「珍しいね、君が遅れるなんて」
「・・・・・・」
「何も言わないの?」
「教室だ・・・」
「時間、ギリギリ間に合ったみたい・・・」

二人はそう言って、力強く教室の扉を開けた





DARK SIDE

第1話

「始まりは唐突だ」






席についたときはもう、二人とも荒い息をはぁはぁはきながら机の上にぐったりと倒れていた

それで話す気にもなれないようだ

ただ、少年の方は、ただ単に他人とあまり話したくないと思っているだけだが

少年の外見が、結構整った顔立ちだ

それ以外は黒髪と茶色い瞳が特徴的だから、他の個性に沈みがちなのだが

何より少年は寡黙で、殆ど自分の感情を表に出さない、と言うよりは、自分の感情を持っていないように見えさえする

待っているとようやく朝のHRが始まったようだ

教師が教室に入ってきて、今日の出席をとり始める

一人、また一人と生徒の名前が呼ばれ、そう待つほどでもなく少年の番が回ってきた

「静谷、静谷冷治」
「はい・・・」

これは少年、静谷冷治が声を出す数少ない機会だ

とてつもなく寡黙で感情が表に出ないのだから当然だが

そしてまた出席簿どおりに生徒の名前が呼ばれてゆく

そう言えば前に男女平等とか言って出席簿を純粋に五十音順にしようとか言う話もあった

その時は冷治は興味など無かったが、今なんとなく思い出す

なんとなく、というのは彼の行動源の大部分を占める、というより無気力状態で生きているようなものだ

まぁ、彼を見れば誰でも鬱になると専らの評判で、よって彼自身も鬱なんだろうが

「・・・・・・・」

冷治はふと、窓の外を見る

なんとなく

席は頼んで窓際にしてもらったわけではない

席替えというのが存在しないこのクラスにおいて、

最も良いポジションは真ん中(さらに突き詰めれば、教師の目を盗める後部座席)だ

夏場は程よく日の光を避けられ、冬場は程よく日光を受けられる

窓際でも廊下側でも、いずれも夏か冬に不利と言う欠点があるからだ

・・・で、彼の席は席を決める時になにやらもめていたが冷治自身そのもめ事には不参加だった

それでどうこうするうちに自分の席はここ、と決まったらしい

ただこの席、一つ不安があった

それは

「ねぇ・・・、今日はどこか行く予定、ある?」

この見た目が友達の少女の隣だということだ

この少女も結構寡黙な方だ、周囲に暗い、という印象を与えている

・・・がよく話す(方だ)という事で冷治に声をかけてくる

名前は、確か月江・・・、そう言った

彼女は予定を聞いてきたので、冷治は少し、今日の予定を考える

(確か今日は、あいつにしごかれる日だったな)

