何者かが応える

まるで自分自身が言ってるような、しかし完全な他人が言ってるような、不可思議な感覚

「ちぃ・・・!」

続いて、後方から迫り来る敵、

袋小路ならば追い詰められたフリをして一対一の連戦に持ち込むという、有効な戦法もある、

だがここは前と後ろが開いている、前の敵を相手にしていれば、後ろの敵に不意打ちを喰らう、その逆も、また然りだ

このままのペースでいけば絶対に、負ける、

もしかしたらそれで良いのかもしれない、それが自分の望む所かもしれないが、

しかし、冷治もまた、生きる者の最大の恐怖である「死」からは、逃れられず、

ゆえに死の恐怖から、逃げ出したい気分でもあった

だから冷治は、駆ける、彼は滅多に外出などしないから、自分の住んでいる町ですら土地勘を持っていない

しかし、右と左に並ぶ様々なものの配列から、その先を推測する事は可能だ

そして彼の推測が正しければ、ここを真っ直ぐ突っ切れば必ず袋小路に辿り着く

冷治は躊躇う事無く前進する、既に前方のアサシン達が視界に入るほどであった












その後は、なりふり構わず刀を振った、罪悪感と、背徳心は感じた、しかし立ち止まる余裕は、なかった

相手は自分とは違い、本気で殺しにかかってくる

ならばそれから、逃れられる筈は、なかった

そして、、冷治の予測通り袋小路まで辿り着いた時、彼は致命的なミスを確認する

突き当りまで来て、彼が振り向いた先には、無数の化け物と、アサシン達が群がっていたのだ

「しまった・・・」

冷治は思わず焦りの声を上げる、

道は、整備の行き届いていない、抜け道であるが、しかし大人五人がギリギリ通れるくらいの広さはある

このまま数に押されて袋叩き、正しく袋のネズミだ

「・・・どうする?」

アサシンたちは何も言わない、諦ならば、例えば上に逃げるなどの人間離れした技もやって見せたのだろうが、

しかし冷治にそんな芸当はできない、

焦りを募らせる間にも、敵はどんどん迫ってくる

皮肉か、すぐ側には表通りへ続いているであろう道があったのに、そこへは逃れられない

逃れようものなら、即座に全員一斉に飛びかかり、やはり袋叩きに遭う

(・・・怖いか?、死ぬのが)

「誰だ・・・」

焦る冷治の脳裏に、突然響く声、先ほどの斬殺の時に聞いた声と、同じだ

(貴様が戦う必要はない、俺にすべてを委ねれば、一瞬の内に勝利だけを味わえる)

「・・・なんだと?」

(それともここで死ぬのか?、それを望んでいるのはお前の半分だが、もう半分は拒絶している)

「だ、黙れ!」

心を見透かされたような、その声に、冷治は怒りの声を上げる

(抗うのか、なら仕方ない、神速の地獄を垣間見ろ・・・)

