第25章「地上へ」
B.「目覚め」
main character:セリス=シェール
location:トメラの村・宿屋

 

 

「・・・・・・!」

 不意にセリスは目を覚ます―――が、しばらく目覚めたという事を自覚出来ず、ぼんやりと天井を眺める。

「・・・? ここは・・・?」

 寝起きのためか、それとも疲労のためか、まだ上手く働いてくれない頭を抑えつつ、彼女は身を起こした。
 そこはどうやら寝室のようだった。
 子供用とも思える、人間の大人が寝るにはギリギリの大きさのベッドにセリスは寝かされていて、部屋の中にはそれが幾つか並べられていた。

 というかこの部屋に見覚えがあった。

「ここは・・・確か、ドワーフの村の宿屋?」

 そう想いながらキョロキョロと部屋の中を見回せば、すぐ隣のベッドの毛布が不自然に膨らんでいる。
 誰かが毛布を頭からかぶって眠っているようだった。

「・・・・・・リディア?」

 毛布をめくってみれば、緑の髪の少女。
 目を閉じているが、構わずセリスはその身体を揺さぶる。

「リディア! ちょっと起きて! ロックは、ロックはどうしたの!?」

 なんでここに居るのかは大体想像がつく。
 力尽きた自分を仲間達が村まで運んでくれたのだろうと。

 しかしロックはどうだったのだろうか。意識を失った時に見たライフストリームでの一件。あれは夢のようでありながら、しかし夢ではなかったことだけははっきりと理解している。

 やはり彼は恋人に誘われ、死んでしまったのだろうか―――と。

「うっさいわねえ!」

 不機嫌そうにリディアは目を開けると、セリスの手を払いながら身を起こす。
 凶悪に目を細め、セリスを睨み殺そうとするかのような勢いで不機嫌そうな顔を向ける。

「ぎゃあぎゃあ喚かなくても、あいつならちゃんと生きてるわよ!」
「ロックが・・・生きてる・・・生き返って、くれたの!?」
「そーよ! あたしの言う事が信じられないならその目で見てくれば? 隣の部屋にいるだろうから!」

 そう言って、リディアは再び毛布をかぶってしまう。

「・・・?」

 なんでこんなにリディアが不機嫌―――というか、セリスにはまるでスネているようにも見えたが―――なのか解らないが、それよりもロックの安否を確かめたいという気持ちの方が強かった。
 一応、毛布にくるまったリディアに向けて「ありがと」と声をかけると、部屋を出ようとする―――が。

 部屋の扉に手をかけようとした瞬間、向こうから扉が開いた。

「あら、お目覚めになられましたか」

 ふふ、と穏やかに微笑みながら、アスラが部屋に入ってきた―――

 


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