第21章「最強たる者」
Z.「天地崩壊」
main character:セシル=ハーヴィ
location:バロン城・地下謁見の間
「俺一人じゃ貴方には勝てない―――けれど二人ならば・・・カイン=ハイウィンドと共にならば」
ボロボロの状態でセシルは言う。
もはや誰の目にも勝敗は明らかなはずだった。セシルはダークフォースを使った反動で傷ついて、オーディンの乗っている馬、スレイプニルにさえ手も足も出ない。
頼みの綱であるカインも負傷していて戦闘不能。あと “向こう側” で残っているのはファリスとギルバートだが、ファリスは “死んで” いないものの、気絶したまま動かない。ギルバートも、竪琴を失った状態ではなにもできはしない。だが、それなのに。
「 “俺達” は、誰にも負けはしない」
その言葉は、何故か強い力を秘めていた。
「勝てるわけ・・・ないだろ・・・」
否定する様に、けれどどこか期待する様にロックが呟く。
その隣では、バッツがにやりと笑った。「勝つさ」
それは絶対の確信。
そんなバッツと同じ笑みを浮かべ―――「その言葉を、待っていた」
今までずっと動かなかったカインが呟いた―――
******
その言葉を待っていた―――
カインが言った言葉は、まさにオーディンの想いそのものだった。
(やはり、セシル=ハーヴィか!)
セシルはまだ諦めていなかった。
そのことに、オーディンは喜びが沸き上がることを抑えることは出来なかった。「面白い!」
あの時と同じく、セシルが何を考え、どうやってオーディンに打ち勝とうとしているのかは解らない。
だが、だからこそ面白い。「ならば来るがいい、セシル! ―――だが、前回のように行くと思うな!」
「前回と同じ事をするとは言ってない」いつか交したようなやりとり。
セシルはオーディンから視線を外さずに、カインへと声をかけた。
それは “あの時” ―――3年前に、オーディンと戦う直前に囁いた言葉と、同じ台詞だ。「カイン、俺はお前を信じてる。だから―――何があっても貫き通せ!」
「解っているさ」あの時とは違い、カインは聞き返すことなく頷いた。
「ならば行くよカイン。オーディン様を―――あいつを殺す! “天地” を仕掛ける!」
天地交錯。
本来は竜騎士と飛竜の連係攻撃だが、人間同士で行えるのはセシルとカインの二人だけだ。
しかし―――「天地交錯だと? しかしカインは足に怪我を負っているのではなかったのかね?」
オーディンが尋ねる。
「それともやはりそれははったり―――」
「そんなことは俺の知った事じゃない」
「・・・なに?」まるで突き放したような言葉。
「俺が今興味があるのは、貴方を殺すことだけだ。それ以外はどうでも良いと言ったんだ!」
「何を言っている・・・?」意味が解らない。
カインとの連携ができなければセシルに勝ち目はない。それは知っているはずだが、そんなことはどうでも良いと言い放つ。「・・・お喋りの時間はこれまでだ」
デスブリンガーを手に、セシルはゆっくりとオーディンに向かって歩み寄っていく。
一歩一歩、と迫るセシルに、オーディンはスレイプニルに指示を―――出す前にカインが動く。「穿て―――」
カインは竜気を込めた槍を、刃先を地面に向けて両手で持つ。まるで杭でも地面へ埋め込むかのように、槍を地面へと突き立てる。
青白い光を纏った槍は、石の床に深く突き刺ささった。「行くぞ・・・!」
カインは突き立てた槍をしならせ、負傷しているはずの足で床を思い切り蹴った。
「ああああああああああああああああああああああああああああ゛っ!」
絶叫。それは悲鳴だった。
しかしその痛みを雄叫びへと変えて、カインは全身の力を振り絞って跳ぶ。
それは槍を使ったとはいえ、負傷している足で跳んだとは思えないほど高く高く、高く跳ぶ―――だが。「遅い」
オーディンは跳ぶカインを見上げ、短く言い放つ。