「!?」

その声が、声のトーンを低く、高圧的なものに変えたとき、冷治の意識は瞬時に飛ぶ

何も見えない、何も感じられない、ただ何かが、斬られる音だけはリアルに響く

いやこれはリアルだ、空想の中の話では、無い

抗う事はできない、抑止の声を上げることすら出来ない、

冷治の意識は確実に、その声が言う「神速の地獄」を垣間見たのだ











気付いた時には、そこは地獄絵図となっていた

化け者達は全て煙と化した、だが足元には幾つもの死体が転がっている

アサシンたちのものだが、その数は追い詰められている時に見たものより少ない、

どうやら分子分解で、何人かは空気のチリと化したらしい

そこには、血の臭いとはまた別の、妙に生臭い、吐き気のする臭いが漂っている

「くぅ・・・!」

その臭いに耐え切れず、冷治はふらつく

「全部、俺がやったのか?」

眼前の惨状に、冷治は自分の手が震えているのが確かに確認できる

そこに、動く何かが、自分の前に現われる

気配を察すると、冷治はばっと構え、狂ったような目でそれを睨む

それは、アサシンなどでも、異形の化け物でもない

クラスメートの、月江だった

「・・・冷君?」

彼女は、この惨状において何が起きたのか把握していないようだった

一方冷治は、自分が彼女になんと言えば良いのか分からない、口が、全く動かなかった

「これは・・・」

ようやく、冷治が口を開きかけた時

「フンフン♪、こんな物騒な場所に若い男女が二人でいるのは危ないなぁ♪」
「因みに私達20前半ー♪」

妙にふざけた声が聞こえたかと思った、次の瞬間、

月江の首筋に、銀色のナイフが当てられていた

「誰だ!?」

冷治は突如乱入してきたそれに向かって、叫ぶ

「誰だ!?、と聞かれれば」
「応えてやるのが」
「世の情け」

言って、そいつらはその顔をあらわにする

二人だ、男と女が一人ずついて、男のほうは月江を捕まえている

男は、妙にキザったらしい服と顔をしており、

女は、ウェーブのかかった長髪と、面妖な雰囲気が印象的だ
                 血塗れの聖騎士
「俺は薔薇の騎士、はダメなのでブラッディ・パラディン、ローズ、因みに偽名」
「私はソフィア、これは本名よ」

やけに似ふざけた事を言う、諦を思い浮かばせるそのふざけぶりに、

冷治は冷淡な目で見つめる

「・・・貴様らの目的は何だ?」

こいつらもアサシンだろうが、雰囲気が違うので一応、聞いてみる

「うーん、俺もよく知らないが、上層部の命令は絶対だしねぇ」

言って、男、ローズの顔は残忍な笑みを浮かべる

捕まっている月江の顔は、恐怖に歪み、声を出せない状況でいた

「・・・こいつの命が欲しければ、まず気を失ってもらおうか・・・」

どうせ殺すつもりなんだろうが、と冷治は頭の中で憎々しげに言い放ちながら、その二人を睨む

「フフン、これはイチコロよねぇ」

言ってソフィアは、奇妙なガラス瓶を取り出す、

香水かとも思えるが、その正体は不明だ

しかしこいつらの口ぶりからすれば、気を失う薬のようだ

「・・・・・・」

冷治に抑止する事など無理だ、だから、黙り込んでしまう

ソフィアと名乗る女は既に瓶の蓋を開ける、そこからは妙な色の気体が、漏れだす

「分子分解、使ったら・・・、ショックで少なくとも四人全員吹っ飛んじゃう」

からかうような言い方で、しかしソフィアは警告を促す、どうやらそう言う構成の物質らしい

(・・・構うか、しかし・・・)

冷治は分子分解を行うのに躊躇いがあった、

奴らに捕まった月江まで巻き込むのに、躊躇し方からだ

こんな事なら、諦についていけば、もしくは家にいればよかったと、

今更ながらに後悔する

(破・黒・惨・滅・神・殺・・・)

そんな時、脳裏に響く謎の声、先ほど冷治に地獄を見せた声だ

(もはや躊躇う事も無い・・・)

その声の主はそう呟き、そして巨大な黒い意思で冷治を絡め取る

その、彼の精神の中で起きた事は、肉体にも当然、影響がある、

冷治の様子がおかしい、

これは気絶させる薬だが、予想外の反応にローズとソフィアは警戒の眼差しを向け、

月江は、やはり怯えているだけだった

「フ・・・」

刹那、ありえない事が起きる

冷治は目にも止まらぬ速さでローズに体当たりを仕掛け、月江を開放させる、

と同時に、その手に握り締めた刀を、大きく降る

「なにぃ!?」

あまりの、一瞬の出来事に驚くが、しかし彼は怯まず、手に隠し持つ小剣で刀を防ぐ、

が、質量の差があるのか、

小剣はすぐさまメキメキと音を立て始めたので、ローズは高く飛躍し、ソフィアもその後を追うように退く

そして確かめる、そこにある違和感を

そいつの外見は、確かに冷治だった、

だが明らかに違った、全体的な雰囲気が、

今の彼の全身からは、禍々しい黒のオーラが漂っている

そしてその顔は、陰険な笑みを浮かべている

そして何より、冷治の、茶色がかった瞳は、漆黒、光を映しても盲目かと思わせ浮くらいに、

光の浮かない、邪悪で、黒い瞳、それがなによりの、違和感だ

「・・・一ついい事を教えてやる」

その、外見は冷治をした男は、高圧的な口調で二人に言う

「貴様らのボスの目的はこの体ではあるまい、
恐らく、こいつに潜伏する俺だ」

男が言うのは、意味ありげな言葉の羅列、しかしその意味を解することは出来ない

「へぇ、なら面白そうじゃん」

ローズは感心したように言うと、自分の腕に、ストックしてあったもう片方の小剣で傷をつける

そこからは当然、血が流れる、が、それは歪な形を取り、巨大な真紅の化け物の姿に形を変える

「俺の力は「血」の力、「血」を媒体とした様々な化けモンの製造が主、
因みにこいつは死人、オカルトな、て言うのはなんか引っかかるが、
そう言うと呼び方はネクロマンサーだ」