冷治の脳裏に、悪夢が湧き出る

あの「あいつ」ほど、今の彼が恐れ、同時に軽蔑する者はいない

「今日は予定が詰まってる」

考えてから冷治は答えた、デリカシーの欠片もない返答だ

ここで「何か用があるのか?」とか、そこはかとなくフォローを入れるものだが、

彼はそう言う事をしない、人付き合いが、限りなく下手だった

「そう・・・」

月江の方もこれは慣れだ、彼が元より冷たい人間というのは知っているから、

そんな返答をされても何も感じない、いや、実際どうなのだろうか、

彼女の心境は、やはり寡黙で無表情な性格からは、外面を見ただけでは読み取る事が出来ない

点呼が終わり、朝のHRも終わりを告げ、1時間目の授業が始まった

それからは二人、話す事もなく、ただ黙々と机に向かっていた








それから幾分時間が過ぎ、昼休みになった頃、冷治は外に出た

外が好きな訳じゃない、もうすぐ冬になる校庭に出るのは、

外で体を動かさねば寒くて教室に戻りたくなる、が、

しかし彼はそんな事はしない

寒さにはある程度の慣れと言うものもあったが、

それ以前に「あいつ」を避けるためだった・・・のだが

「フーハハハハハハハ、弟よ、外にいるなど珍しいな」

出た、その嘲笑うのか、ふざけているのかわからない、いやどっちもなのだろうが、んな事はどうでもいい、

その声を聞いた瞬間、冷治の脳裏に怒りがほとばしる

「貴様・・・、付けていたな?」
「ああ、珍しく柄にもなく遅刻しそうだったお前をおいていってな」

話の脈絡が全く合ってない、そんな事などいつもの事だった

こいつに人の言葉は分からないなどと思い込むが、

なぜかトップクラスの成績を持つのでコンプレックスを抱え込んでしまっている自分も恥ずかしい、

いやもうどうでもいい、とにかく眼前のコイツが憎い、それだけははっきりしている

・・・この男、自分の義兄である静谷諦が憎い事は

冷治と違い、多少薄みのかかった黒髪に、本人曰くの「自毛」の茶髪が僅かにある髪、

それなりにがっちりとした体格、常に人を嘲笑うかのような、余裕ぶった笑み

諦の外見の特徴を述べれば、こんな所だ

「どうした?、学校は抜けんぞ?」

冷治は呆れなが諦に告げる

この男、学校を抜け出した事は無いのだが、今すぐにでもやりそうなので怖い

「ん、いやぁ、来て見ただけだ、と言うのは嘘で」
「・・・・・・・」

もうこの台詞を聞いたのは何回目だろう、

少なくとも万は越している、人は変わるものだというが、コイツは出会った時から何一つ変わってない

「月ちゃんがお前に用があるっぽかったが・・・、
必要であれば今日の修行は止めてもいいぞ」

月ちゃんとは月江の事だ、この男、あだ名付けは恐ろしく安直なのか恐ろしく複雑なのかのどちらだ、

冷治自身、前に諦に「冷君と呼ばなければならない」と生徒全員に校内放送で告げられた経験もあるので、やはり安直な方なのだろうと思う

ただ、その時は本気で諦を殺しにかかった、結果は返り討ちだったが

(しかも本人は手抜きとか、今だ負けを知らぬはーとかほざいて圧勝したのだし、憎悪はかなり深かった)

「・・・何が言いたい?」
「似合うと思うのだが」
「・・・・・・?」

ここに来ても分かってない冷治を見て、諦ははぁ、と溜息をつく

「あーあ、良いのかそれで?、そうやって無駄に青春を浪費して、
歌にもあるだろ?、求め合う青春と」
「何の歌だ」
「んー、新機動・・・」

諦が言い切る前に、冷治は諦に殴りかかった、何故かは分からないが、そうしなければならないと思ったからだ

・・・が、諦はそれを余裕で止める

「暴力反対」
「貴様が言うな」

普段はふざけている諦だが、しかし決して油断ならないのはわかっていた

決してその逆鱗に触れてはいけない、と校内でささやかれるほどに、諦は強い

一年程前の事だった、近くにテロリストの本拠地があると判明した

その時、冷治も含む殆どの住民が避難したのだが、

しかし諦だけは残った、故郷を捨てたくないからと、警察の説得を振り切った

次の日、突撃した機動隊が全滅したと言う知らせが入った

聞いた所によれば、突撃ルート全てに大掛かりなトラップが仕掛けてあったようだ

本拠地は使われていない、五階の廃ビルだったが、そこに詰め込まれていた爆薬の量は尋常ならざるものだったらしい、

下手すれば都市一つが吹き飛ぶとさえされた

・・・がその次の日、今度はテロリストが全滅したと言う知らせが入った

ビルそのものが崩壊し、内部には無数のテロリスト達の死体がミンチになっていたのだが、

死体を検証すると、そのどれもが潰される前に、何者かによって殺害されたと言う

住民はその「何者」かが誰かに、一時、辿り着いた

静谷諦

近所でも評判の馬鹿と名高いこいつが、たった一人でテロリストを全滅させた伝説が膨れ上がってきた・・・

しかしテロの数は半端ではない、百人近くの人数で構成された大規模なものであったのだ

純粋に、一対百では、まず勝ち目は無い

そして次に諦自身が、その日家にいただけ、

あまりにも非常識(考えてみれば当然か)という説が膨れ上がったため、

諦がテロを全滅させた「伝説」は程なく終焉を迎えた(ただ、それはでは誰が全滅させたのかと言う大きな謎を残したが)

