第28章「バブイルの巨人」
E.「策」
main character:ロイド=フォレス
location:バロン城

 

「破壊は出来んが止める方法は二つあるゾイ」
「それは?」
「あの “巨人” はバブイルの塔と連動しておる。バブイルの塔からエネルギーを供給されて稼働しておるんじゃ」
「では、バブイルの塔を攻め落とし、エネルギーの供給を止めれば―――」
「しかし、バブイルの塔に進入する方法が・・・」

 すると、それまで何も喋らなかったシュウが、 “巨人” を投影しているクリスタルを指し示す。

「そのクリスタルは “合い鍵” だ。フォールスにあったクリスタルと同じように、それがあればバブイルの塔へ入ることが出来る」
「・・・信用出来るのか?」

 不審そうにロイドが問う。それは、シドがシュウを伴ってこの場に現れた時から感じていた疑心。
 シュウがゴルベーザの陣営に居たことは先程、あらかじめ説明していた。だがロイドはシュウがゴルベーザと共に行動していたところを実際に見ている。その時の様子からすると、シュウがゴルベーザを裏切るとは考えにくい。

「信用出来ないならばそれでもいい。だが、私の言っていることに間違いがないことは、そこの技師が証明してくれるはずだ」
「確かに、お嬢ちゃんの言うことに間違いはないゾイ」

 シュウの言葉を受けてシドが頷く。
 それでもシュウに気を許さないまま、ロイドはシドに先を促す。

「・・・それで親方。巨人を止めるもう一つの方法は?」
「巨人の内部には、巨人を制御するシステムがある。ゴルベーザ達はそれに命令をしてあの巨人を動かしている―――つまり、そのシステムを乗っ取るなり破壊するなりすれば良いゾイ」
「でもそれって、巨人の内部に進入しなければならないんスよね?」

 外側から破壊出来ないのならば内部から。
 理に適っているようにも思えるが、問題は―――

「どうやって巨人の中に入るか・・・ですね」

 クノッサスが言うと、シドは投影された巨人の口や胸などを幾つか指し示す。

「幾つか進入経路はある―――が、直接乗り込むならば、まずは巨人の動きを止めねばどうしようもないゾイ」
「つか、これって手詰まりって言わねえか?」

 リックモッドがチッと舌打ちする。
 攻め込むならばバブイルの塔の方が断然、難易度は低い。 “合い鍵” があるのならば、巨人よりも進入しやすいだろう。なおかつ、巨人は内部にある制御システムに命令して動かしている―――ということは、ゴルベーザ達が中に居る可能性が高い。逆に言えば、今ならバブイルの塔は手薄になっているはず。戦力を集中させれば簡単に落とすことが出来るかもしれない。

 ただし問題は、バブイルの塔はエブラーナの地にあるということだ。
 そこまで行くのに時間がかかる。いくら飛空艇でひとっ飛びと言えど、軍を移動させ、塔を攻め落とす頃には巨人がバロンの城を殲滅しているに違いない。

 リックモッドの言うとおり、八方塞がりだった。
 会議室に重く苦しい雰囲気がたちこめる―――そこへ。

「策はあります」

 絶望的な雰囲気を断ち切るような言葉に、会議室の面々は顔を上げ、発言した者へと視線を集める。
 その注目を浴びて、ロイドは力強く断言した。

「巨人の動きを止め、その内部へ進入する策はすでにできています!」

 


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