第28章「バブイルの巨人」
AG.「フュージョン」
main character:エドワード=ジェラルダイン
location:バロン

 

 

 ガキィィィン!

 BGMの様に延々と流れる波打ち際の音を砕き、鋼と鋼の激突音が鳴り響く。
 耳障りなその音を間近で聞きながら、マリリスの剣を受け止めたのは―――

「エッジ!?」

 マッシュがその名を呼ぶ。
 マリリスとマッシュの間に入ってきたのはエッジだった。振り下ろされた二つの剣を、半熔解した忍者刀で受け止めている。何故か、その頬には赤い手形がついていた。

「お前らはとっとと退けッ! 足手まといだッ!」
「・・・わかったよ」

 エッジに言われ、マッシュは悔しそうに歯がみしながらもカーライルを担いで後ろへと下がっていく。

「私の剣を受け止めるか! だが・・・!」

 マリリスは愉快そうに笑い、残る四本の腕を振り上げ、エッジに向かって振り下ろしてくる!

「チィッ!?」

 流石に六つの剣を受けきることは出来ない。
 仕方なくエッジは剣を捨て、後ろ―――マッシュ達が退いた方へと跳ぶ。手を離した忍者刀は、六つの剣によって砂浜に叩き付けられ―――あっさりと折れた。

(半分溶けかかってたからな・・・よく保った方か・・・)

「ちょっと借りるぜ」
「あ、おい・・・」

 すぐ傍に居るマッシュ―――が、担いでいるカーライルの腰に刺さっていた剣を引き抜く。
 あまり使い込まれていないほぼ新品の剣だった。竜騎士は主に槍を使うので、当然と言えば当然だが。

(騎士剣ってのは使ったこと無いんだが・・・)

 慣れない剣を何度か握り直しながら、エッジは “敵” を見やる。

(ちっ・・・いい女じゃねえか。こう言う時じゃなけりゃあ口説きたいところだぜ!)

 燃えるような赤い肌をした快活そうな健康美人だ。
 首からしたも実にグラマラスで思わずグッと来るようなプロポーションだとエッジは感想。

 下半身が蛇であるのはあまり気にしない―――が、六本の腕は少々気に障る。

(赤い肌に六本の腕―――って、あの野郎を思い出すのが難点だよなあ)

 地底にて、土壇場でエッジ達を裏切った男。
 ただしあちらは鎧が赤いだけで肌が赤いわけではなく、下半身も普通に二本の足だったが。

「・・・んで? てめえがルビカンテの野郎を操ってた、ってことでいいんだな?」

 すぐには襲いかかってこない様子の敵に、エッジは確認するように問いかける。
 マリリスはにたり、と蛇を思わせる絡み付くような妖しげな笑みを浮かべた。

「操っていた・・・というのは違うな。我はあの男に寄生していたに過ぎん」

 彼女はその背後で倒れているルビカンテを振り向かないまま吐き捨てるように続ける。

「しかし、このマリリスの力を得ながらも負けてしまうとは情けない男よ」
「・・・てめえのせいだろ」
「なにか言ったか?」
「てめえのせいでルビカンテは負けたって言ってるんだ! この勘違い女!」

 ムカムカと胸の内に広がる怒りをそのままぶつける。
 エッジは確信していた。
 先程のルビカンテ―――以前と様子が違っていたのは、この女のせいであると。

(以前のアイツならこっちを見下したりはしなかったし―――それで苛立ちのあまりに暴走することもなかったろうさ!)