だが諦は、ただ純粋に迷惑な不良集団や暴走族を一時間で沈黙させたりと、

数多くの伝説を持つ男だ

そして冷治は、それが伝説ではなく真実である事も知っていた

彼の「力」は尋常ではないのだ

彼の「力」・・・、物使い、または、ダークサイドと呼ばれる力は












それは自分にもある力なのだが、諦の持つ力は特別強い

「炎」「水」「土」「風」「衝撃」「死人」「稲妻」、

「光」「闇」「分子」・・・、

様々なものを自在に操り、人の域を越えた存在・・・、

ダークサイドの力、その由来は「闇に帰す者」

その心の冷たい部分に集う、闇よりの救いの手

そう言っていた

そして諦が操るのは、世界に一人しかいないといわれる(無論諦の自称だが、実際そう思ってしまう)「時」の技

時間を操り、敵を停止させ、自分の回りの時間を遅くする事で銃弾を無効化し、

時を速める事で自分の速度を格段に高める

それが彼の持つ力だ














冷治は、ただ何気なく、木のある所に座っていた

冷たい風が手を悴ませる、彼の目は、どこと無く虚ろだった

まるで生きてるようには見えない、彼は

「冷君」

そうしていると、不意に声が聞こえた、月江だ

「ここは、寒いけど・・・」
「ああ・・・」

やはり、無表情で、感情の欠けた、会話だ

「ねぇ・・・」
「・・・・・」
「今日、やっぱり予定、空いてないのね」
「ああ・・・」
「そう・・・」

気付けば、彼女は自分の隣に座っていた

「・・・・・」
「・・・・・」

妙な沈黙が、二人の間に流れる

「私、もう行くね・・・」
「ああ・・・」

やはり冷治の声に、感情らしいものは無かった

行く時、彼女は何かぼそりと呟いたが、

冷治には聞こえていなかった















最後の授業が終わり、冷治はそのまま家に帰らず山に行った

修行の場だ

冷治にもまた、「ダークサイド」の能力はあるのだが、

諦に比べれば微弱だ(諦が強すぎるだけなので、十分標準以上らしいが)

だから、それを鍛える為に、山での修行を行うのだと言う

諦が言うに、ダークサイドとは強い心の傷から発せられる強い感情を元にして生まれる力で、

ごくごく普通に幸せに生きる者にはまず会得できない能力だそうだ

昔でこそ、全ての人間がその力を持っていたというが、

今では特殊な条件かでしかその力は発現しないでいた

だが、それとは別に、強い心、強い感情の力を制する事が出来れば、

己の力を増幅する事が出来るらしい

この修行もそうした理念の元に行われているのだが、いまいち胡散臭い

最も諦の言動や理念思想に胡散臭さが抜けたことなど無い、あいつはそう言う奴だ

先に来たのは冷治だ、待たせるなよとかあいつは言っていたが、いつも待たされるのは冷治だ

どこかの茂みに潜んでいる・・・、訳がない

「ハッハッハ、遅れてしまった」
「いつもの事だが・・・、貴様は人を待たせるのが趣味なのか?」
「別に強制じゃねぇよ、お前が来なきゃ俺一人でやるまでだ」

諦はそう言った

どちらかと言うと自分は諦に鍛えられてると言う感しかない

幾ら支離滅裂で滅茶苦茶とは言え、諦の強さは折り紙つきだ、

「能力」の行使などせずとも、拳一つで一個師団に匹敵すると自称している(誇大なのだろうが、そんな気がしないので怖い)

