「・・・今日も大した戦果は得られなかったか」
バブイルの塔に戻り、力なくルビカンテが呟く。
ここの所毎日、ルビカンテは塔の外へ出てはエブラーナの忍者たちを探していた。
エブラーナ中で炎が焚かれ、その熱に攪乱され、忍者たちを感知できない。仕方なく虱潰しに島の端から端までを探し回っているが、忍者たちの痕跡や砦などは見つかるものの、忍者そのものはすでに逃げ去った後だ。
一応、見つけた砦は燃やしているが、エブラーナ中に隠し砦は点在し、しかもいつの間にか新たに砦が作られているようで、燃やせば燃やした分だけ別のところに砦が建てられている始末だ。かつてバロンに城を攻め落とされながらも、野に伏せり森に潜み洞穴に隠れ、ゲリラ戦法でバロン軍を撃退したこともあるエブラーナ忍軍だ。
島全体を焦土にでも変えない限り、忍者たちを全滅させることは難しいだろう。だがルビカンテはそこまでするほど凶悪な男ではなかった。「おかえり・・・・・・」
落胆するルビカンテを出迎えたのはどこか憔悴した様子のシュウだった。
彼女はルビカンテが外に出ている間、塔で留守番を務めていたのだが、塔に残っているのは彼女一人ではない。
疲れ切った様子のシュウに、ルビカンテは苦笑を漏らす。「苦労しているようだな」
「苦労というか、アレの相手をするのはなれた。だが、代わりに一日中沸き上がり続ける殺意を抑えるのに疲れている」
「・・・それは “慣れた” とは言わないのではないか?」などと話していると、話にあがっていた “アレ” が姿を現した。
「ヒャッヒャッヒャッ。こんなところでなーにをしておる助手4号!」
そう言いながらルゲイエはなれなれしくシュウの腰を抱こうとする―――のを、シュウは全力で蹴り倒した。
「イタイじゃないか!」
「・・・良かったな。脳と違って身体は正常のようだ。残念ながら」
「良いのか残念なのかどっちなんじゃ」
「というか私がいつお前の助手になった! しかもなんだ4号って!」
「何を苛立っておるんじゃ助手4号」
「・・・・・・・・・」もう一度蹴り飛ばそうと、無言で足を振りかぶるシュウに対し、ルゲイエは蹴りの届かない位置まで下がった。
「し・・・仕方ないじゃろ! ワシの助手だったゴブリンキャッパーズがどっかいってしもうたんじゃから!」
ゴブリンキャッパーズ。
ヤンと一緒に次元の穴に吸い込まれ消えてしまった三匹のゴブリンたちである。
ゴブリンを助手にしていたと聞いたときには、魔物を助手にするその感性に、シュウは呆れるを通り越して感心してしまった。「お前の助手がいなくなったからと言って、なんで私がお前の助手にならなければならないんだ!?」
「いやいや、お前さんはエイトスの出身じゃろ? あそこの科学技術はフォールスとは比べものにならんくらいに発達しておるからのー」科学技術が発達している分、魔法技術は劣っている。
というか、そもそも魔法的なパワーソースがほとんど無いため、魔法技術が発達しにくいのだ。だからこそ魔法の代わりに科学技術が発展したとも言える。「じゃから、お前さんの知識はかなーり役に立つんじゃよ。立派に助手の素養はある」
「だ・か・ら! 私はお前の助手なんかになってやる義理はないって言ってるんだ!」シュウが怒鳴りつけると、ルゲイエは怯えたように身をすくめる―――が、すぐに不気味な笑いを浮かべると、なぜか急に強気になった。
「よいのかなー? そんなこといってると、良いことを教えてあげないぞー?」
「なんだ良いことって?」
「知りたい? 知りたい? ならワシの忠実な助手となれい! そうすれば、ついさっきゴルベーザたちが目覚めたことを教えてやらんでも良いぞ!」
「え!? ゴルベーザが目を覚ましたの!」
「それは本当か!」勢い込んで訪ねるシュウとルビカンテに、ルゲイエは目を白黒させて驚く。
「なんじゃあ!? なぜ、ゴルベーザが目を覚ました事を知っておる―――って、お主らワシを置いて何処へゆくー!?」