 ルビカンテがまともな状態だったなら、 “鳳凰の舞” 状態のマッシュでも勝てたかどうか疑問だった。
 炎を防げれば勝てる―――などという単純な相手ならば今まで苦労はしていない。

「我のせいで負けただと・・・?」

 不意に、マリリスの雰囲気が変わった。
 余裕の笑みを浮かべた表情が真顔になり―――すぐに怒りに目がつり上がる。

「き・さ・まァァァ・・・! 人間の分際でこのマリリスを愚弄するかァァッ!」
「ただの事実だ。マリリスだかマリリンだか知らねーが―――っと」

 マリリスは怒りにまかせ、飛びかかってきた。
 振り下ろされてきた六本の剣のうち、半分を身を捻って回避し、もう半分を剣で受け流す。

「殺す! 死なす! 我を侮辱したことをその身魂に刻んでくれるわああああっ!」
「てめえなんぞに殺されるかよっ!」

 迫り来る六本の剣を、エッジは慣れない騎士剣で迎え撃つ―――

 

 

******

 

 

 ―――身体が焼けるように熱かった。

(斬られた・・・んだっけ、俺・・・)

 砂浜に倒れた状態で、うすぼんやりと目を開く。
 傷からは痛みというより熱を感じていた。その熱が逃げていくように、段々と体中から力が抜けていく。

(・・・ミスったなあ・・・俺、こんなところで死ぬのかなあ・・・)

 死ぬ。
 自分は死んでしまうのだと素直に受け入れていた。
 不思議と死ぬ事への恐怖はなかった。代わりに “罪悪感” を感じていた。

(・・・けっきょく、死んじゃうんなら・・・・・・あの時にわたしが死んでおけば良かったのになあ・・・・・・)

 死への恐怖はない。恐怖はないはずなのに、ファリスの目からは涙がこぼれた。

 近くに波の音が聞こえる。
 寄せては返す波の音は海を連想させ―――ファリスに在りし日の幻影を見せる。

 それはかつて、ファリスが別の名前で呼ばれて居た時の―――幼い頃の話。
 親子四人揃って隣の国へ船で出向いた時の話だ。

 航海の途中、ファリス達は嵐に遭遇してしまった。
 ただそこは大陸の内海であり、嵐と言っても多少天候が悪く、海の状態が荒れたというだけの事で、それだけならば特に問題はなかった。

 しかしその嵐と共に、普段は見かけない竜―――海竜が出現した。外海から迷い込んできたのか、その銀竜はファリス達の乗る船を見つけると、敵だと思ったのか襲いかかってきたのだ。

 ―――その後の事は、実はよく覚えていない。
 解っているのはその結果、どうなってしまったかということだけ。
 ファリスは船から投げ出され、本当の家族とは離ればなれになり―――さらには大切な人を失うこととなる。

 そう、大切な・・・とても大好きで、一番大切だった人―――

「・・・力を、貸そう」

(・・・え?)

 目の前に誰かが立っていることに、ファリスは気がついた。
 怪我のせいで身動き出来ず、見上げることも出来ないのでその足下しか見えない―――し、そもそも視界はぼんやりとしていてよく見えなかった。

「私も・・・力はあまり残されていない・・・」

 意識が混濁しているのか、それが誰なのかも解らなかった。
 ただ、知っているような気がする。それもずっと昔から、知っていたような気がする―――

「・・・しかし、かつてのお前を呼び覚ます手伝いくらいはできるだろう―――」

 ざっ、とその何者かは砂浜に膝を突く。
 それでも視線を動かすことすら出来ないファリスには膝しか見えず、相変わらずそれが誰なのかは解らなかったが。

 しばらくして掌が頭の上に置かれる―――その感触だけははっきりと解った。

(あ・・・)

 温かさを感じるその手に、ファリスは一つの記憶を思い出す。
 ファリスが何か新しいことを覚えたり、今まで出来なかったことが出来るようになったときに、大切な人が褒めてくれた思い出。今みたいに温かな手で頭を優しく撫でてくれた―――

「―――おねえ・・・ちゃん・・・・・・」

 優しい記憶に微笑みを浮かべて。
 ファリスの意識は闇の中へと沈んで行った―――

 

 

******

 

 

 エッジは内心で焦っていた。

 マリリスの無造作に振るわれる六本の剣―――は大した脅威ではなかった。
 剣を受けてはっきり解るが、この火のカオスとやらは大して強くはない。先程、溶けかかった “阿修羅” で振り下ろされた二本の剣を受けられた事からも解る。

 ファリスや海賊達があっさり斬られたのは、あまりにも突然の事態に驚き戸惑ってしまったからだろう。

 弱いとは言わないが、反則まがいの力を持つルビカンテに比べれば、互角以上に戦える相手だ。
 エッジ自身叫んだとおり、負けることはまず無いだろう―――が。

(・・・畜生! やっぱユフィとキャシーを逃がすんじゃなかった!)