天井へ届きそうなほど高く跳んでいるが、その速度は普段のカインに比べて圧倒的に遅く、 ”跳躍” とは呼べないレベルだ。オーディンの技量ならば、簡単に撃墜することができる。
オーディンは手の中のミストルティンを白銀の槍―――グングニルへと変じる。「下は任せる!」
オーディンはスレイプニルに指示を出す。
以前の戦いでは一対二―――セシルに気を取られている隙に、カインに倒された。だが今回は二対二だ。セシルの相手をスレイプニルに任せ、オーディンはカインにだけ集中すれば隙を生むこともない。(これで終わりだ―――)
オーディンは、槍をカインへと向けた―――その瞬間。
「ヒヒイィィィィィンッ!」
「!?」スレイプニルの悲鳴と共に、そのバランスが崩れた。
その上に乗っているオーディンも体勢を崩す。突然、スレイプニルが大きくバランスを崩した事に、思わず下を見下ろせば、セシルがスレイプニルの前足を一本、断ち切ったところだった。
「バカな―――!?」
さっきまで、セシルはスレイプニルに手も足も出なかったはずだった。
それが何故、あっさりと斬ることが出来たのか。さっきまでのは演技だったのか―――(いや違う)
すぐにオーディンは己のミスに気がついた。
スレイプニルは良く訓練されている幻獣の馬だ。だから、オーディンがカインに狙いを定めたことで、攻撃しやすい様に極力動きを止めていた。
さっき、セシルを翻弄出来たのは、縦横無尽に駆けめぐる、その動きがあればこそだったのだ。(ここは退く!)
己の失策に、即座にオーディンは判断を下す。
このままカインを撃墜するべきかとも思った。
だが一旦後ろに下がって、飛び込んでくるカインを避ければ、槍を失ったカインはもう跳べないはず。より確実にカインを無力化できる。「スレイプニル!」
「ヒヒーンッ!」オーディンの声に、スレイプニルは甲高い声を上げた。
すると、半分に切断された足から、もう一本別の蹄が生えてくる。「再生した?」
驚くセシルの目の前で、スレイプニルは新たに生えた足を床につけ、そのまま後ろに向かって跳躍する。
あっと言う間に元いた場所から離脱して、オーディンはカインを見上げた。「これでカインは―――」
終わった、と言いかけて―――言えなかった。
カインは丁度天井へと到達していた。四肢を天井に着いて、こちらを見下ろしているその視線と合う。(あの目―――)
それはほんの一瞬の交錯。
だが、その一瞬で、オーディンは戦慄と共に思い出していた。自分が完全に敗北したその瞬間の事を。かつてのセシルとカインとの三連戦。
一戦、二戦はセシルにしてやられた。だが三戦目は―――(・・・忘れていた)
いや、思い出そうにも記憶になかった。
何故ならば、三戦目は一瞬で打ち倒されたのだから。
ただ覚えているのは、倒される直前にかすかに見たと今思い出した、カインの鋭い目。セシルとカイン相手に三連敗した三戦目。
あの時セシルは “なにもしなかった” 。より正確にいうならばセシルの役目は終わっていた。セシルのダークフォースの直撃を受け、誰もがカインは立っているのがやっとだと思い込んでいた―――セシルを除いて。
しかし、カインは跳躍した。
セシル以外の予想を裏切り―――セシルの期待に応え、カインは三戦中で、最も速く、強く跳躍して、オーディンの胸を貫いたのだ。
オーディンはセシルに気を取られ、倒された瞬間、どうやって倒されたのかすら解らなかった―――が、それを “油断” と呼ぶのはあまりにも酷だろう。あの時のカインを信じられる者は、セシル=ハーヴィ以外に存在しない。(来る―――!)
だが今は違う。
足を負傷し、大した攻撃など出来ないはずのカインに、オーディンは危機を感じて叫ぶ。「逃げろスレイプニル!」
オーディンが叫ぶと同時に。
カインが天井を蹴り、拳で殴り、オーディンへ向かって “跳躍” する!
******
オーディンの叫びに、スレイプニルは真横へと跳躍する。
それは普通の馬では到底有り得ない動き。幻獣であるスレイプニルだからこそできた動きだ。
しかし―――(馬鹿な!?)
