第23章「最後のクリスタル」
K.「片想い」
main character:セリス=シェール
location:トメラの村・宿屋

 

 

 宿屋の部屋は二部屋取った。
 大部屋と2人部屋の二つ。もちろん、男性陣と女性陣に分けている。

 そして女性はリディアとセリスしかいない―――エニシェルも女性ではあるが、彼女の正体は剣だ。人形の状態というのは彼女にとって不自然な状態であり、人形でいるだけで僅かだが力を消費してしまうらしい。だから眠る時は、基本的には剣の状態で眠るため、ベッドは必要ない。
 付け加えると、彼女は休眠する必要はない―――が、人間と生活するうちに、眠る習慣ができてしまったという。

 そのエニシェルは、バッツの腰に下げられて村長に会いに行っている。
 つまり、2人部屋には、今はリディアとセリスの2人きりということだ。

「・・・なかなか悪くない部屋ね」

 部屋の中を見回して、セリスが無難な感想を述べる。

「どこが? ドワーフサイズのせいか、天井は低いしベッドは短いし―――ついでに誰かさんが居るせいで息が詰まるんだけど」

 同室の女性からはやたらと攻撃的な言葉が返ってきた。
 明らかに敵意のある反応に、セリスは表情に愛想笑いを張り付かせて言葉に詰まる。

(薄々は感じていたけど・・・私、嫌われてる・・・?)

 嫌われている理由も知っている。
 幻獣を友とする召喚士のリディアにとって、幻獣の力を奪い、行使するガストラの魔導戦士は仇と言ってもいい。

(ドワーフの城で会った時は八つ裂きにしてやりたい、とまで言われたしね・・・)

 ゴルベーザがクリスタルを奪いに来た時の話だ。
 あの時のリディアは、 “人間” に対して壁をつくり、気を張りつめていた。

 しかしそれは、彼女の戦いにバッツを初めとする、彼女にとって大切な仲間達を巻き込まないためであった。
 バッツとの決闘や、ヤンの死を経て、その壁も少しずつ取り払われていっているようだ―――が、セリスに対しては相変わらずだ。

 それも仕方のないことかもしれない。
 セリスは他の者たちとは違う、リディアにとっては最初から “敵” だった。

 幻獣の力を使う、ガストラの魔導戦士というだけでなく、ミストの村を襲い、ファブールを襲った “敵” だったのだ。
 それが幻獣界から現界―――この世界に戻ってきた途端、味方になったと言われても受け入れがたいだろう。

(そういえば、まともに会話したこともないわね)

 良い機会かも知れない。こうして2人きりとなったのだから、この機会に世間話の一つでもしてみよう。
 そう思って、セリスはリディアに声をかけようと口を開く、

「――――――」

 しかし言葉は出なかった。

(こ、こういう時って、どんな話をすれば良いんだっけ・・・?)

 セリスは今まで普通にお喋りするような相手―――同年代の友達というものが皆無だった。
 物心ついたころからすでに魔導戦士として育てられ、ガストラでは “友人” というものを持った覚えがない。

 つまり、あのローザが “初めてのお友達” と呼べる相手だったのだ。

(ローザ相手だと、向こうが一方的に喋り倒すし・・・)

 ローザと一緒に居ると、彼女が一方的に喋りまくるだけだった。
 それこそ機関銃のようにまくし立ててくるローザに、相づちを打ったり、時々ツッコミを入れたりするのが常だった。

 セリスの方から話題を振ったことは殆ど無い。

 だからこういうとき、どんな風に話しかければいいのかが解らない。

(話題がないわけじゃない・・・けど、それは逆鱗だろうし・・・)

 セリスとリディアの共通の話題。
 それは魔法や幻獣に関することだ。
 だが、そんな話題を振れば、セリスが予想したとおりリディアは激怒するだろう。

 溶岩を越えた時ロックが軽口叩いたことを思い出す。あの時、リディアが激しく反応したのは―――

(「魔法を使えるようになる方法」・・・それってつまり、 “私” の事だものね・・・)