 普段のエッジならば負けないどころか勝てる相手だ―――が、ルビカンテ戦で殆ど力を使い果たしている。剣を振り回す体力が残っているだけマッシュ達に比べればマシではあるが。
 ユフィとキャシーは戦闘経験が少ないが、それでもこのマリリス相手ならば十分の実力を持っている。

「雑魚がッ! 雑魚がッ! 雑魚がァッ! さっさと死ねええええええっ!」
「死なねーつってんだろ!」

 次々に振り回されてくる剣を、エッジは回避し、受け流し、時には弾き返して凌ぐ。だが、それらをくぐり抜けてマリリスへ攻撃するまでの余裕はない。
 怒りのあまり、先程のルビカンテの様に理性が吹き飛んでいるマリリスの攻撃をやり過ごしながら、エッジはその向こう側に見える、砂浜に倒れたままのファリス達を一瞬だけ見る。

 エッジが焦っている要因はそれだった。
 ファリスが斬られた時、近くにいなかったからはっきりとは解らないが、未だ起きあがって来ないところをみるとかなり重傷なのだろう。早く手当てをしなければ危ういかも知れない。

(下手したらもう・・・)

 最悪の可能性を頭に浮かべる―――と、マリリスの攻撃の隙をついて、もう一度ファリス達の様子を伺うように見てみれば。

「・・・ルビカンテ!?」

 いつの間にか、さっき倒したはずのルビカンテが立ち上がっていた。
 彼は、倒れたファリスの目の前に立ち、見下ろしている―――何をしているのか、と気を取られたのがまずかった。

 ギィィィンッ!

「げっ!?」

 エッジの手にしていた剣がはじき飛ばされる。
 それを見て、マリリスは優越の笑みを浮かべた。

「ハハハハッ! どうだ! 剣を無くしてはもう受け切れまい!」
「やべー・・・」

 などと呟きつつも、エッジはそれほど危機感を抱いていなかった。
 攻撃を受けきれなくなったなら、さっさと逃げ出してしまえば良い。ルビカンテ相手ならばともかく、この勘違い女相手ならば余裕で逃げ切れる自信があった。

 時間は十分に稼げた。少なくとも、マッシュやリディアたちが安全な場所へ退避出来るくらいの時間は稼げたはずだ。
 ファリス達を見殺しにするのは心苦しいが、これ以上踏ん張ってもどうにもならない。下手をすれば死体が一つ増えるだけだ―――と、エッジは逃げようと背後を振り向こうとした―――その時だ。

「エッジ!」
「へ?」

 聞きたくなかった女性の声が背後から聞こえた。
 さらに砂浜を踏む足音も続いて聞こえてくる―――2人分。

「カーライルはユフィたちに預けてきた! 俺も戦う!」

 振り返らずとも解る。
 マッシュとリディアだ。

「アホかあああああああああああっ!」

 油断無くマリリスの方を伺いながら全力で罵倒する。
 なんのためにエッジが負けないまでも勝てない戦いをしていたかと言えば、マッシュたちの逃げる時間を稼ぐ為だった。
 それが戻ってこられたならまるで意味がない。

「誰がアホよ!?」
「おめーらだ! てゆーか、ユフィたちと合流したならそいつら連れて来いよ!」

 などと叫びながら、それも仕方ない判断だと冷静な部分が呟く。
 敵はあのルビカンテの中から出現し、ファリス達を一瞬で斬り伏せたのだ。強敵だと感じ、戦い慣れていないユフィ達を置いてくるのも仕方がない。

 だが、状況は最悪だった。

 エッジ一人ならば逃げられることが出来る―――が、力尽きているマッシュやリディアでは逃げ切れないだろう。
 マッシュはともかく、リディアを見捨てるわけにはいかない。

(・・・こうなったら筋肉を盾にしてリディアを抱えて逃げるか・・・?)