カインはスレイプニルが跳躍した先をめがけて跳んできた。
まるで、予めそこへ跳ぶと解っていたかの様に。カインがどうしてスレイプニルの動きを読めたのかはオーディンには解らない。戦士としての直感なのか、それとも別の理由があるのか。
しかしその理由を考えている余裕など無い。「おおおおおおおおおおッ!」
カインは雄叫びを上げて、高速でオーディンへと降ってくる。
重力に抗い天井へ向かって跳んだ速度は遅くとも、天井から重力の力を借りて跳躍したその速度は、普段のカイン以上の速度だ。
カインはオーディンに向かって跳躍しつつ腰の剣を掴む。槍を失ったカインに残された最後の武器だ―――が。「甘い!」
オーディンはグングニルをミストルティンへと戻して叫ぶ。
本来、カインの腰の剣は、主武器である槍の補佐として扱うものだ。つまり、槍に比べて剣の技量は格段に劣る。それでも並の剣士よりは遙かに強いが、オーディンに通用する腕ではない。(―――その剣は究極の剣)
すでにオーディンにはカインを剣ごと断ち切れる剣筋が見えていた。
後は、そこへ正確に剣を振り抜けば、カインは攻撃することも防御することも出来ずに斬り裂かれる。(今度こそ―――)
終わりだ、と迫るカインに合わせて剣を振るおうとしたその瞬間。
「ッ!?」
突然、スレイプニルの身体が崩れた。
さきほどのようにバランスを崩した、というレベルではない。身体から力を失い、その場に崩れ落ちる。「なに―――」
なにが起きた!? と、混乱するオーディンの目の前で、赤い液体が噴水の様に噴き上がった。
それは血だった。
スレイプニルの首から、勢いよく血が噴き出している―――その血の向こうでは、デスブリンガーを振り抜いた姿勢のセシルが居る。騎乗しているオーディンが気づかないほどに、容易く斬り裂いたその技はまさしく―――
斬鉄剣
「なんと―――」
そこでオーディンは理解する。
何故、カインがスレイプニルの跳躍した先へと仕掛けることが出来たのか。
カインが動きを読んだわけでも、戦士の勘でもない。オーディンがカインを見上げている間に、すでにセシルが回り込んでいたからだ。
しかも斬鉄剣をスレイプニルに使ったと言うことは―――(スレイプニルの動きを読み切っていたというのか!)
思えば、何故セシルは最初に一人で戦おうとしたのか。
最初からカインを使おうとしなかったのか。答えはこれだ。
スレイプニルの動きを読み切るために、あえてギリギリまで一人で立ち向かったのだ。(! いかん!)
セシルに気を取られていたオーディンは、ハッとしてカインを見上げる。
だが遅い。
すでに眼前に迫ったカインは、剣を抜き放ちながら腰を捻り、さらなる力を加える。
それは居合いに、セリスの使う “スピニングエッジ” を組み合わせた様な強烈な一撃だ。
ドラゴンファング
まさに天から降臨する竜の一撃が如く。
強烈無比の一撃が、オーディンの鎧を打ち砕く!「ぬがあああああああああっ!」
「ちいっ!」オーディンが上げる絶叫に、カインは舌打ちをした。
兜―――頭へ向かって振り下ろした必殺の一撃は、しかし寸前でオーディンがわずかに首を傾げ、剣は側頭部をかすめて肩へと振り下ろされた。
肩当てを砕き、剣はオーディンの肩へ食い込む―――が、狙いが外されたことと、肩当てのせいで、その一撃はさほど深くはない。「残念―――だったな」
激痛に顔をしかめながら、オーディンはカインに向かってにやりと笑う。
これでカインは全ての力を使い果たしたはずだ。もうまともに跳べず、完全に戦闘不能だろう。オーディンは、カインにトドメを差すべくミストルティンに力を込める―――
「む・・・!?」
不意に、背後から力を感じた。
そのとてつもない強大な力に、オーディンは反射的に背後を振り返る―――そこには。「セシル・・・!」
デスブリンガーを構えたセシルの姿があった―――