だから諦の戦いぶりは普通に参考になる、無論冷治は強さを求めているわけじゃない、

一人で生きる為にはある程度の力が必要・・・、これは矛盾した考えか、

ただ冷治は力を求めていた事だけは自覚していた、恐らく、頭まで筋肉のくせにやたら強い諦に劣等感でも抱いているのだろう

・・・とは本人は絶対に認めたくない事だが

「・・・で、どうする?、また気合溜か、俺の華麗なる武術を見るか?」
「・・・どうしたものだな、とりあえず気の集中は必要だが・・・」
「んー、だが今日は結構、特別な日っぽいぞ」
「特別?」

冷治はその言葉を聞いて疑問を抱く

確かに年末は様々な行事があるが、今日は別に祝日でも休日でも何でもない、

語呂合わせの特別な日でもない、

冷治は諦の言う「特別」の意味を図りかねていた

「だってさぁ、月ちゃんがお前を誘ってるっぽかったし」
「それか・・・」

そんなふざけた事を特別と言うのか・・・、と、顔に書いて、冷治は顔に手を当てる

「それに、なんか実戦でもしてくれるっぽいしぃ」

今度は諦は最高の笑みで笑っていった

実戦・・・、冷治が聞き間違えてなければ、言葉の意味を間違えてなければ・・・、

本当に戦う、と言う事・・・

「いや、実践てな、試すって事だよ」
「お前はつくづく冗談の多い奴だな」

ああ何も変わらないんだな、と思いつつ冷治は再び顔に手を当てる

「うん、命がけだけんどね」

諦のその言葉は、なぜか冗談に聞こえなかった、

刹那の間を置き、何か黒い陰が自分の周りを取り囲んでいるような錯覚を感じる

「伏せろ!!!」

それまでのふざけた対応しかしなかった諦とは打って変わり、諦の行動は素早かった、

即座に冷治を伏せて・・・、というよりは地面に顔面をぶつけ、自分は「力」を行使する

その時冷治は僅かに、何か黒い物体が自分の視界に入っていることを確認する

それは一瞬見ただけだが、空中で微動だにしない事を認識した

「ちぃ!、俺は別の人の恨み買うような奴じゃねえんだけど」
「何かの冗談か?」

諦の台詞に即座に反論を入れ、冷治は立ち上がる

そしてその後視界に入った光景は、正しく何かの冗談のような気がしてならなかった

黒装束の人物、顔すら見えないので性別は不明、だが体格から男である事は分かる、

そんな連中が十人近くは、諦と冷治の周りを取り囲んでいた

「誰だてめぇ、テロリスト・・・か?」

諦の問いかけに、黒装束の男たちは答えない、代わりに複数の黒い物体を投げつける

・・・手榴弾だ、しかし様子がおかしい、それは爆発しない、諦は能力を今は行使していないので不発ではない(どうやら最初の一発は諦が不発にしたようだが)

「・・・小型の催涙ガス・・・、いいや違うな、神経を麻痺させ、完全に動きを止める、
致死効果は無いが、放っておけば死に至る・・・、んー、俺って、そんなに敵作ってたか?」
「さっさと気付け」