 魔道士は、その血に “魔法” という概念を染みこませ、そうした血を何代も重ね合わせる事によって魔道士となる。
 だから基本的に、魔道士の血筋でない人間は魔法を使えない―――が、例外はある。

 魔導戦士―――幻獣の力を体内に宿らせた魔法戦士。
 つまり、セリス達のことだ。

 リディアもセリスの体内に幻獣の力が仕込まれ、それがセリスの魔法の源だと知っている。
 だから、ロックの言葉にそのことを連想して、反発したのだ。

「丁度良い機会だから言っておくけど」

 セリスがなにを言うか悩んでいると、こちらに背を向けたままリディアが冷たく告げる。

「あたしはアンタの事を仲間だとは思わない。アンタのその身に幻獣の力がある限り!」

 

 

******

 

 

「はあ・・・」

 宿の外でセリスは嘆息する。
 あのまま同じ部屋にいても息が詰まるだけなので外に出てきたのだ。

(・・・嫌われてるのは解ってたことだけど・・・)

 ああも真っ向から拒絶されるというのはかなり堪える。

(嫌われてるのは慣れてるつもりだったんだけどな・・・)

 ガストラ帝国で、将軍という皇帝に次ぐ高位でありながら―――いや、だからこそセリスを快く思わない者たちは多かった。
 まだ18という若さで、しかも女。
 いくら実力主義のガストラ帝国でも、ひがむものは居る。
 特に同じ将軍であるレオの部下達は、 “常勝将軍” の名を作るために、何度か貧乏クジを引かされたレオのために、恨みとすら思っている。

(・・・でもまあ、あんな風に真っ正面から否定されたのは初めてか)

 陰口は言われなれている。
 しかし、真っ向からそれを言う者はいなかった。
  “将軍” の地位は伊達ではない。 “常勝” の二文字は作られたモノだとしても、その実力は本物で、生身の人間でセリスと対等以上に戦えるのは、同じ将軍のレオ=クリストフだけだった。
 セリスはひがまれていると同時に、怖れられてもいたのだ。

(まあ、だから友達とか居なかったわけだけど)

 そんなことを思って小さく苦笑していると。

「・・・セリス?」

 声をかけられた。
 いつの間にか俯いて地面を見ていた顔を上げれば、そこには。

「ロック・・・に、バッツ・・・?」

 目の前には、長老の家に行ったはずのロック達が居た。

「いや、俺も居るんだけど・・・」

 赤い鎧の誰かさんが自分を指さす。
 が、それは無視してセリスは怪訝そうに尋ねた。

「随分早いわね」
「って、スルーかよ!?」
「まあ、大して聞くこともなかったしな」

 そう言ってバッツが苦笑してから逆に聞き返す。

「それよりアンタはこんなところで一人で何してんだ?」
「ギルガメッシュ! ギルガメッシュをよろしくお願いします!」
「私は・・・」

 セリスは口ごもり、言葉に詰まる。
 リディアに拒絶された、というのはなんとなく言いにくかった。
 と、不意にロックがバッツの方をぽん、と叩く。

「悪い、俺、先に中入ってるわ」

 そう言ってさっさと宿の中へと入っていく―――セリスとは1回も目を合わせようともせずに。

「お、おいロック―――」
「無視するなよー! 寂しいだろー! 泣いちゃうぞー!」
「うるせえよ!」

 段々とうざくなってきた赤い鎧の男に、バッツは振り向きざま足払いを仕掛ける。
 あっさりと転倒し、ギルガメッシュはじたばたと四肢を動かし起きあがろうとするが・・・。

「ぬあああああ!? 鎧がっ、鎧が重くて起きあがれねーーーーー!」
「ええと・・・」

 まるで亀のようなギルガメッシュに、どうしたもんかとセリスが見下ろす。

「放っておけよ―――それよりも何か悩んでるんだろ? 相談にのってやろうか?」
「・・・え?」

 バッツの申し出にセリスは思わず眉をひそめた。

(悩んでるのは確かだけど、それをバッツに相談してもね・・・)