******
「あいつ・・・正気か!?」
固唾を呑んでロックがセシルを見つめる。
ロック達が見ているのは仮初めの空間の出来事のハズだ―――だというのに、セシルのダークフォースを、自然に身が震えるほどはっきりと感じる。先程、オーディンを追いつめた時よりも遙かに強い力。
しかしロックやバッツはかつてその力を感じたことがあった。
よくよく見れば、デモンズヘルムの隙間から見えるセシルの髪の毛が、銀のそれから漆黒へと変じている。「黒髪の・・・セシル=ハーヴィ・・・・・・」
かつてファブールで、レオやカインと言った “最強” が手も足も出なかった怪物。
バッツとの戦いでも発現したそれを見て、ロックは戦慄する。「な、なんだよあの力!?」
初めてそれを見るエッジは震える声で喚く。
と、 “向こう側” でオーディンがセシルに向かって叫んだ。「まさか・・・カインもろとも私を殺すというのか!?」
「そんなはずは・・・」オーディンの言葉に、バッツは思わず否定の言葉を呟こうとして―――否定しきれなかった。
セシルにしてみれば、リディアやバッツなどを次々に殺されている。
だから、カインを犠牲にしてでもオーディンを殺したいと思っているのかも知れない。「何度も言わせるな―――」
オーディンの問いに、セシルは暗い声で静かに呟く。
「なに?」
「 “そんな事” は俺の知ったことじゃない」
「―――ッ!」その返答にオーディンが、そしてそれを見守っているバッツ達も愕然とする。
この空間が “仮初め” であることをセシルは知らないはずだった。
つまり、セシルは本気でカインごとオーディンを殺そうとしている。「友を見殺しにしてまで掴んだ勝利になんの意味があるというのだ!」
状況も忘れ、オーディンが叫ぶ。それはバッツの心を代弁するかの様な叫びだった。
セシル=ハーヴィは甘い男ではない。本当に必要だと感じたならば、何かを犠牲にしてでも行使する。そして、それを一生の後悔として胸に秘める男だ。
だが、今のセシルの言動は、バッツが知っているセシルのそれではない。「・・・・・・舐めるな」
オーディンの言葉に、セシルはさらに低い声音で呟く。
それは激しい怒りを押し殺した様な―――とても、重い、重い呟きだ。「なに・・・?」
「俺が認めた “最強” を舐めるなと言っているんだ!」それは、バッツとカインが戦った時にも聞いた言葉。
「「どういう意味だ!?」」
バッツとオーディンの言葉がぴたりと重なった。
もっとも、セシルに聞こえたのはオーディンの声だけだろうが。「・・・・・・」
もう話は終わりだ、と言わんばかりにセシルは口をつぐむ。
「―――信じているからだよ」
呟いたのは、リディアだった。
バッツ達が彼女を振り返ると、リディアはじっとセシルを見つめていた。「きっと、セシルは信じているのよ。カインの事を」
カイポの村で。
自分を信じてくれた時の事を思い返す。
あの時、セシルが自分のことを “信じて” くれたことを、リディアは決して忘れない。「セシルは、自分が認めた最強を “信じている” 。きっと、ただそれだけのこと―――」
「なんじゃ!?」不意に、フライヤが叫んだ。
「カインが―――あやつ・・・・・・!?」
その声に、カインを注目してみれば。
「なんだ・・・あれ・・・・・・?」
「燃えて・・・居るのか!?」青白い炎に包まれた、カインの姿があった―――
******
「俺が認めた “最強” を舐めるなと言っているんだ!」
「どういう意味だ?」
「・・・・・・」問い返す、がセシルはもう話は終わりだと言わんばかりに口をつぐむ。
(むう・・・兎に角、この場は退かねば―――)
セシルのダークフォースの威力は、身をもって知ったばかりだ。
あれを直撃されるわけにはいかないと、オーディンは床に伏せたスレイプニルの死骸から腰を上げようとして―――ひやり、とした冷たいモノを感じた。
「凍って・・・いる!?」