冷治はこんな所ではツッコミは欠かさない

「ジョークも時に詭弁になるぞ、冷治、
とにかく、この俺様に数は無意味だと思い知らせてくれよう!」

叫び、諦は走る

・・・速い、冷治は諦が本当に戦っている光景を見るのはこれが初めてだ

だが速い、影が、残像すら見えない

「フッハッハ!!!、これが俺の力よ!、刹那の時を制す、神速の必殺剣!!!」

なにやら妙な事を言いつつ諦は黒装束の男達を次々と倒していく

どうやらあいつらしく気絶で済ませているようだが・・・

「しかし、一体なんだって・・・」

冷治はここに来てようやくこの連中の目的を推測する

諦はこう見えても大企業すら運営する資産家の一族だ、

ならばそう言った関連での敵は多い、

しかし冷治はそれは関係ないと、本能のようなもので感知する

と、そこに倒された一人の黒装束からはみ出たエンブレムを目に止める

そしてそれを見て冷治は、ハッとする

白い十字架、救いの翼とも呼ばれるエンブレム・・・、

神の威光と正義と秩序の元に、幾多の殺戮と破壊を行ってきた最悪の組織・・・

そして何より、彼が最も憎む者達が誇らしげに持っていたエンブレム

「ジャスティス」のエンブレムをその目に止める

そして脳裏に蘇る、幼い頃の凄惨な記憶、幾ら泣いても誰も救いなどしなかった、漆黒の過去を

最低最悪の矛盾を掲げる連中の・・・、エゴに飲まれた記憶

その時だった、冷治は自分の背後に、何者かが立っている事に気がついた

諦ではない、あいつならこんな時でも冗談をやりそうだが、直感だ

「くぅ!」

だがその時、冷治に恐怖は無かった、激しい憎悪がぶり返し、目に止まる物全てを破壊したいという衝動に駆られ・・・、

そして・・・、

咄嗟に背後を振り向いた先にいたのはやはり黒装束だが、どうやら新手らしい、しかし

冷治にそんな事を詮索する余地は無い、殺意の衝動の元に、全てをナノ単位まで分解する、

自己の持つ秘中の技を発動させる

彼もまた、ダークサイドと呼ばれる人間だから可能な技・・・

「分子分解」

自分の手より放たれた、眩い光が黒装束に浴びせられる、と同時に黒装束は跡形も無く消滅した

最もそれは肉眼では捉えられないだけで、黒装束の残骸は目に見えない原子レベルでそこら辺に浮いている

そしてこの時、冷治は自分のした事に気付く

たった今、人を殺したのだと・・・

「冷治、無事か!?」

迂闊だった、と付け加えながら、諦は冷治の元に駆け寄る

「何だ、こんな時にまじめな事を言うな・・・」

しかし冷治の様子は違っていた

どうしようもない憤りと混乱、そして今だ湧き出る憎悪と苦痛が、

彼を支配していたからだ

「・・・諦、どうやらこれは、俺の問題らしい・・・」
「?、どういう事だ?」

諦がこの黒装束達の正体をなんと推測したかは知らないが、

少なくとも冷治には関係ないことだと思っていたらしい

「あいつらだ・・・」

その時、茂みが大きく動く、

そして次に、得体の知れない化け物が飛び出てくる

「な、こいつは!」

諦の反応は神速だった、その化け物の動きは速いが、そいつらが飛び出した瞬間にその正体を見破った、

見破ったが、その正体があまりにも意外だった為、出遅れて・・・、右腕に一撃喰らう

「こいつら、物の怪生成の術で・・・!」

物の怪生成の術、様々な呼称があるダークサイドの呼称の一つ、

物使いの語源となった術だ

何かしらの物体と、精製する化け物の詳細なデータを細かく刻む込んだ札を貼り付けて、

その物体を「核」として物の怪を作る術だ

そしてそれは、ダークサイドと言う能力者にしか行えない技術である

つまり、この襲撃には、ダークサイドが関係し、そして冷治の口ぶりからすれば、

彼の過去にも何かしら関係がある人物・・・

「く、だが残念ながら俺は知略は後に回すタチでな!」

叫び、諦は背に手を回す、背中を掻くのかと思うが違う、

背中に常時忍ばせてある刀を抜く為だ

「神影流剣術其の壱、妖縛符!!!」

叫び、諦は複数の化け物に切りかかる、

右腕は痛むが、彼の底力は痛みを無効化していた

「惨!!!」

その叫びに応えたかの如く、諦の手に持つ刀から紫紺の煙が放たれ、それは渦を成して化け物達を切り裂いていく

・・・諦にはもう一つ「技」があった、

己、他者、そして気の流れより力を取り出して刃とする剣術

遥か昔の武人たちが大成し、今となっては消えかけている至高の技、

「神影流」の、継承者であった











戦いが終わった、その後諦が気絶させた黒装束が起き上がって再び襲い掛かってきたので、

また気絶させてから逃げ出した

ゆっくりと話す暇など無かった

ただ、走っている最中に話す事は出来た

「お前に関係があるのか?」
「・・・・・・」
「・・・お前が昔の事を思い出したくない事は知っている、だからこれ以上の詮索はしないがな・・・」
「最低最悪の矛盾を掲げた奴ら、そいつらの仕業だ」
「・・・なんだと?」