 セリス的にバッツの印象は、 “斬鉄剣とか無拍子とかとんでもない技を使うけど馬鹿” という概ね正しい認識だった。
 早い話、馬鹿に相談したところでなんになるというのか、というのがセリスの本音だ。

(けど、一人で悩んでいても仕方ないか―――話を聞いてもらうだけでも気が晴れるかも知れないし)

 そんな事を思いつつ、セリスは頷く。

「んじゃ場所変えるか―――ここはなんか五月蠅いし」
「おーい、どっか行く前に俺を助け起こしてぷりーずっ!」

 五月蠅い何かがなんか言っているのを無視してバッツは歩き出す―――と、数歩歩いたところで、バッツの腰に下げられた二本の聖剣のうち一本が、光を放って次の瞬間軽い爆発を起こす。

「おわっ?」

 突然の事に、バッツは驚いて身を翻すと、そこには黒尽くめのドレス姿のエニシェルが居た。

「って、変身するなら先に言えよ。びっくりするだろ」

 抗議の言葉を、しかしエニシェルはスルー。

「バッツ、どこぞへ行くのなら妾は先に宿に戻るぞ」
「ん。別に構わねーけど」

 バッツが頷くと、エニシェルはさっさと歩き去ろうとする―――が、ギルガメッシュの側に来た時、ぴたりとその足を止めた。
 それからじっと、倒れたままのギルガメッシュを睨み降ろす。
 エニシェルの瞳には特に感情は映していなかった。ただ、観察するかのようにギルガメッシュの姿を見下ろす。

「な、なんだよ・・・?」

 エニシェルの視線に薄気味悪いものでも感じたのか、ギルガメッシュはぎょっとしたように彼女を見返す。

「・・・・・・」

 しかしエニシェルはなにも言わずに、さっさと宿の中へと入っていってしまった。

「な、なんなんだ・・・?」

 宿の中に消えていく黒ドレスの少女の姿を見送り、ギルガメッシュはぽつりと呟き―――・・・・・・
 不意に気がついた。
 いつの間にか、バッツとセリスもどこかへ姿を消していることに。

「って、おい! どっか行くなら俺を起こしてから行きやがれーーーーーー」

 そのギルガメッシュの絶叫は、誰も通りかからない往来に虚しく響き渡った―――

 

 

******

 

 

「―――そういうわけで、リディアに嫌われているのよ」

 トメラの村の中をぶらりと歩きながら、セリスは先刻の事をバッツに話す。
 そう言えばリディアはバッツの兄貴―――だとセリスはまだ勘違いしている―――だし、何か良いアドバイスでもしてもらえるかも知れない。などと思って、バッツを見れば、彼は何故か残念そうな顔をしていた。

「なんだ、そっちか」
「そっちって・・・何を期待してたっていうの?」
「いや、てっきりロックに関する話かと」
「なっ・・・」

 思っても見なかったバッツが出した名前に、セリスの顔に血が集まって赤くなる。

「な、なんでそこでロックの名前が・・・」
「ドワーフの城で、ロックを振ったか振られたかしたんじゃないのか?」
「なんで知ってるのよ!」

 反射的に怒鳴り返して―――ハッとする。

(って、素直に白状してどうするのよ私ーーー!)