馬鹿のことは放っておいて。
ルビカンテとシュウは、ゴルベーザが眠っていた部屋へと駆けだした―――。
******
「なによ貴女?」
「お前こそなんだ?」ルゲイエからゴルベーザ復活の話を聞いてから十分後。
ゴルベーザの部屋では険悪な空気が漂っていた。その大本は二人の女性。
片方はシュウ、そしてもう片方は―――「バルバリシア、彼女はシュウと言ってゴルベーザ様の雇った―――」
「貴方には聞いてないわよ!」
「・・・む、すまん」バルバリシアに怒鳴り返され、ルビカンテは思わず謝る。
ゴルベーザ四天王最強の男を一喝したバルバリシアは、再びシュウへにらみつけて、「それで? 貴方はなんなの?」
「人の事を尋ねるならば、まず自分から名乗るのが筋だろう?」こんな感じで。険悪な空気を振りまく二人の女性。そして―――
「フシュルルル・・・・・・カイナッツォ、なんとかできんか。折角復調したばかりだというのに、また精神がすり減りそうだ」
「・・・無茶を言うな。下手にちょっかい出せば、どうなるか解らん。ここはリーダーがなんとかするべきだろうが!」
「む? 私か!? 今のやりとりを見ていただろうに―――というか、都合の良い時だけリーダーに仕立て上げるんじゃない。普段、私の言うことなど聞かぬくせに」同じ部屋にいる他の男どもは為す術もなく縮こまっていた。
―――ルビカンテとシュウが部屋に飛び込んだとき、中にはゴルベーザの他に先客が居た。
ルビカンテ以外の四天王―――土のスカルミリョーネ、水のカイナッツォ、そして風のバルバリシア。
セシルたちによって行動不能になるほどのダメージを受けていた彼女らも復活していた。「そういえば、ルゲイエは “たち” と言っていたな」
馬鹿の言葉を思い出してルビカンテが肯いていると、シュウのことに気がついたバルバリシアが突然不機嫌そうに睨んだのだ。
どちらかといえば人当たりの良いバルバリシアがいきなりケンカを売るような態度を見せるのは珍しい。どうやら本能的にシュウが敵―――恋愛的な意味で―――と感じ取ったらしい。女のカン、という奴である。
そしてバルバリシアと同じようにシュウもバルバリシアの事を “敵” と認識したようだ。「・・・お前たち、何をそんなに睨み合っているのだ」
口元を拭きながらゴルベーザが怪訝そうに尋ねる。
険悪な雰囲気の中、ゴルベーザが何をしていたかというと、彼は一人で黙々と食事をしていた。それはバルバリシアが持ってきたもので、パンに焼いた鳥の肉を挟んだ簡単なサンドイッチだったが、ずっと眠り続けていて何も食べていないゴルベーザにとってはご馳走であった。
眠っていたベッドに腰掛けて、空っぽの胃をびっくりさせないように、ゆっくりと良く噛んで食べ、ようやく今食べ終わったところだ。「ゴルベーザ様! この女は一体、なんなのですか!」
ゴルベーザに向かって、バルバリシアは抗議じみた声を上げる。
対し、ゴルベーザは「何をそんなに怒っているんだ?」と、状況がよくわかっていない様子で答える。「先程、ルビカンテも説明しかけただろう。私の雇った傭兵だ」
「こんな女一人雇ってなんになるというのですか!」
「お前だって女だろう」バルバリシアに指を突きつけられ、シュウはムッとして言い返す。
そんなシュウに、バルバリシアは「ふふん」と笑って宙に浮く。魔法も使わずに浮かんでいるバルバリシアに、シュウは驚いて目を丸くする。その反応に気をよくしたバルバリシアはさらに勝ち誇った。「私は貴方のようなただの人間とは違うの。お分かりかしら?」
「それくらいにしろバルバリシア。確かに力ではお前に劣るかもしれないが、シュウは良くやってくれている。闇のクリスタルの一つを奪うことができたのも、彼女のおかげだ」
「・・・そ、そんな・・・おかげだなんて。わ、私は別に自分の仕事をしただけで・・・」ゴルベーザの言葉に、シュウはほほを染めながらしどろもどろに言い訳のような言葉を口にする。
