〜DARK SIDE PROLOGUE〜

―――少年は、息を切らしながら自転車を走らせる

理由は、寝坊だ

気付いた時、らしくないなんてカッコつけて、この様だ

自転車とは言え、最大速度を維持しながら走らせるのは疲れる

ましてや坂道など、さほど気にしない小さな坂でさえこの時は嫌気が差した

ふと、腕時計を見る

走行中に余所見をするのは非常に危険なのだが・・・

8時20分

時計はその時を指していた

朝のHRが始まるのは8時30分だ、

学校に着いてから教室に入るまでの時間を考えると、

ギリギリ間に合う程度だ

因みに、彼の兄と言うか、実の兄ではないのだが、まぁ、

そんな関係の奴は、少年を起こさずに自分一人学校へ行ったようだ

さもなくば、今ごろどこかで暇を潰して学校をサボっているに違いない

まぁ、少年はそんな事を気にしないのだが

少年はかなり疲れてきた

体力は、平凡だが・・・、それでもこれまでの道のりは、相当にこたえた

ふと、少年は周りの空気を気にする

誰もいない、静かな場所

静かで、寂しくて・・・

でもそんな所が、少年は好きだった、というか、そう言う場所で育ってきた

きっと孤独とか孤立というのが自分の中で当然のように認識されているのだろう

一人でいると、様々な考えが脳裏を過ぎる

自分は何故、存在しているとか、何故、自分は生きられるとか・・・

そんな、誰も答えられない問いを、少年は自問自答する

少年には、力があった

異質な力、だけど、生まれながらのものじゃない

自分の心の奥底の「何か」が、求めた結果、と、自分の義理の兄に聞いた

でもそんなもの要らなかった、自分が自分の破滅を望んでいて、

でもそれを実行する気にはなれない不安定な中にいたわけだから

・・・そろそろ、足が疲れてきた

このままでは、学校に着いてから走って教室に駆け込むのは無理に近い

そう思いながら走っていたら、学校の校門が見えてくる

今日もまた平凡な一日が始まる予定だ

・・・と、校門に自分と同じ通学用の自転車に乗って走ってきている人を見かけた

ヘルメットを被っているから、顔はわかりにくかったが、

印象的な青い髪をしていたから誰だかすぐにわかった

比較的良く話す、クラスメート

・・・というか、自分の交友関係は、殆ど切りの兄が紹介したとか言うもので、

その人、―――少女なのだが、も例外ではなかった

それに、比較的良く話す、といっても、義理の兄の話を回されて適当に相槌を打ち合う仲で、

友人の域には達していないと、少年は思っている

最も、他者から見て、友人と呼べない関係にあるのは少年の社交性の無さが災いしているのだが・・・

彼女も、こちらの顔を見る

少年の方は黒い髪をしているが、それ自体は他の人間の個性に溶けていくものだ

・・・が、少女はヘルメットを被った少年が誰だか一目でわかったらしい

と言うか殆ど消去法で、ヘルメットを常時着用する男子生徒、というと、

彼女は少年しか思い当たらなかったらしい

校門に差し掛かったところで、少女は少年にこう言った

「おはよう、遅刻、同じだね」

それに対し、少年が言った言葉はこうだった

「ああ・・・」

少年は適当にそう答え、校門に入る

今でも十分寒い朝は、これからもっと寒くなりそうだった・・・














INDEX

NEXT STORY