諦は、冷治の言葉に反応する

彼が導き出した先にある答え、「ジャスティス」

正義を尊び、正義を謳い、正義を確かめ合う、

表には、絶大な支持を得る宗教団体の私兵団、

しかし実際は、団体に反発するものを容赦なく葬り去る慈悲無き者達・・・

諦もそいつらの正体は知っていた

そして自分に牙を向ける事はある程度の予想がついた

かつての古代人達が崇拝した「神」を、

「ジャスティス」が「邪神」とした為、

古き寺院はその殆どが消滅させられた

その背景には堅く、重苦しい習慣を義務付ける事に反発した若者の協力があったからだそうだが、

諦はその世においてもまだ、「邪神」と定義されたものを崇拝する静谷一族の者だ

ただそうした行為を表に出していないのでしばらくは、と思っていたが、

しかし冷治が関係するもが気になった、

恐らく静谷一族の消去は二の次で、冷治に何かをするのが第一だと諦は憶測する

ただその何かは聞けない、冷治が堅く拒絶するからだ

だがその理由も分かった、諦と冷治が始めて会ったのはスラムだ、

アンダーグラウンドの、錆びれた、かつ危険極まりないところで冷治は倒れていたのを、諦が介抱し、以降自分の弟にした

そのときの彼の姿は今でも目に焼きついている、ボロボロの衣服、

生きた感触のしない虚ろな目、消えかかった体温、

死んでいるのだと一瞬見間違えるほどにそれは、凄惨だった

諦は一度だけ、冷治の顔を覗く、その表情は暗く、そして何かに怯えているようでもあった

「くそ・・・、何なんだよ一体・・・」

諦は、自分にしか聞き取れないほどの小声で、呟いた














次回予告

穏やかな日々は終わりを告げる、

謎の黒装束の男達は冷治を狙う、

人を殺すことに、戦う事に抵抗を感じる冷治に、諦は一つの剣を渡す

「呪いの鎖は自分で断ち切れ、この黒の剣でな」

そう告げて・・・



第二話「朱に染まり行く手」













座談会

FX「では、エスケプ」
諦「そうはさせるかぽんぽんちきぃ!、喰らえ必殺、シャァァァァァイニングフィンガァァァァァァァ!!!」
FX「所詮貴様はファイターにあらず!」
諦「グハ!」
冷「二人まとめて分子レベルまで分解されろ」
諦「フハハ、吊れないなぁ」
冷「そう言う問題か」
月「それにしても・・・」
FX「はい、なんでしょ?」
月「私(と妹)の名字、忘れた・・・」
FX「ギクゥ!」
月「しかも自分の古い小説なんてとてもとても見に行けないから、忘れたままにしてる」
FX「ザクザクザクゥ!」
アキラ「お、ザクが三機?」
冷「何がだ」
月「さらに、私のキャラ忘れた」
FX「冷君とその内ラブコメモゥドへ移行する位は・・・」
諦「いやそれ、思い出したって言わんし」
月「さらに、元とシナリオが180度転換している」
FX「メの字時代の事は勘弁してください(泣)」
諦「てか、変えすぎ」
FX「うん、大体の流れは同じのつもりだけどね」
月「つもり・・・?」
冷「ほう・・・?」
FX「心配線でもラブコメモゥドへの以降は決定ず・・・、って、覚醒モードオミットした分あんたら強く・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
冷「滅べ・・・!」

ここで人物相関図
    友
    人
静谷 諦→???
 ↓義理の弟
静谷 冷治→月ちゃん→???
     そ    姉
     の    妹
     う
     ち
     ラ
     ブ
     コ

全員「分からなさ過ぎ」
FX「しくしく」


謝罪 ごめんなさい、覚醒モード(名称が変わるあれ)オミットしました、すみません


???「どうでもいいがそこのロリコン、俺に血を吐かせるなよ」
FX「貴様に発言権は無い、脇役」
???「ほう・・・」
FX「あ、ダークネス取り出すのはヤメ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





INDEX

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