そんなシュウの様子に、バルバリシアは余裕を吹っ飛ばしてゴルベーザへ詰め寄った。「ゴルベーザ様はこの女の肩をもつというのですか!?」
「肩を持つも何も、単なる事実だ―――大体、良く解らんのだが、なぜそんなにシュウに敵意を向ける? 今、初めて顔を合わせたばかりだろう?」
「それは・・・・・・!」どうやらゴルベーザはシュウの気持ちに全く気がついていないようだ。
ならば間違っても「シュウがゴルベーザに懸想しているからです」などとは言えない。もしそれでゴルベーザがシュウのことを女として意識してしまえば、万が一ということもあり得る。「それは・・・なんとなく気にくわないからですわ」
「やれやれ・・・ならば仕方ないな」ゴルベーザは嘆息する。理由が無いならば解決の糸口も見いだせない。
あとは時間に任せるしかないと、ゴルベーザは彼女たちを和解させることを諦めた。「だが、仲良くしろとは言わないが、仲間割れだけはするなよ?」
一応、念を押すが、しかし彼女たちはにっこりとほほえんで、口をそろえて同時に言った。
「安心してくださいゴルベーザ様。こんな女、元より仲間と思ってません」
「最初から仲間と思わなければ、仲間割れもなにもないだろう?」同じような言葉を言った二人は、再び険悪に睨み合う。
「真似しないでもらえる?」
「そっちこそ!」そんな二人の様子に、ゴルベーザは再び疲れたように嘆息した―――
******
「―――以上が、現在の状況です」
いがみ合うバルバリシアとシュウは放っておいて、ゴルベーザはルビカンテから自分が眠っている間の報告を聞いた。
その内容は、あまり愉快なものではない。「奪った “赤い翼” は壊滅したか・・・これでまた手駒を一つ失ったな」
そんなゴルベーザの苦い声に、バルバリシアは「そらみなさい」とシュウに言う。
「貴女が勝手なことをしなければ、赤い翼を失うこともなかった! 敵の相手などせず、塔に閉じこもっていれば良かったのよ!」
「くっ・・・・・・」指摘され、シュウは悔しそうに唇をかみしめる。
しかしゴルベーザは首を横に振った。「―――いや、結果はともかく、シュウの判断は間違いではない。このバブイルの塔は強固とはいえ、戦車隊の集中砲火を受け続ければどうなるか解らんし、向こうには召還士の娘もいたはずだ。 “魔封壁” が在るとはいえ、もしも上位の幻獣を召還できたとしたら、如何に古代の技術で作られた塔とて適うまい」
「・・・そういえば、奴らが塔に攻めてくる以前に、ドワーフの城の方から強い炎の力を感じました。元々炎の力が強いこの地底で、あれほどはっきりと力を感じたと言うことは、私の力をも凌駕するほどの存在―――恐らくは炎の王と呼ばれし幻獣イフリートかと」
「それにあのカイン=ハイウィンドの恐ろしさはバルバリシア、お前もよく知っているだろう。ルビカンテに土をつけたセシル=ハーヴィとあの旅人もだが、倒せるようならば多少のリスクを支払ってでも倒しておきたい相手だ」ゴルベーザとルビカンテの擁護に、バルバリシアは不満そうな顔をする。
そんな彼女に、ゴルベーザはやれやれと声をかけた。「そんな顔をするなバルバリシア」
「けれど、さっきからこの女を庇って・・・」
「だから庇うも何もただの事実だと言っただろう。それに、シュウ以上にお前には世話になっている。感謝している」ゴルベーザに褒められ、バルバリシアはさっきのシュウのようにほほを染め、感激のあまりに瞳を潤ませる。
「そっ、それならばご褒美をもらってもよろしいでしょうか!?」
「褒美? 別にかまわんが・・・何を望むのだ?」
「そのっ・・・・・・あ、頭を・・・撫でてほしいかな・・・なんて・・・・・・」最後の方は聞き取れないほど小さな声で、バルバリシアは真っ赤になって言う。
ゴルベーザは「そんなもので良いのか?」と良くわからない様子で、バルバリシアの頭に手を伸ばして、優しく撫でてやった。(うひゃああああああああああああああ・・・・・・・・・っ!)