 冗談ではなく、そうするしかないと考え実行に移そうとしたその時だ。

 轟ッ!
 と、マリリスの背後―――ファリス達が倒れていた場所に炎の柱が立ち昇った―――

 

 

******

 

 

(―――有り難う御座います、ルビカンテさん)

  “融合” している炎の魔人に彼女は礼を言う。
 今、自分を中心に立ち昇っている炎は彼女ではなく、ルビカンテの能力だ。炎は彼女と周囲に倒れている海賊達を包み込み―――しかし燃やすことなく、その傷を癒している。

 ―――元々はこちらの失態だ。礼を言う必要はない。

(それでも、です)

 黒いワンピースの上から、先程斬られた傷痕を撫でるように手を添える。
 すでに熱も痛みも感じることはなく、傷も治っているのだろう―――しかしあのまま放っておけば確実に死んでいた。

(このままでは “約束” を果たせなくなるところでした。だから、有り難う御座います)

 ―――・・・・・・。

 礼を繰り返す。
 だが、照れているのか、ルビカンテは何も返してこなかった―――

 

 

******

 

 

「これは・・・っ!?」

 炎の気配を感じ取ったのか、マリリスが背後を振り返る。まるで目の前の敵のことなど忘れたように、エッジ達に堂々と背を向ける。
 逃げるには絶好のチャンスだ―――が、しかしエッジ達は動かなかった。マリリスと同じように、立ち昇る炎―――その中心に居る存在に目を奪われていた。

 それはまるで “魔女” のようだった。
 身に着けている夜の色を思わせる漆黒のワンピースもそれなりに目立つが、特徴的なのは頭にかぶっている大きな帽子だ。
 三日月を象った大きな飾りを付けた、先の折れた黒いとんがり帽子だ。さながらおとぎ話に出てくるような魔女を連想させる。

 その “魔女” は少し俯いていた。そのため、とんがり帽子の広いつばで顔が隠れ、表情を伺うことは出来ない。

「お前、わああああああああああああああっ!」

 突然、恐慌に駆られたように、マリリスが “魔女” へ向かって飛び掛かる。
 そのまま六本の腕を勢い任せに振り下ろす。 “魔女” は避ける素振りすら見せずに、剣は次々に魔女の身体を切り刻んだ。

「アハッ、アハハハハハハハハッ!」

 切り刻まれた “魔女” を見て、マリリスは哄笑を上げた。
 その笑い声は愉悦、というよりもどこか安堵しているかのようにエッジ達には聞こえる―――が、その笑い声も長くは続かない。

「・・・無駄です」
「ひぃっ・・・!?」

 剣を身体に食い込ませながら平然と声を発する “魔女” に、マリリスは顔を恐怖に歪めて後ずさる。
 そんな彼女へ向けて “魔女” は顔を上げて、片手を差し出す―――その素顔は。

「―――ファリス・・・?」

 見せたその素顔は、確かにファリスのものだった。
 そう言えば、砂浜に倒れている者たちの中にファリスの姿はない。

「でも、ファリスにしては―――」

 着ているものが女物のワンピースであるせいか、ファリスが麗しい女性のように見える。

(い、いや待て落ち着け俺。女っぽく見えてもファリスは男で―――あれ? でもちゃんと男って確認したわけじゃねえし―――な、なんだ? なんかドキドキしてきたっ!? うわーーーー!?)

“『炎の魔人』の名において命じます・・・地の底に眠る星の火よ、私の意に応えなさい!”