 自分の迂闊さを呪うセリスに、バッツは平然と答える。

「アンタ達の間になにかあったってことくらい、馬鹿でも解るっての」
「ああ、成程―――って、それはともかく!」

 思わず納得して―――セリスは慌てて話しを切り返す。

「その・・・私、そんなに態度に出てた?」
「むしろロックの方だな。ここんとこぼーっとしたり、アンタとは視線を合わさねーし」
「う・・・・・・」

 あまり気にしないようにしていたのだが、改めて言われるとショックを受ける。
 城での一件から、ロックは露骨にセリスを避けていた。
 それも仕方のないことだと解っているつもりなのだが―――

「キツイ・・・わね・・・」
「だろうな」

 何故かバッツが同意する。
 彼はうんうん、と頷きながら言葉を続ける。

「俺もリディアと地底で再会して、いきなり蹴り倒された時にゃマジで死にたくなるほど辛かった・・・」
「そ、そう・・・」

 流石に死にたくなるほどじゃないなあ、と思いつつ相づちをうつ。

「まあ、立場上あいつらもアンタのことを受け入れるわけにはいかないんだろ。辛いとは思うが、許してやってくれよ」
「解ってる」

 セリスは頷いた。

「私がガストラの将軍である以上、ロックやリディアにとって私は赦されざる存在だ。嫌われるのも仕方ない・・・」
「おいおい、そりゃちょっと違うぜ」
「え?」

 バッツが何を言っているか解らず、セリスはきょとんと彼を見返す。
 すると彼は当たり前のことのように告げた。

「ロックもリディアも、アンタのことを嫌ってなんかないって」
「え・・・? でも私はガストラの将軍で、リディアにとって私は “敵” で―――」
「そう思ってるなら、わざわざ口に出してアンタを拒絶する必要もないだろ。本気で敵だと思ってるなら、問答無用でアンタに魔法の一発でもぶっ放してるさ」

 バッツは苦笑しながら続ける。

「わざわざ相手に “嫌い” って告げるのは、自分に言い聞かせてるんだよ」
「どういう意味?」
「本当に嫌いな相手だったら無視するって事。嫌いになるべき理由があるから “自分はアイツのことを嫌いにならなきゃいけない” ―――そう言い聞かせてるのさ」
「・・・それは極論じゃない?」

 ロックについては―――多分、嫌われているわけではないとセリスは解っていた。少なくとも、 “ただの” セリス=シェールである限りは。
 けれどリディアは・・・

「ロックはともかく、リディアはとてもそうは思えないわ。だって嫌われない理由がないもの」

 魔導をその身に秘めた存在―――ということの他に、セリスは実際にリディアの “敵” として姿を現わしたことがある。
 その時はリディアは幼く、直接戦ったわけではないが、それでも嫌われこそすれ、その逆は有り得ないだろう。

「でもアンタ、ミストとは仲いいじゃんか」
「仲が良いわけじゃない。単に、ちょっと縁があったというか・・・」
「少なくとも、嫌われちゃ居なかったろ?」

 エブラーナで再会した時、ミストは以前と全く変わらない様子でセリスに話しかけてきた。
 「あの時はお世話になりましたー」とにこにこと笑いながら頭を下げるミストに、どう対応したものかと悩んだものだ。

「だけどミストがそうだからって、その娘がそうだとは・・・」
「アンタ、良いヤツだよな」
「え・・・?」

 唐突に褒められて、セリスは面食らう。

「そうやって真面目に悩んで考えて―――どうしようかって迷ってる」

 ―――いつの間にか、バッツ達は村の端まで辿り着いていた。
 トメラの村は地上にある村や街のように、魔物対策のためか高い外壁に囲まれていた。その外壁に背を付けて身体を預け、バッツはセリスに笑いかける。

「だからきっと、みんなアンタの事が好きなんだ」
「好・・・って、誰が!?」
「だからみんなだよ、みんな。セシルもローザもカインもロイドもリサもリディアもミストも、とうぜんロックだって。きっとアンタの事が好きなんだ」