心の中で彼女は絶叫した。
頭を撫でられているだけなのに、全身を愛撫されているような気がするほどの心地よさに、彼女の頭が真っ白になる。
もうシュウのこともなにも頭からすっ飛んで、彼女はただただその至福を味わった。「・・・・・・・・・」
それをシュウが物欲しそうな目でじっと見つめている。
と、不意にバルバリシアは自らゴルベーザから離れる。
突然手の置き場を失って、ゴルベーザは手を宙に差し出したまま、怪訝そうに首をかしげた。「どうかしたのか?」
「いえそのっ、なんかもうっ、十分ですっ、おっけーですっ、満足しましたっ! というかこれ以上撫でられ続けると、なんというかっ、駄目になっちゃいますっ!」顔真っ赤にしてまくし立てるバルバリシアに、ゴルベーザは「そ、そうか」とやや気圧されながら手を下げた。
「まあ、満足してくれたならば何よりだ―――さて、これからの事だが」
ゴルベーザはルビカンテを見やり、
「お前たち二人にはエブラーナの忍者を殲滅してもらう。奴らとバロンが手を組まれると厄介だ。バルバリシアの感知能力と機動性があれば、すぐに見つけることができるだろう」
「ハッ」
「・・・え、あ、は、はいっ!」ルビカンテが了解し、それから少し遅れて、まだ真っ赤になったまま悶えていたバルバリシアが我に返り、慌てて返事をする。
続いて、ゴルベーザはスカルミリョーネとシュウへと目を向けた。「お前たち二人と、それからルゲイエは私と一緒に最後のクリスタルを奪いにいく―――ルビカンテ、使える飛空艇は?」
「ルゲイエが改修していた飛空艇が二艇だけ。バロンの新型飛空艇と同じく、少人数で動かせるように改造されたものです」
「ならばそれを使うとしよう。カイナッツォ、私達が出てる間、この塔はお前に任せる」
「承知しました」
「って、ゴルベーザ様。この女やルゲイエを同行させるのですか!?」またまた不満そうにバルバリシアが口を尖らせる。
ゴルベーザはうなずきを返し、「最後のクリスタルは結界によって守られた場所にある。一度試したが、私のダームディアでも進入できない高度な結界だ」
ゴルベーザが言うとルビカンテも続けて。
「私の火燕流でもビクともしなかった。力業でこじ開けるのは難しいだろう」
「おそらくはこのバブイルの塔と同じレベルの技術が使われているに違いない。だからスカルミリョーネの魔道知識はもとより、バブイルの塔を調べていたルゲイエや、エイトス出身のシュウの知識が必要なのだ」
「そう、ですか・・・」不満ではあるものの、とりあえず納得したようだった。
彼女はシュウをキッと睨む。「ゴルベーザ様の足を引っ張ったら承知しないわよ!」
「そっちこそ! ドジを踏んでゴルベーザに迷惑かけないようにな!」
「なによ!」
「なんだ!」
「・・・とりあえず、ケンカなら余所でやってくれないか・・・?」ゴルベーザは疲れたように嘆息した―――
******
・・・一方、その頃―――
バロン、飛空艇ドックにて。
発進準備を進めるエンタープライズの前で、セシルは二人と向き合っていた。「それじゃあ頼むよ、エニシェル」
片方の少女へと声をかける。
可愛らしいフリルがいくつもついた黒いミニドレス姿で黒目黒髪黒肌の黒ずくめの少女―――エニシェルはセシルの言葉に少し困った様子で返事をする。「頼まれるのは構わんが、こいつも連れて行くのか?」
こいつ、というのはエニシェルの傍らに居るもう一人の少女のことだ。エニシェルと同じように黒目黒髪黒肌であるが、こちらは別に服装まで黒くはない。