ピキ・・・ピキピキ・・・ッ、というかすかな音に前を見れば、肩に食い込んだカインの剣が凍り付いていた。
今まで気がつかなかったのはセシルに気を取られていたことと、感覚がマヒしていたせいだろう。
それに気がついた途端、身体から体温が奪われるのを感じた。「これは竜剣―――いや!?」
竜騎士の特殊能力、竜剣―――
相手から “熱” を奪い、自分のエネルギーとする技だ。
だが、カインの使っているそれは竜剣をさらに超えたものだった。「ぐ・・・う・・・」
苦しそうな呻き声を上げる。
それもそのはず。カインの身体が青白い炎に包まれている。
だというのに、不思議なことにすぐ側にいるはずのオーディンは全く熱を感じない―――どころか、竜剣で熱を奪われている以上に寒気を感じる。「これは―――まさか・・・!」
オーディンは気がつく。
カインから一定以上の距離を置いた場所が凍り付いていることを。
オーディンの肩の剣は述べたとおり。他にも、オーディンの鎧や石床も白い霜が張っていた。「まさか、私だけではなく周囲の熱を奪っているのか!?」
熱を奪って自分の力にする竜剣だが、限りなく熱を奪えば良いというものではない。
人間というのは、数度体温が増減しただけで、体調が悪くなる生き物である。
だから、過剰に熱を奪い取れば自滅に繋がる。もともと “竜剣” ―――というか “竜気” は竜の熱に耐えるために、竜騎士達が身に着けたものだ。
竜というのは、人間よりも遙かに高い体温を持っている。通常時は、その硬い外皮に阻まれて熱が外に出ることはないが、戦闘状態になれば近づいただけで紙が燃えるほどの高熱を発する。その熱を防ぐための力が “竜気” だった。つまり “竜気” とは余分な熱を調整し、身を守るためのものなのだ。
だから竜騎士は、 “竜剣” によってある程度余分に熱を取り込んでも、身体に変調をきたすことなく己の力と変えることができる。しかし、今のカインは、明らかに熱を取り込み過ぎだった。
身体が自然発火するほどの熱。
なのに、まだ燃え尽きていないのは、ギリギリ “竜気” で熱をコントロールしているからだが、それもいつまでも持つわけではない。「馬鹿な!? 死ぬ気か!?」
オーディンが、これが仮初めの空間だと言うことも忘れて叫ぶ。
だが、炎の中で身体を焼かれながらカインは不敵に笑った。「死んで・・・たまるか―――」
カインは剣から手を放す。
剣は支えを無くしたが、オーディンの肩に食い込み、さらには凍り付いているため地面に落ちることはなかった。「俺はまだ、最強には至っていない―――まだセシル=ハーヴィに追いついてさえいない―――そんなままで、死んで・・・・・・」
カインは両手を開いてオーディンへと向かって突き出す。
開かれた手は焼け焦げ、皮が剥げていた。剥げた皮は放した剣の柄にこびりついている―――「・・・・・・死んで・・・たまる、かあああああああああああああああああああああああッ!」
絶叫。
それとともに、カインの全身から力が解き放たれる。
ドラゴンバースト
「闇よ! 命を喰らいて “最強” を示せ!」
同時にセシルはダークフォースを解き放つ。
デスブリンガー
青白い炎と漆黒の闇。
二色の異なる力が、オーディンを中心に激突しあった―――
******
黒と青。
闇と炎。異なる二つが激突し、互いに喰らい合う。
最初は闇の力が勝っていたが、やがて青い炎が押し返し、さらに闇が押し返した。「これが・・・」
二つは押しては押され、押されては押してを繰り返し、せめぎ合う。
「俺達の・・・・」
が、やがて二つは完全に拮抗する。
まるで時が止まったかの様に僅かも揺らがずに二つは合わさり―――やがて互いに消滅し合う。「「これが俺達の “最強” だ――――――」」
天地崩壊
“消滅” は中心に居たオーディンをも巻き込み、その存在を完全に消し去った―――