 そう言って、最後に「あ、俺もな」とバッツは付け足す。

「そんなわけ、ないでしょ。私は他人に好かれるような女じゃない・・・」

 なんとなく、バッツの笑顔を直視することが出来ず、セリスは俯く。

「私のこと、旅人の貴方が知らないはずはないでしょう? 冷酷無比にして立ち塞がった敵は全て殲滅する “常勝将軍” 」

 顔を上げ、しかしバッツとは視線を合わさずに言う。

「敵どころか味方からも怖れられた女将軍よ? そんな女、誰が好きになるって言うのよ!」
「じゃあ、なんでここにいるんだよ?」

 え? と、思わずバッツの方を見れば、彼はにやりとした笑みを浮かべていた。

「 “ガストラの女将軍” のことなんか俺は知らない―――俺の目の前に居るのはセリス=シェールっていう俺達の仲間だろ」
「でも・・・」
「―――初めて地底に向かう時、セシルが言った言葉を忘れたのか?」
「セシルの・・・?」
「嫌いじゃないって、アイツは言ったぜ」
「あ・・・」

 本当なら、セリスはレオと一緒にガストラへ帰らなければならないはずだった。
 けれど、それでセリスが “後悔” することをセシルは望まず、セリスもフォールスに留まることを望んで―――ここにいる。

「ちょっと話が脱線したような気もするけどさ、俺がアンタに望むことは一つだけだ」

 ぴっ、とバッツは指を一本立てる。

「ロックやリディアの事を嫌わないでほしい」

 そして、とバッツはセリスを見つめる。
 セリスももう、視線を反らそうとはしなかった。

「あいつらが、本当はアンタのことを嫌ってないって事を知っておいてほしいんだ。そうすりゃ、もしかしたらいつか受け入れられる日が来るかも知れない」
「・・・そうね」

 セリスは頷いて―――微笑む。

「そうなったら、素敵ね」
「・・・!」

 その微笑みに、思わずバッツはどきりとした。
 僅かに顔を赤らめたバッツに、あら? とセリスが首を傾げる。

「顔、赤くない? まさか風邪でもひいたんじゃ―――」
「あー、そうかも。戦車の中でずぶ濡れになったからなー。今日は早めに休んだ方が良いかも」

 そんな事をいいつつ、バッツは足早に宿の方へと向かう。
 その後をセリスが続いて―――その背中に声をかけた。

「バッツ」
「なんだよ」
「ありがとう。話を聞いてくれて」
「別に礼を言われるようなことじゃねえよ」

 なんとなくぶっきらぼうな返事になってしまったのは照れのせいだろう。
 しかしそんなこと、セリスは気にせずに続ける。

「いいえ。お陰で少し吹っ切れたから。だから、ありがとう」
「・・・・・・だからそう素直に礼を言うなっての・・・・・・」
「ん? なに?」
「・・・どういたしましてって、言ったんだよ!」

 バッツは照れ隠しに精一杯の声で叫び返した―――。

 

 

******

 

 

「ただいま」

 と、なんとなく口にしながら女部屋へと戻ってくる。
 部屋の中では、リディアが暇そうにベッドに腰をかけてぼーっとしていた。

 入ってきたセリスを一瞥すると、すぐに視線をあらぬ方向へと向ける。
 そんな彼女の名を呼んでみた。

「リディア」

 少しの間。それから。

「・・・なによ」

 遅れて返ってきた返事を、なんとなく楽しく思いながらセリスは言った。

「貴女が私の事を受け入れてくれなくても、私は貴女の仲間であることを望むから」
「・・・はぁ?」

 振り返り、敵意を持って睨んでくるリディアに、セリスは微笑みを返して付け足す。

「少なくとも、私が “ただの” セリス=シェールで在るうちは」
「ばっかじゃないの。何度だって言うけど、アンタが誰であろうと、その身に幻獣の力を宿している限り、あたしはアンタを認めない!」

 怒りすら込めた、相手を打撃するような言葉に、しかしセリスは動じずに「ええ」と頷き返す。

「解ってる」
「解ってないでしょ!」
「どうかしら―――でも」

 クス、と愉快そうに笑みをこぼし、彼女は言った。

「私の “望み” は変わらない―――だって “片想い” は二度目で慣れてるし、ね」

 


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