彼女は両手でエニシェルの服の裾をつかんでいる。それを見て、セシルも困ったように少女―――ファスに声をかけた。
「ファス、今回は君を同行させることはできない。させる必要がない」
―――今回、セシルの “代理” としてエブラーナに向かうのはエニシェルだった。
彼女はセシルと “繋がって” いる。彼女がいれば、それはそこにセシルがいるのと同じことである。それで前回は、セシルはバロンの城にいながらにして、エニシェルを通してバロン各地の貴族の様子を確認することができた。「今回は君の身分を利用する必要はないし、なにより前回よりも危険が高い」
「だったらエニシェルは!? エニシェルは危険な目にあってもいいの・・・!?」どうやらファスはエニシェルの事を心配しているらしかった。
エニシェルがエブラーナへ行くと知ったときからこんな調子で、エニシェルを離そうとしない。「妾のことを心配する必要などないだろうに。妾は人間ではなく暗黒剣だぞ?」
「でも・・・っ」エニシェルの言葉に、ファスは泣きそうな顔で訴える。
「なにか・・・なにか嫌な予感がするの!」
「もしかして・・・ “運命” を見たのかい?」ふとセシルは気になって尋ねる。
ファスには特殊な能力があり、 “生命の流れ” を見ることができるのだ。生命の流れ―――すなわち運命。それを見れば、人がどんな運命をたどって、どこで死ぬのかが解るという。しかしファスは首を横に振った。
「私にはエニシェルやセシルの “運命” は見えない・・・けどっ、良く解らないけどなにか嫌なの! エニシェルが行くって聞いたときから、胸の奥がざわざわして、喉になにか張り付いたようにカラカラして、とても不安な気分なの! まるで、もう二度とエニシェルと二度と会えないような―――」
運命を見る力を持つファスだ。その言葉を “気のせい” と無視しないほうが良いのかもしれない。
だがセシルは不安に怯えるファスに優しく語りかける。「大丈夫だよ、ファス。エニシェルならきっと無事に帰ってくる。それに、もしエニシェルになにかが起これば、必ず僕が助けるから」
セシルが呼べばエニシェルは瞬時にセシルの手元へと現れる。
だからどんな危険があったとしても、結界かなにかに阻まれでもしない限り、エニシェルが失われることはありえない。ファスは涙で潤んだ瞳をセシルに向けて尋ねる。
「・・・ほんとに?」
「ああ、本当だ。約束する」
「・・・・・・・・・解った」ようやくファスはエニシェルから手を離した。
彼女はまだ不安そうな顔で、けれどぎこちなくでも精一杯微笑む。「信じるから」
かつて自分の見た “運命” をひっくり返した青年を、ファスは信じる。
それからエニシェルへと視線を移して、「絶対、帰ってきてね」
「当たり前だ。というか妾としてはお前のほうが心配だぞ? 妾がいないからって寂しくなって泣き出したりしないようにな?」
「・・・むう。わたし、そんな泣き虫じゃないもん」エニシェルにからかわれ、ファスはぷいっと横を向く。
そんなファスの仕草に、セシルとエニシェルは思わず吹き出した―――
******
セシルたちは決着をつけるためにバブイルの塔を攻略せんとエブラーナと手を組み、ゴルベーザは最後のクリスタルを求めて動きだす―――
長い物語も佳境へと入り、セシルとゴルベーザの決着の時も近い。
しかし、まだセシルは知らない。
ゴルベーザの背後に潜む、真なる敵の存在を――――――・・・・・・