 困惑しているエッジをよそに、ファリスの顔をした “魔女” は詠唱し―――ずりずりとエッジ達の方へと退がっていくマリリスへと叫ぶ!

「―――『ファイガ』!」

 ごうんっ!

 突然、マリリスの身体が轟炎に包まれた。
 その炎の中で、彼女は絶叫を上げる。

「あ・・・はあああああああああっ!? も、燃える・・・!? この火のカオスたるマリリスが燃やされる・・・!?」

  “火のカオス” というからには、炎属性に耐性を持っているのだろう。
 それにも関わらず “魔女” が放った火炎の魔法は、マリリスの身体を容赦なく焼き付くさんとする。

「う、うわっ!?」

 目の前でマリリスが燃えるのを見たマッシュは驚いて尻餅をつく。
 エッジも慌てて身を退こうとする―――が。

「・・・あ、あれ? 熱くねえ?」

 すぐ目の前で炎に包まれるマリリスは、手にした剣はすでに完全に融解し、身体の方も消失しようとしていた。
 火に耐性がある存在をあっさりと燃やし尽くそうとするほどの火力だというのに、すぐ近くにいるマッシュ達はまるで熱を感じない。
 よくよく見れば、マリリスの足下の砂浜にも焦げた様子はない―――ただマリリスのみを燃やしているのだ。

「凄い魔力・・・・・・完全に魔法を制御してる・・・・・・」

 息を呑み、リディアが呟く。
  “魔力” とは即ち魔法を扱える能力の度合いである。魔法を扱う際、MP―――メンタルパワー(魔法力)を消費して行使するのだが、そのMPを使いこなす力の事を “魔力” と呼ぶ。

 例えばローザの場合、MPは異常に高いが、魔力が低い為にろくに魔法を使えなかった。魔法が失敗することが多かったのは、自身の高い魔法力を制御する力が無かったせいである。

 その点 “魔女” の魔法は完全に制御されていた。
 標的のみを燃やし、外に影響を与えない―――魔法の極意を極めていると言っても良い。
 リディアでも、低級魔法なら十分制御出来るが、火耐性のある存在を燃やさんとするほどの魔法をここまで完璧に制御する自信はなかった。

「お・・・の・・・れ・・・」

 やがて炎はマリリスを焼き尽くす。
 怨嗟の言葉を残し、火のカオスは完全に消失した―――

 

 

******

 

 

 火のカオスとやらを名乗るマリリスがあっさりと消失して。

 それに合わせるように “魔女” を中心に燃えさかっていた炎が消える。
 炎は “魔女” の周囲に倒れていた海賊達も巻き込んでいたはずだが、彼らに焼け焦げた様子はない―――どころか、不思議なことに次々と海賊達は意識を取り戻し、身を起こしていく。

 よく見れば、マリリスに斬られたはずの “魔女” も、服が斬られた後はあるのだが、身体には傷痕が見えなかった。
 それを見て、エッジはルビカンテの能力を思い出す。

「癒しの炎―――って、まさか・・・!?」

 かつてバブイルの塔にてルビカンテがエッジ達を癒した炎。
  “魔女” が使った炎も同じ力だとすれば―――

「まさかお前、ルビカンテの野郎かッ!?」

 エッジは驚愕のあまりに叫んだ。そう言えばルビカンテの姿も無い。
 とんがり帽子はまだ良しとしても、黒いワンピースは明らかに女性用だ。そんな性癖のヤツが仇だなんて―――と、頭を抱えるエッジをリディアが小突く。

「いやいや、どう見ても違うでしょ」
「あ、でも半分は当たりといえなくも無いのかもしれません」

 ファリスの顔をした “魔女” の言葉に、エッジは怪訝そうに眉をひそめながら問いかける。

「結局、お前は誰なんだ?」
「えっとですね」

 コホン、と咳払いひとつして、彼女は姿勢を正して。

「初めまして―――私は “サリサ” と言います。一応 “光の戦士” の一人です」

 そう言って、彼女はぺこりとお辞儀した―――

 

 


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