既に距離をおいたローズ達は、逃走の体制に入っていた

眼前にあるのは真紅の怪物、

ローズという男の血と、自らの能力によって作り上げられた異形の存在

それを、その黒い目をした男は睨む

「・・・弱そうだな」

一言呟くと、はぁと、溜息をつく

その言葉にキレたのか、怪物は男めがけて突進してくる

そして真紅の手が男を覆い尽くす、そいつは今までのとは違い、大人五人分の大きさはある

男は抗う素振りも見せず、わざとそいつに捕まってみる、

が、ようやく正気を取り戻し始めた月江にはそれが惨劇に映った

「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

怯え震える彼女は、ついに悲鳴をあげてしまう

と、次の瞬間

バサァァァァァァァァ

真紅の化け物は内部から破裂した、

奴の体内からは無数の漆黒の刃が飛び出る

冷治の体を乗っ取った男が、放っている技だ

黒い目をした男は怪物の核を、真紅の中に埋もれる僅かな人の血を、断ったのだ

これによって真紅の怪物は、いとも容易く撃破された



華麗に、地に降り立つ、黒い目をした男

だがその次の瞬間には、ぐらりとよろめき、倒れてしまう

「れ、冷君・・・?」

あまりにも激しすぎたその場面の動きに、月江は呆気に取られていたままだったが、

男が倒れた時にはもう既に、側に駆け寄りだそうとしていた

「・・・月ちゃん」

と、不意に後ろから声をかけられ、月江はどきりとする、

声の主は、諦だった

「・・・何と言うべきだろうな・・・」

諦は真面目な顔をしていた、彼女がここまで真面目な諦を見るのは初めてだ

「とりあえず、家まで来てもらえるか?、冷治は俺が担いでく」
「あ、待って・・・」

月江はそう言ってから、恐らく冷治に戻ったであろう、

黒髪の少年の下に駆け寄る

「やっぱり、怪我してたみたい・・・」

月江は冷治の腕をまくる、そこには要所要所、傷があった

「ん・・・」

彼女はその傷に手を当てると、軽く念じる、と、淡い光が現われ、傷を癒してしまう

その様を見て、諦ははっとなる

「つまり、こう言う事ですか?」
「あ、ああ・・・」

こちらを方を向き、先ほどまで怯えていたとは思えないほど冷静な言葉を並べる月江に、

諦はどうしようもない憤りと、敗北感を感じてしまっていた・・・

(しかし、都合主義だな、神を超えた存在・・・、
同業者として貴様の都合主義には涙するものがあるぞ)

諦の頭にしか囁かれないその言葉を、聞く者が他にいるはずはなかった









ついでに、諦は色んな事を彼女に話してしまった














次回予告

能力者は彼らだけではない

風の宿命に導かれしものもまた、

力を持つ

「だって、父さんが言っていたから」

少年の屈託の無い言葉に、冷治は激しい反発を覚える

「俺の親は、絶対に俺の敵だ・・・」

第3話

「烈風の剣」










F「はぁ・・・」
月「流石に十五歳の表現力の限界があるわね」
F「グサ」
日「あと、設定削ったくせにまたつけたすのはなんか、
能力雇用何とか何とかみたいよ」
F「グササ」
諦「ついでに俺の出番無しかよ・・・、俺が主人公じゃないのか?」
F「そいつは妄想」
?「ああ、あっちの方は完全に停滞気味だな、作者」
F「秘技!、ダブルファンネル!」
?「回避、と、なぁ・・・」
F「神を超えてる人だー、うわぁー」
?「そりゃ、嫌というほど神を殺したりしてるしな」
諦「紙?」
?「相変わらずだな」
F「ではお開き」
?「!、待て!」



冷「因みに宗吾」
宗「ん?」
冷「ダークサイドの能力発言条件の設定云々で、お前に雷撃の力が付与される見込みは薄いぞ」
宗「何故!?ていうかメンバーのライジングはどうすんだよ!?」
冷「無しじゃないのか?」
宗「ひ、酷い、酷いよぉぉぉぉ」 冷「悔しければ親を殺す事だ(自信満々に)」
宗「くそ、言ってくれる・・・!」







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